カテゴリー「昆虫(毛虫、芋虫)」の21件の記事

2011年12月22日 (木)

タイワンキシタアツバ(Hypena trigonalis)?の幼虫

 先月の末に帰国しました。その後約1週間は雨模様の日が多く、写真を撮りに出かける様な状態ではありませんでしたが、今月4日の日曜日になって漸く良い天気になりました。買い物ついでに写真を撮って来たのですが、色々と雑用などがあって、此方のWeblogは、今日が帰国第1回目の更新になってしまいました。

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カラムシの葉裏を歩くタイワンキシタアツバ?の幼虫
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 「三丁目緑地」の一番下にある人工的な公園(道路の反対側はオーケー・ストア)の縁に、昔からイラクサ科の大きな雑草が沢山生えています。何時も芋虫でも居ないか見ているのですが、これまで何らかの食痕すら見たことがありませんでした。
 ところが、・・・今度は居ました。
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アツバ亜科の幼虫は一般に第3腹節の腹脚を欠く
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 体長は40mm程度、多分終齢幼虫でしょう。この写真の様な、黄色~緑の体色に黒い斑点と云う蛾の幼虫は色々な科に居ます。一々調べるのは面倒ですから、「イラクサ科 毛虫」でGoogleの画像検索をしてみると、一発でよく似た毛虫が出て来ました。クロキシタアツバ(Hypena amica)の幼虫でした。
 しかし、同属のタイワンキシタアツバ(Hypena trigonalis)も非常によく似た模様をしており、食草も同じです。保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」に拠れば、「両者の幼虫は識別することが出来ない」と書かれています(なお、同図鑑では、これらのアツバ類は何れもDichromia属となっています。昭和40年の出版ですから、その程度の変更は驚くに当たりません)。
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急いで移動する時は尺取虫状になる
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 また、何も形容の付かないキシタアツバ(H. claripennis)の幼虫もかなり似ています。食草もこれまた同じイラクサ科です。キシタアツバとクロキシタアツバ(タイワンキシタアツバ)の幼虫の違いは、同図鑑に拠れば、前者は地色が橙褐色で、体表には24倍の拡大で認め得る棘状突起を密布するのに対し、後者では地色が黄緑色を主とし、体表には150倍で識別出来る微突起を密布する、とのことです(頭部の刺毛配列の違い(角度)についても書いてありましたが、写真からの判断は一寸難しい様です)。
 写真の幼虫は地色は黄緑色を主としており、また、下2枚の写真の様に、かなり拡大しても、表面がザラザラしているのは分かっても、微突起は認められません。キシタアツバの可能性は無い様です。
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タイワンキシタアツバ?幼虫の横顔
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 タイワンキシタアツバの成虫は、以前掲載したことがあります。その後も成虫を何回か見ていますので、今日の幼虫は多分タイワンキシタアツバの幼虫だと思います。しかし、成虫の方もクロキシタアツバとよく似ていて、両者を混同した可能性もあります。其処で、表題には「?」マークを付けて置きました。
 実は、掲載が遅れた理由の一つに、もう一度行って幼虫を拉致し、飼育して羽化させ、種を決定しようと思ったことがあります。残念ながら、幾ら探しても、もう幼虫は見つかりませんでした。或いは、何処かで営繭してしまったのかも知れません。
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タイワンキシタアツバ?幼虫の顔写真
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 これらのキシタアツバ類が属すHypena属は、ヤガ科(Noctuidae)アツバ亜科(Hypeninae)に属します。一般にこの亜科では、腹脚は第3節が退化して3対しかありません。3対あるので普通の毛虫・芋虫の動きも出来る様ですが、大きく動く時は、3番目の写真の様に尺取虫型になります。
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オマケの1枚.尺取虫状の姿を撮ろうとしてタイミングを外した
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 私は、植物は科が分かれば普通は種まで調べたりはしないのですが、今回は調べる必要があるでしょう。植物では、多くの場合、科さえ分かれば検索は簡単です(どんな花が咲くのか、以前観察しています)。カラムシでした。葉には目立った毛がありませんからナンバンカラムシではなく、また、葉裏は白っぽいので、アオカラムシでもありません。

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2011年1月20日 (木)

マツカレハの幼虫(Dendrolimus spectabilis)(越冬中)

 先日、ケヤキの樹皮下に居た「マドチャタテ科の1種」を掲載しましたが、今日はその直ぐ近くに生えているアカマツの樹皮下で越冬をしてたマツカレハ(Dendrolimus spectabilis)の幼虫を紹介します。

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アカマツの樹皮下で越冬中のマツカレハの中齢幼虫
体長は約17mmで4~5齢らしい
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 体長は約17mmで、齢は分かりません。マツカレハの幼虫は、終齢では60mm(北隆館の「日本幼虫圖鑑」)から70mm(保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」)になるそうですから、それよりはかなり若い齢期にあるとものと思われます。
 (財)農林水産技術情報協会HPの一部である「昆虫科学館」の中に「庭の刺す毛虫・刺さない毛虫」と云う項目があり、その中に「マツカレハ」のページがあります。これに拠ると、「10月下旬までに体長20mm内外の5齢に育ち、幹から下りて根際や落ち葉の下などで越冬します。(中略)翌年の4月ころから幼虫は再び樹に登り、 針葉を食べ続け、さらに3回脱皮して8齢幼虫となり、6~7月ころに葉を綴って灰褐色のマユを作ってサナギになります」 とのことです。
 一方、日本応用動物昆虫学会大会講演要旨((08), 13, 1964-04-02)「マツカレハ越冬時幼虫の頭巾について」には、「マツカレハ幼虫(マツケムシ)は、東京周辺においては、4齢および5齢で越冬する個体が多いが、地域によっては3齢や6齢で越冬する場合もあることが知られている」と書かれています。
 体長約17mmですから5齢かも知れませんが、4齢の可能性もあり、ここでは単に中齢幼虫としておきます。
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横から見た図.胸部第2~3節、腹節の背面には1対の
黒色毛の束があり、第8節では非常に顕著
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 マツカレハの幼虫は、同属近縁種のツガカレハの幼虫によく似ており、両種共に色の変化に富んでいます。後者は、名前は「ツガ」カレハでも、マツカレハと同じくアカマツやクロマツも食害します。ですから、アカマツの樹皮下に居たと言うだけでは、マツカレハの幼虫と断定する訳には行きません。
 何方も上述の2つの図鑑に載っており、詳しい記載があります。しかし、図鑑にあるのは終齢幼虫についての記載です。写真の様な中齢幼虫にも適用出来るか否かは保証の限りではありません。多くの点では一致しないと考える方が無難でしょう。
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マツカレハ幼虫の顔.中央最下部にある褐色の部分が上唇
上唇下側の凹み(刻み)は極く浅い
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 しかし、上唇の凹み(刻み)が極く浅いこと(上の写真)、東京都本土部昆虫目録を見るとツガカレハは区内では余り記録のないこと(丘陵地帯に多い)、昆虫写真家海野和男氏の「デジタル昆虫記」で今日の写真とソックリな幼虫を「マツカレハの幼虫」としていること等から、ここでは「マツカレハの幼虫」としておきました。
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背面から見た頭部と胸部.胸部第2~3節には
横や斜めを向いた毛が生えている
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 マツカレハはカレハガ科(Lasiocampidae)カレハガ亜科(Lasiocampinae)に属しますが、この亜科の幼虫には毒針毛を持つ種類がかなりあります。マツカレハ、ツガカレハの他にもタケカレハ、リンゴカレハ、クヌギカレハ等が毒針毛を持っています。
 保育社の図鑑に拠ると、マツカレハの幼虫は「中・後胸節の背面には藍黒色の叢毛帯があり、針状の毒毛を密生している」とのことです(中・後胸とは胸部第2第3節のこと)。また、北隆館の図鑑には「中胸及び後胸には毒毛を叢生するが、常には襞内に隠されている」とあります。
 下の写真には束になった黒色毛が中・後胸節に見えますが、これのことではありません。この束になった黒色毛は腹部にもあり、特に腹部第8節で非常に顕著となります(2番目の写真:これはツガカレハの幼虫にもある)。毒針毛は、上の写真では襞の中に隠れて見えないのだと思います。
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斜め前から見た頭部と胸部.胸部2~3節の背面には
太い黒色毛の束が1対づつ存在する
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 どうも最近は、頭部等の細部ばかりが気になって、全体の雰囲気を一番よく示す斜めからの写真を撮り忘れることがあります。今回は斜めからの全体像も一応撮ったのですが、撮り方を間違えて、頭部胸部以外には焦点が合っていません(下)。本来ならば没にする写真ですが、1、2番目の写真だけでは全体像が掴みにくいので、敢えて恥を忍んで掲載することにしました。
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斜めから見たマツカレハの幼虫.腹部には焦点が合っていない
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 このマツカレハの幼虫が越冬していたアカマツは、樹皮が殆ど剥がされて居らず、ブワブワの樹皮が3~4cmも「積もって」います。マツカレハの幼虫以外にも、一寸この辺りでは珍しいと思われる虫を見つけました。これは近々紹介の予定です。
 このアカマツには、まだまだ柔らかい樹皮が残っています。この冬はこれを少しずつ剥がしながら、何が出て来るかを楽しもうと思っています。

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2010年12月 4日 (土)

ルリタテハの幼虫(Kaniska canace)(4齢と5齢)

 今日は、一寸時期遅れですが、ルリタテハ(Kaniska canace)の幼虫を紹介します。4齢と5齢(終齢)です。
 1年程前、「四丁目緑地」に追加部分が出来ました。ビール坂(注を参照)から上がって来て南へ走る一方通行の道から、直接国分寺崖線下の「四丁目緑地」に通じる、殆ど坂だけの幅の狭い緑地です。
 その緑地にホトトギス(タイワンホトトギスとの交雑種でしょう)が何個所か植えられています。ルリタテハの幼虫が居るのではないかと思い、10月の2日に一番下にある群落を調べてみたところ、大きな終齢幼虫が1頭だけ居ました(下の写真)。

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ホトトギスの茎の上でJ字形になったルリタテハの5齢(終齢)幼虫
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/02)

 始めは、葉の下で体を真っ直ぐにしていたのですが、一寸葉に触れた途端、上の様なルリタテハ幼虫お得意のJ(C、U)の字になってしまいました。
 真っ直ぐにならないか、暫く待っていたのですが、ヒトスジシマカの襲撃がスザマジク、数分で退散を強いられました。結果として、この個体が体を真っ直ぐにした写真はありません。
 その数日後、蛹が無いか探してみましたが、一寸見当たりませんでした。
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ルリタテハの4齢幼虫.3齢幼虫に似ているが大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/11)

 更に数日経って、坂の上の方にあるホトトギスの群落も調べてみたところ、やはりこちらにも居ました。4齢と5齢幼虫が10頭位、此方に1頭、彼方に1頭と言う具合に、かなり広い範囲に分散して目立たない様にしていました。
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体色の明るい4齢幼虫.棘の基部が黄褐色
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/11)

 以前、我が家のホトトギス(交雑種)に付いたルリタテハを卵から成虫まで飼育し、もう一方のWeblogで詳しく紹介したことがあります(「卵と初齢」、「2齢と3齢」、「4齢」、「終齢=5齢」、「前蛹、蛹と成虫」)。
 そんな訳で、同じものを此方に載せる気がしなかったのですが、一応別のWeblogですし、カテゴリーの「昆虫(毛虫、芋虫)」を参照される方が多いので、此方でも紹介することにしたのです。
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5齢(終齢)幼虫.体は黒と赤、棘の殆どは黄白色
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/11)

 ルリタテハの4齢幼虫は、写真を同じ大きさに拡大してしまうと、3齢幼虫と区別が付き難くなります。体の模様や棘の構造の変化は比較的少ないのですが、3齢の体長は1~2cmで、4齢では2~3cm位と、大きさにかなりの違いがあります。
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お食事中の5齢幼虫.驚かすと直ぐにJ字形になるので要注意
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/11)

 しかし、細かい点では、3齢と4齢で、体の構造にも多少の違いが認められます。棘の長さと体の太さを比較すると(成長に伴って太りますが)、3齢の方が比率が高い(体幅に対して長い)と言えます。また4齢の方が、1つの突起から出る棘の数が少し多い様です。
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ほぼ背側からみた同一個体.移動中
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/11)

 5齢(終齢)幼虫では、体長は45mm程度に増加します。また、色も4齢以下の黄と黒の2色から、赤、黒、黄白の3色に変わります。黒かった棘も、先端部を除いて大半が黄白色です(体色には個体差があります)。
 また、4齢以下ではビニール細工の様な感触であった棘も、5齢ではかなり固くなり、手の柔らかい部分が触れたりすると、結構傷みを感じます。
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5齢(終齢)幼虫の顔と棘
(写真クリックで拡大表示)
(2010/10/11)

 最後の写真では、棘の感じを少し「芸術的」に表現してみました。しかし、これは既にもう一方のWeblogでやったことですので1枚だけにしておきます。棘の美しさにを更に御覧になりたい方は、こちらをどうぞ。

[注]:「ビール坂」は成城の西北部、世田谷区成城4丁目と調布市入間町3丁目の境にある、国分寺崖線を下る緩やかな長い坂で、昔、この下にサッポロビール(株)のグランド(野球場:現在はパークシティー成城)があったので、そう呼ばれています。
 サッポロビールと旧国鉄の間には何らかの関係があったのか、国鉄スワローズ(現ヤクルト・スワローズ)の選手達(例えば、ピッチャーの金田正一)がよく練習に来ていました(昭和30年代前半?)。そんな訳で、昔から成城に住んでいる人は「ビール坂」の名前をよく知っています。

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2010年3月29日 (月)

キノコヨトウ(Cryphia obscura)の幼虫(若齢)

 今日は久しぶりに芋虫・毛虫の登場です。昨年の今頃に撮影した幼虫で、体長は約1cm、「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮上を這っていました。
 こんな小さな若齢幼虫など、どうせ種類など分からないだろうと思い、いい加減に撮影してその儘放置していました。ところが、今年も「四丁目緑地」や「七丁目緑地」のケヤキの樹皮上で何度か見かけたので、これはかなりの普通種で調べれば種類が分かるかも知れないと思い、群馬大学の青木繁信教授のHP「幼虫図鑑」で調べてみたところ、ヤガ科(Noctuidae)キノコヨトウ亜科(Bryophilinae)のキノコヨトウ(Cryphia obscura)の幼虫に酷似していることが分かりました。

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「四丁目緑地」のケヤキの樹皮上にいたキノコヨトウの幼虫
体長は約10mmでまだ若齢幼虫
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 手元にある保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」にも載っていました。体長は約20mmとのことですから、写真の幼虫は、まだ3齢か4齢の様です。また、この亜科の幼虫は地衣類を食すと書いてあります。どおりで大きな樹の樹皮上に居たはずです。
 この亜科には、神保宇嗣氏の「List-MJ 日本産蛾類総目録」に拠ると、3属17種が記録されており、Cryphia属にはその内の8種が属します。ヒョッとすると、キノコヨトウではなく、その近縁種かも知れません。
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頭部は黒く、頭楯前片と触角基部は灰白色
刺毛硬皮板は黒色、胸脚は淡褐色
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 東京都本土部昆虫目録を見ると、Cryphia属は4種記録されています。何も形容の付かない無印キノコヨトウは10報の文献で記録されているのに対し、他の3種は何れも山奥である東京都西多摩郡奥多摩町日原で得られた稀少種で、この辺り(東京都世田谷区西部)に居る可能性は零に等しいでしょう。無印キノコヨトウの可能性が大です。
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背楯(前胸硬皮板)は正中線と前縁を除いて黒色
肛上板にも黒斑がある
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 「原色日本蛾類幼虫図鑑」の解説には、「(前略)頭部黒色で光沢鈍く、頭楯前片及び触角基部灰白色.胴部地色は淡く緑色を帯びる暗灰黄色で黒斑が多い.背楯ほか硬皮板はいずれも黒色、背楯の正中線と前縁は細く灰白色.(中略)気門下線より上腹線にわたり暗色部が多く、腹面は淡色である.肛上板は暗斑を持つ.気門黒色.胸脚淡褐色(後略)」とあります。「背楯」は前胸(胸部第1節)の背側にある固い部分で、前胸硬皮板とも呼びます。また、解説中の硬皮板とは刺毛の基部にある固い部分のことで、刺毛硬皮板と呼ぶこともある様です。肛上板は第10腹節(お尻)の背側にある固い部分です。これも硬皮板の1種です。
 これら図鑑に書かれている特徴は、写真の幼虫と一致しています。キノコヨトウの幼虫として問題ないでしょう。
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オマケにもう一枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 キノコヨトウは幼虫で越冬し、保育社の蛾類幼虫図鑑に拠れば、5月上・中旬に終齢幼虫が見られ、発生(羽化)は年1化で、成虫は7~8月に得られるそうです。
 成虫は、保育社の蛾類図鑑を見ると、開張21~23mm、ヤガ科としてはかなり小型の蛾です。前翅はオリーブ色~褐色で、横に走る筋が数本あります。この蛾類図鑑には「少ない」と書いてありますが、この辺り(東京都世田谷区西部)でも幼虫を良く目にする位ですし、Web上の「みんなで作る日本産蛾類図鑑」にはかなり沢山の成虫写真が載っていますから、やはり極く普通種の様です。

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2010年1月22日 (金)

ヒカゲチョウの幼虫(越冬中:4齢?)

 これまでヤツデの葉裏で越冬している様々な虫を紹介して来ました。その多くはヨコバイ類でしたが、先日、ヤツデの葉裏としては一寸意外な虫を見付けました。
 ヒカゲチョウ(Lethe sicelis)の幼虫です。体長はまだ12~3mmなので、多分4齢幼虫でしょう。

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越冬中のヒカゲチョウの幼虫.体長12~3mmで多分4齢
体の前後に同じ様な角があり、何方が頭か分かり難い
前胸硬皮板の見える右側が頭
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 国分寺崖線下の三丁目にある空地で見付けました。この空地には昔から小型のタケ(種は調べていません)が沢山生えており、私が子供の頃は、そのタケに付くアブラムシを餌とするゴイシシジミが生息していました。しかし残念ながら、その姿はずっと以前に消えてしまいました。
 ヒカゲチョウの食草はササやタケ類です。このタケを食草にしていたのが、越冬をする為に構造的にもっと頑丈なヤツデの葉裏に移動したのでしょう。
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横から見たヒカゲチョウの幼虫.ピッタリと張り付いているので
胸脚も腹脚も全く見えない.頭は左側
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 葉裏にシッカリ糸を張って、それにしがみ付いていました。ジャノメチョウ類の幼虫には、頭と尾端の双方に角を持つ種類が多く、このヒカゲチョウも体の前後に同じ様な形の長さの角を持っています。
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前から見ても顔は見えない.体を保持する為に糸を張っている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 食事中ならば頭を持ち上げるので、頭の位置は直ぐに分かります。しかし、寝ている場合、肉眼では何方が頭かお尻か一寸区別が付きません。マクロレンズで覗いて漸く分かりました。
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次の日も同じ場所にいたが、少し体を動かした
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/15)

 肉眼的には黄緑色をした普通の芋虫です。しかし、拡大してみると、体中に細かい毛が生えており、体表も随分デコボコしています。まるでヤスリみたいです。
 なお、この写真の個体は黄緑色に黄白色の縦筋を持つだけですが、中には体側に黄色と茶色からなる斑を数個持つものも居るとのことです。
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頭部の拡大.頭部の構造は良く見えない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 最初に見付けた日には、何故か斜めからの写真を撮り忘れてしまいました。背側、横、正面の3方向からだけでは、全体の雰囲気がよく伝わりません。そこで次の日に、買い物ついでに寄ってみました。前日と全く同じ場所にいました。
 当然、斜めからの写真を撮ったのですが、家に帰って整理中に、焦点深度を深くして撮影した写真を誤操作で削除してしまいました。それで、下の様な深度不足の写真しかありません。本来は没にすべきところですが、まぁ、タマには御愛敬と云うことで御勘弁下さい。
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ヤツデの葉裏にしがみ付いている雰囲気が分かるであろう
頭部に焦点を合わせた写真なので尾部はボケている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/15)

 もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」は、現在ネタ不足のため殆ど休業状態に陥っています。しかし、此方の方は写真が溜まる一方、都内の住宅地でも探せば越冬中の虫は結構沢山居る様です。

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2008年11月 6日 (木)

ホシホウジャクの幼虫(5齢=終齢)

 ホシホウジャクの幼虫は一昨年に紹介しましたが、写真はたったの1枚で、しかも、体の一部が隠れた写真でした。そこで今日は、ホシホウジャク(Macroglossum pyrrhosticta)の終齢(5齢)幼虫の詳細を沢山の写真で紹介し直すことにします。
 一昨年撮影したのと同じく、6丁目のある空地の柵に絡んでいるヘクソカズラに居た個体です。もう2ヶ月も前のことですが、つい最近まで同じ場所に別の個体が居ましたから、そう時季遅れと言う訳でもありません。
 なお、ホシホウジャクはスズメガ科ホウジャク亜科に属します。成虫の方も、近くのサザンカの垣根で撮った写真を近日中に再掲載する予定です。

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ホシホウジャクの終齢幼虫.緑色型.良く太っており蛹化が近い
隠れていたのをこの場所に移動して貰ったので、些か緊張気味
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/02)

 幼虫の探し方は、先日「コエビガラスズメの幼虫」の所で書いたのと同じです。ヘクソカズラの絡んだ柵の下に新しい糞が落ちていれば、まずホシホウジャクの幼虫が居ます。
 先日紹介したホシヒメホウジャクもヘクソカズラを食草とし、この辺りにも少しは居るヒメクロホウジャクもヘクソカズラを食べることがあるそうですが、残念ながら、それらの幼虫は見たことがありません。ヒメクロホウジャクは兎も角、ホシヒメホウジャクの成虫はかなりの数居るので、幼虫を見付ける機会もあって良い筈ですが、未だに見ていないのは些か不可解です。
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少し時間が経って緊張が解れつつあるところ
(2008/09/02)

 写真の個体は、始めはヘクソカズラの蔓の中に頭を突っ込んで隠れていました。しかし、それでは写真が撮れないので、もう少し撮り易い所に移動して貰いました。最初の写真で、些か体を突っ張っているのは、そのせいです。
 ホシホウジャクの幼虫には、緑色型と褐色型があります。写真の幼虫は、見てお分かりの通り、緑色型です。ホシホウジャクの幼虫は、今までかなりの数見ていますが、全て緑色型で、褐色型はまだ見たことがありません。
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背側から見た図.頭の幅が小さい(2008/09/02)

 ホシホウジャクの幼虫は頭が非常に小さく、写真の様な老熟に近い終齢幼虫の場合、頭の幅は体の幅の1/4位しかありません。ホシヒメホウジャクの幼虫は、もう少し頭が大きい様です。
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真っ正面からみたホシホウジャクの終齢幼虫
頭が小さい(2008/09/02)

 背側から撮った頭部の写真(下)を見ると、頭頂に4本の縦筋があるのが分かります。ホシホウジャクの幼虫は頭が少し上向きになっており、本来ならばこの面は正面からでないと見え難い部分です。普通の鱗翅目の幼虫では、もう少し頭が下向きになっています。
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背側から見た頭部.4本の縦筋がある.両側にある粒々は単眼
(2008/09/02)

 下の写真は、少し緊張が解けて、頭を下に向けたところです。頭部の構造については、「セスジスズメの幼虫」或いは「ナミアゲハの幼虫」を参照して下さい。
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少し上側から見た頭部.頭部の構造は複雑
(2008/09/02)

 ホシホウジャク幼虫の尾角(下)は真っ直ぐで余り長くなく、やや太めで先細り、全体に棘(顆粒)があります。配色は一寸ややこしくなっています。基部寄り半分の背側は紫色を帯びており、先端寄り半分は全体黄色です。しかし、棘は、特に基部寄りで、黒っぽい色を帯びています。褐色型でも、やはり尾角の先端部は黄色で、基部寄りは紫を帯びるそうです。
 因みに、ホシヒメホウジャク幼虫の尾角は非常に長く、特に若齢幼虫では、体長の1/2位の長さがあります。
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ホシホウジャクの尾角.複雑な配色.写真上側に見える
橙色の構造は気門(2008/09/02)

 尾角の写真の上部に、少しボケていますが、楕円形をした橙色で両端が白い構造が写っています。これは第8複節の気門です。褐色型でも、この気門の色は変わりません。気門の色は幼虫の種類を見分けるのに重要な指標になります。
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真横から見た頭部と胸部.胸脚の色も尾角に劣らず複雑な配色
頭部に6個の単眼が見える(2008/09/02)

 幼虫の頭部、胸部を横から見てみました。胸脚も尾角に劣らず、ややこしい配色になっています。腿節の側面は黒く、先の方は上面(側面)が赤で反対側は黄色です。なお、複脚の拡大写真はありませんが、最初に示した全身の写真を良く見ると、基部の周囲は黒色で、先端部は赤く、その中間は黄色を帯びているのが分かります。
 この写真では、頭頂の下側(写真では前方)に6個の単眼があるのが良く見えます(写真をクリックして拡大してみて下さい)。単眼6個が全て良く見える写真は、何故か、中々撮れません。
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緊張が解れて歩き始めたホシホウジャクの終齢幼虫
(2008/09/02)

 最後の写真は、緊張が解けて、ヘクソカズラの茎を歩き始めたところです。
 この芋虫君には、しっかりモデルになって貰いました。数日後には、新しい糞が落ちていなかったところをみると、どうやら蛹化した様です(捕食者にやられた可能性もありますが・・・)。
 保育社の図鑑に拠れば、終齢幼虫は11月まで居ることもあるそうです。この芋虫君も、或いは、蛹化後に羽化して、今頃、その子孫がヘクソカズラの茂みの中に潜んでいるかも知れません。

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2008年10月22日 (水)

ヨモギエダシャクの幼虫(終齢)

 最近は芋虫・毛虫の検索で来訪される方が多い様です。そこで今日は、シャクガ科エダシャク亜科に属すヨモギエダシャク(本州以南亜種:Ascotis selenaria cretacea)の終齢幼虫を紹介します。
 シャクガの幼虫ですから、所謂シャクトリムシです。多くのシャクトリムシの体長は40mm程度ですが、このヨモギエダシャクの終齢幼虫は大きく、6cm近くもあります。

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斜め上から見たヨモギエダシャクの終齢幼虫.左が頭、以下同じ
緑色型だが実際は緑(所々青)を帯びた白色
頭から1/3位の所に一見棘状の暗色斑がある
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/10/02)

 居たのは七丁目の家庭菜園(第1ファミリー農園)です。写真を見てお分かりの通りシソの茎にしがみ付いていました。
 ヨモギエダシャクは、名前は「ヨモギ」ですが、先日のクサギカメムシ(終齢幼虫)と同じく、名前と無関係に実に広範な植物を食草とします。キク科、バラ科、マメ科、ミカン科、ツバキ科、セリ科、ナス科その他の草本、木本が食草として挙げられています。我が家の庭でも、毎年フジかハギの木に居るのを見かけます。
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真上から見たヨモギエダシャクの終齢幼虫.体に散在する黒点は
刺毛の基部にある疣起の影.体長は6cm弱
(2008/10/02)

 ヨモギエダシャクには緑色型、淡褐色型、暗褐色型があり、写真の個体は緑色型です。「緑色型」と言っても、淡緑色と言うべきか、殆ど白色に近い色をしており、頭部だけはやや黄色を帯びています。
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真横から見た図.第6腹節の後部にだけ腹脚がある
(2008/10/02)

 以前にも書きましたが、一般に鱗翅目(蝶、蛾)の幼虫は、胸部に3対の鉤状の胸脚、第3腹節から第6腹節に吸盤と微小な鉤爪からなる腹脚が4対、更にお尻のところ(第10腹節)に1対の尾脚を持ちます。
 シャクガ科幼虫では、第3腹節から第5腹節にある筈の3対の腹脚が退化して、第6腹節の腹脚と第10腹節の尾脚だけになっていることが多く、典型的なシャクトリムシの形になります。第4、第5腹節に腹脚をもつ種もありますが、著しく退化しており、殆ど役には立っていない様です。
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横から見た第2腹節.楕円形の輪は気門.大きな疣起は
黄~赤味を帯びる.背中にある黒斑の一部は少し盛り上がっている
(2008/10/02)

 ヨモギエダシャクの幼虫では、背から側面に散在する刺毛の基部に丸い隆起(疣起:ゆうき)があります。緑色型では、この疣起の多くは黄色をしています。第2腹節の背側にある刺毛(D1)基部にあるものが一番大きく、第8腹節(最後の気門がある節)のD1疣起がこれに次ぎます。第2腹節の疣起は少し赤味を帯びています。
 保育社の幼虫図鑑に拠れば、淡褐色型では第2腹節のD1疣起は橙赤色で周囲を黒色に囲まれ、暗褐色型では赤褐色になりやはり黒色に縁取られるそうです。
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上の部分を真上から見た図
(2008/10/02)

 色々なサイトを参照すると、この第2腹節の疣起の大きさにはかなり個体変異があり、写真の個体のはかなり小さい方に属す様です。個体によっては、大きな疣起の下が更に膨らんでいる場合もあります。
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ヨモギエダシャク終齢幼虫の頭部と胸部.頭は黄色味を帯びる
触角と胸脚は黄褐色.丸い紋は気門.胸部の気門は前胸
(第1胸節)のみ.頭頂の下側にある5個の丸い黒斑は単眼
その前方下側にもう1つある
(2008/10/02)

 この第2腹節のD1疣起の前方に、前に向かって細くなる暗色斑があります。この部分は少し周囲より盛り上がっており、肉眼で見たときは、もう夕方で暗くなってきたせいもありますが、何か角か大きな棘があるのかと思いました。
 他のサイトの写真を参照すると、この暗色斑にも相当な個体変異があります。中には、殆ど認められない場合もある様です。
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斜めから見たヨモギエダシャク終齢幼虫の頭部と胸部
(2008/10/02)

 例によって、シャクトリムシ君の顔写真を載せておきます。頭部の構造は、先日紹介したフタトガリコヤガの終齢幼虫と基本的に変わるところはありません。頭頂にブツブツ(顆粒)が散在している点も同じです。頭部の構造については「セスジスズメの幼虫(終齢)」で詳しく説明しましたので、そちらを御覧下されば幸いです。
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ヨモギエダシャク終齢幼虫の顔.頭頂に粒々が散在する
構造はフタトガリコヤガの幼虫と基本的に同じ
(2008/10/02)

 秋に見られるヨモギエダシャクの幼虫は、老熟すると土中に入って蛹となり、そのまま越冬して、5月に羽化するそうです。成虫は白黒を基調とした斑模様で細かい横筋が入っています。「みんなで作る日本産蛾類図鑑」には35枚を超える写真が載っていますので、成虫画像はそちらを御覧下さい。
 (なお、本Weblogでは責任を持てるサイト以外へのリンクは張りません。知らない間に変更になっている場合があるからです。サイトの題名で検索すればURLが変更されていても多くの場合は見つかるでしょう)

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2008年10月14日 (火)

フタトガリコヤガの幼虫(終齢)

 最近は「昆虫(毛虫、芋虫)」を参照される方が非常に多いので、今日は毛虫を紹介することにしました。
 フタトガリコヤガと言う、ヤガ科アオイガ亜科(コヤガ亜科)に属す蛾の幼虫です。かつては「コヤガ」の付かない只の「フタトガリ」と呼ばれていた様で、北隆館の「日本幼虫圖鑑」には「フタトガリ」として出ています。

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七丁目の空地にいたフタトガリコヤガの終齢幼虫(黒紋型).左が頭
第3~4腹節に腹脚を欠くので、シャクトリムシ的になる
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/10/02)

 写真は何れも終齢幼虫で、長さは3~4cm程度、体は黄、緑、黒の非常にコントラストの強い派手な模様をしており、お尻には赤色斑があります。何時も葉表に居て目立ちます。所謂、警戒色の様です。
 これは、保育社の図鑑に拠れば第1(黒紋)型で、他に第2(赤紋)型が有るそうです。第2型は、微小な白点を散在する濃い緑の地に、白で縁取られた橙赤色の楕円紋がほぼ各体節に一つずつ並ぶもので、数は少ないと書いてあります。なお、若齢幼虫は全体黄緑色、不鮮明な黄条があるだけで、特別な斑紋は無いそうです。
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3丁目のフヨウに居たフタトガリコヤガの終齢幼虫(黒紋型).右が頭
上の写真とは1.5km離れているが、紋はよく似ている
(2008/10/12)

 食草は、フヨウ、ムクゲ、アオイ、ワタ、オクラなどのアオイ科の植物です。園芸植物の害虫としてよりは、農業の方でオクラの害虫として知られている様です。
 見付けたのは、七丁目の空地に生えていたフヨウと、三丁目の電信柱の横に生えていたフヨウの2個所です。
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一番目の個体を上から見たもの.右が頭
(2008/10/02)

 鱗翅目(蝶、蛾の仲間)の幼虫は、胸部に3対の胸脚と、腹部の第3~第6節に4対の腹脚、第10腹節に1対の尾脚を持つのが普通です。しかし、このフタトガリコヤガの幼虫では、第3、第4腹節に腹脚がありません。
 シャクトリムシでは、以前紹介したフタナミトビヒメシャクの幼虫の様に、第3~第5腹節の腹脚が退化して、尾脚と第6腹節の腹脚だけになっています。フタトガリコヤガは、謂わば、シャクトリムシと普通の毛虫・芋虫との中間的な存在で、脚の構造上、シャクトリムシに近い歩き方をします。フタトガリ以外のコヤガの仲間も多くは同じです。
 なお、ヤガ科には、キンウワバ、シタバ、アツバ類の様に、前方の腹脚が良く発達していない種類がかなりあります。
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七丁目の空地にいた別の個体.良く太っている
左が頭.頭部の紋は上の写真とはかなり異なる
(2008/10/02)

 このフタトガリコヤガの幼虫、かなり複雑な斑紋の入り方をしています。しかし、最初に並べた2頭の幼虫を見ると、斑紋の位置や大きさは殆ど同じです(写真をクリックして拡大して見て下さい)。この両者は互いに1.5km程離れたところに居たのですから、同じ親から生まれたとは考えられません。2頭の比較だけでは説得力は有りませんが、斑紋は複雑でもその配列はかなり 厳密に決まっている様に思われます。
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1番目の個体の頭部.紋や毛の位置が左右非対称
(2008/10/02)

 しかし、頭の模様を見ると、2頭の間でかなりの違いがあります。特に、最初の個体では左右の対称性がかなり乱れています。面白いことに、刺毛はみな黒い紋のほぼ中心から出ており、紋の位置のズレに対応して、刺毛の位置も左右が非対称になっています。
 また、上から見た写真を見ても、への字型のはまた別の個体ですが(曲がっているので、横からの写真は撮っていません)、頭部の斑紋は、両者でかなり違っています(写真をクリックして拡大して見て下さい)。
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2番目の個体の頭部.左右の紋は略左右対称
(2008/10/12)

 頭部の左右の大きな丸い部分(頭頂)に小さな粒々が沢山あるのが見えます(写真をクリックして拡大して見て下さい)。これが何なのか分かりませんが、この分布も両者で大きく異なります。最初の個体では上部の黄色い部分にも沢山ありますが、もう一方の個体の上部には余りありません。これも、最初の個体では左右が非対称に分布しているのに対し、他者では略左右対称になっています。
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横から見た1番目の個体の頭部.
下側にある単眼(全部で6個あるが2個は不明瞭)が印象的
(2008/10/02)

 この写真の幼虫のお尻には、真っ赤な紋があります。この部分は肛上板と呼ばれる部分で、前胸(第1胸節)にある前胸硬皮板(「セスジスズメの幼虫(終齢)」を参照して下さい)と同じ性質のものです。何となく気になるので、この部分を拡大してみました。赤い部分と他の部分との境はハッキリしています。
 なお、保育社の図鑑に拠ると、第2(赤紋)型の肛上板は赤くなく、黄緑色をしているそうです。
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2番目の個体のお尻.赤い部分は肛上板
(2008/10/12)

 図鑑には、フタトガリコヤガは年2化で、第1化は5月下旬~6月上旬に、第2化は8~9月に羽化すると書かれています。この写真の幼虫は、その第2化の産んだ卵から育ったもので、老熟後は土中に潜って繭を作り、その中で前蛹となってそのまま越冬します。これが来年5月~6月に羽化して第1化となる訳です。
 老熟すると全体が紅紫色を帯びるそうです。今頃見に行くと、丁度その紅紫色を帯びた毛虫君が見られるかも知れません。

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2008年10月 6日 (月)

コエビガラスズメの幼虫(終齢)

 このココログには詳細な「アクセス解析」機能が付いており、読者諸氏が参照されたページが分かる様になっています。逆さに言えば、読者諸氏が何に興味を持っておられるのかがある程度解る訳です。ところが、これが掲載する側の予想とは著しく異なることが屡々あり、驚かされます。
 最近30日間で最もアクセスの多いページは、何と「チャタテムシの1種」で、閲覧者数全体の8%強がその為に訪問されております。次は「昆虫(毛虫、芋虫)」で全体の4%強、トップページは3位で、これは4%弱です。
 チャタテムシを検索して来られた読者の大半は、室内害虫としてのチャタテムシについての情報を探されているのだと思いますが、此処で掲載している「チャタテムシの1種」は屋外の種類ですから、御役に立てなくて真に恐縮千万です。
 次の「昆虫(毛虫、芋虫)」も、まだ全部でたった12種しか掲載しておりません。看板倒れの謗りを免れませんので、今後、皆様の御期待に添う様、出来るだけ「毛虫・芋虫」を掲載する様、尽力する所存で御座いマス。
 ・・・と言う訳で、今日はコエビガラスズメの終齢幼虫を紹介します。

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コエビガラスズメの終齢幼虫.イヌツゲの木に居た
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/12)

 この辺り(東京都世田谷区西部)で一番簡単に探せるスズメガ科の幼虫はオオスカシバですが、このコエビガラスズメの幼虫もかなり確実に見付けることが出来ます。コエビガラスズメの幼虫は、「みんなで作る日本産蛾類図鑑」によると、モクセイ科、スイカズラ科、バラ科、ツツジ科、カバノキ科、ミズキ科、ヤマグルマ科等、実に多くの植物を食べる様です。しかし、この辺りではモチノキ科のイヌツゲに多く見られます。
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コエビガラスズメ終齢幼虫の頭部
頭頂の周囲、胸脚の基部と爪は黒
(2008/09/12)

 この町(東京都世田谷区成城)には垣根としてイヌツゲを植えている御宅がかなりあります。8月から9月にかけて、そのイヌツゲの垣根の下、溝の蓋の付近を見て回り、大きな糞が落ちていて居ないかを調べます。もし、糞が落ちていて、イヌツゲの若い葉が食べられた跡もあれば、先ず、必ずコエビガラスズメの幼虫が居ます。何分にも人様の御宅の垣根なので、余り長い時間探したりすると不審者と間違えられる可能性が大ですが、大概は1分以内に見つかります。
 写真の芋虫君も、五丁目の大きな通りに面したある御宅の垣根として植えられているイヌツゲに居たもので、「三ツ池緑地」に行く途中で見付けました。枝の少し奥の方に隠れていたので、表の枝に引っ越して貰いました。それで、芋虫君、少し緊張して突っ張っています。
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第五腹節の拡大.斜めの模様は輪郭がぼけている
黄褐色楕円形の構造は気門(2008/09/12)

 蛾類の幼虫には、緑色型と褐色型など色違いのある場合が多いのですが、このコエビガラスズメは写真の様な緑色型だけの様です(保育社の蛾類幼虫図鑑には、「欧州ではごく稀に淡紅色や紫色を帯びた型があるらしい」と書かれています)。緑色の地に、白、黒、赤紫の3色による輪郭のぼけた斜条が7本あります。この斜条の直ぐ下(写真の幼虫は上下逆さまなので、直ぐ上)にある、黄褐色楕円形の構造は気門です。
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尾角は、黒く艶があり丸い顆粒を帯びる.基部には白斑があり
強く下側(写真では上側)に曲がる(2008/09/12)

 お尻にある角、尾角は基部を除いてまっ黒です。表面にかなり粒々があり、艶があります。先日紹介したセスジスズメ幼虫の尾角は細くて真っ直ぐでしたが、このコエビガラスズメの尾角は、短くて強く下方(写真では上下逆さまなので上方)に曲がって居ます。しかし、基部の下側(写真では上側)だけは白色です。こういった尾角の特徴は種に固有のもので、種の識別に有用です。
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正面から見た頭部.食事中でないので、口器は殆ど見えない
(クリックで拡大表示、他も同じ)
(2008/09/12)

 逆さになっている頭部を等倍接写してみました。食事中ではないので、口器は殆ど隠れて見えません。先日のセスジスズメ幼虫の場合とは随分違って見えますが、食事中となればこのコエビガラスズメでも、ややこしい構造の口器が中から出て来ます。
 また、胸脚の先にある爪が、黒く鋭く、先が強く曲がっているのが分かります。
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第3腹節にある第1腹脚.基部と先端は黒く間は黄色で毛がある
腹脚の先端には細かい爪が沢山見える
(クリックで拡大表示、他も同じ)
(2008/09/12)

 ついでに腹脚も撮ってみました。芋虫・毛虫が木の枝などに掴まるとき、一番強力に張り付くのはお尻に近い第10腹節にある尾脚です。その前に位置する腹脚も強力ですが、どうも前に行くほど力がないのか、或いは、必要性が少ないのか、第1腹脚は空を掴んでいる場合が屡々あります。この芋虫君もそう言う状態でした。
 基部と先端が黒く、その中間は黄色でかなり長い毛が生えています。尾脚も含めて腹脚は吸盤の原理で吸い付くのだと思っていましたが、この写真を見ると、その先端に細かい爪が沢山付いています。吸盤で吸い付くのと同時にこの爪を引っ掛けるのでしょう。腹脚がこんな構造をしているとは、この写真を見るまで知りませんでした。
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約2時間後、イヌツゲの枝の中に隠れていた、と言うか
隠れたつもり.頭隠して尻隠さず(2008/09/12)

 この写真は、上に書いた様に「三ツ池緑地」に行く途中で撮ったものです。緑地で写真を撮って約2時間後、帰り道に芋虫君がどうしているか見に行くと、20cmばかり移動して枝の中に隠れて居ました。いや、隠れたつもりの様です。頭は葉の茂みの中に入っていましたが、腹部の半分以上は見えていました。
 「頭隠して尻隠さず」の芋虫版です。

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2008年9月22日 (月)

セスジスズメの幼虫(終齢)

 今日は久しぶりに芋虫君を紹介します。セスジスズメの幼虫、体の両側に目玉模様が並んだ芋虫として、比較的良く知られている様です。
 これも、七丁目の家庭菜園に行く途中にある六丁目の空地で見付けました。ヤブガラシの葉を食べていましたが、調べてみると、ブドウ科(ヤブガラシ、ブドウ、ノブドウ)の他にも、ホウセンカ、サトイモ、サツマイモ等、かなり色々な植物の葉を食べる様です。

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セスジスズメの終齢幼虫.左側が頭、右端に尾角が見える
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/08/20)

 終齢幼虫で、体長は8~9cm程度です。写真の幼虫は黒を基調にしており、この様な色調が最も普通ですが、図鑑によれば、時に緑色、緑褐色、暗褐色などを地色とするものも有るとのことです。
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横から撮ったセスジスズメの終齢幼虫.今度は右が頭(2008/08/20)

 同じホウジャク亜科の近縁種、ベニスズメの幼虫も似たような模様をしていますが、目玉は2対しか有りません。また、セスジスズメの尾角(お尻にある角)は下の写真の様にピンと張って長いのに対し、ベニスズメでは短く、下側に湾曲しているのが普通です。
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セスジスズメの尾角.ピンと張って細長い
先端は白く基部に黄色の部分がある
(2008/08/20)

 先日、紹介したキイロスズメもホウジャク亜科に属します。見た感じは随分違いますが、頭部が胴体の幅よりずっと小さい点では共通しています。
 今日は少しややこしい形態の話をすることにします。下の写真で、白~黄色の紋が無く、艶も無い部分が頭部です。一見複眼の様に見えるのが左右の頭頂で、その間の縫合線を中縫線と言います。その先に鋭角の三角の部分がありますが、これが前頭、その周りの頭頂との間にある少し色の濃く見える部分が副前頭で、これは若齢幼虫には有りません。その先の黄色い部分は頭楯です。
 頭部に続いて、前胸、中胸、後胸があり、その各節に胸脚(桃色をしている)が一対ずつ付いています。写真では後胸以下は見えませんが、更にその次が腹節で、そこから目玉模様が始まります。なお、頭頂の直ぐ後、前胸の上部に、少し不明瞭ですが、楕円形の部分があります。これを前胸硬皮板と呼びます。その少し腹側、黒と白との境目にある小さな丸い紋は気門です。気門は腹節では第1節から第8節まで各節に1対ずつつ有りますが、胸部では前胸に1対あるだけです。
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セスジスズメ終齢幼虫の頭部と胸部(背側から)
(2008/08/20)

 眼は何処にあるかと言うと、頭頂の左右端に単眼が6個ずつ有ります。成虫は複眼を持ちますが、幼虫には単眼しか有りません。下の写真では一寸分かり難いですが、頭頂(艶のない部分)の下側、黄色い突起の様なものの付け根にある、小さな丸い粒々がそれです。
 この黄色い突起の様なものは、実は幼虫の触角なのです。成虫の触角は長くて上方を向いていますが、幼虫のは短く下を向いています。多分、専ら食物を識別するのに用いられているのでしょう。
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セスジスズメ終齢幼虫の頭部と胸部(横から)
(2008/08/20)

 次(下の写真:写真をクリックして拡大して見てください)は、お食事中の芋虫君の頭部です。何やら矢鱈に複雑で一寸戸惑いますが、北隆館の「日本幼虫圖鑑」と保育社の「原色日本蛾類図鑑上巻」を参照して何とか分りました。なお、上の写真では不明瞭であった単眼がかなりハッキリと見えます。
 艶のない頭頂の先に黄色い頭楯が見えますが、その先の黒い部分が上唇です。触角(基部が黄色の突起)の裏側に見える大きな真っ黒い部分が上顋(大腮)で、これに歯が付いており、葉っぱを噛み砕きます。
 その下側に見える、白と黄色の先に触角の様なものが付いた大きな構造は下顋(小腮)です。これも左右に1対あります。その先端にある触角の様のに見えるのは下顋鬚(小腮鬚)です。
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セスジスズメ終齢幼虫の頭部(食事中)
(2008/08/20)

 その下は下唇で、これは体軸に沿って1つだけあります。その先端に吐糸管があるのですが、下に向いた淡色の突起がそれに相当するのか、一寸分かりません。
 随分ややこしい話になりました。しかし、この種の話は余り掲載されていない様なので、一寸無理をしてみた次第です。
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セスジスズメの若齢幼虫(2007/09/23)

 最後に、昨年の秋に撮ったセスジスズメの若齢幼虫の写真を出しておきます。長さは2cm位だったと記憶しています。若齢幼虫は、この様に、大きくなった幼虫とは全然違う色と模様をしています。
 この芋虫、良く見ると胸脚は全て宙に浮いており、尾脚(一番後にある腹脚)で草に掴まっているだけの様です。実際、この1枚を撮った後で、直ぐに草むらに落下したので見失ってしまいました。若齢幼虫が行う護身の一法かと思っていましたが、終齢幼虫の方も、撮影する為にヤブガラシの蔓を持って色々角度を変えている間に、一回下に落ちました。或いは、セスジスズメの幼虫は、ゾウムシの様に、落下して身を隠す「隠遁の術」を心得ているのかも知れません。

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