カテゴリー「昆虫(チャタテムシ)」の18件の記事

2012年3月 4日 (日)

ウスイロチャタテ科(Ectopsocus sp.)の卵塊

 昨日、ウスイロチャタテ科(Ectopsocidae)に属すEctopsocus sp.の雄を掲載しました(雌の方はこちら)。今日は、その直ぐ近くで「ついでに撮った」同種の卵塊と思われるものを紹介しましょう。
 ついでに撮った(と言うかチャタテムシの卵の記録として参考程度に撮った)ので写真は1枚しか無く、しかも、親と思われる個体と卵塊の両方に焦点を合わせようとしたので、卵塊の右上は焦点を外れています。
 ところで、先日、私もよく御邪魔しているBABA氏のWeblog「虫をデザインしたのはダレ?」の2012年2月19日付記事に、常緑樹の葉裏に屡々見られる、これまで正体不明であった金属光沢を持つドーム状の構造が、実はチャタテムシの卵であったと云う「大発見」が載っていました。この「金属ドーム」は私も屡々見ており、例えば、2010年3月15日に掲載した記事「マルトビムシの1種」の写真1枚目の左下に写っています。
 そのBABA氏の記事に関して、Psocodea氏(チャタテムシの専門家、北大准教授の吉澤和徳氏のハンドルネーム)が「・・・.チャタテ科などでは,産卵したあと糞で卵を覆い隠したりします.・・・」とコメントされており、それに対してBABA氏が「・・・.糸の上や糞で隠す等、1度お目にかかって見たいものです.・・・」と答えて居られました。
 そこで今日は、その糞(と思われるもの)がかかっている卵塊の写真を載せることにしたのです。

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ウスイロチャタテ科のEctopsocus sp.の成虫雌と卵塊
この卵塊は横に居る成虫雌が産んだものと思われる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 撮影したのは昨日のと同じく、国分寺崖線下の4丁目の何も生産していない「生産緑地」に植えてある、セイヨウヒイラギと思われる木の葉裏です(因みに、赤い実を着けるセイヨウヒイラギは、ヒイラギの属すモクセイ属:Osmanthusではなく、モチノキ属:Ilexです。モクセイ属植物の実は総て濃い黒っぽい色をしています)。昨日のEctopsocus sp.の雄を撮影したミカンの木から僅か7m程度しか離れていません(なお、撮影日は何れも3月15日ですが、成虫の方は2009年、この卵塊は2010年に撮ったものです)。
 この年(2010年)、この木の葉裏には色々なチャタテムシの卵・幼虫・成虫が居たのですが、その後は、残念ながら殆ど見かけません。ここから幼虫や卵を拉致して飼育してみようと思っていたのですが惜しいことをしました。
Escopsocus03e_100315_068
上の写真を部分拡大(ピクセル等倍)したもの.卵の上には糸が
掛けられており、それに糞の様なものやゴミが付着している
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 卵の上には糸が張り巡らされており、その糸にほぼ確実に糞と思われるものやゴミの様なものが付着しています。
 問題は、卵の横にいるEctopsocus sp.の成虫が本当にこの卵を産んだのかと云うことでしょう。「ウスイロチャタテ 卵塊」で画像検索してもそれらしきものは何も出てきませんでした。しかし、「Ectopsocus eggs」で検索すると、「My Bit of The Planet」と云う英国のサイトに、 Ectopsocus petersiの成虫が、糞の様なゴミの付いた卵塊の上に乗っている写真が見つかりました(原文は ・・・obviously being watched over by an adult (I assume the parent) Ectopsocus petersi)。
 写真は撮っていませんが、私は今日のと同じ様な卵塊のすぐ近くにEctopsocus sp.の成虫が居るのをこれまでに何回か見ています。これらのことから、この卵塊は横にいるEctopsocus sp.の成虫が産んだものと思って先ず間違いないと思います。表題に「?」は付けませんでした。

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2012年3月 3日 (土)

ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)(雄)

 今日はひな祭り。余りこちとらには関係ありませんが、もう3月です。本年2月の更新は1回のみ、すっかりサボリ癖がついてしまった様です。
 最近は虫撮りに出かけていないので、今日は、以前「今日は雌のみにして、雄の方は、また別の機会に紹介したいと思います」と書いたウスイロチャタテ科(Ectopsocidae)のEctopsocus sp.の雄を掲載することにしました。雌に関する記事は2010年3月に掲載、写真はその前年(2009年3月)に撮影したものです。今日の写真も同じ日に同じ場所で撮影したものですから、何と4年前、我ながら一寸酷いですね。
 なお、この頃は普通の等倍マクロで撮影していました。従って、画質は最近のものと較べてかなり落ちますが、何卒御容赦下さい。

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「三丁目緑地」の何も生産していない「生産緑地」に植えてある
ミカンの木の葉裏にいたEctoscopus sp.の雄
体は雌よりずっと小さいが翅は大きく長い
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 今日のチャタテムシの写真は、2個体を撮影しています。最初の7枚は同じ個体で、体長約1.9mm前翅長約2.8mm、最後の2枚は別個体で体長約2.0mm前翅長約2.9mmです。
 3年前に載せたの方は、体長2.9mm前翅長2.4mmでしたから、体長では雌の方が大きく、前翅長では雄の方が大きいと云うことになります。
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上の写真の拡大(ピクセル等倍).白い矢印で示したのが
ウスイロチャタテ科の特徴の1つである
後翅のM脈とRs脈の間にある横脈」
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 その雌の方の記事に、ウスイロチャタテ科の特徴として、「前翅は後小室を欠き、M脈とRs脈がほぼ1点で交わり、また、後翅のM脈とRs脈の間に横脈があります」と書きました(前翅の翅脈相についてはこちらの3番目の写真をどうぞ)。前翅の方は雌の写真でも良く分かったのですが、「後翅のM脈とRs脈の間にある横脈」は良く見えませんでした。それが、この雄の写真では見えています。
 上の写真はその上の写真をピクセル等倍にしたものです。前翅と後翅の翅脈の両方が写っており、些か見難いですが、白い矢印で示した横脈が「後翅のM脈とRs脈の間にある横脈」です。矢印先端の外側にあるぼやけた黒斑は、前翅の「M脈とRs脈がほぼ1点で交わっている」部分です。
 なお、翅脈相については北海道大学農学部吉澤和徳准教授の学位論文「Morphology of Psocomorpha」を参照しました。
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横から見たEctoscopus sp.の雄.上と同一個体(以下同じ)
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 実は、3年前と今日の記事に載せたチャタテムシが本当に同種の雄雌なのか、確実な証拠はありません。しかし、「Pscoptera of Texas」と云うチャタテムシの専門家が掲載しているサイトに、チャタテムシ類の雌雄の写真が対になって示されており、本種に近いと思われるEctopsocus californicusを見ると、胴体が短く、翅の長いのは雄となっていますから、今日のチャタテが雄であることは間違いないでしょう。
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斜め上から見たEctoscopus sp.の雄
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 雄雌の問題はヨシとしても、本当に同種なのかには、些か疑問があります。吉澤教授が執筆された「皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」には、Ectopsocus属は2種しか載っていません。しかし、同教授の「Checklist of Japanese Psocoptera(Jul. 9, 2004)」には7種(その内本州産は4種)が載っており、また、「Psocodea Species File Online」と云うサイトを見ると、このEctopsocus属は世界で174種が記録されている大所帯です。
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正面から見たEctoscopus sp.の雄
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 吉澤教授に拠れば、「本属(Ectopsocus)の種は外見上きわめてよく似ているが・・・」とあり、また、日本国内での研究が充分行われている様には思えませんので(日本国内の種について充分研究が行われている属では、吉澤教授の命名した新種が必ず多数入っているのですが、このウスイロチャタテ科にはその様な種は1つもありません)、2種が混ざっているかも知れません。しかし、その可能性は少ないと思いますので、本記事の表題はEctopsocus spp.ではなく、Ectopsocus sp.としておきました。
 なお、このEctopsocus sp.は、多分E. briggsiではないかと思うのですが、確証がないのでEctopsocus sp.としてあります。その判断については、3年前の記事に詳しく書きましたので、此処では繰り返しません。
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ミカンの葉裏を逃げ回るEctoscopus sp.の雄
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 最初に書いた通り、今日の写真は4年前の2009年3月に撮影したものです。場所は国分寺崖線下の4丁目にある、何も生産していない生産緑地内のミカンの木の葉裏です。この年は、このEctopsocus sp.が非常に多く、他の場所でも沢山見付けましたが、この辺り(東京都世田谷区西部)では、普段はそれ程多い種ではありません。
 次の2010年は、ヨツモンホソチャタテが非常に多く見られました。驚いたことに、今まで一度も見たことがない我が家の庭でも発生しました(この時は、卵から成虫までを写真に収めることが出来ました。その記録は此方をどうぞ)。年により、特定のチャタテムシが多くなると云うのは、些か興味のある現象です。
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オマケに同一個体の正面からの写真をもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 下に、別個体の写真を2枚載せておきます。何れも同じ日に同じ場所で撮影したものです。
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別個体.此方の方がやや大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 
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上の個体を正面上方から見たところ
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 今年の冬は、雨や雪が多く、また、晴れの日は霜柱が例年になくリッパに立って、地面がグチャグチャです。「三丁目緑地」やこのチャタテムシを撮った「生産緑地」もグチャグチャだと思うと中々虫撮りに出掛ける気がしません。しかし、昨年以前に撮った未掲載の写真が倉庫に沢山眠っていますので、それらをボチボチと紹介して行くつもりです。

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2012年1月 8日 (日)

ケチャタテ科の1種(Caeciliusidae gen. sp.)(その5)

 どうも最近は、体がすっかり熱帯向きになって来たのか、寒くなると外出するのが億劫になります。それでも先日、「四丁目緑地」のケヤキの樹が気になって、カメラを持って出掛けました。
 しかし、そのケヤキの樹皮下には、以前掲載した「ハイイロチビフサヤスデ(その2:集団越冬)」よりも、もっと高密度に集まったハイイロチビフサヤスデがいた程度で、目新しい被写体は何も見当たりませんでした(ヨツモンホソチャタテが1頭、樹皮下で越冬していました。これまで、樹皮下でホソチャタテ科の虫を見たことはありません)。
 そこで、1.2kmほど南にある「三丁目緑地」に行ってみました。緑地の北西部にある、泉の横に生えているタラヨウの葉裏には大概何かが居るのです。本当は、双翅目が目当てだったのですが、そこでこれまで見たことのないチャタテムシを見つけました。

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タラヨウの葉裏に居たケチャタテ科の1種
翅膜は淡黄褐色、翅脈は黄色い
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 翅脈(「YOSHIZAWA,Kazunori(2005):Morphology of Psocomorpha」に拠る)や体形からして、ケチャタテ科(Caeciliusidae)の1種なのは間違いないでしょう。翅端まで約4.0mm、前翅長約3.2mmですから、ケチャタテ科としては中程度の大きさです。
 上の写真の様な、目の黄色いケチャタテはこれまでにも何回か紹介しており、特に後小室(「ホソチャタテ」の3番目の写真を参照して下さい)が小さい点で「ケチャタテ科の1種(その2)」とよく似ています。
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横から見ると、全体的に結構毛深い
後小室は少し見難いが小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 しかし、「その2」の方は、翅膜も翅脈も殆ど無色なのに対し、今日のチャタテムシは翅膜が薄い黄褐色で、翅脈は黄色をしています。特に縁紋の辺りの黄色が目立ちます(最後の写真)。
 黄色の目立つケチャタテ科としては、キイロケチャタテがよく知られています(但し、Web上にある「キイロケチャタテ」の多くは誤認です)。しかし、富田・芳賀(1991)の「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」を見ると、キイロケチャタテは後小室が大きく、縁紋は全体に黄色となっており、一致しません。
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小顎鬚(小腮鬚)は殆ど無色透明.先端も同様
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 そら氏のブログ「ご近所の小さな生き物たち」に掲載されている記事「キイロケチャタテでは無いそうです」に、psocodea氏(北海道大学吉澤教授のハンドルネーム)が次の様なコメントを書かれています。「キイロケチャタテに外観的に良く似た種はたくさんいるのですが,実は結構遠縁の仲間も含まれます.というか,キイロケチャタテは,ケチャタテ科から独立させた方が良いかとも考えています(現在論文が進行中).・・・」。どうやら、本当のキイロケチャタテは、少し普通のケチャタテとは違った虫の様です。
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斜めから見ると、縁紋付近の黄色が目立つ
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 ケチャタテ科であることは問題ないとして富田・芳賀の検索表を辿ると、和名のないValenzuela flavidorsalis(この検索表は少し古いので属名はCaesilius)が一番近い様です。この種の特徴は、「後小室が小さく、小顎鬚は淡黄褐色で、端節はやや暗色.翅脈及び翅膜は黄褐色.前翅長約3.0mm」となっています。しかし、今日のチャタテムシでは、小顎鬚は殆ど無色でその端が暗色とは言えません(3番目の写真)。
 学術論文ではないので、Valenzuela flavidorsalis?とする手もありますが、吉澤教授の上記コメントから察せられる様に、ケチャタテ科はまだ未整理部分が多い様です。此処では単にケチャタテ科の1種(Caeciliusidae gen. sp.)として置くことにしました。

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2011年5月 6日 (金)

ヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)の幼虫
(終齢=6齢)

 東日本大震災から2ヶ月が過ぎようとしています。私個人や住居には何らの被害もなかったのですが、その後、些かの問題が発生して、Weblogを書く時間が無くなってしまいました。昨日、今日と2日休んで、また、明日からこれまでやっていた作業の再開です。今日中に、このWeblogも更新しておかないと、次は何時になるか分かりません。
 今年は、1月と2月に一度ずつ虫撮りに出かけただけで、3月以降はサッパリです。そこで今回は、昨年の3月に撮ったチャタテムシの幼虫を紹介することにしました(写真も昨年の内に調整済みです)。このチャタテムシの幼虫は、これまでとは違い、種類と齢が判明しました。ホソチャタテ科(Stenopsocidae)に属すヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)の6齢(終齢)幼虫です。

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「三丁目緑地」に居たヨツモンホソチャタテの終齢幼虫
有翅チャタテムシは6齢が終齢
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 体長は、2頭居ますので、約1.9mmと2.3mm、撮影したのは「三丁目緑地」の北西部にある泉の近くです。1本の木に、数種類のチャタテムシの成虫、幼虫が相当数潜んでいました(しかし、何故か今年は殆ど居ませんでした)。
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2頭で大きさが少し違うが、翅芽の先端は
何れも腹部の真ん中辺に達している
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 撮影した時は種類も齢も分かりませんでした。しかし、我が家のトベラの葉裏に居たチャタテムシの成長を卵から成虫まで観察した結果(本稿末尾を参照)、ヨツモンホソチャタテであることが分かり、今日のチャタテムシ幼虫がその終齢幼虫と同一の特徴を持つことが分かったのです。
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大きな方の個体.体長約2.3mmだが、頭幅(本文参照)は
約0.59mmともう一方より狭い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 少し前まではチャタテムシが一般に何回脱皮して成虫になるのかも良く分かりませんでした。庭のチャタテムシを見てヨツモンホソチャタテは6齢が終齢であることが分かりましたが、これがチャタテムシ一般に通用すると云う確証はありません。
 この問題は、その頃に英国の古本屋から取寄せた「Handbooks for the Identification of British Insects」の一冊である「Psocoptera(噛虫目=チャタテムシ目)」を見て解決しました。長翅の種類では多くの場合6齢で、無翅や短翅の種類では齢数がもっと少なくなるとのことです。
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小さい方の個体.脱皮後あまり時間が経っていないらしく
額の色は上の個体より薄いし、腹部は少し縮んで見える
体長は約1.9mmだが、頭幅(本文参照)は
約0.62mmで上の個体より広い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 チャタテムシ幼虫の齢の違いを知るには、翅の原基(翅芽)の発達程度を見るのがよい様です。尤も、前掲書に拠れば、翅芽は3齢から認められるそうですので、翅芽では初齢と2齢の区別は出来ません。
 一般的に、翅芽の先端が腹部の中央付近に達していれば、終齢と判断して良い様です。但し、腹部は脱皮後の成長に伴って長くなりますから、あくまでおおよその判断です。
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正面から見た2番目の個体.何時見てもチャタテムシの顔は面白い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 腹部は伸長しても、頭の外骨格は固く結合しているので、頭幅は脱皮しない限り(殆ど?)変化しません。芋虫・毛虫等の齢も、頭幅で推定することが出来ます。
 昆虫学に於ける「頭幅」の一般的な定義は良く分かりませんが、チャタテムシの場合、写真で測定するのに便利なのは、左右の複眼の外側の端から端までです。此処では、それを「頭幅」と呼ぶことにします。
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斜めから見た最初の大きな個体
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 今日の写真の2頭の頭幅を測定してみると、大きな個体(体長2.3mm)の方が小さくて約0.59mm、小さい方(体長1.9mm)では約0.62mmです。昨年、我が家で測定した終齢幼虫の頭幅は約0.60mmでしたから、0.60mm前後が終齢(6齢)幼虫の頭幅と言えるでしょう。
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同様に撮影した2番目の個体
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 ヨツモンチャタテの卵から成虫までの成長記録は、もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」に以下の様に掲載されています。御笑覧下さい。

   内   容      掲 載 日     撮 影 日
  卵と初齢幼虫    2010/03/13   2010/02/25,03/12
   2齢幼虫     2010/03/23   2010/03/22
  3、4齢幼虫    2010/04/19   2010/04/10
   5齢幼虫     2010/04/25   2010/04/18,20
   6齢幼虫     2010/04/29   2010/04/20
    成 虫      2010/05/11   2010/04/20,24

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2011年1月14日 (金)

マドチャタテ科の1種(Peripsocidae gen. sp.

 年が明けてからの東京地方は毎日晴天続きですが、風の強い日が多く、先日、漸く新年第1回目の虫撮りに行って来ました。場所は、普段余り行かない「七丁目緑地」とその周辺で、樹皮下で越冬中の虫が主な目当てでした。
 「七丁目緑地」は基本的に虫が少ない緑地ですが、今年は例年よりももっと少なく、昨年は彼方此方で集団越冬していたヒメコバネナガカメムシも殆ど居らず、真っ黒なヒメテントウが数頭居ただけでした。その代わり、近くに生えているアカマツやケヤキの樹皮下には新顔の虫が何種か居り、一応の成果を収めることが出来ました。
 今日はその中から、ケヤキの樹皮下に居たチャタテムシを紹介します。

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ケヤキの樹皮下に居たマドチャタテ科の1種
翅端まで2.3mmと非常に小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 翅がキラリと光ったので、始めはキモグリバエか何か双翅目の昆虫かと思いましたが、写真を撮ってみると、何と、チャタテムシでした。全長(翅端まで)は2.3mm、翅長は1.9mm弱と、今まで撮ったチャタテムシ成虫の中では最小です。
 このWeblogでは、これまでケチャタテ科、ニセケチャタテ科、ホソチャタテ科、ウスイロチャタテ科のチャタテムシを掲載して来ましたが、これらは何れも常緑広葉樹の葉裏に居たものです。樹皮下でチャタテムシを見つけたのはこれが初めてで、翅脈から見ても別の科に属すであろうことは、撮影中にも分かりました。
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横から見たマドチャタテ科の1種。翅脈相は独特(本文参照)
また、R脈が太く、縁紋は黄色を帯びる
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 前翅翅脈を見ると、後小室(こちらの2枚目の写真をどうぞ)が無く、Rs脈とM脈(翅脈についてはこちらの3枚目の写真をどうぞ)が一部で癒合しています。この様な翅脈を持つチャタテムシは、北海道大学農学部の吉澤和徳準教授が執筆された「Morphology of Pscocomorpha(チャタテ亜目の形態学)」に載っている翅脈図を見ると、マドチャタテ科だけです。ウスイロチャタテ科の翅脈とも似ていますが、ウスイロチャタテ科ではRs脈とM脈は一点で接するだけの種類が普通の様です。
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この角度から見ると、顔や姿は一見ケチャタテ科に似ている
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 マドチャタテ科とウスイロチャタテ科の翅脈上の明確な違いは、前者では後翅のRs脈がM脈と部分的に癒合しているのに対し、後者では横脈で繋がることが上げられます(吉澤教授も参加されている「Tree of Life Web Project」に拠る)。しかし、今日の写真からは後翅の翅脈は良く見えません。
 この「Tree of Life Web Project」に書かれているウスイロチャタテ科の特徴を読むと、他のチャタテムシでは翅をテント型(tent-like)に畳むのに対し、ウスイロチャタテ科では水平(held in horizontal position)であると書かれています。確かに、以前紹介した「ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)(雌)」では翅が水平に近い状態で畳まれていますが、今日のチャタテムシは普通のテント(屋根)型の翅をしています。
 また、マドチャタテ科は樹皮や岩の表面に生息するのに対し、ウスイロチャタテ科は木の枝に付いた枯葉や落ち葉(腐植土)に住むとのことです。
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背側からの写真をもう1枚.全長2.3mm、樹皮凸凹に紛れて
肉眼では何処にいるのか容易には分からない
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 以上から、この樹皮下で見つけたチャタテムシはマドチャタテ科に属すと考えて良いと思います。
 マドチャタテ科は、富田・芳賀「日本産チャタテムシ目の目録と検索表(1991)」に拠れば1属5種、吉澤教授の「Checklist of Japanese Psocoptera (Jul. 9, 2004)」では1属7種で、属としてはPeripsocus属1属しか記録されていない様です(「Tree of Life Web Project」に拠ると、全世界ではアジアを中心に12属235種が記録されているとのこと)。吉澤教授のリストは富田・芳賀論文にある5種を全て含んでおり、更に、P. phaeopterusP. hongkongensisの2種が追加されています。
 芳賀・富田の検索表では、前翅は無毛→前翅長は2.0mm以下で、直ぐにP. pumilis(クロヒメマドチャタテ)に落ちてしまいます。しかし、このチャタテムシがどんな虫なのか、調べてみましたが良く分かりませんでした。北隆館の図鑑ではヒメマドチャタテの解説の中でこのクロヒメマドチャタテについて触れていますが、交尾器の構造についてしか書かれていません。
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斜めから見ると、頭の形がケチャタテ科とは異なる
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 検索表ではP. pumilisに落ちましたが、吉澤教授が追加された2種がまだ残っています。この2種の内、P. phaeopterusは同教授の「皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ昆虫」に載っていて前翅長約3mmとあり、また、Web上の写真(ポルトガルのアゾレス大学のサイト)では全身殆ど真っ黒で、明らかに異なります。P. hongkongensisについては良く分かりませんが、分布は国後島と香港と云う奇妙な組み合わせになっています。Web上で探してみましたが、このチャタテムシについても有意な情報は何も得られませんでした。
 以上の考察からは、今日のチャタテムシはP. pumilis、或いは、P. hongkongensisの何れかとなります。しかし、そうと結論を出すのは些か無茶と云うものでしょう。
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同じ様な写真をもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 吉澤教授の「皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ昆虫」では、他にPeripsocus sp.が記録されており、まだ、マドチャタテ科の中に未記載種や未記録種があることが示されています。日本産のマドチャタテ科がどの程度研究されているのか良く分かりませんが、吉澤教授のチェック・リストの中には教授によって記載された種が一つもありませんので、研究は不充分であろうと推測されます(教授が研究されたチャタテムシ科の場合、46種中20種が教授の記載に拠る新種です)。
 日本産マドチャタテ科は今のところPeripsocus属1属だけです。しかし、「アジアを中心に12属が生息する」とのことですから、まだ、国内には未記載種や未記録種ばかりでなく未記録属が居る可能性もあります。そこで、今日の表題は、Peripsocus sp.としたいところをぐっと我慢?して、「マドチャタテ科の1種(Peripsocidae gen. sp.)」とだけにしておきました。

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2010年4月 7日 (水)

ナガケチャタテ(Mepleres suzukii)の幼虫?(その2)

 先日、ニセケチャタテ科(Pseudocaeciliidae)に属すナガケチャタテ(Mepleres suzukiiの幼虫ではないかと思われるチャタテムシの幼虫を掲載しましたが、今日は、恐らくそれと同種で少し齢の若い幼虫を紹介します。
 場所は先日の幼虫と同じく国分寺崖線下の四丁目にある何も生産していない「生産緑地」で、そこに植えられているミカンの木の葉裏に居ました。体長は約1.6mm、先日のが約2.0mmでしたから、2回り程小さいと言えます。

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四丁目のミカンの葉裏に居たナガケチャタテ(?)の幼虫
翅の原基はまだ小さくやや長めの突起状
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/02/24)

 実は、これを撮影したのは先日紹介した幼虫より約1ヶ月前になります。今年はチャタテムシの幼虫を彼方此方で撮ったので、今日紹介する幼虫のことをすっかり忘れていたのです。
 先日の「ナガケチャタテの幼虫?」と較べると腹部がかなり白いですが、全体の色合い、体や触覚にある毛の生え方、顔付き等はソックリです。この辺りには、この様な長い毛を持つチャタテムシが他に居ないことも考慮に入れると、同種の若齢幼虫として間違いないでしょう。
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腹部や頭部、触覚に長い毛が生えている
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/02/24)

 明確に異なるのは、翅の原基です。先日の個体では原基の先端は腹部の半ばにまで達しており、如何にももう少しで翅になると云う感じでしたが、今日の幼虫では横に張り出してから後に折れて細まる突起に過ぎません。
 この様な突起を持つ幼虫が、何回脱皮すれば先日の様な長い原基を持つ幼虫になるのか、全く情報がありません。しかし、何となく、1回の脱皮でそうなる様な気もします。
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正面や側面から撮った写真は全て没になった
この写真はその代わりのつもり
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/02/24)

 今まで、チャタテムシの幼虫は小さ過ぎるのと種類が分かる可能性が少ないので余り撮りませんでした。しかし、色々な幼虫の写真を沢山撮り、それらを並べてみれば、その齢や種類まで分かる可能性があります(1種のKJ法です;KJは川喜田二郎の略)。
 また、この手の葉裏で生活するチャタテムシの幼虫は、脱皮を重ねても同じ場所にず~と留まっていることが多い様です。立った姿勢で焦点深度0.5mm以下の撮影をするのは非常にキツイ(命中率5%以下)のですが、努力をすれば、チャタテムシの幼虫に関する貴重な情報が得られるかも知れません。

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2010年4月 2日 (金)

ナガケチャタテ(Mepleres suzukii)の幼虫?

 今年はチャタテムシの当たり年?なのか、常緑樹の葉裏をめくると、チャタテムシの幼虫が屡々見付かります。多くは小さ過ぎて余り撮る気にならないのですが、今日紹介する幼虫は一寸大きめだったので撮影することにしました。
 場所は国分寺崖線下の「四丁目緑地」と「神明の森みつ池」との丁度中間で、何も生産していない「生産緑地」に植えられているミカンの木の葉裏に居ました。体長は2.0mmを少し越えています。幸い、テレプラスを持っていたので、約2倍で撮ることが出来ました。

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四丁目に植えられているミカンの葉裏に居たチャタテムシの幼虫
ナガケチャタテの幼虫ではないかと思うが定かでない
翅の原基、腹部、触角に長毛を持つ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 撮影している時は、腹部に白い斑があるので、以前掲載した「ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.」の幼虫かと思っていました。しかし、家に帰って写真を良く見ると、触角に長毛が密生しています。更に、触角だけでなく、翅の原基や腹部にも長毛が生えています。Ectopsocus属の幼虫と思われるものは、以前、我が家の庭に居たのを撮影していますが、長毛は生えていません。どうやら、別種の幼虫の様です。
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横から見たナガケチャタテ?の幼虫
体長は2.0mmを少し越える
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 圖鑑やWeb上にあるチャタテムシの情報は少なく、ましてや幼虫となると殆ど絶望的です。しかし、幼虫の触角に長毛が生えているのならば、成虫の触角でも同様ではないか、と云う気がします。
 成虫の触角に長毛が生えている種類を調べることはある程度は出来ます。北海道大学農学部の吉澤教授のHPにある「Checklist of Japanese Psocoptera」に載っている全ての科について、BugGuide.netで成虫の写真を調べてみました。幸い、リストに載っている20科全ての写真がありました。ザッと写真を見てみると、その中で、触角に長毛が生えているのは、ニセケチャタテ科(Pseudocaeciliidae)だけの様でした。
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正面から見たナガケチャタテ?の幼虫
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 しかし、1つの科の中で、触角に生える長毛の有無が分類学的にどれだけ意味を持つのか良く分かりません。吉澤教授のリスト(2004)より少し古い「富田・芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表(1991)」では、ナガケチャタテはケチャタテ科に属していました。他の科の中にも、触角に長毛を持つ種類が居る可能性は否定出来ません。そこで、もう少し調べてみると、ケブカチャタテ科のハグルマチャタテも触角に長毛を持つことが分かりました。翅に長毛を持つ種類は、触角にも長毛がある可能性があります。
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オマケにもう1枚.上の写真と同じ位置で動いていない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 しかし、これまで葉裏に潜むチャタテムシをかなり一生懸命探してきましたが、この辺り(東京都世田谷区西部)では、触角に長毛を持つ種類はニセケチャタテ科のナガケチャタテ(Mepleres suzukii)以外には見付かっていません。また、吉澤教授の「皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫(2000)」を見ると、翅に長毛を持つケブカチャタテ科とニセケチャタテ科の昆虫としてはナガケチャタテしか採集されておらず、ハグルマチャタテは「関東地方も含め平野部でごく普通に採集される種であるにも拘わらず、本調査で採集されなかった種」の1つとして挙げられています。
 ナガケチャタテMepleres suzukii)の成虫は以前「三丁目緑地」で撮影したものを掲載しました。このナガケチャタテ成虫と今日のチャタテムシ幼虫の正面から撮った写真を見比べると、かなりよく似た顔付きをしています。また、触角の形やその毛の生え方もソックリです。体長も成虫の方が2.3mm、今日の幼虫は2.0mm強でおかしくありません。
 この両者の写真を見ていると、どうもこの幼虫はやはりナガケチャタテの幼虫ではないか、と云う気がして来ました。しかし、断定するには根拠が稀薄です。「?」を付けて「ナガケチャタテの幼虫?」としておきました。

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2010年3月14日 (日)

ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)(雌)

 今日は、昨年の丁度今頃撮影したチャタテムシを紹介します。これまで掲載してきたチャタテムシ類(ケチャタテ科、ホソチャタテ科等)とは一寸違うチャタテムシで、ウスイロチャタテ科(Ectopsocidae)のEctopsocus(和名無し)属に属す様です。
 国分寺崖線下の四丁目にあるミカンの木の葉裏に居ました。体長2.9mm、翅端まで3.3mm、前翅長は2.4mmとやや小さめです。

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ミカンの葉裏に居たウスイロチャタテ科のEctopsocus sp.
3個の単眼の内、前に位置するのは少し小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 翅脈はかなりハッキリ見えますが、残念ながら上下の翅が重なっていて、科の判別に役立てるのは一寸キツイところです。しかし、このチャタテムシと非常に良く似たチャタテムシの1種を我が家で見付けており、この時は偶然にも、翅脈相がかなりハッキリ見えました。
 それを「Yosizawa K. (2005) Morphology of Psocomorpha. Insecta Matsumurana,Series entomology,New series,62,1-44」に載っている各科の翅脈相と比較すると、これはウスイロチャタテ科の翅脈です。前翅は後小室を欠き、M脈とRs脈がほぼ1点で交わり、また、後翅のM脈とRs脈の間に横脈があります(翅脈相についてはこちらの3番目の写真をどうぞ)。
 BugGuide.netで画像を探しても、このチャタテムシに良く似ているのは、ウスイロチャタテ科の虫だけです。ウスイロチャタテ科として間違いないでしょう。
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汎世界のE. briggsiに似るが、色が少し違う
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 この個体は、雌と思われます。と云うのは、これとソックリの色合いと翅脈をした雄と思われる腹部が遙かに小さい(従って、相対的に翅が長い)個体も居たからです。BugGuide.netでウスイロチャタテ科(Ectopsocidae)の写真を見ると、今日の写真の様な翅の長くない個体を雌、腹部に比して翅の長い個体を雄としています。
 雄の方も写真はシッカリ撮ってありますので、今日は雌のみにして、雄の方は、また別の機会に紹介したいと思います[追記:雄の方は2012/03/03に漸く掲載しました]。
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チャタテムシの幼虫が一緒に居るが恐らく別種
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 日本産ウスイロチャタテ科は、「富田・芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表(1991)」では8種(未記載種を含めず)、北海道大学の吉澤教授の目録(Checklist of Japanese Psocoptera、2004)でも8種で、全て同じ種が記録されています。この2つの目録の間には、ケチャタテ科やケブカチャタテ科などでは相当の違いがあるのですが、ウスイロチャタテ科では何故か一致しています。分類が安定しているのか、未研究なのかは良く分かりませんが、多分後者でしょう。
 しかし、残念ながら、富田・芳賀の検索表は写真からの判別には利用出来ません。この論文のウスイロチャタテ科の検索表では、検索キーに写真からは判別できない生殖器やその他の非常に細かい構造を使用しているからです。
 それでも属の判別は出来ます。日本産のウスイロチャタテ科は、Ectopsocopsis属とEctopsocus属の2属からなり、前者に属すのはクリイロチャタテ(Ectopsocopsis cryptomeriae)1種のみです。このチャタテムシは北隆館の圖鑑にも載っており、また、BugGuide.netにも写真が沢山あります。翅全体が一様に栗色をしたチャタテムシで、明らかに今日の写真の虫とは違っています。従って、消去法によりこのチャタテムシはEctopsocus属と相成ります。
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チャタテムシの顔は漫画的で楽しい
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 次に、種を決めたいところです。しかし、状況的証拠と絵合わせしか使えません。東京都本土部昆虫目録を見ると、Ectopsocus属はE. briggsi1種のみで、皇居からの報告です。これは吉澤教授の「皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」を元にして書かれています。そこで、この吉澤教授の論文を見てみると、その他に未記載種が1種が載っていました。皇居の昆虫相は、一般にこの辺りよりもかなり豊富ですから、今日の写真のチャタテムシはこの2種の何れかの可能性が大です。
 幸い、この論文には虫の特徴が簡単に書かれています。未記載種の方は、雄生殖器の形態についての記述ばかりですが、前翅長約1.5mmとあります。また、E. briggsiについては、「前翅長約2mm.前翅が透明または淡褐色で、翅縁の各脈の末端部に褐色の微小斑を具える点が特徴的.(中略)国内に広く分布する普通種」とあります。
 写真のチャタテムシは、前翅長が約2.4mm、各脈の末端部には褐色の斑が認められます。前翅長が少し長いですが、E. briggsiの特徴を持って居ると言えます。
 このE. briggsiは汎世界種で、写真はBugGuide.netに沢山あります。それを見ると、写真のチャタテムシに良く似ています。しかし、BugGuide.netの写真では腹部の色が茶色をしているのに対し、写真のチャタテムシには白っぽい斑の帯があり、また、全体の色も少し灰色を帯びています。
 どうも、E. briggsiとするには些か不安があります。ここでは、グッと我慢?して、種未同定のEctopsocus sp.としておきましょう。
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オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 昨年の春は、このEctopsocus sp.を色々な所で見付けました。何れも、常緑樹の葉裏ですが、その多くはクモが捕食した昆虫の滓が溜まっている所でした。
 一昨年の夏に、もう一つWeblog「我が家の庭の生き物たち」で紹介した月桂樹の葉裏に群れていた「チャタテムシの1種」は、このEctopsocus sp.に非常に良く似ています。このチャタテムシも、古い葉裏に沢山付いている吸汁性昆虫の脱皮殻や排泄物などに生えたカビを食べていたものと思われます。この手のチャタテムシは、或いは、動物性の残渣に生えるカビを好むのかも知れません。

[追記]表題及び本文中の5個所に、Ectopsocusとすべき所を、Escopsocus或いはExtopsocusと書き間違えをしていた部分がありましたので、本来のEctopsocusに書き換えておきました。また、EctopsocopsisExtopscopsisと打ち間違えて居りましたので、これも訂正致しました。(2012/02/26)

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2010年3月 3日 (水)

ケチャタテ科の1種(その4:卵塊の網掛け)

 今日は一寸古い写真を出すことにします。一昨年の秋や昨年の冬~春にかけて撮影したまま倉庫に眠っている写真が沢山残っているのです。その中から今日は、チャタテムシが産卵後、卵塊に網を掛けているところを紹介しましょう。
 場所は国分寺崖線下の四丁目で、これまで何回も登場したミカンの木に居ました。葉裏ではなく、何故か、葉表に産卵していました。

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卵塊の上に糸を張るケチャタテ科の1種
まだ糸は何処にも見えない
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 このチャタテムシは以前「ケチャタテ科の1種?」として紹介したのと同じ種類に見えます。尾端が見えないので体長は分かりませんが、翅端まで4.5mm強、前翅長は4mm近くもある、かなり大きなチャタテムシです。
 全体の形や翅脈からケチャタテ科(Caeciliusidae)に属すことは間違いないでしょう。「富田&芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表」を見ると、多分Valenzuela属の1種だと思います(この論文ではCaeciliusとなっていますが、現在ではValenzuela)。しかし、種は未だに良く分かりません。トビモンケチャタテ(Valenzuela badiostigma)の色が薄い個体なのではないかと云う気もします。Web上にあるトビモンケチャタテの写真を見ると、多くは殆ど翅全体が非常に色の濃い茶褐色を呈していますが、トビモンケチャタテの種名badiostigmaとは「栗色の斑」の意なので、本来はまだら模様ではないのか、と思うからです。
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普通は葉裏に産卵することが多いが葉表である
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 しかし、先の検索表を辿ると一寸違う様です。この検索表では「縁紋は後角の位置に斑紋を持つ」を経ないとトビモンケチャタテには落ちません。ところが写真のチャタテムシでは、縁紋の後角ではなく、前半に斑紋があります。
 まァ、この検索表が書かれた(1991年)後に、日本産ケチャタテ科は8種も追加され、全部で22種となっていますから、その8種の中に含まれているのかも知れません。
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卵塊の上に縦横斜めに糸を張る
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 さて、母虫の網掛けの方に話を移しましょう。クサカゲロウの糸はお尻から出ますが、母虫の動作を見ると、チャタテムシは、芋虫毛虫と同じく、口から糸を吐く様です。何とか糸が写らないか、沢山撮ってみたのですが、残念ならが口から糸が出ていることを示す写真は遂に撮れませんでした。
 このチャタテムシを見付けたのは、糸を張り始めた直後の様です。最初の2枚の写真には糸は1本も写っていません(勿論、光の加減で見えていない糸もあると思います)。
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ケチャタテ母さんはおっかない顔をしている
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 卵塊の上を縦横斜めと色々な方向に糸を張って行きます。その速度は、特に速くもなく遅くもありませんが、休むことなく、一生懸命やっていると云う感じがしました。最初の写真から最後までの間に約13分が経過しています。
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卵塊に平行して糸を張る.典型的なケチャタテ科の
翅脈をしている.後小室が大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 ストロボを何回も光らせたせいか、母虫は途中で逃げ出してしまいました。下の写真に示す様に、まだ糸は充分張られていません。普通は、もっとビッシリと糸を張ります。
 母虫にとって大切な作業の邪魔をしてしまったことになり、一寸申し訳ない感じがしました。その後、この母虫が戻って糸張り作業を再開したか否かは分かりません。多分、戻らなかっただろうと思います。
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卵塊と糸.母虫は途中で網掛けを放棄した
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 一寸、画像倉庫を調べてみたら、一昨年の秋に撮影したまま放置してある写真は相当な数に上る様です。お蔵にしてしまうのも勿体無い話なので、出来るだけ更新頻度を上げて、これらの写真も紹介することにしたいと思います。

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2010年2月27日 (土)

ケチャタテ科の1種(Valenzuela flavidus?)

 今日は、またチャタテムシです。この黄色と茶色のチャタテムシはこの辺り(東京都世田谷区西部)では良く見る種類で以前から何度も撮っているのですが、種が分かりそうで分からず、今まで掲載を保留していたのです。
 最初の3枚は、一昨年の11月末に「四丁目緑地」と「神明の森みつ池特別保護区」との間に位置する空地(生産緑地となっているが何も生産していない)にあるミカンの木で撮影したもので、後の4枚は不動坂下の4丁目に生えているヤツデの葉裏に居たものです。

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ミカンの木にいたValenzuela flavidusと思われるチャタテムシ
体長3.2mm、翅端まで4.3mm、前翅長は3.4mm
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 その他、写真は出していませんが、「神明の森」の上に位置する「みつ池緑地」や「四丁目緑地」で見たこともあります。
 体長は3.2mm、翅端まで4.2~4.3mm、前翅長は3.4mmです。中型のチャタテムシで、翅脈相からケチャタテ科(Caeciliusidae)の1種として間違いないでしょう。
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上と同一個体.後小室が大きく、縁紋を縁取る翅脈は黄色
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 一見したところ、以前紹介した「ケチャタテ科の1種(その2)」や「チャタテムシの1種」と似ています。特に後者は前翅後縁基部や胸背が茶色をしており、今日のチャタテムシとソックリです。
 この2種に共通する特徴としては、複眼が黄色く、後小室(こちらの2番目の写真を参照)が狭く膨らんでいないこと、翅脈の色が一様であることなどが挙げられます。
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上と同一個体.複眼は褐色、触角の先端部は黒いが基部は褐色
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 しかし、今日のチャタテムシは、複眼は茶色で、後小室は大きく半月形をなし、縁紋(こちらの3枚目の写真を参照)を縁取る翅脈が鮮やかな黄色をしています。明らかに別種です。
 「富田&芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表」では、「縁紋は全体に黄色」とするとキイロケチャタテ(この文献では「Caecilius yapanus」となっていますが、現在では属が変わり「Valenzuela japanus」.なお、「yapanus」は「japanus」の誤植)に落ちます。しかし、「吉澤和徳:皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」に拠ると、キイロケチャタテは「前翅を含め、体が一様に黄色を呈する」とあり、また、吉澤教授がHPに載せられているキイロケチャタテの写真を見ると、実際に殆ど全体が真っ黄色で、複眼も黄色をしています。今日のチャタテムシとは異なる様です。
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ヤツデの葉裏に居たV. flavidusと思われるチャタテムシ
体長3.2mm、翅端まで4.2mm、前翅長は3.4mm
手前はチャタテムシの卵で、この個体が産んだものらしい
暗青色のチャタテムシの卵はこれまで見たことがない
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 前述の検索表で「縁紋は全体に黄色ではない」を辿ると、Valenzuela luteovenosusV. kamakurensisV. gracilis(何れも和名なし)の何れかとなります(この内、V. gracilisの分布は北海道で、この辺りには生息しないらしい)。しかし、問題はこの検索表が些か古い(1991年)ことで、この論文ではケチャタテ科は15種(現在ではニセケチャタテ科に入れられているナガケチャタテが入っているので実際は14種)となっていますが、吉澤教授の最新のリストを見るとケチャタテ科は全部で22種で、実質8種も増えています。
 こうなると、素人としてはどうしようもありません。
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同一個体(以下同じ).胸背、触角や縁紋の色
大きな後小室など、全て最初の個体と一致する
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 しかし、「吉澤和徳:皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」(2000年)を見ると、ケチャタテ科は5種しかありません。皇居は昆虫相の豊富な所で、この辺りよりも多くの種類が生息しています。逆さに云えば、この論文に載っていないチャタテムシがこの辺りにいる可能性はかなり少ないでしょう。幸いなことに、この論文には種の簡単な記述が載っています。それを読むと今日のチャタテムシに近いのはV. flavidus(和名なし)です。「前翅長約3mm、黄色中型のチャタテムシで、黒色の触角と、前翅翅脈の端半部のみが黒色を呈する点が特徴.国内からはこれが初記録となるが、広く分布する普通種である.・・・」とあります。
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何時見てもチャタテムシの顔は漫画的
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 しかし、写真のチャタテムシでは、触角の基部側半分は褐色で、前翅翅脈の端半部も黒色ではなく褐色です。今日のチャタテムシが本当にV. flavidusなのか、些か疑問を感じます。そこで写真を探すことと相成ります。幸い、このV. flavidusは全北区に分布するので、Bugguide.netにも沢山の写真が載っています。
 それらの写真を見ると、今日のチャタテムシに非常に良く似たものが相当数あります。しかし、かなりの変異が認められ、中には触角の基部から黒い個体もあり、また、縁紋を縁取る翅脈が黄色くない個体もあります。
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オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 buguguide.netの情報がどの程度正確なのか良く分かりませんが、これらの写真を見る限り、今日のチャタテムシはValenzuela flavidusの可能性が高いのではないかと思います。しかし、確証に欠けますので、此処では「Valenzuela flavidus?」と「?」を付けておくことにしました。
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オマケの2枚目.しかし、チャタテムシは二枚目ではなく三枚目?
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 尚、吉澤論文に拠ると、1910年に岡本半次郎氏が記載したV. kamakurensisV. flavidusに極めて似ており、同種の可能性もあるとのことです。どうも、まだ日本のケチャタテ科は充分に研究されていない感じがします。今後、新種が出る可能性も高いのではないでしょうか。

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