カテゴリー「昆虫(グンバイムシ)」の5件の記事

2010年2月 9日 (火)

プラタナスグンバイ(その2:集団越冬中)


 これまでプラタナスの樹皮下に居た生き物として、チリグモハイイロチビフサヤスデを紹介しました。しかし、居ておかしくない、或いは、居るはずの虫が見当たりませんでした。

 3年前の秋に掲載したプラタナスグンバイCorythucha ciliate:グンバイムシ科)です。プラタナスの樹皮下で集団越冬すると聞いていたのですが、1頭も見付かりませんでした。


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プラタナスグンバイ.成城学園大学正門のイチョウ並木の続きに

植えられているプラタナスの樹皮下にいた.100頭近く居る

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/08)



 最初に調べたのは七丁目の成城学園高校の前に街路樹として植えられている数本のプラタナスです(この通りに植えられている街路樹の大半はユリノキ)。そこで、別の日に成城学園大学正門のイチョウ並木の続きにあるプラタナス(六丁目)を調べてみました。

 居ました、居ました。それも相当な数です。

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同じ樹の別の場所.90頭前後は居る

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/08)



 プラタナスの樹皮は、ケヤキの樹皮に似て、普通は薄く剥がれます。その薄く剥がれた(剥がした)部分(最初の2枚の写真)にも沢山居ましたが、少し病変した様な裂け目状の部分(下)にも固まって越冬していました。

 部分的には折り重なって越冬しています。正確な数は分かりませんが、印象として、樹1本当たり数1000頭は居る感じです。

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病変した様な裂け目状の部分に固まって越冬している

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/03)



 3年前に掲載したときは、プラタナスグンバイの寄生はそれ程酷くはなかったと記憶しています。そこで、かなり呑気に「アワダチソウグンバイとは異なり、プラタナスグンバイで樹が枯れたと言う話は聞きません。また、吸汁性昆虫に良く見られるウィルスを媒介すると言う話も無い様です。グンバイムシを殺す為に強力な殺虫剤を使って、周囲の生態系にまで影響を及ぼすよりは、そのままにしておいた方が良いのかも知れません」等と書いていました。しかし、最近ではかなり猛威を振るっています。8月頃から葉が黄色に変色し始めます。

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2番目の写真の左上を拡大。折り重なっている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/08)



 樹1本当たり数1000頭も越冬しているのでは、今年は春からかなりの被害が出そうです。世田谷区にプラタナスグンバイの駆除に関して問い合わせをしてみましょう。

 しかし、小田急線の成城学園駅前北口に植えられている数本のプラタナスでは、プラタナスグンバイは見付かりませんでした。駅前のプラタナスは毎年酷く寄生されていますから、或いは、区の方で既に殺虫剤を撒いたのかも知れません。

 なお、プラタナスグンバイは北米原産の帰化種(外来種)です。虫自体についての話は既に書きましたので、今回は省略します。

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数頭のプラタナスグンバイを拡大.

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/03)



 3年前に掲載したときは、虫の拡大率が余り高くありませんでした。そこで、今回はもう少し倍率を上げ、また、見やすい様に明るめに、且つコントラストを少し高くしました。拡大し過ぎて粗い像になってしまった様ですが、連続4枚張ることにします。

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3年前の写真は些か倍率が低かったので、今回は拡大率を

高くした.翅端まで4mm弱、外骨格は脆く壊れ易い

この個体は胸部と左前翅の先端付近が壊れている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/03)




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この個体も右前翅先端が欠けている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/03)




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斜め横から見たプラタナスグンバイ

横から見ると吻は丸くなっている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/03)




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略正面から見ると、吻は尖っている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/03)



 3日連続で更新しました。最近では奇跡に近いくらい珍しいことです。しかし、明日は外出せねばならず、更新は一寸無理でしょう。


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2008年9月 4日 (木)

アワダチソウグンバイ


 昨年、プラタナスに寄生するアメリカ大陸原産のプラタナスグンバイを掲載しましたが、今日は、同じアメリカ大陸原産のアワダチソウグンバイを紹介します。アワダチソウグンバイは平成11年に兵庫県西宮市で初めて確認された後、次第に北上して3年程前から関東地方にも姿を現したのだそうです。

 昨年以降、成城のプラタナスは、その殆ど全部がプラタナスグンバイに寄生されている様で、今年も夏の盛り頃から葉っぱが段々黄色くなって来ました。アワダチソウグンバイの方はどうかと言うと、これも空地や道端に生えているセイタカアワダチソウを調べてみたところ、非常に多くの株に寄生が認められました。


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アワダチソウグンバイ.中南米原産.翅端まで3.0mm

写真はセイタカアワダチソウの隣に生えている

イネ科の雑草に留まっていたもの

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/07/11)



 プラタナスグンバイは翅端まで3.3mm、翅がガラス状でよく光を反射する為かなり目立ちます。しかし、アワダチソウグンバイは翅端まで3.0mmとやや小型で、しかも、色がセイタカアワダチソウの葉裏と似ているので、その気になって探さないと中々見つからないでしょう。

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真横から見たアワダチソウグンバイ.その後にも一匹いる(2008/07/11)



 アワダチソウグンバイはセイタカアワダチソウばかりでなく、その他のキク科植物にも寄生します。我が家では、北米原産のシオンの1種に寄生しているのを、昨年の春に見付けました(これは「我が家の庭の生き物たち」に掲載してあります)。ところが、調べてみると、キク、ヒマワリなどのキク科植物ばかりでなく、ヒルガオ科のサツマイモ、アメリカンブルー、更にナスなどへの寄生も確認されています。かなり広食性の様です。


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セイタカアワダチソウの葉裏と同じ様な色をしているので

かなりコントラストを高くしてある

(2008/07/11)



 アブラムシ、グンバイムシ、コナジラミ、キジラミなどの吸汁性昆虫は、単に吸汁によって農作物等に被害を与えるばかりでなく、植物病原性ウィルスを媒介することの多い「危険な虫」でもあります。調べた範囲では、アワダチソウグンバイは特に病気の媒介はしていない様ですが、一昨年以来、我が家のシオンの1種は開花の少し前から葉が茶色になり、枯れて来ます。単なる吸汁による衰えなのかも知れませんが、或いは、何かのウィルスを媒介しているのかも知れません。

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正面から見たアワダチソウグンバイ(2008/07/11)



 写真のグンバイムシは、5丁目の空地に生えていたセイタカアワダチソウに居たものです。しかし先日、七丁目の家庭菜園でも見かけました。また、初めに書いた様に、町中のセイタカアワダチソウが寄生されていると言ってもよい状態です。かなり広食性の様ですし、今の内に何らかの対策を立てる必要があるかも知れません。


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2008年8月 3日 (日)

キクグンバイ


 今日は珍しくグンバイムシを紹介します。キクグンバイ、体長約2.0mm、翅端まで約3.0mmの小さなグンバイムシです。

 以前紹介したトサカグンバイは体長4mmもありました。それと較べると、随分小型です。

 頭からヤスの先端の様な棘状突起が出ています。これがこの種の特徴で、図鑑に拠れば5本あるのだそうですが、写真では何故か3本しか見えません。


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キクグンバイ.ステンドグラス的模様が綺麗

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/07/09)



 「三ツ池緑地」のイネ科雑草の葉上に居ました。少し風が吹いているので、揺れて焦点合わせが大変でした。こう言うときは、安全策としてある程度撮ってから、葉を掴んで揺れないようにして撮ります。風があるときは、風で揺れるのと人が手で触って揺れるのとの区別が付かないらしく、意外と逃げません。

 しかし、撮影している間に横にあった葉が跳ねてグンバイムシの居た葉に当たった為、ムシが吹っ飛んで何処かへ行ってしまいました。それで、写真が3枚しか有りません。

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斜め横から見たキクグンバイ.背中が妙に隆起している(2008/07/09)



 名前は「菊軍配」ですが、ヨメナ、ヨモギなどのキク科雑草に寄生するのが主で、園芸品種の菊には関心が薄い様です。「キクグンバイ (駆除|防除)」で検索しても殆どヒットしません。

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少し下側から見たキクグンバイ.腹部が短い(2008/07/09)



 グンバイムシは英語で「lace bug」と呼ばれる位で、中々美しい姿をしています。このグンバイムシのステンドグラス的模様は、ハエやハチの翅脈の様に厳密に決まっているのだと思っていました。しかし、一番上の写真を良く見ると、左右で随分違っています。かなり「いい加減」に設計されている様です。


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2007年12月 1日 (土)

トサカグンバイ


 成城3丁目に、「お茶坂」と呼ばれている、国分寺崖線を直角に下る急坂があり、その横が「三丁目緑地」への入り口の一つになっています。

 この入り口付近の草地には結構色々な虫が居て、これまでにもそこで撮った虫を随分紹介していますが、先日その入り口で、少し大きめのグンバイムシを見付けました。


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アセビの葉上を歩くトサカグンバイ

(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2007/11/15)



 体長約4mm、アセビに付いていたグンバイムシで、調べてみるとトサカグンバイと言う種類でした。

 このグンバイムシは、普段はクスノキ科、バラ科、ツツジ科、カキ科などの様々な樹木に寄生していますが、寒くなるとアセビに寄生転換して、産卵、越冬(或いは、越冬、産卵)するのだそうです。

 アセビに付いていたのは、必然的だった訳です。

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翅に光が当たってステンドグラスの様(2007/11/15)



 御存知の読者も多いと思いますが、グンバイムシは、実は、カメムシの仲間です。カメムシ目、トコジラミ下目、グンバイムシ上科のグンバイムシ科に属します。トコジラミ下目には、トコジラミの他に、カスミカメムシ科、サシガメ科、ハナカメムシ科、マキバサシガメ科等、「カメムシ」の名が付く仲間も沢山入っていますから、グンバイムシはレッキとしたカメムシの仲間だと言えます。


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横から見たトサカグンバイ.眼が赤く光っている.

頭の上には大きな風防の様なものがある(2007/11/15)



 しかし、トコジラミをカメムシと言わないのと同じく、グンバイムシはグンバイムシですから、ここでは「昆虫(カメムシ)」のカテゴリーではなく、「昆虫(グンバイムシ)」に入れてあります。

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正面からみたトサカグンバイ.(2007/11/15)



 写真を見ると、このグンバイムシの眼が赤いのが一寸気になります。写真は総てストロボ同期で撮影していますので、赤目現象がグンバイムシでも起っている様な感じです。しかし、赤目現象は毛細血管の血の色が反射されることで起こります。グンバイムシには赤い血は流れていませんから、別の理由で赤く見えるのでしょう。或いは、実際に赤いのかも知れません。

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トサカグンバイが飛び出す瞬間(2007/11/15)



 グンバイムシの動きは、アブラムシの有翅型などと同じく、かなり緩慢です。しかし、これもアブラムシの有翅型と同じく、突如として飛び出します。上の写真は、その一瞬を捕らえたものです。

 本当は、飛ぶところを撮るつもりではなく、単に葉の先端にいるのを横から撮るつもりだったのですが、シャッターを押した瞬間に翅を拡げたので、偶々こう言う写真が撮れてしまったのです。

 全くの、まぐれ当たりです。


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2007年9月22日 (土)

プラタナスグンバイ


 暫く更新をサボっていました。今日から再開です。

 再開第1番目は、最近話題になっているプラタナスグンバイです。遂に、成城の町にもプラタナスグンバイが現れました。プラタナスは、駅北口、成城学園正門前のイチョウ並木の西側、成城大学の西側に沿って南北に走る道の所々に植えられています。その他にもあるかも知れません。調べた範囲では、他から離れて単独に植えられている樹を除いて、殆ど総ての樹にプラタナスグンバイの寄生が認められました。

 今日の写真の虫は、駅北口に植えられているプラタナスの葉裏に居たものです。なお、掲載の写真は、何れもクリックすると横幅750ピクセルの少し大きな画面で表示されます。


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プラタナスの葉裏に潜むプラタナスグンバイ(2007/09/21)



 9月6日から7日にかけての台風9号の風でかなり吹き飛ばされた様ですが、まだ沢山います。葉裏の太い葉脈のないところに止まっている成虫は、少し離れた位置から肉眼で見ると、一寸白っぽく見えます。しかし、上の写真の様に、太い葉脈付近に何頭も固まって張り付いているのは、肉眼では余りよく分かりません。

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少し拡大(2007/09/21)



 成虫の体長は約3mm、かなり小さい虫です。英語でLace bugと言われるだけあって、拡大すると、中々繊細で綺麗ですが、ツツジ類の害虫として有名なツツジグンバイの方がもっと綺麗です。

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拡大してみると、中々繊細で綺麗.体長約3mm(2007/09/21)



 幼虫は黒くて、多くの場合、太い葉脈の近くに集団を作っています。少し離れてみると、アブラムシが集っている様に見えます。

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別の個体の拡大(2007/09/21)



 このプラタナスグンバイは、よく知られている様に、日本の虫ではなく北米原産の外来種です。平成13年に名古屋で最初に見つかり、その2年後の平成15年には東京でも確認されたとのことです。

 同じ様な外来のグンバイムシには、アワダチソウグンバイがいます。これは、既に昨年辺りから我が家の庭で猛威を振るっています。

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幼虫は太い葉脈の近くに固まっていることが多い(2007/09/21)



 アワダチソウグンバイは、アワダチソウ類だけではなく、広くキク科の植物に被害を与えます。昨年、我が家に植えてあるシオンの1種が茶色くなり殆ど枯れてしまったのは、どうもこのアワダチソウグンバイの仕業の様です。

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各齢幼虫の拡大(2007/09/21)



 プラタナスグンバイの成虫は、プラタナス以外の植物に着くこともあるそうですが、幼虫はプラタナスでないと成育できないとのことです。

 プラタナスグンバイに寄生されると、プラタナスの葉は枯れた様な白い色になり、酷い場合には落葉します。成城のプラタナスも既に葉が白っぽくなって来ました。

 しかし、アワダチソウグンバイとは異なり、プラタナスグンバイで樹が枯れたと言う話は聞きません。また、吸汁性昆虫に良く見られるウィルスを媒介すると言う話も無い様です。

 グンバイムシを殺す為に強力な殺虫剤を使って、周囲の生態系にまで影響を及ぼすよりは、そのままにしておいた方が良いのかも知れません。


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