カテゴリー「昆虫(双翅目)-1」の30件の記事

2008年12月25日 (木)

キタモンヒゲブトキモグリバエ

 暮れも兪々押し迫って来ました。余り時間が有りませんので、今日は写真の少ない虫を紹介します。
 キタモンヒゲブトキモグリバエ(Gampsocera numerata)、体長2.5mm、翅端まで3.0mmのキモグリバエ科に属す小さなハエです。
 「四丁目緑地」の近くに植えられているミカンの木の葉裏に居ました。もう夕方で、しかも良く繁ったミカンの木の奥なので見え難くかったのですが、小さいながらも非常に綺麗なハエだと言うことが分かりました。是非、横からも撮りたかったのですが、この日は暖かかったせいか敏感で、すぐに逃げられてしまいました。そんな訳で、写真は1枚しか有りません。

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キタモンヒゲブトキモグリバエ(Gampsocera numerata
触角や頭部の形が独特、翅にも斑模様がある
(クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 初めて見る種類のハエです。触角が太く、翅には模様があります。何科に属すのか見当も付かないので、検索表を引かなければなりません。しかし、写真はかなり高解像度で(絞りを空けて)撮ってあるにも拘わらず、何となくボーとしています。これは、複眼、胸部、翅の前縁脈等に細かい毛が生えているからです。この程度の写真で検索表を引くのは一寸無理と言うものです。  しかし、触角や頭部の形と翅の斑紋が一種独特ですから、画像を検索すれば何とかなるかも知れません。そこで、「みんなで作る双翅目図鑑」の画像一覧で、似たようなハエが居ないか一つひとつ照らし合わせてみました。
 ・・・すると、Gampsocera numerataと言うキモグリバエ科のハエが、写真とそっくりな翅の模様をしていました。また、このサイト内にある掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」にもこのハエに関する記事があり、和名はキタモンヒゲブトキモグリバエであることが分かりました。しかし、何れも標本写真で、生態写真とは随分違って見えます。そこで同掲示板に御伺いを立ててみたところ、バグリッチ氏より、このハエはキタモンヒゲブトキモグリバエGampsocera numerataであると考えています、と言う主旨の御回答を頂きました。
 CiNiiに収録されている論文「上宮健吉:赤坂御用地のキモグリバエ科」に拠ると、このハエの幼虫は腐植を食べ、ハワイではバナナやパパイヤ等の腐った茎で飼育した例があるそうです。また、過去には採集の記録が非常に少ないにも拘わらず、赤坂御用地ではかなりの数が採れたと書かれていました。しかし、少なくとも現在では珍しいハエではないらしく、バグリッチ氏によると、氏のフィールドでは秋から冬にかけて最も多く見つかるキモグリバエの一つだそうです。
 もし、この辺りでも普通の種であれば、この冬にまたこのキタモンヒゲブトキモグリバエに御目に掛かることが出来るかも知れません。その時は、横、前、斜めからも写真を撮って、再度掲載したいと思っております。

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2008年12月15日 (月)

フタホシヒラタアブ

 今日は久しぶりにヒラタアブの登場です。フタホシヒラタアブ(Eupeodes(Metasyrphus) corollae)、ハナアブ科ヒラタアブ亜科に属します。ヒラタアブとしては中程度の大きさで、この個体の体長は約8mmですが、もう少し大きい個体も居ます。

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フタホシヒラタアブ.複眼の間が離れているので雌
頭頂と触角の間に一様な黒っぽい部分はない
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/11)

 先日紹介した六丁目にある原種に近いサザンカの花に来ていました。ヒラタアブ類は、菊類の花が好きらしくよく訪花していますが、サザンカにも時々やってきます。
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小楯板(胸背の後にある半月形の部分)に生えている毛は茶色
(写真をクリックして拡大して見て下さい)
(2008/11/11)

 よく似た種類にナミホシヒラタアブがあります。このアブは、昨年秋、キクの花に来ているのを紹介しました。この時、フタホシヒラタアブも一緒に居ましたが、背側からしか撮れなかったので掲載はしませんでした。
 一般にフタホシはナミホシよりも小型です。北隆館の圖鑑にはフタホシは8~10mm、ナミホシでは10~12mmと書かれています。しかし、ハナアブ類にかけては一番詳しい「北海道の昆虫」では、それぞれ8~10mm、8.5~12mmとなっており、広い範囲で重複して居ます。写真から大きさを判断する場合、特に倍率を定めて撮影していなければ、2割程度の大きさの違いを区別することはかなり困難です。
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真横から見ると、小楯板の毛が茶色いのが良く分かる
(写真をクリックして拡大して見て下さい)
腿節には暗色の部分が少ない
(2008/11/11)

 一般にフタホシでは、腹部の黄紋が全て左右に分かれており、ナミホシでは最初の黄紋以外は左右が連続しています。しかし、中には黄紋の繋がったフタホシや、全ての黄紋が左右に分かれたナミホシも居るので、これだけで両者を区別するのは無理です。
 また、ナミホシは、フタホシに較べて脚に暗色の部分がかなり多い様です。が、これも個体差があって簡単には判断出来ません。
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付節の先の方は色が濃い(2008/11/11)

 ヒラタアブを含むハナアブ科のアブ(本当はハエなのですが此処ではアブとしておきます)では、雌は左右の複眼の間が離れており、雄ではくっ付いています。このフタホシは、眼と眼の間が離れているので、雌になります。
 ナミホシの雌の場合、単眼のある頭頂の真っ黒な部分と触角の付け根の間に黒色毛が生えており、一様に薄黒く見えます。フタホシの場合は、写真で見るとおり、多少は黒ずんだ部分がありますが、一様に薄黒くはありません。雌の場合は、この方式で両者を区別できる様に思えます。しかし、雄の場合は眼と眼がくっ付いているのでこの部分は存在せず、判断の下し様がありません。
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頭頂と触角の間に一様な黒っぽい部分がなく
顔面に黒色中条がある(2008/11/11)

 雄の場合、種の区別を確実にするのならば、交尾器を見るのが一番です。しかし、生態写真で交尾器を見ろと言うのはドダイ無理な話です。
 幸い、この両者の間にはもう一つ違いがあります。小楯板(胸背の後にある半月形の部分)の毛の色です。ナミホシの小楯板に生えている毛は黒く、小楯板に暗い影として写ります。フタホシの方は、茶色っぽい毛が生えており、小楯板の色と大差が無いので、明確な影にはなりません。
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オマケにもう1枚.脚の踏ん張り方がスゴイ
サザンカの花弁は滑り易いのか?
(2008/11/11)

 北隆館の圖鑑を見ると、ナミホシヒラタアブの解説に「額は黄灰食粉で被われ、被毛は黒色・・・小楯板はろう灰色で被毛は大部分黒色」とあります。しかし、フタホシヒラタアブの項には毛に付いての記載がありません。
 まァ、このフタホシとナミホシの見分け方は、謂わば私の経験則の様なものです。余り信用はしないで下さい。

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2008年11月25日 (火)

シワバネキノコバエ(Allactoneura akasakana)?

 ハエやカの仲間には、実に多くの科があります。正体の分からない双翅目(蠅、蚊、虻)を撮ったときは、図鑑の標本写真と生態写真ではまるで違って見えることが多いので、普通は検索表を引きます。双翅目の検索には、翅脈と刺毛の生え方が重要です。翅脈と刺毛がキチンと写っていれば、科の検索は何とかなることが多いのですが、翅を畳んで留まる虫の場合は、幾ら写真が鮮明でも翅脈が良く見えないことが多く、科の検索は直ぐに行き詰まってしまいます。
 今日紹介する虫も、触角が長い(8節を越える)ので糸角亜目(蚊の仲間)であることはハッキリしていますが、翅を畳んで留まるので、科の検索は不可能です。こう言うときは、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」を頭から辿って行くことにしています。かなり時間はかかりますが、多くの場合、「コレだ!!」と言うのが見つかります。
 この虫も、「一寸のハエにも五分の大和魂」を辿った結果、キノコバエ科のシワバネキノコバエに酷似していることが分かりました。しかし、若干不明瞭な点があったので、御伺いを立ててみました。すると、何と九大名誉教授の三枝先生から、たちどころに御回答を賜りました。

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シワバネキノコバエ(A. akasakana)?
名前はハエでも蚊の仲間、見た感じは確かに蚊に近い
七丁目の家庭菜園で撮影(以下4枚目まで同一個体)
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/10/02)

 三枝先生(私が先生と言うのもおかしいのですが・・・)は、北隆館の「新訂 原色昆虫大図鑑第3巻」の該当部分を執筆された方です。先生のお話では、このキノコバエは、キノコバエ科のSciophilinae(亜科名、和名なし)に属するAllactoneura(シワバネキノコバエ属)の1種で間違いないそうです。しかし、これがシワバネキノコバエか否かについては、若干の問題があります。また、シワバネキノコバエの学名は、図鑑にあるものではなく、Allactoneura akasakanaが正しいとのことです。
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触角が8節以上あるのは蚊の仲間
幼虫は腐敗した植物質を餌にする
(2008/10/02)

 何が問題なのかと言うと、日本でハッキリと記録されているシワバネキノコバエ属はこのシワバネキノコバエのみですが、台湾には酷似するA. formosanaが居り、これが日本まで長距離移動している可能性が高いのです。しかも、このA. formosanaの記載は雌に基づいており、その雄と思われる個体には4つの型があって、日本のシワバネキノコバエ(A. akasakana)との関係はキチンと研究されていません。従って、日本産のシワバネキノコバエ属は、雄の交尾器をシワバネキノコバエ(A. akasakana)の記載と比較して一致すればシワバネキノコバエであると言えますが、それ以外の場合は良く研究されていない台湾のシワバネキノコバエ属かも知れず、或いはまた、新種の可能性もある訳です。
 写真では交尾器は比較出来ません。ここでは「シワバネキノコバエ(Allactoneura akasakana)?」とする以外に為す術が無い様です。
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真っ正面から見ると変な顔をしている
(2008/10/02)

 ところで、読者諸氏の中には、最初の方で「糸角亜目(蚊の仲間)であることはハッキリしています」と書いておきながら、キノコバエと言う名前に「ハエ」の付く虫だったことに疑問を感じられている方が居られるかも知れません。キノコバエは、名前に「ハエ」が付きますが、本当は蚊の仲間なのです。
 この様な紛らわしい名称は双翅目の中には沢山あります。○○キノコバエばかりでなく、タマバエ、カバエ、ケバエ、チョウバエも蚊の仲間で、また、ブユ(ブヨ)やヌカカも形はハエに似ていますが蚊の仲間です。
 アブとハエも混乱しています。オドリバエ、アシナガバエ等は「ハエ」と付いてもアブの仲間ですし、ハナアブ、ヒラタアブ(ハナアブ科です)、アタマアブ等は「アブ」の名があってもハエの仲間です。保育社の原色日本昆虫図鑑(下)では、これらの名称を分かり易い様に変更したのですが、普及しませんでした。
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斜めから見た図(2008/10/02)

 それでは、蚊、ハエ、アブは何処が違うのか、と言うことになると思いますので、その違いを一寸書いておきましょう。
 広義の蚊とは糸角亜目(長角亜目)に属す昆虫の総称で、触角が通常8節以上あります。これだけで決定的な決め手となります。体が細い、或いは、脚が長いこと等は、分類学では一切考慮されません。
 ハエとアブは短角亜目に属し、触角は基本的に3節です(例外的に第3節が幾つかに分節する場合があります)。ハエと総称される昆虫の蛹は環状の部分から成っており、羽化するときにはこの輪に沿って蛹が横に割れます。蛹の縫い目が環状になっているので、環縫短角群(環縫群)と名付けられています。このグループは、蛹になるときに脱皮せず、表皮が固まって俵の様な囲蛹と呼ばれるものになり、その中で蛹化します。
 アブと呼ばれる虫の場合は、他の完全変態する普通の昆虫と同じく、羽化の際に蛹の背中が縦に割れます。蛹の縫い目が真っ直ぐになっているので、分類学では、直縫短角群(直縫群)と呼ばれています。この連中の蛹は、実物はまだ見たことが無いのですが、普通の昆虫の蛹の形をしています。
 お解り頂けたでしょうか?
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「3丁目緑地」で撮ったキノコバエ.毛の生え方は異なるが
多分上と同じ種類(2008/11/13)

 最初の4枚の写真は七丁目の家庭菜園で撮ったもので、全て同一個体の写真です。此処まで書いたところで、これらとは別に先日「三丁目緑地」で撮った同じ種類と思われるキノコバエの写真を調整しました。すると、上の4枚の写真とは異なり、かなり体に毛が生えています。別種かも知れません。そこでまた、「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立てることと相成りました。何しろ、この属は日本ではまだ1種しか記録されていないのです。
 暫くして、また、三枝先生から御回答を賜りました。やはりこの仲間の種の識別には雄の交尾器を見る以外に確実な方法はないとのお話です。双翅目の毛も、鱗翅目(蝶、蛾)の鱗粉の様に脱落することが多く、毛の有無は基本的な判断材料にはなら無い様です。別種の可能性も否定はできませんが、そうであればどちらかが未記載種と言うことになります。恐らくは、同一種で毛の脱落の程度が異なるだけなのでしょう
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横から見ると胸部の背に沢山毛が生えているのが分かる
(2008/11/13)

 一昨日、昨日と連続で、久しぶりに七丁目の家庭菜園に行って来ました。隣との境に菊の花が沢山咲いていて、これに色々なアブやハエがやって来ているのです。かなりの多くの種類を撮りました。微小なハエが多いのですが、中々綺麗なものもあります。種の判定にかなり時間が掛かると思いますが、今後少しずつ紹介して行きたいと思います。

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2008年11月 3日 (月)

ヒラタヤドリバエ亜科の1種(Euthera tuckeri

 今日は一寸珍しいかも知れない虫を紹介します。ヤドリバエ科ヒラタヤドリバエ(ヒラタハナバエ)亜科のEuthera tuckeriです。和名はまだありません。
 普通、ヤドリバエ科の種の検索はごく一部の専門家以外には無理なのですが、翅に特徴的な模様があるのでこのハエであると判断しました。九州大学の目録を見ると、Euthera属にはこのtuckeri1種しかありませんので、まず間違いないでしょう。体長は、6mm弱です。

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Euthera tuckeri.ヤドリバエ科ヒラタヤドリバエ亜科に属す
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/12)

 ミバエ科やヒロクチバエ科には模様のある翅を持つ種類が沢山います。ヤドリバエ科には、色の付いた翅を持つものはかなり居るようですが(以前紹介したアシナガヤドリバエの1種(Phyllomya sp.も黒っぽい翅をしています)、この様なハッキリした模様を持つのは珍しいと思います。
 この白黒の翅は結構目立ちます。遠くから見ても普通のハエではないことは直ぐに分かりました。
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横から見ると上胸弁と思われる構造が目立つ
触角が長く、眼は宇宙人?の様
(2008/09/12)

 このEuthera tuckeriは、他にも普通のヤドリバエと違ったところがあります。例えば、翅の付根近く、小楯板の左右に真っ黒な三角形の突起があります。この突起、板状をしており、胸弁(覆弁、鱗弁)と基部で繋がっているので、所謂上胸弁(前胸弁、端覆弁)と呼ばれる構造だと思います。どんな役目があるのか知りませんが、ジェット機やスポーツカーに付いている安定翼?の様な感じです。
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真横から見たEuthera tuckeri.腹部に顕著な剛毛を欠く
(2008/09/12)

 また、眼も、背側から見るとそれ程でもないですが、側面から見ると変な形をしています。丸くなく細型で、漫画に出て来る「宇宙人の目」の様な感じです。
 触角も、ヤドリハエとしてはかなり長い触角を持っています。特に第3節が長く、第1節と第2節を合わせた分よりも長く見えます。
 なお、ヤドリバエと言うと以前紹介したヨコジマオオハリバエの様な長い剛毛を持つハエを想像しますが、ヒラタヤドリバエ亜科のハエの腹部には顕著な剛毛はありません。
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Euthera tuckeriの顔.触角の下に正中線に沿った黒い筋がある
(2008/09/12)

 撮影したのは、四丁目の「三ツ池緑地」です。写真でお分かりの通り、イネ科の雑草(多分メヒシバ)の先っぽに下向きに留まってしました。こう言う柔らかい雑草の穂先に留まった虫と言うのは、撮り難いものです。等倍接写をする程度に近づくと、どうしても草の根元にある程度の力が加わり、草が動いて逃げられてしまうことが多いのです。しかし、このハエ、余り逃げる気が無かったらしく、温和しくカメラに収まりました。
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斜め横から見た図.体が少し明るくなる様に現像してある
(2008/09/12)

 ヒラタヤドリバエ亜科のハエは、カメムシ類に内部寄生します。ノースダコタ州立大学のホームページ内にある「Diptera Parasitoid Records(双翅目捕食寄生目録)」を見ると、このEuthera tuckeriの宿主として、Acrosternum gramineum(この属は日本には記録はないが、アオカメムシの仲間)、Dolycoris indicusブチヒゲカメムシの仲間)、Eysarcoris ventralis(シラホシカメムシ)、Piezodorus hybneri(イチモンジカメムシ)の4種が挙げられています。
 シラホシカメムシは体長6mm前後のかなり小さなカメムシです。この写真のヤドリバエ(Euthera tuckeri)の体長は約6mmですから、宿主はもう少し大きい筈です。恐らく、シラホシカメムシに寄生した場合はもっと小型にしかならないのだと思います。
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オマケにもう1枚(2008/09/12)

 Internetで検索してみると、このヤドリバエの写真は余り見つかりませんでした。そこで、同じ様な写真ですが、少し大目に貼り付けておきました。

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2008年9月19日 (金)

アオメアブ

 七丁目の家庭菜園(世田谷区第2ファミリー農園)には、これまでに紹介した大害虫のウリハムシホソヘリカメムシの他にも、様々な農業上の害虫がかなりの密度で棲息しています。しかし、その割に少ないと思われるのが、これらの害虫の数を制限するはずの捕食者です。
 クモ類はかなり居ますが、多くは地面を徘徊する種類で、葉っぱの上に上がってくる種類は少ない様です。カマキリは1,2度見かけたかも知れませんが、記憶が定かでありません。また、トンボ類は居ますが、空中の小昆虫しか補食しませんし、その数は、この様な開けた場所としては、かなり少ないと思います。
 そんな中で、今日紹介するアオメアブはこの家庭菜園で特に目立った強力な捕食者です。しかし、その数は余り多くはありませんでした。

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アオメアブ.シオヤアブと並んで大型のムシヒキアブ
胴体は黄褐色、腿節は黒く、脛節は赤い
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/08/20)

 「青目虻」と書くと、何故かアブ科に属すウシアブやメクラアブの様な吸血性のアブと誤解しそうですが、写真を見てお分かりの通り、ムシヒキアブの仲間です。大きさは、以前ムシヒキアブ科最大級として紹介したシオヤアブと殆ど同じです。北隆館の圖鑑によれば、シオヤアブは23~30mm、アオメアブは20~29mmとなっていますので、シオヤアブより僅かに小さいと言う程度です。
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翅が胴体より長いので交尾器が見えない
(2008/08/20)

 実を言うと、成城でアオメアブを見るのは今回が初めてです。これまで、この辺りにはシオヤアブは居ても、アオメアブは棲息しないものだと思っていました。しかし、この家庭菜園では反対に、アオメアブしか居らず、シオヤアブは全く見ませんでした。どうも、シオヤアブは林に近い草原や静閑な住宅地の様な樹木の多い場所を好み、一方、アオメアブは広い草原や畑に代表される開けた場所を好む様です。
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かなり弱っているので掴まり方が何となく頼りない
(2008/08/20)

 また、行動面でも違いが認められます。シオヤアブは地面や水平に近い草の葉の上にもよく留まりますが、アオメアブは垂直或いは傾斜のある細い棒状のもの(木の枝、草の茎、畑の支柱など)以外に留まることは少ない様です。
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正面から見たアオメアブ.弱っているので
右中脚が変な方を向いている
(2008/08/20)

 「青目」ですから、眼は青い(緑色)はずですが、光線の具合によっては赤くも見えます。これは、以前紹介した”ニセ”アシナガキンバエマダラホソアシナガバエ等でも同じです。
 特にこのアオメアブは、ストロボを焚くと眼が真っ赤になってしまう様です。もうかなり夕方に近く、ストロボを焚かずには撮り難い状況でしたが、この次、アオメアブに遭ったら、自然光で撮ってみようと思います。
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アオメアブの顔写真.光の加減で眼の上半分は赤く下半分は緑色
複眼の間、触角の上に妙な構造があり、そこに単眼らしきものが
3個見える(画像をクリックして拡大して見て下さい)
(2008/08/20)

 実は、この写真のアブ君、炎天下の菜園に敷設されていた鳥避けの網の中に閉じこめられていて、既にフラフラになっていたのです。それを出してやったのですが、飛ぶことは出来ても、急に落下して身動きしなくなったり、かなり危うい状態でした。終わりの2枚の写真はトマトの果実に留まって居るのですが、普通はこんな所に留まることは、まずないと思います。
 一休みした後で、また獲物を捕らえて体力を回復するだけの力が残っていたのか、かなり疑問です。その後のアブ君の運命を思い、少し憂鬱な気分で菜園を後にしました。

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2008年9月 2日 (火)

シロズヒメムシヒキ

 今日はこの辺り(東京都世田谷区西部)にいるムシヒキアブで、最も小型のシロズヒメムシヒキを紹介します。先日紹介したサキグロムシヒキシオヤアブより1~2回り小さいですが、このシロズヒメムシヒキはサキグロムシヒキよりもずっと小さいムシヒキです。

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シロズヒメムシヒキ.体長2cmに満たない
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/07/20)

 写真では、出来るだけ虫体を大きく表示する様にしているので、中々本当の大きさが分かりません。北隆館の圖鑑に拠れば、シオヤアブの体長は23~30mm、サキグロでは20~26mm、シロズヒメは14~20mmとなっています。
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腹部は白く先端が真っ黒で一見サキグロムシヒキに似るが
ずっと小型(2008/07/20)

 腹部が白く粉を吹いており、また、その先端が真っ黒で、写真でみるとサキグロムシヒキとよく似ています。しかし、実際は全然大きさが違うので、印象は全く異なります。
 サキグロはシオヤアブに似て力強い印象を受けますが、シロズヒメは「ヒメ」と付く位で、小さく些か頼りない感じがします。
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正面から見ると、全体的に華奢で余り力強くない(2008/07/20)

 このムシヒキアブは我が家の庭にも屡々やって来ます。既にもう1つのWeblogで紹介してありますが、その時は、専ら撮影している私に集るヒトスジシマカを捕まえようとしていました。
 写真のシロズヒメは「手ぶら」ですが、蚊やそれに近い大きさの虫を抱えているのをよく見かけます。体が小さいので、捕まえる虫も体に比例して小さいのでしょう。
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しかし、斜め前から見ると結構強そう(2008/07/20)

 撮影場所は、以前紹介したヨツスジトラカミキリと同じく、六丁目にある鬱蒼と木の茂った御屋敷の垣根です。このシロズヒメは何処にでも居る虫ですが、この御屋敷の垣根には色々な虫が居る様です。
 古い御屋敷には昔からの植物が植わっていてそれを食べる昔からの虫が棲み着いており、また、それを捕食する昔からの虫が居るものと思われます。古い御屋敷を壊して更地にすることは、思っている以上の環境破壊なのかも知れません。

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2008年8月30日 (土)

ヨコジマオオハリバエ(その2)

 今日はヤドリバエの1種、ヨコジマオオハリバエを紹介します。ヨコジマオオハリバエは既に掲載済みなのですが、その時は、露出不足を無理に増感し、また、近づけなくて少し遠くから撮ったものをトリミングで何とか誤魔化した為、写真が余り良くありません。今回は目の前で撮りましたから、迫力が一寸違います。
 惜しむらくは、些か古い個体で翅が傷んでいます。しかし、ヨコジマオオハリバエにこれだけ近づける機会は余りないと思いますので、何卒御容赦下さい。

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ヨコジマオオハリバエ.体長は約2cmで非常に大きい
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/07/10)

 ヨコジマオオハリバエは体長が2cm近くあり、日本のヤドリバエ科の中では最大級の大きさです。しかも、長さだけでなく幅があります。飛ぶときは、大型のハナアブの様にかなり大きな羽音を立てます。
 ヤドリバエ科のハエには、長い剛毛が沢山ありますが、このヨコジマオオハリバエは、体が大きいせいもあり、特に剛毛が目立ちます。触ったら刺さるのではないかと思えるほど固そうに見えます。「ハリバエ」は、多分「針蠅」なのでしょう。
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ヤマアラシの棘の様な剛毛が素晴らしい(2008/07/10)

 ヤドリバエ科のハエは基本的に捕食寄生性で、多くは鱗翅目(チョウ、ガ)や鞘翅目(甲虫)その他に内部寄生します。しかし、色々調べても、このヨコジマオオハリバエが何に寄生するのか分かりませんでした。これだけ大きなヤドリバエですから、宿主も相当に大型であることは間違い無いでしょう。スズメガの幼虫にでも寄生するのでしょうか。
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翅脈はクロバエ科やニクバエ科とよく似ている(2008/07/10)

 ヤドリバエ科はクロバエ科(オオクロバエ、キンバエ等の「汚いハエ」やツマグロキンバエなど)、ニクバエ科(卵胎生の「汚いハエ」)に近縁で、体の形ばかりでなく、翅脈も互いに非常によく似ています。腐肉や糞便で育つのと、内部寄生では随分違う様に思えるかも知れませんが、消化液を体外に出して溶けたものを吸収すると言う点では同じですから、摂食に関しては大した違いではないのです。
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小楯板の下に後小楯板が見える.翅の付け根にある白いものは胸弁(2008/07/10)

 ヤドリバエ科がクロバエ科やニクバエ科と形態的に大きく異なる点は、小楯板(胸の後にある略三角形の部分)の下にある後小楯板が非常に大きいことです。小楯板を超えて突出することもあります。しかし、これは中々普通に撮った写真では確認できません。上の写真は、その後小楯板が分かる様に後側から撮ってあります。小楯板から長い剛毛が2対後方に出ていますが、その下に一寸だけベロの様に見えているのが後小楯板です。
 なお、後小楯板が大きいのは、ヤドリバエ科だけでなく、近縁のヒラタヤドリバエ科、アシナガヤドリバエ科でも同じです。
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ヨコジマオオハリバエの頭胸部.口の辺りが変(2008/07/10)

 ヤドリバエ類の顔を見ると、触角の付け根より下側の部分が妙な具合になっています。顔の部分だけを下に示しました。口の部分が外れてしまった様な格好になっています。口は実際はその下側にあるのですが、一体この部分はどうなっているのでしょうか。双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」で問い合わせてみましたが、残念ながら、未だに応答がありません。
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ヨコジマオオハリバエの顔写真.口の部分が外れた様な感じ(2008/07/10)

 なお、撮影場所は「三ツ池緑地」です。以前掲載した写真は三丁目の崖下にあるヤブで撮りましたが、先日「三丁目緑地」でもこのヨコジマオオハリバエを見かけました。まだ、国分寺崖線にはかなり居る様です。
 これで7月に「三ツ池緑地」で撮影した虫は全部掲載し終わりました。今後は、七丁目の家庭菜園で撮った虫と、家の外では撮る気にならない我が家の庭に居る「普通種」を紹介することになります。

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2008年8月14日 (木)

ツヤヒラタアブの1種

 今日はまたヒラタアブ類の登場です。しかし、ツヤヒラタアブ類は初めてです。全体的に飴色~黒色をした小さなヒラタアブで、留まるときには必ず翅を閉じて留まります。開いたまま留まるのは見たことがありません。
 体長は7.0mm、ツヤヒラタアブとしては中程度の大きさの様です。昨年、我が家で撮影したツヤヒラタアブは体長約5.5mmでしたから、それと較べるとかなり大きいと言えます。

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ツヤヒラタアブの1種.必ず翅を閉じて留まる
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/07/10)

 撮影場所は「三ツ池緑地」です。昨年の晩春には我が家で何回も見かけましたが、普通、この辺りでは余り多い種類ではありません。
 我が家で撮ったツヤヒラタアブは体に毛が少なく、名前の通りに全身ツヤツヤしていました。しかし、このツヤヒラタアブの胸部には短毛が密生しており、余りツヤツヤしていません。
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身繕いをするツヤヒラタアブの1種
脚は飴色をしている(2008/07/10)

 北隆館の「新訂 原色昆虫大圖鑑第3巻」に拠ると、ツヤヒラタアブの1種であるホソツヤヒラタアブの胸背には淡色の短毛があり、触角第3節の下面は淡色、とあるので写真のアブはホソツヤヒラタアブかも知れません。
 しかし、ツヤヒラタアブには他にもよく似た仲間が何種かあり、写真から種の判別をするのは少し無理な様です。ここでは「ツヤヒラタアブの1種」としておきます。
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正面から見たツヤヒラタアブの1種
なんだかノッペラボーの様な変な顔
胸部に短毛が密生している(2008/07/10)

 これでこのWeblogで紹介したヒラタアブ類はホソヒラタアブキタヒメヒラタアブホソヒメヒラタアブナミホシヒラタアブマガイヒラタアブキアシマメヒラタアブの6種、これに本種を加え、全部で7種になりました。これらの他にも、まだこの辺りにはヒラタアブ類が何種か棲息しています。ヒラタアブは好きな虫なので、機会があれば出来るだけ紹介したいと思っています。

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2008年8月 8日 (金)

キアシマメヒラタアブ

 先日、ホソヒメヒラタアブと言う小さなヒラタアブを掲載しましたが、今日紹介するのはもっと小さいキアシマメヒラタアブです。「マメ」と付くだけあって体長は約4.5mm、体が黒っぽいので一見コハナバチの様にも見えます。尤も、虫に余り興味のない人の目には小さ過ぎて何も写らないでしょう。

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キアシマメヒラタアブの雌
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/07/10)

 撮影場所は「三ツ池緑地」ですが、この辺りでは何処にでも居るヒラタアブで、我が家の庭でも昨年撮影しています。しかし、個体数は余り多くは無い様です。
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腹部を屈伸するキアシマメヒラタアブの雄(2008/07/05)

 マメヒラタアブ属(Paragus)には、似た様な黒くて小さいアブが何種かいます。本来は交尾器を見ないと種の判別は難しいそうですが、この辺りに居るのはキアシマメだけの様なので、キアシマメヒラタアブとして置きました。かなり、いい加減な判断基準です。
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正面から見たキアシマメヒラタアブの雌(2008/07/10)

 5枚の写真の内、花を背景にしているのは雌、葉っぱの先端に留まっているのは雄です。他のハナアブ科のアブと同じく、雄では左右の複眼が接しています。
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雄の複眼は互いに接する(2008/07/05)

 このヒラタアブは、花に留まって花粉を舐めているときなど、周期的にお腹を曲げたり伸ばしたりしています。この様な行動はハナアブ類では屡々見られます。始めて見たときは、何をしているのか不思議でしたが、これは、腹部を伸縮することで気門からの空気の出入りを盛んにしているのだと思います。人間も呼吸に伴い胸(胸式呼吸)やお腹(腹式呼吸)が出たり引っ込んだりしますが、昆虫の場合は気管系を動かす筋肉がありませんので、空気の出し入れを盛んにするには、腹部を屈伸するしか方法がないのでしょう。
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身繕いをするキアシマメヒラタアブの雄(2008/07/05)

 先日、「三ツ池緑地」に行ってみたら、下草が全て刈られていました。まだ「三ツ池緑地」で撮った写真は残っていますが、あと2ヶ月位は此処での虫探しは無理な様です。

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2008年8月 5日 (火)

サキグロムシヒキ

 今日紹介するサキグロムシヒキは、先日紹介したシオヤアブと同じムシヒキアブ科に属します。シオヤアブよりは小さいですが、ムシヒキアブとしてはやや大型です。
 腹部は太く、全体的に白っぽいのですが、先端だけは真っ黒です。脚も真っ黒で、長くて丈夫そうな剛毛が目立ちます。脚には茶色に見える部分がありますが、これは茶色の毛が生えているからで、脚自体の色は黒です。

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サキグロムシヒキ.ムシヒキアブとしてはやや大型
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(2008/07/05)

 撮影場所は「三ツ池緑地」です。この辺りでは極く普通の種類で、我が家の庭にも現れることがあります。実は、昨年も「三丁目緑地」で撮ったのですが、写真が気に入らなくて没にしてしまいました。
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腹部の先端が真っ黒.脚も真っ黒で所々に褐色の毛が生えている
脚の剛毛が目立つ(2008/07/05)

 シオヤアブと同じく、夏にしか現れない種類の様です。春に見かけるムシヒキアブは マガリケムシヒキで、これは晩春にはもう居なくなります。
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サキグロムシヒキの顔.シオヤアブ程は威厳がない(2008/07/05)

 ムシヒキアブ類は、大きさから想像されるよりも、ずっと強力な捕食者です。自分に自信があるのか?、余り人を恐れません。撮影する方にとっては、実に楽な被写体です。
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オマケにもう1枚.こんなに脚を拡げて留まることは珍しい
(2008/07/05)

 この辺りには、夏になると出現するムシヒキアブが少なくとももう一種類居ます。近々紹介する予定です。

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