カテゴリー「昆虫-6」の30件の記事

2009年3月26日 (木)

トラフコメツキ

 早春の虫、その第2段はトラフコメツキ(Selatosomus onerosus)です。コメツキムシが早春の虫とは少し意外かも知れませんが、このトラフコメツキは、先日のビロウドツリアブ同様、春にしか現れません。
 「四丁目緑地」の草の葉に逆さ向きに留まっていました。体長10~15mm、中型のコメツキムシで、コメツキムシ科ベニコメツキ亜科(Denticollinae)に属します。

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トラフコメツキ.早春に現れるコメツキムシ
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2009/03/19)

 コメツキムシと言うと、以前紹介したクロクシコメツキ?サビキコリの様に、褐色~黒色の種類が多いのですが、鞘翅に模様を持つものも少なからず居ます。
 しかし、この辺り(東京都世田谷区西部)にいるコメツキムシで、鞘翅に斑紋がある種類は、このトラフコメツキ以外に知りません。
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暖かい陽射しの中で居眠り?
(2009/03/19)

 保育社の昆虫図鑑(甲虫図鑑ではない)には、「早春平地でみられるが多くない」と書かれています。しかし、この日は写真の個体よりもう少し小さい別個体も見ましたし、一昨年(2007年)の4月には我が家でも何度か見かけた位で、極く普通種の様です。東京都本土部昆虫目録を見ても、東京都内の多くの場所で記録されています。
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ストロボの光を浴びて目を覚ましたところ
(2009/03/19)

 この日は、東京(大手町)の最高気温が23.2度にも達し、暖かいを通り過ぎて暑い位でした。コメツキムシ君、葉の上でうたた寝をしていた様子でしたが、ストロボで目を覚まされ、その内ゴソゴソ動き始めました。予想通り、やがて翅を拡げて近くのぺんぺん草(ナズナ)に移りました。最後の2枚はそのぺんぺん草に居るところを撮ったものです。
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何となく、飛んで逃げそうな雰囲気
(2009/03/19)

 コメツキムシの幼虫は土中や朽ち木の中に棲息し、中には雑食性や捕食性ものも居ます(サビキコリ類等)が、多くは植食性です。クロクシコメツキ、クシコメツキ、マルクビクシコメツキ、コガネコメツキ等、農業害虫とされている種類もかなりあります。
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ぺんぺん草(ナズナ)に移ったトラフコメツキ(2009/03/19)

 幼虫の形は、小鳥や爬虫類、両棲類等の生き餌として養殖・販売されているミールワームによく似ています。しかし、ミールワームは、コメノゴミムシダマシ、チャイロコメノゴミムシダマシ等のゴミムシダマシ科の幼虫です。ゴミムシダマシ科はコミムシダマシ上科、コメツキムシはコメツキムシ上科に属しますから、かなり遠縁なのですが、肉眼的には殆ど区別が付かない位よく似ています。
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トラフコメツキの顔.かなり険悪
(2009/03/19)

 春の植物はもう色々咲いているのに、春の虫はの方はまだ余り見かけません。次回はまた雑草を紹介することになります。

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2009年3月22日 (日)

ビロウドツリアブ

 好天が続いているので、脚力を付けるのを兼ねて、毎日写真を撮りに出ていました。考えてみると、毎年この頃は東南アジアに居るか、或いは、その準備や事後の整理で忙しく、一度もこの時期の動植物は紹介していませんでした。特に植物は、様々な可憐な雑草が咲いているのですが、これらがこのWeblogから全く抜けています。それを補う意味で、この数日は植物をかなり色々撮りました。
 しかし、虫の方も漸く越冬個体ではない、春に羽化した虫達が出現して来ました。今日はその中から、最も春らしい虫、ビロウドツリアブ(Bombylius major)を紹介します。長い口吻を持ち、ビドウドの様な長毛に包まれた、剽軽な雰囲気のアブです。1年の内で早春にしか出現しません。虫をある程度知るものにとっては、ギフチョウやコツバメと並ぶ、春の象徴とも言える存在です(因みに、この辺りにはギフチョウは勿論、コツバメも居ません)。

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草の上で休むビロウドツリアブ(雌).これ以上近づけなかった
小さく写っているのを無理に拡大したので少し荒れている
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2009/03/19)

 ビロウドツリアブはツリアブ科に属します。九州大学の日本産昆虫目録に拠ると、ツリアブ科は6属21種が記録されており、その内Bombylius属は4種で、本州にはその4種の何れもが棲息しています。
 最近はどうも双翅目(蚊、アブ、ハエ)となると、種の判別に関して疑心暗鬼になってしまい、本当にビロウドツリアブなのかが心配になってきます。しかし、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」を運営している「ハエ男」氏のサイトにあるビロウドツリアブの写真と酷似していること、東京都本土部昆虫目録にはBombylius属はビロウドツリアブ1種しか載っていないこと等から、ビロウドツリアブとして問題ないと思います。
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石の上に留まるビロウドツリアブ
左右の複眼が接しているので雄
(2009/03/21)

 空中静止を得意とするアブです。見えない糸でつり下げられた様に見えるので、ツリアブと名が付いたのだそうです。
 留まるのは草や地面の上が多い様ですが、下の写真で示した様にボケや、また、先日紹介したオオイヌノフグリの花に来ていることもありました。ボケの花に来ているところを良く見ると(他に数枚の写真あり)、口吻の先は奥の蜜線へではなく、雄蕊の先端付近で留まっています。吸蜜ではなく、花粉を食べ(唾液を出して溶かしてから吸う)に来ているのかも知れません。
 「The European Families of the Diptera(欧州産双翅目の科)」と言う本を見たら、成虫雄は密を吸い、雌は花粉を食べるのが普通と書かれていました。ボケに来ているのは雌(複眼の間隔が広い)ですから、やはり、花粉目当てで正しい様です。雌は、卵を成熟させる為に、蛋白質の多い餌を必要としているのです。
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ボケの花で花粉を食べるビロウドツリアブの雌
雌は左右の複眼間が広く空いている
(2009/03/21)

 この双翅目の本に拠ると、ツリアブ科(Bombyliidae)の幼虫は、寄生性ないしは捕食性で、多くはハチ類に寄生するとのことです。内部寄生ではなく、巣の中の卵や幼虫を食べ尽くす方式です。他に、蜘蛛やバッタの卵塊を食べるもの、土中の蛾や甲虫の蛹等に寄生する種類もあるそうです。
 なお、保育社の図鑑には、ビロウドツリアブの幼虫はヒメハナバチ科の幼虫に寄生すると書かれています。
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斜め前から見たビロウドツリアブの雌
上と同一個体と思われる.一見ヘタって見えるが
非常に敏感、この後直ぐに逃げられてしまった
(2009/03/21)

 撮影したのは、四丁目の国分寺崖線下です。この数日中に何度も見たのですが、非常に敏感で容易に近づけませんでした。空中静止をしているところを含めて、もう少し色々な角度から撮りたかったのですが、諦めてこの辺りで掲載することとしました。姿の珍妙な虫なので、後でもっと良い写真が撮れたら、その時また掲載し直すことにしましょう。

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2009年3月15日 (日)

エグリヅマエダシャク

 最近はどうも掲載する虫の種類がハエやチャタテムシに偏っています。何か違うものを出そうと、迷っている間に1週間経ってしまいました。
 そこで、一寸翅が破けているのですが、久しぶりに蛾を紹介することにしました。蛾と言っても、冬に出る種類ではなく、昨年の10月下旬にサザンカの花に来ていたシャクガの1種です。
 エグリヅマエダシャク(Odontopera arida arida)、シャクガ科エダシャク亜科に属す、開張45mm前後の中型の蛾です。

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サザンカの花で眠るエグリヅマエダシャク
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/10/22)

 朝5時半頃、散歩の途中に寄ったサザンカの花に来ていました。まだ薄暗い時刻です。このサザンカは、以前紹介したホシヒメホウジャクウスキツバメエダシャクコガタスズメバチ等を撮影した、6丁目のある御宅に垣根として植えられているサザンカです。  見付けたときは、上の写真の様に、上下逆さまに頭を花の中に突っ込んで、全く身動きしませんでした。夜の間に吸蜜に来てその儘寝てしまった、と言う感じです。
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チョッカイを出したら少し移動して葉に留まった
この蛾は屡々蝶の様に翅を垂直に畳んで留まる
(2008/10/22)

 これでは写真にならないので、一寸チョッカイを出して、眼を醒ましてやりました。幸いにも、遠くには逃げず、直ぐ近くの山茶花の葉に留まりましたが、初めは蝶の様に翅を垂直に畳んで居ました。「みんなで作る日本産蛾類図鑑」を見ると、この蛾は屡々こう言う留まり方をする様です。
 蛾の生態写真では普通は見えない後翅の裏側が写っています。その中央付近に暗色の輪郭を持つ白斑があります。これはこの種の特徴の様です。
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普通の留まり方.翅が破けているのが残念
(2008/10/22)

 やがて普通の蛾の姿勢に変わりました。淡色と暗色からなる外横線があり、中室付近(小室?)に後翅の翅裏と同じ様な丸い紋があります。
 翅が少し破けていますが、前肢外縁に独特のデコボコがあります。これらがこの種の決め手です。
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真横から見たエグリヅマエダシャク
翅が破けているのが顕で本当は出したくない写真
(2008/10/22)

 今回は学名に亜種名まで入れてあります。種名と亜種名が同じですから、基亜種(原亜種、原名亜種)であることを示しています。基亜種であれば、亜種名は書かなくても良いのですが、「みんなで作る日本産蛾類図鑑」に拠ると、他に伊豆諸島亜種(Odontopera arida melancholica)があるので、特に入れておきました。
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エグリヅマエダシャクの横顔
(2008/10/22)

 エグリヅマエダシャクの食草は、保育社の蛾類図鑑ではチャ(茶)となっています。しかし、「みんなで作る・・・」に拠ると、ツバキ科、ブナ科、バラ科、ミズキ科、ツツジ科、スイカズラ科等相当広い範囲の木の葉を食べるそうです。
 越冬態は幼虫です。サザンカはチャと同じツバキ科ですから、このサザンカに来ていた本当の目的は、吸蜜ではなく産卵であったのかも知れません。
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背面からの拡大(2008/10/22)

 やはりこう言う晩秋の象徴のようなサザンカに留まった虫の写真を今頃(初春)出すのは、些か気が引けます。調べてみると、今年はまだ1回しか撮影に出掛けていませんでした。今日は天気も良く風も無いので、これからカメラをぶら下げて散歩にでも行こうかと思っています。

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2009年3月 8日 (日)

シマバエ科の未記載種(その2:Steganopsis sp.2

 今日は以前から予告していたシマバエ科の未記載種、「埼玉県昆虫誌」でSteganopsis sp.2とされているハエを紹介します。S. sp.1の方は既に掲載済みです。
 尚、このハエに関する情報は、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」から得たものです。私自身は、未だに「埼玉県昆虫誌」を持っておりません(一寸高いので・・・)。

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シマバエ科の未記載種Steganopsis sp.2
黄色い菊花に来ていたので黄色カブリで色調が少し変
色が黒くて背が丸く、遠くから見ると甲虫の様
翅が下側に急角度で曲がる点はカスミカメムシ的
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/25)

 撮影したのは先日のSteganopsis sp.1と同時同所で、昨年の11月25日に七丁目の第1家庭菜園(世田谷区ファミリー農園)の縁に植えられている菊の花に来ていました。残念ながら黄色い菊に留まっていたので、写真は黄色カブリを起こし、色調が少し変になっています。sp.1の方はこの時期に何度か見付け、赤い花にも来ていたので綺麗な写真も撮れましたが、このsp.2は、写真の黄色い菊花に来ていた1頭1度だけで、色調の良い写真は遂に撮れませんでした。
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真横から見たSteganopsis sp.2
シマバエ科のハエでは、触角は有毛で
前腿節下面に剛毛列がある
(2008/11/25)

 sp.1は褐色を基調とし、胸部背面に筋があり、京劇役者の化粧の様な赤、黒、白の派手な顔をしていました。中々の美麗種と言えますが、このsp.2の方は頭部を除いて殆ど真っ黒で、余り綺麗とは言えません。しかし、頭頂から顔面にかけてはやや黄色みを帯びた白色をしており、複眼は茶色の様に見えます。複眼の中に見える青や黄~赤色の模様は、ストロボ光の反射による構造色で、本来の色ではありません。
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斜め前から見たSteganopsis sp.2
額と顔面の大部分はは黄味を帯びた白色
真っ正面からは遂に撮れなかった
(2008/11/25)

 体長は、写真に見られる様な体を丸めた状態で、約3mmです。伸ばせばもう少し大きくなると思います。しかし、こう言う場合、何方を取るべきなのか、私には良く分かりません。「みんなで作る双翅目図鑑」にアノニモミイア氏提供の本種の標本写真が出ていますが、やはり、体は丸まった儘です。この標本写真を見ると、翅は少し赤みを帯びた黒色をしており、前縁部で特に色濃くなっています。
 大きさも色も体の輪郭も、少し遠くから見ると、やはり菊の花に来ていたルリマルノミハムシと間違えそうです。
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単眼域と額眼縁剛毛の基部は黒い
(2008/11/25)

 写真を見た限りでは、このsp.2も先日のsp.1も、何となく頼り無く鈍感な感じがします。しかし、実際は非常に敏感です。花に留まって食事中だったので写真をシッカリ撮ることが出来ましたが、草の上などに居るときは直ぐに逃げられてしまいます。
 sp.1は一度我が家の庭で見たことがあります。当然写真を撮ろうとしたのですが、”ニセ”アシナガキンバエマダラホソアシナガバエと同様、ストロボ光の増光に反応してストロボが充分明るくなる前に逃げてしまい、写真には葉っぱしか写っていませんでした。
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花弁の表から裏に回るSteganopsis sp.2
何となくぎこちない感じがするが実際は敏捷
(2008/11/25)

 未記載種と言うことは、まだこのハエを正式に記載した論文が無い、従って学名もないと言うことです。この様なまだ名前のない虫が、成城の様な都会の住宅地にも居ると言う事実は、一般の方には些か不可解なことかも知れません。しかし、双翅目(蚊、虻、ハエ)やその他の微小な昆虫では極く普通のことで、この辺りにもまだまだ未記載種がいる筈です。
 先日紹介したトガリキジラミの1種(その2)も、キジラミの研究をされているとりおざ氏によると、未記載種だそうです。
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本種の写真はWeb上に多くないので沢山貼っておく
黄色カブリで色調がおかしいのが何とも残念
(2008/11/25)

 しかし、未記載種と言っても、決して珍種なのではありません。このsp.2の方はやや少ないらしいですが、sp.1の方は普通種と言ってよく、このWeblog以外にも幾つかのサイトで紹介されています。
 普通種であるにも拘わらず、未だに記載されていないのは何故かというと、それは分類を担当する研究者の数が絶対的に不足しているからです。
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オマケその1(2008/11/25)

 北隆館の新訂原色昆虫大圖鑑第3巻にある双翅目の解説に拠ると、その時点(発行は平成20年)での日本産双翅目昆虫の総数は約5,400種ですが、未開拓の分野が多いので、将来的には約10,000種に上るであろう、とのことです。まだ、未記載種や未記録種が5,000種近くもあると言うことです。
 一方、研究者の数の方はどうかと言うと、「一寸のハエにも五分の大和魂」に九大名誉教授の三枝先生が「10年ほど前には10数名の双翅類分類学者が大学や博物館に在籍していたのですが,現在は1/3以下の数になってしまっています」と書かれている様に、甚だ寂しい状況です。数名の研究者で約5,000種を記載するのは、明らかに不可能です。
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オマケその2(2008/11/25)

 何故研究者が少ないかと言えば、それは分類学が地道で目立たない学問だからでしょう。本来、分類が正しく出来ていなければ生物学のあらゆる分野は科学として成り立ち得ないのですが、学生は電子顕微鏡、超遠心分離器、DNA自動分析機、高性能ガスクロマトグラフィーその他の最新鋭の機器を使ったカッコイイ分野に進みたがります。また、日本では一般に分類学を軽視する傾向がある様です。
 今の内に大学や関連する研究所で若い分類学者をもっと沢山育てる様にしないと、やがて日本は同定を外国に依頼しなければならない分類学後進国になってしまいます。

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2009年3月 3日 (火)

シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.1)(その2)

 昨年の夏に、「三ツ池緑地」で撮影した「シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.」を紹介しましたが、その時は直ぐに逃げられてしまい、写真は2枚しか有りませんでした。しかしその後、11月の下旬に七丁目の家庭菜園(世田谷区ファミリー農園)でこのSteganopsis sp.を何回か見付け、幸いシッカリ写真を撮ることが出来ましたので、もう一度掲載することにしました。

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シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.1
2種あるSteganopsis属未記載種の内、埼玉県昆虫誌で
sp.1とされている種類.褐色を基調とし背中に縦縞がある
黄色い菊花に居たので色カブリで色調が変になっている
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/25)

 既に紹介したセンダングサケブカミバエノゲシケブカミバエヒゲブトキモグリバエ?などと同じく、「ファミリー農園」の端に植えられている菊の花に来ていました。
 惜しむらくは、黄色い花が多いので、その場合は黄色カブリの写真となり、色が少しおかしくなっています。赤や青の花ならばこうはならないのですが、黄色カブリの場合はどうにも色補正が出来ません。
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複眼がストロボの反射で複雑な色を呈している
(2008/11/25)

 このシマバエ科のSteganopsis sp.は、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に拠れば、埼玉県昆虫誌に2種載っているSteganopsis属の未記載種の内、S. sp.1とされている種類です。体長3mm強、翅端まで4mmと小さいので、肉眼的には殆ど黒く見えますが、拡大してみると焦げ茶色の部分が多く、背中には縦筋が数本あり、頭部には独特の模様が有ります。また、胸側上側にある象牙色に近い顕著な白帯が目立ちます。複眼は本来は赤い様ですが、ストロボの反射で複雑な構造色を生じています。
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Steganopsis sp.1の顔.何とも派手な色彩
恰も京劇役者の如し(2008/11/26)

 前回の写真は何れも斜めからでよく顔が見えませんでしたが、今回は真っ正面からも撮ることが出来ました。顔の左右に白で縁取られた黒斑が1対、また、頭頂の単眼部も黒くなっています。白と黒と複眼の赤で、まるで京劇役者の化粧の様な配色です。こんな派手な顔をしたハエは他にいないのではないかと思います。
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身繕い中に体を浮かせた瞬間.撮る機会の非常に少ない格好
(2008/11/26)

 Steganopsis属は、九州大学の日本産昆虫目録には1種も載っていません。しかし、「一寸のハエにも五分の大和魂」と同じ運営者による日本産双翅目目録には3種あり、この内の2種はつい最近、10年ほど前に記載された種です。その他にまだ未記載種が2種あるのですから、双翅目(蚊、アブ、ハエ)と言うのは如何に未開拓の部分が多いグループであるかが分かると思います。
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普段はこう言う格好をしている
(2008/11/26)

 シマバエ科やSteganopsis属の特徴などは、既に掲載した「シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.」に書きましたので、此処では省略します。
 正面から撮った顔写真をもう1枚貼っておきます。これはF11(等倍撮影時の実効絞り値なので、レンズ焦点距離に対する本体の絞り値は1/2の5.6)で撮影したものです。他の写真よりも拡大率を大きくしてあるので少し荒れて見えますが、等倍接写の解像力としてはこれが普通の100mmマクロレンズの限界でしょう。このレンズの場合、F11(F5.6)辺りが一番解像力が高いのですが、焦点深度は非常に浅くなることがお分かり頂けると思います。焦点が合っているのは顔だけで、触角も頭部後方の剛毛もボケています。焦点深度は多分0.5mm以下でしょう。野外では普通実用にならないのですが、膝をついて撮影することが出来たので、何とかモノにすることが出来ました。
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正面からもう1枚.F11での極限撮影?
(2008/11/26)

 実はこの時、埼玉県昆虫誌にSteganopsis sp.2として載っているもう一方の未記載種も撮影することが出来ました。次回はこの「sp.2」を紹介することにします。

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2009年2月27日 (金)

ハムシダマシ

 最近は微小なハエやチャタテムシ等の掲載が続いています。今日は、一寸雰囲気を変えて、昨年の初秋に我が家の庭で撮った甲虫を紹介することにします。
 ハムシダマシ(Lagria rufipennis)、体長は図鑑に拠れば6.2~8.0mm、写真の個体は何れも約7mmです。遠目にはハムシの様に見えますが、写真に撮って見ると全身に細毛を帯びていて、随分ザラザラした感じです。ハムシ科は、Wikipediaに拠れば現在日本に約780種も棲息する大きなグループですが、体や鞘翅に細かいデコボコはあっても、細毛に被われている種類はいません。

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ハムシダマシの雌.全身が細毛で覆われている
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/01)

 ハムシダマシはゴミムシダマシ上科ハムシダマシ科(ゴミムシダマシ上科ゴミムシダマシ科ハムシダマシ亜科)に属すのに対し、ハムシはハムシ上科ハムシ科に属します。上科のレベルで所属が違うのですから、これはかなり遠縁であると言えます。以前紹介したセスジナガキマワリはゴミムシダマシ科ですから、このハムシダマシとはかなり近い訳です。一方、ハムシ上科には、他にカミキリムシやゾウムシの仲間が所属します。
 鞘翅目(甲虫類)も、双翅目(虻、蚊、ハエ)と並んで、「他人の空似」が所々に居る要注意のグループです。
 なお、ハムシダマシは、もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」では、一昨年に既に掲載済みです(内容はかなり異なります)。
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上と同じ個体.触角の末端節は比較的短く、胸部はかなり太い
(2008/09/01)

 今日掲載した6枚の写真の内、最初の2枚とその後の4枚では個体が異なります(撮影日が違います)。前の個体は胸部が太いのに対し、後の個体は胸部が細く、頭部も少し細長くて菱形をしています。始めは前者が雌、後者は雄だと思っていたのですが、保育社の甲虫図鑑を見ると、「雄の前頭幅は複眼横径の0.6倍、触角は非常に長く、末端節は第3~10節の和にほぼ等しい」と書いてあります。
 後の個体の写真を見ると、前頭幅はもっと広い様ですし、触角の末端節は第6~10節の和にほぼ等しく、明らかに図鑑の記載よりも短くなっています。
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ハムシダマシの雄に似た個体.しかし、触角の末端節は
図鑑の記載よりずっと短い
(2008/09/13)

 他に近縁種が居るのかも知れません。しかし、保育社の甲虫図鑑にはLagria属は3種しか載って居らず、他の2種は明らかに該当しません。また、他のハムシダマシ科にも似た種類は見当たりませんでした。
 そこで、九州大学の日本産昆虫目録を参照してみると、図鑑の3種の他にニセハムシダマシと言う種類が載っていました。学名を見ると、何と、甲虫図鑑でハムシダマシに当てられているLagria nigricollisは、九大の目録ではニセハムシダマシ(Lagria nigricollis Hope, 1842)であり、ハムシダマシの学名はLagria rufipennis Marseul, 1876 になっています。分布は何れも日本全土(島嶼については不明)の様です。命名年は何れも19世紀ですから、新種が発見された訳ではなく、また、分布も広いことから、これは以前から日本全土に棲息していた「ハムシダマシ」が、よく見てみると2種類であった、と言うことだと思われます。
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細毛に被われていて頭部の詳細が分からない
(2008/09/13)

 残念ながら、ハムシダマシとニセハムシダマシとの違いについて書かれた文献やWebサイトは見つかりませんでした。図鑑の記載その他から判断して、最初の2枚の写真に写っている個体はハムシダマシの雌として特に問題ない様です。
 しかし、後の細長い個体については、ここでは一応「ハムシダマシ」としておきますが、ハムシダマシの異常型、ニセハムシダマシ、或いは、その他の全然違うグループである可能性もあります。
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普通は見えるはずの顔が毛でよく見えない
(2008/09/13)

 ニセハムシダマシは、ハムシダマシと同属近縁種ですから、分けて書くとニセ・ハムシダマシとなります。昆虫の名前にはニセ○○○、○○○ダマシ。○○○モドキの類が沢山あります。ニセハムシダマシについて調べていると、余り虫に詳しくないと思しき人が、この様なややこしい虫の名前を面白がって、色々と書いているサイトがかなりの数見つかりました。ニセハムシダマシに付いても、「ニセハムシとハムシダマシの両方があるから、ニセハムシ・ダマシなのかニセ・ハムシダマシなのか分からん」と言う様なことを書いているサイトがありました。しかし、ニセハムシというハムシは居ません。ニセハムシと付く虫は、一見ハムシ的な、カミキリムシ科ハナカミキリ亜科に属すニセハムシハナカミキリ属(Lemula)の仲間が居るだけです。
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横から見ると頭部も毛だらけなのが分かる
(2008/09/13)

 ハムシダマシの話は簡単に済むだろうと思っていたのですが、本文記述中に念の為図鑑の解説を読んだ結果、途中から面倒なことになってしまいました。ややこしいのは双翅目だけではない様です。

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2009年2月25日 (水)

シナホソカトリバエ(Lispe sinica

 昨年の晩秋に、かなり沢山のハエを撮ったせいで、ハエの写真が溜まっています。そこで今日もハエを紹介することと相成りました。
 シナホソカトリバエ(Lispe sinica)です。撮影したのは、先日のヒメフンバエやウスイロアシブトケバエ()(これはハエと付いても蚊の仲間)と同じく、「三丁目緑地」の上部に群生しているシャクチリソバの葉上です。体長約5mm、翅端まで6.5mmですから、ハエとしてはやや小さめと言えますが、このWeblogで最近紹介しているハエと較べるとかなり大型です。

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シナホソカトリバエ(Lispe sinica).イエバエ科に属すが
M1脈(下端右から前縁脈を除いて3本目の翅脈)が真っ直ぐ
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/13)

 イエバエ科に属しますが、衛生害虫として有名な「イエバエ」とは随分形が違っています。これが双翅目の困ったところで、1つの科に属するにも拘わらず、様々な外見の種類が居ます。
 特にイエバエ科の場合は、このシナホソカトリバエの様にM1と呼ばれる翅脈(上の写真参照)が真っ直ぐな連中と、ニクバエ科やヤドリバエ科(例えば「アシナガヤドリバエの1種」)の様に前方に強く曲がる仲間の両方が居ます。
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腹側板(前肢と中肢の間)に3本の剛毛があるのだが
写真の解像度が低くて些か分かり難い
前脛節の中程に後ろ向きの剛毛がある
(写真を拡大して見て下さい)
(2008/11/10)

 イエバエ科に至るまでの検索や、その下の亜科や属の検索には、写真には写り難い(中肢や後肢の腿節で隠れてしまう)翅や胸弁の下側にある剛毛の有無やその数が問題になることが多く、ここに掲載した写真からは良く検索が出来ませんでした。こう言う場合は、WEB上にあるハエの写真を探して、似たような種類を見付ける以外に手がありません。
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小顎鬚(頭部の下に見える1対の構造)は幅広く黄色
(2008/11/13)

 探してみると、カトリバエの仲間によく似ていました。そこで、次は双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」でカトリバエの詳細な写真を探すことになります。この掲示板にはワード検索がありますので、直ぐに幾つかの生態写真や標本写真が見つかり、その内のシナホソカトリバエと非常に良く似ていることが分かりました。特に、Acleris氏が出されている標本写真と較べてみたところ、頭部、胸部、脚の剛毛は基本的に一致している様に見えました。しかし、双翅目に関して恐ろしいのは「他人の空似」です。
 イエバエ科に関しては「日本のイエバエ科」と言う文献があります(色々問題が指摘されていますが・・・)。亜科や属の検索は写真からでは無理でしたが、カトリバエ(Lispe)属内の検索では、些か怪しげですが、シナホソカトリバエに落ちました。
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解像度が低くて、翅の下の剛毛が良く見えない
(2008/11/10)

 そこでまた、この掲示板に御伺いを立てることと相成ります。するとたちどころにアノニモミイア氏より「ほぼ間違いなくシナホソカトリバエでしょう」との御回答を得ました。氏はその後、5枚もの同定の決め手となる詳細な標本写真を載せて下さいました。これらの写真と比較した結果、また、東京都本土部昆虫目録を見るとLispe属はシナホソカトリバエとトウヨウカトリバエの2種しか記録が無いことから、このハエはシナホソカトリバエとして問題ないものと判断しました。
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最初の写真とほぼ同じだが、横線前背中剛毛は明らかに1本
(2008/11/10)

 カトリバエとは「蚊取蠅」の意で、「日本のイエバエ科」に拠れば、この属(Lispe)の仲間のあるもの(成虫)は、蚊の幼虫、蛹、或いは、羽化してきた成虫を食べる肉食で、幼虫は水棲とのことです。
 また、成虫は海、汽水、川などの縁に普通に見られる、とあります。「三丁目緑地」に沢山いたところを見ると、このシナホソカトリバエは、緑地内に2個所ある清水から発生している可能性が大です。
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オマケにもう1枚(2008/11/13)

 このシナホソカトリバエ、11月の10日頃には非常に沢山いたので、後で撮ればよいと思い余りキチンと撮りませんでした(絞りを絞って深度を深くして撮ってあるので、解像度が低い)。しかし、22日に行ってみたところ、何と、1頭も見られませんでした。御蔭で解像度の高い写真が無く、剛毛の有無が分からなくて苦労しました。
 これに懲りて、その後はもう少し絞りを開けて解像力を上げて撮る様にしています(焦点深度が浅くなるので撮影は難しくなる)。既に紹介済みのセンダングサケブカミバエノゲシケブカミバエヒゲブトキモグリバエ?キタモンヒゲブトキモグリバエ等は、体長はこのシナホソカトリバエよりずっと小さいにも拘わらず、かなり高解像度で撮ってあるので、それなりに鮮明に写っています。

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2009年2月22日 (日)

ノゲシケブカミバエ(Ensina sonchi

 このところ雑用が多く、気が付くと4日も更新を空けていました。今後も暫く忙しい日が続くと思いますので、更新の頻度は以前よりかなり落ちるかも知れません。
 今日紹介するのは、ノゲシケブカミバエ(Ensina sonchi)、以前掲載したセンダングサケブカミバエと同じく、ミバエ科ケブカミバエ亜科(Tephritinae)に属します。体長は3.5mm弱、翅端まで4.5mm強ですから、かなり小さめのハエと言えるでしょう。
 居たのもセンダングサケブカミバエと同じく、七丁目の家庭菜園(世田谷区ファミリー農園)に植えられている菊花の上で、時期も同じ11月下旬です。

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ノゲシケブカミバエ(Ensina sonchi).青い綺麗なミバエ
ミバエとしては翅の模様が少ない
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/26)

 一応ミバエ科に属すところまでは自分の力で何とか分かりました。しかし、その先の検索表は手元にありません。北隆館の図鑑にはミバエ科はかなりの数載っているのですが、該当する種は見当たりませんでした。そこでまた、双翅目のBBS「一寸のハエにも五分の大和魂」の御世話になることと相成ります。
 すると、北大のウミユスリカ氏から、頭部の形態や翅の斑紋など、ノゲシケブカミバエEnsina sonchi (Linnaeus, 1767)によく似ている、との御回答を頂きました。しかし、この写真のミバエのR2+3脈には、下に矢印で示した様な小さな枝があります。これは、ノゲシケブカミバエには本来ない筈のものだそうです。氏のお話に拠れば、「イエバエ科などでも個体変異で一部の個体に(しばしば左右不相称に)出現することがありますので、その手の形質かもしれません」とのことでした。
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R2+3脈に枝がある(白矢印).前縁脈はSc脈の終点と
h脈の直後の2個所に切れ目がある.少し翅を拡げているので
翅脈が見易い(写真をクリックして拡大して見てください)
(2008/11/26)

 このEnsina属には、九州大学の日本産昆虫目録やそれよりも新しい上記BBSと同じ運営者による日本産双翅目科一覧でも、ノゲシケブカミバエEnsina sonchi1種しか居ません。R2+3脈に枝があってもノゲシケブカミバエとして良いと思いますが、ウミユスリカ氏は「専門家といっても私の畑はむしろ生態学分野ですし、研究対象として主に触れているのはニクバエ科、クロバエ科、イエバエ科といった有弁類です。(中略)私の写真からの同定は、まだまだ誤同定の危険をはらんでいることをお含みください」と附記されております。
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上より3日前に撮った写真.やはりR2+3脈に枝がある
(2008/11/23)

 このR2+3脈の枝は、2番目の26日に撮った写真ばかりでなく、23日の写真(上)にも見られます。2日置いて同じ個体を撮影したのか、それとも、この辺り(東京都世田谷区西部)のノゲシケブカミバエには、一般にR2+3脈に枝があるのか、興味のあるところです。後者であれば、新変種、或いは、新種の可能性もあります。今年の同じ時期に、今度はカメラだけでなく、ネットも持って出掛ける積もりです。
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真横から見た図.お尻の先端が筒状になっていないので雄
(2008/11/23)

 ノゲシケブカミバエは、ノゲシ類(例えば、ノゲシ)の花(頭花)潜り込んで、その中で生長するそうです。外国のサイトなどでは「a gall fly」と書かれているので虫えいを作る様ですが、全農教の「日本原色虫えい図鑑」には載っていません。
 種名のsonchiは、ノゲシ属のsonchusを形容詞形にしたものでしょう。英語圏では、一般にsonchus flyと呼ばれています。
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オマケにもう1枚.正面からは遂に撮れなかった
(2008/11/26)

 ノゲシケブカミバエは、調べてみると、北隆館の図鑑にチャンと載っていました。しかし、色の記載はかなり異なっています。ここに掲載した写真は、撮ったとき肉眼的に非常に鮮やかな青に見えたので、それに合わせてかなり色温度を低く現像してあります。或いは、実際の色はそれ程青くはなく、青みがかった暗灰色程度であったのかも知れません。また、図鑑の方も、褪色した標本を見て記載した可能性が零ではありません。
 何分にも周りが黄色一色ですから、人間の眼は補色を強く感じる筈です。一方、カメラの方も「黄色カブリ」を起こしますし、また、その時々でかなり色にムラがあり、色温度を一定にすると明らかにおかしな色になってしまう場合があります。実際はどんな色をしていたのか・・・、中々難しい問題です。

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2009年2月17日 (火)

ヒメフンバエ(雌)

 ハエと言うと、一般的にはやはり汚い虫の代表の様に思われていると思います。しかし、これまでこのWeblogで紹介してきたハエは、中には食性不明の種もありますが、基本的に汚いハエではありません。しかし、今日紹介するのは、その名もフンバエ(糞蠅)科に属すヒメフンバエ(Scathophaga stercoraria)です。撮影したのは、ワカバグモカシヒメヨコバイや先日のウスイロアシブトケバエ()などと同じく、「三丁目緑地」の上部にあるシャクチリソバの群落の中で、時期もそれらと同じ昨年(2008年)の11月の中頃です。この個体は雌ですが、雄は黄色の長毛に被われていて、一見別種の様に見えます。体長は1cm前後、今までこのWeblogで登場したハエとしては大きい方に属します。

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ヒメフンバエ(Scathophaga stercoraria)の雌
脚が太く、強力な剛毛が沢山生えている.成虫は補食性
腹胸側剛毛が1本しかない
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/10)

 「フンバエ」の名が付くハエは、フンバエ科以外にもイエバエ科のチビフンバエ属2種があり、また、別にフンコバエ(糞小蠅)科(旧称ハヤトビバエ科)と言う科もあります。名前の通り、これらの幼虫の多くは糞、或いは、堆肥や汚水等、「糞」に縁のある場所に発生します。
 このヒメフンバエも幼虫は糞食です。この辺り(東京都世田谷区西部)に存在する糞と言えば、猫か犬のもの位しか考えつきませんが、まァ、そう言うところから発生しているのでしょう。
 しかし、このヒメフンバエ、糞食にしては?随分ガッチリしており、強そうです。実際、幼虫は糞食でも、成虫は補食性で、他の小型のハエや蚊などを捕まえて食べるのだそうです。
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正面やや斜めから見たヒメフンバエ.
(2008/11/10)

 和名ばかりでなく、属名のScathophagaも「糞食」の意です。しかし、正しい綴りは"Scatho"ではなく、"Scato"の筈です。そこでScatophagaで検索してみると、Scathophagaで検索したのとほぼ同数がヒットします。何方が正しいのか、私に分かるはずもありません。そこで、例によって双翅目のBBS「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立ててみました。
 早速、学名の由来にも詳しいアノニモミイア氏より詳細な御回答を頂きました。それに拠ると、ヒメフンバエ属を創設したのはMeigen(1803)で、記載論文を書いたときに綴りを間違えてScathophagaとしてしまいました。後にこの誤りに気付き、Meigen自身もその他の研究者も「h」の入らないScatophagaを用いていましたが、フンバエ科の学名はScathophaga属を模式属としたScathophagidaeですから、科名も同様に「h」を取り去ってScatophagidaeとすると、今度は、既にScatophagus(クロホシマンジュウダイ属)から作られたScatophagidae(クロホシマンジュウダイ科)と重複してしまいます。従って、科名の方はScathophagidaeから「h」を取り除くことが出来ません。Scathophagidaeの模式属がScatophagaでは、科名と模式属で綴りが一致せず、おかしなことになってしまいます。そこで現在では、最初の記載に戻り、科名と模式属の綴りが矛盾しないScathophagidae科のScathophaga属とするのが一般的になっているのだそうです。
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ヒメフンバエの顔.額に交叉剛毛がない
(2008/11/10)

 ヒメフンバエはこの辺りでは比較的珍しい種類ではないかと思います。虫が留まっていた位置の関係から、前と横からしか撮れませんでしたので、その後も何回かこのヒメフンバエを狙って「三丁目緑地」に出掛けたのですが、再度見付けることは出来ませんでした。それで、写真は3枚しかありません。

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2009年2月14日 (土)

ケチャタテ科の1種(その3)

 今日は、またチャタテムシです。居たのは先日紹介した「ケチャタテ科の1種(その2)」と同じく、国分寺崖線下の四丁目に植えてあるミカンの木の葉裏で、日付も同じ今年(2009年)の1月19日です。
 色々な方向から撮ろうと、葉っぱをいじくり回している内に葉っぱが枝から取れてしまいました。その後、左手1本でその葉の方向を変えようとしてうっかり葉を落としてしまい、葉っぱに付いていたチャタテムシは行方知れずになってしまいました。そんな訳で、写真は3枚しかありません。
 3枚目の写真を見ると、M脈とCu1脈との間に横脈がある様に見えたのでチャタテ科かと思いましたが、最初の写真にはその様なものは見えません。やはり、先日と同じケチャタテ科(Caeciliusidae)に属すと思われます。
 例によって図鑑には該当する虫は見当たりませんでした。従って、今日の表題は、これまた例によって「ケチャタテ科の1種(その3)」です。何故か知りませんが、この辺りにいるチャタテムシは、ケチャタテ科の虫ばかりの様です。

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ケチャタテの1種.全体的に黒く、翅に斑紋を欠く
首(前胸)だけが妙に白い
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2009/01/19)

 このチャタテムシ、御覧の様に殆ど全身黒ずくめで、首(前胸)のところだけ妙に白いのが目立ちます。これまでにも黒っぽいチャタテムシは何回か紹介してきましたが、何れも翅に紋がありました。しかし、このチャタテムシの翅には斑紋が無く、一様に薄黒くなっています。
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斜めから見たケチャタテの1種
(2009/01/19)

 大きさを書き忘れました。体長は腹端が見えないので良く分かりませんが、翅端まで約4mm、前翅長は約3.3mmです。これまでに紹介したチャタテムシと較べると、翅端まで約5mmの「ケチャタテ科の1種?(チャタテムシ)」を除いて、大体みな同じ程度の大きさです。
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最初と同じ様な写真だが、写真はもう他に無いので出しておく
(2009/01/19)

 今日のチャタテムシを入れて、チャタテムシは全部で5種になりました。この冬だけで4種ですが、更にまだ紹介していない種があります。
 今までに紹介したこの5種、今見てみると何れもケチャタテ科ではないかと思われます。九学の日本産昆虫目録ではケチャタテ科に6属17種が登録されており、本州に棲息するのはその内の4属13種です。本州にたった13種しか居ないのに、この辺り(東京都世田谷区成城)で5種と言うのは一寸変な感じです。近くには「神明の森・みつ池特別保護区」があるとは言え、基本的には住宅地の中の小さな林に過ぎません。まだ紹介していないチャタテムシもケチャタテ科に属すと思われますので全部で6種、6/13と言えば、殆ど1/2です。本州に棲息するケチャタテの半分近くがこの辺りに居るとはとても考えられません。何処か基本的な間違いを犯しているのではないか、と不安になります。

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