カテゴリー「昆虫(ヨコバイ、ウンカ)」の13件の記事

2010年10月10日 (日)

ゴマフウンカ(Cemus nigropunctatus


 前回、世田谷区の「第一成城七丁目ファミリー農園」は昨年の秋に廃止され、現在は草地になっていると書きました。メヒシバを優先種とする最近では珍しい茫々たる草地となっていますが、かつて植えられていた野菜やハーブの名残も所々に生えています。その名残の一つであるアップルミントらしきハーブの葉の上に一寸変わったウンカを見つけました。


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ミントの葉に留まるゴマフウンカ(多分)の短翅型

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/10/05)



 Internetで調べてみると、ウンカ科(Delphacidae)ウンカ亜科(Criomorphinae)に属すゴマフウンカ(Cemus nigropunctatus)の様です。短翅型と長翅型がありその双方が居ましたが、今日は短翅型の方だけを紹介することにします。体長は3.5mm弱、個体による変異がかなりあります。

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脚は青黒く、肩板の辺りが白っぽい

因みに、ヨコバイ類には肩板はない

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/10/05)



 このゴマフウンカはミントの葉の上にかなりの数が留まっていました。しかし、ミントから吸汁しているのかは些か疑問です。と云うのは、このミントは約1平方メートル位の範囲に生えているのですが、ゴマフウンカはその一端にしか付いていないのです。

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葉裏に逃げようとするゴマフウンカの短翅型

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/10/05)



 そのゴマフウンカの付いている辺りには、ミントの他にアスパラガスとメヒシバが生えています。そこでアスパラガスが寄主なのではないかとも思いましたが、メヒシバに留まっている個体はかなり居ても、アスパラガスに付いている個体は幾ら探しても見付かりませんでした。

 一方、メヒシバが寄主ならば、この雑草はこの草地に幾らでも生えているのですから、此処に集中していると云うのは解せません。・・・と云う訳で、このゴマフウンカの寄主が何であるのかは結局分かりませんでした。

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同じ様な写真をもう1枚.正面からは取り損ねた

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/10/05)



 ゴマフウンカは、害虫としては殆ど問題にならないらしく、Web上には寄主などの生態に関する情報は殆どありません。しかし、「長池公園ぶらぶら日記」と云うサイトに「リュックサックなどを草原に放置しておくと、天気の良いときには草原から飛び出してきた個体がかなりたくさん止まっていました」との記述を見つけました。私も、虫除けスプレーを入れた白いポリ袋を近くに置いていたところ、暫くするとその上に何頭ものゴマフウンカが集っていました。良く分かりませんが、何か均一な色のものに集まる習性がある様にも思えます。

 ミントの葉の上に沢山留まっていたのも、或いは、この習性に拠るのかも知れません。

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別個体.腹節の境目が分かり難い

羽化後余り日が経っていない?

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/10/05)



 北隆館の圖鑑に拠ると、ゴマフウンカによく似て雄の把握器の先端が尖鋭なクロモンウンカ(クロモンヒラアシウンカ:Cemus nigromaculosus)と云う種類があるそうです。そこで、東京都本土部昆虫目録を見てみると、何故かゴマフウンカの記録はなく、このクロモンヒラアシウンカが皇居や板橋区で記録されています。今日のウンカは、或いはゴマフウンカではなく、クロモンヒラアシウンカなのかも知れません。

 なお、九州大学の日本産昆虫目録では、ゴマフウンカの学名はPhyllodinus nigropunctatusとなっており、属が異なっています。此処では、九大目録よりも新しい北隆館の新訂大圖鑑に従ってCemus nigropunctatusとしておきました。


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2010年1月26日 (火)

ヒメヨコバイの1種(その3)


 越冬中の虫を探すのは実は余り得意ではありません。子供の頃は冬期に昆虫採集をしなかったので、どう云う所に虫が潜んでいるのか、経験的知識が不足しているからです。ヤツデやビワ、タラヨウの様な、大きな葉の裏には、越冬している虫が多いと云うことも、此のWeblogを始めてから知ったことです。

 今日紹介するヒメヨコバイの1種も、ビワの大きな葉の裏にいました。国分寺崖線下の4丁目に生えているかなり大きなビワの木です。


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ヒメヨコバイの1種.翅端まで約3.3mm

ビワの葉裏に居た.毛が多くて暖かそう

翅に黄色い縦筋が2本あるのが特徴

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 そのビワの木の根元から出ているひこばえの部分に数頭居ました。しかし、その他の場所でこのヒメヨコバイを見たことはありません。

 ヒメヨコバイ類は、このWeblogでこれまでに6種位紹介したと思います(昆虫(ヨコバイ、ウンカ)のカテゴリーを参照)。これらの種類の中に、一個所のみに沢山いて他では見ない、と云う種類は居ませんでした。或いは、この写真のヒメヨコバイにとって、ビワは越冬の為の場所だけでなく、寄主を兼ねているのかも知れません。

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西日が当たって暖かく、活動的で真横からは遂に撮れなかった

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 体長は尾端が何処か不明瞭で正確には分かりませんが、翅端までは3.3mm位です。まァ、ヒメヨコバイとして普通の大きさと言えるでしょう。しかし、長さは3mm以上あっても、幅はその1/5位なので、肉眼は勿論、マクロレンズを通して見ても、これまで撮った種類と同じかが良く分かりません。試しに撮った画像を拡大再生して、漸く「これは違うぞ」と云うことになり、本格的に撮影を始める訳です。

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真っ正面からも撮れなかった

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 今日のヒメヨコバイは、翅に黄色い縦筋が2本あるのが大きな特徴です。これまで撮った種類と比較してみると、額や胸背の模様も異なります。しかし、撮影したときは翅の黄筋以外の違いには気が付きませんでした。

 最近はヒメヨコバイの新顔を見ることは非常に少なくなりました。ヒョッとすると、本当は新顔だったのに気が付かないで撮らなかったと云うこともあったかも知れません。

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斜めからみたヒメヨコバイの1種

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 私のもう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」は、現在酷いネタ不足に陥り、仕方なく植木鉢の下に居るトビムシを探したりしている有様です。しかし、此方の方では写真がダブ付いています。大きな葉を持つ常緑樹や剥がれる樹皮を持つ大木が無いと、冬の虫は中々見つからない様です。


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2008年11月30日 (日)

カシヒメヨコバイ


 別にサボるつもりはなかったのですが、気が付いたら5日も更新していませんでした。もう兪々冬の様相を帯びてきて、虫達も急速にその姿を消しつつあります。この秋最後と思い、写真を撮りに行ってばかりで、原稿を書く暇がなかったのです。

 中にはもう越冬の態勢に入っている虫も居ました。今日紹介するカシヒメヨコバイ(Aguriahana quercus:ヨコバイ科ヒメヨコバイ亜科)も、「三丁目緑地」に生えているシャクチリソバの葉裏でジッとしていました。

 シャクチリソバの葉はいずれ枯れて落ちる運命にあります。何処か別の木の葉裏へでも移って越冬するのでしょう。


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カシヒメヨコバイ.中々複雑で洒落た配色をしている

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/11/22)



 大きさは翅端まで4mm弱、撮影したのは日没間際でもう薄暗く、虫体が良く見えませんでした。このシャクチリソバの群落周辺は双翅目(蚊、ハエ、アブ)が多いので、始めはショウジョウバエかと思ったのですが、マクロレンズで覗くと双翅目ではありません。どんな虫なのか良く分からないので、取り敢えず1枚撮って再生画像を拡大し、漸くヨコバイの1種であることが分かりました。しかも、頭だと思っていた黒い部分は翅の先端でした。頭部胸部と葉っぱはその明度に大差が無いので、薄暗い所ではマクロレンズで覗いても、頭が何処にあるのか良く分からないのです。

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翅から続く1本の黒条が、胸から眼の上と吻の先端を通って

反対側の翅に連なっている(2008/11/22)



 虫が小さく厚みのない場合には、解像力を上げる為、絞りを開きめにして撮影するのが本来の撮り方です。しかし、暗くて虫が良く見えないので、安全策として焦点深度をやや深くして撮影しました。そのせいで、解像度が少し低くなっています。


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正面から見たカシヒメヨコバイ.解像力が少し不足

(2008/11/22)



 この手の小さいヨコバイ類は、寒い時期に撮るのが最善です。虫の活動力が低下していて、中々逃げないからです。と言うか、気温が高く虫の活動が盛んな時期には、余程粘らない限り撮ることは出来ません。ヨコバイ類は一般にかなり敏感で、近づけば直ぐに飛んで逃げます。後を追っても、留まれば葉裏にサッと逃げ込み、或いは、イネ科の茎などに留まった場合には、常にこちら側とは正反対に位置する様、横にクルクル廻ります(ヨコバイと言う名は、其処から来ているのでしょう)。体長は3~4mm、横幅は余りありません。最近は老化で動体視力が落ちているせいもあるとは思いますが、2~3回飛んで逃げられれば、もう見失ってしまうのが普通です。

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斜めから見たカシヒメヨコバイ(2008/11/22)



 前回の冬には、越冬中のヒメヨコバイを数種紹介しました。この冬はもう新顔が出る可能性は余り無いだろうと思っていたのですが、11月に早くも1種出ました。考えてみると、前回の冬は「三丁目緑地」のヤツデやビワなどの葉裏がヨコバイ探しの中心でした。探す場所を変えるとか、葉裏ばかりでなく樹皮の裏や隙間を探すとか、虫の探し方に少し工夫をすれば、まだ、何種か見つかるかも知れません。

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オマケにもう1枚.まず最初に撮った写真がコレ

(2008/11/22)



 此処まで書いたところで、また、虫を撮りに行って来ました。今まで余り関心が無かったところを探したら、一寸変わった虫を数種類撮ることが出来ました。どんな虫を撮ったのかは、これからのお楽しみ。


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2008年10月 1日 (水)

ミドリグンバイウンカ


 虫の撮影は、何処かの緑地か農園ですることが多いのですが、其処へ行く途中や帰り道で撮ることも屡々あります。今日のミドリグンバイウンカも、七丁目の家庭菜園へ行った帰りに撮った虫です。


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ムクゲの花の中にミドリグンバイウンカが居た

緑の葉に留まれば目立たないが、白い花弁では非常に目立つ

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/08/19)



 この虫、我が家ではクチナシに付いていて、他所では見たことがありませんでした。そこで、我が家のを紹介しようかと思っていたのですが、緑色の葉に緑色の虫が留まっていたのでは、良い写真になりません。どうしようかと迷っていたところ、家庭菜園からの帰り道で七丁目のある御宅に植わっているムクゲの花の中に居るのを見付けました。丁度、雷が鳴り出して、雨が降りそうだったのですが、滅多にない機会だと思い、シッカリ撮ってきました(幸い、雨には降られませんでした)。

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体は緑色、翅も緑色で透明

(2008/08/19)



 ミドリグンバイウンカは、ハゴロモ型下目グンバイウンカ科に属します。グンバイウンカ科の昆虫は、「ウンカ」の名は付いていますが、外見的にはハゴロモ類に似ています。多くは、このミドリグンバイウンカの様に平らな形をしており、それで「軍配雲霞」の名が付いたのでしょう。しかし、グンバイムシほど軍配に近い形はしていません。

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何時も写真の様に張り付いた感じで留まる

(2008/08/19)



 我が家にいるグンバイウンカの多くはクチナシの若い葉に付いていますが、時々、クリスマスローズやセイタカアワダチソウの葉裏に居ることもあります。しかし、花に付いているのを見るのはこれが初めてです。花からも吸汁することがあるのか、単なる翅休め?に留まっていたのかは分かりません。検索してみると、多くの植物に寄生する様です。しかし、花に付いた例は見つかりませんでした。

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前から見ると何だか分かり難い.少し橙を帯びたのが複眼

(2008/08/19)



 このミドリグンバイウンカ、今では毎年クチナシで発生を繰り返していますが、子供の頃に見たことはありません。近縁のハゴロモ類の場合、昔居たベッコウハゴロモ、スケバハゴロモ、テングスケバ等は全く見なくなりました。それだけこの町の環境が「悪化」したのだと思いますが、一方で、このミドリグンバイウンカが新たに出現したと言うことは、ツマグロヒョウモンと同じく、温暖化の影響なのかも知れません。

 Internetで調べた限りでは、ミドリグンバイウンカの分布は、良く分かりませんでした。「分布を拡大している」と書いてあるサイトもありましたが、根拠を明記していないので、鵜呑みにする訳には行きません。

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オマケにもう1枚(2008/08/19)



 数日前から気温が急に下がり、すっかり秋の気配です。しかし、8月に撮ってまだ掲載していない写真が沢山残っています。時期遅れになってしまいましたが、順に紹介して行くつもりです。


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2008年8月 6日 (水)

サッポロトビウンカ


 このWeblogでは、これまでにヨコバイ類を10種位紹介してきましたが、ウンカを掲載するのは今回が初めてです。

 ヨコバイやウンカは小さいですし、標本にすると変色することが多いので、圖鑑を見ても良く分かりません。勢い、Internetで生態写真を探すことになります。色々なサイトを拝見した結果、どうやらこのウンカはサッポロトビウンカと言う種類の様です。


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サッポロトビウンカ.体長3.5mm強、翅端まで約4.5mm

「三ツ池緑地」で撮影

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/07/09)



 ウンカ類は、一見したところヨコバイに非常によく似ています。しかし、実はかなり離れた仲間なのです。ウンカはハゴロモ類と同じハゴロモ型下目ハゴロモ上科に属すのに対し、ヨコバイ類はセミ型下目ツノゼミ上科に属します。アワフキムシ上科やセミ上科はセミ型下目の下にありますから、ウンカとヨコバイとの間は、ヨコバイとセミの間柄よりも遠いのです。

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サッポロトビウンカ.産卵管と思しき物が見える(2008/07/09)



 ウンカ類がヨコバイ類と何処が違うかと言うと、次の様になります。ウンカやハゴロモ類では単眼は通常複眼の下側かその近くに位置し、中脚基節は長く左右に離れ、肩板を持ちますが、ヨコバイやセミ類では単眼が複眼間の上側(頭頂)に位置し、中脚基節は短く左右接近し、肩板はありません。・・・と言っても、単眼は小さくて何処にあるのか分かり難いですし、中脚基節は腹側からでないと見え難いので、生態写真からでは中々判断出来ません。

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ウンカの正面に位置すると、直ぐに向きを変えようとするので

遂に真っ正面から撮ることは出来なかった(2008/07/09)



 単眼は、上の写真で複眼の下にある黒っぽい点がそれだと思います。写真をクリックして拡大してみて下さい。しかし、これだけ大きくしないと見えないのですから、写真から判断するのに適した特徴とは言えないでしょう。

 一方、肩板はよく見えます。翅の付け根前方に写っている丸っこい小さな構造がそれです。ヨコバイ類にはこの肩板がありません(例えばオオヨコバイを参照)。これならば、多少低倍率の写真でも判断出来ると思います。

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背側からもう1枚(2008/07/09)



 しかし、触角を見ると、ウンカとヨコバイ類(例えばオオヨコバイを参照)では随分違って見えます。ウンカでは2つ繋がったかなり大きな円柱状構造から細い毛が伸びている様に見えますが、ヨコバイでは小さな基部からヒゲが伸びています。

 この違いは、何故か、検索表には書かれていません。しかし良く見てみると、ヨコバイのヒゲの基部にある小さな突起は、形は小さいとは言え、ウンカの円柱状構造と同じ様なものとも思われます。分類学者が注目しないのですから、屹度、大きさが違うだけで、構造としては同じものなのでしょう。この程度の写真では、触角の細かい構造は良く分かりません。顕微鏡で見る必要があります(持っていません)。

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真横から撮るのも大変で直ぐに尻を向けようとする

(2008/07/09)



 ヨコバイもそうですが、ウンカも写真を撮るのに苦労する相手です。背側から撮ることは出来ても、真横や正面から撮ろうとすると、直ぐにお尻を向けて逃げる体勢に入ります。このサッポロトビウンカは幸いにも1回目で曲がりなりにも3方向から撮影出来ましたが、マダラヨコバイなどは、昨年から何回も出合っているにも拘わらず、未だに背側以外の写真が撮れません。


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2008年7月 4日 (金)

オビマルツノゼミ


 今日の日中は気温が32度にも上がり、まるで真夏です。四国地方はもう梅雨が明けたとか・・・。しかし、まだ5月に「四丁目緑地」で撮った写真が何種分か残っています。急いで掲載することにしましょう。

 今日は、オビマルツノゼミです。ツノゼミ類は名前に「セミ」と付いてもツノゼミ上科ツノゼミ科に属し、セミ(セミ上科セミ科)の1種ではありません。しかし、何れも半翅目頚吻群に属すので、かなり近い間柄ではあります。

 ツノゼミの多くは、頭に角の生えたヨコバイの様な虫です。しかし、オビマルツノゼミやマルツノゼミ、ハコネツノゼミ等は「ツノゼミ」の名に反して角がなく、頭部は丸くなっています。


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オビマルツノゼミ.翅端まで5.5mm.セミよりずっと小さい

羽化に問題があったらしく翅が少し歪んでいる

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/05/22)



 翅端まで5.5mm、セミよりはずっと小型で、形もヨコバイの1種と言った感じです。ヨコバイには、このWeblogでこれまで紹介したオオヨコバイヒメヨコバイ類の様な細長い形のヨコバイばかりでなく、太く短くて吻の丸い種類も沢山いるのです。

 始めは、「オビ」の付かない只のマルツノゼミだと思っていました。しかし、「北海道環境科学研究センター」の「北海道レッドデータブック」にあるマルツノゼミの標本写真を見ると、マルツノゼミの翅は透明なのに対し、このツノゼミの翅には、やや不明瞭ですが茶色の横帯が2本あります。マルツノゼミではなく、オビマルツノゼミの様です。また、前翅前縁部基部寄りにぼやけた白斑があるのもオビマルツノゼミの特徴かと思われます。

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横から見たオビマルツノゼミ.翅がストロボの反射で光ってしまった(2008/05/22)



 実を言うと、ツノゼミ類を見るのは初めてです。小さいので余程注意していないと見過ごすとは思いますが、絶対数が多いとは思えません。この辺り(東京都世田谷区)では、かなりの珍種なのではないでしょうか。特にこのオビマルツノゼミは、北隆館の「新訂 原色昆虫大圖鑑第3巻」に拠ると、「(オビマルツノゼミは)一般に少ない種である」とあります。

 オビマルツノゼミはマメ科の植物に付くそうです。この写真の個体もマメ科の雑草(カラスノエンドウの類)の茎にしがみついて居ました。

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斜め後ろから見たオビマルツノゼミ.褐色の横帯と

前翅前縁基部近くの白斑が見える(2008/05/22)



 九州大学の「日本産昆虫目録データベース」のツノゼミ科には僅か16種が登録されているだけで、日本では小さなグループです。「東京都本土部昆虫目録」を見てもたった3種しか記録がありません。

 しかし、南米アマゾン流域には3000種を超えるツノゼミが棲息しているそうです。様々に分岐した角をもつ種類や、色々なものに擬態していると思われる種類、まったく奇怪な形をしたもの、色彩も実に多様です。何故、殆ど同一と言って良い環境の中でこれだけ多様な種に分化したのか、進化論上の問題ともなっています。

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この種の虫を下側から撮る機会は少ない(2008/05/22)



 ツノゼミは、ヨコバイやアワフキムシと近縁なだけあって、ピンッと跳びます(但し近縁でもセミは別)。このオビマルツノゼミ、始めは跳ぶとイカンと思って慎重に撮っていたのですが、ノソノソ歩いては葉の付け根などに頭をくっ付けて止まるので写真が撮り難く、その内手で突っついて追い立てたりして写真を撮りましたが、一応撮り終わった頃、やはりピンッと力強く跳んで何処かへ行ってしまいました。

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真っ正面から見ると、何処がどうなっているのか分からない位変な顔(2008/05/22)



 今日の写真は、被写体にかなり厚みがあったので、そんなに絞る必要は無かったのですが、絞りをついF32にして撮ってしまいました。結果的に鮮明度を欠くことになり、珍種の写真を台無しにしてしまったのは残念至極です。


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2008年6月14日 (土)

クワキヨコバイの1種


 今日も「三丁目緑地」に群生するシャクチリソバの葉上に居た虫の話です。

 クワキヨコバイの1種、体長1cm前後のやや大きめのヨコバイです。写真の多くはシャクチリソバの葉に付いていたものですが、近くのツワブキやヤツデの葉裏にもかなりの数が居ました。

 白っぽいのと黄色いのが居ます。初めは別々の2種類かと思ったので、それぞれ背面、横、正面の3方向から撮ってあります。まず白い個体から(なお、3枚の写真は、基本的に同一個体を撮ったものではありません)。


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クワキヨコバイの1種.色の白い個体

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/05/19)


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側面.上とは別個体.以下何れもそれぞれ別個体の

写真と考えてください(2008/05/19)


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正面(2008/05/19)



 次に黄色い方。これも基本的に別個体を撮ったものです(同じ個体を別の場所・時間で撮っている可能性もあります)

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クワキヨコバイの1種.黄色の個体(2008/05/19)


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側面(2008/05/19)


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正面(2008/05/19)



 この白と黄の色違いは、居るときには必ず両方とも居ます。そこで、どうも雌雄ではないのかと思っていたところ、ヤツデの葉裏で、白と黄色で交尾しているのを見付けました。それも1組ではなく、何組も見ましたから、色の違いはやはり雌雄の違いの様です。

 残念ながら、私にはどちらが雄で、どちらが雌なのかよく分かりません。しかし、白の方が威勢が良さそうですから、白が雌の様な気がします。

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交尾中のクワキヨコバイの1種(2008/05/19)



 お互いの交尾期の一部が翅からはみ出しています。横から見ると、下の写真の様になります。

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側面(2008/05/19)



 クワキヨコバイはこれまで1種とされていました。しかし、実際は非常に良く似た多くの種(100種以上?)に分化しているのだそうです。今日の表題は「クワキヨコバイの1種」としておきましたが、ヒョッとすると、今日掲載した写真は1種類ではなく、複数の種類に跨っている可能性もあります。

 これで「三丁目緑地」に生えているシャクチリソバの葉上に居た虫は紹介し終わりました。しかし、「三丁目緑地」の他の場所で撮った虫の話はまだ続きます。


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2008年3月 9日 (日)

ヒメヨコバイ類3種


 今日もまた国分寺崖線上に位置する「三丁目緑地」で撮った種不明のヨコバイ類を紹介します。3種ありますが、何れも前回の「ヒメヨコバイの1種」に良く似ています。確証はありませんが、ヒメヨコバイ科(亜科)に属すものと思われます。

 体長は何れも約3mm、翅端まで約3.5mmで、ヨコバイの中では小型の種類です。ヤツデ、或いは、ビワの葉裏で越冬をしていました。


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ヒメヨコバイの1種.その1.ヤツデの葉裏に居た

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/01/14)



 最初の1種は、前回の「ヒメヨコバイの1種」に特に良く似ています。しかし、全体にもっと細長く、白い部分が少なくて、腹部に白い横帯がありません。前回の「ヒメヨコバイの1種」より白い部分が少ないのは、単なる個体変異に過ぎないかも知れませんが、全体的に印象が違います。分類学的には「印象」などどうでも良いのですが、小さい上に背側から撮った写真しか有りませんので、形態を細かく調べることも出来ず、この際「印象」に頼るほかありません。


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上と同じ種類.ビワの葉裏で撮影(2008/01/14)



 背側からの写真しかないのは、どうせ種類など分からないだろう、と思っていたからですが、やはり背側、真横、前の3通りから撮っておくべきでした。

 此処には写真を2枚しか載せてありません。しかし、このヨコバイは他でも何回か見付けました。比較的多い種類の様です。

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ヒメヨコバイの1種.その2.白、黒、黄で美しい(2008/01/11)



 次の種類は、白、黒、黄の三色で、中々綺麗なヨコバイです。これはビワの葉裏に居ました。見たのはこの時1回のみです。ビワの葉裏では、他にも既に紹介した、クロスジホソサジヨコバイホシヒメヨコバイ、前回の「ヒメヨコバイの1種」などが越冬していました。かなり長い毛が密生しており、暖かいのか、掴まり易いのか分かりませんが、小昆虫が越冬するのには格好の場所の様です。

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ヒメヨコバイの1種.その3.ビワの葉裏に居た(2008/01/14)



 最後の1種は、ヤツデの葉裏に居たものです。これもこの時1回限りで、その後は見ていません。最初の種類と似ていますが、小楯板の模様が違います。まァ、あまりパッとしないヨコバイです。


 海外へ出発する日が近づいていますが、それまでにもう一回掲載できると思います。しかし、新しい写真は有りませんから、今回と同じく1月に撮った写真になります。


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2008年3月 6日 (木)

ヒメヨコバイの1種


 来週中半に東南アジア方面に長期出張することになりました。準備で忙しいのですが、この冬に撮った写真を急ぎ掲載しておきます。

 「三丁目緑地」で撮った、越冬中のヨコバイです。体長は3mm、「ヒメヨコバイの1種」としましたが、本当にヒメヨコバイ科に属すのか自信がありません。翅脈がよく見えず、また、正面から撮った写真が無いので、検索表を見ても判別出来ないのです。ただ、このヨコバイと同種と思われるヨコバイが他の何個所かのサイトに出ていて、やはり「ヒメヨコバイの1種」と書かれています。何れのサイトでも、種名は分からない様です。


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ヒメヨコバイの1種.シュロの葉裏に居た

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/01/14)



 国分寺崖線で越冬しているヨコバイ類の中で一番多いのはクロスジホソサジヨコバイで、これは「三丁目緑地」ばかりでなく「四丁目緑地」近くの雑木林でも、ごく普通です。その次に多いのがホシヒメヨコバイで、これも彼方此方で見かけます。

 この2種に比べると、この「ヒメヨコバイの1種」はかなり少ない方です。それでも、「三丁目緑地」に生えているヤツデ、ビワ、シュロなどの葉裏で時々見つかります。

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上と同じ種類.ビワの葉裏に居た(2008/01/14)



 種類が分からないので、何に寄生するのかも分かりません。しかし、雑木林の葉裏で越冬しているこの様なヨコバイの宿主は、よく分かっていないのが一般的な様です。

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上の個体を横から撮ったもの.何故か少し太く見える(2008/01/14)



 写真を撮ってみると、中々綺麗なヨコバイです。しかし、体長3mmと小さいので、肉眼的には埃に毛が生えた様なものです。虫に興味が無い人には見えないでしょう。

 こう言う小さい虫を探しながら葉っぱの裏をひっくり返していると、時々蝉の脱け殻が出て来ます。虫で驚く筈は無いのですが、一瞬ギョッとします。ヨコバイに比して、余りに大き過ぎるからです。

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オマケにもう1枚.ヤツデの葉裏に居た(2008/01/11)



 未掲載の種不明ヨコバイはまだ他にもあります。出発の前に出来るだけ掲載しておくつもりです。


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2008年2月18日 (月)

ヒトツメヨコバイ


 このところ忙しくて、なかなか更新をする暇がありません。新たに写真を撮りに行く暇は尚更ありませんので、1月に撮った写真を出すことにします。

 今日紹介するのは、「三丁目緑地」に生えているヤツデの葉裏に居たヒトツメヨコバイです。翅は破れていますし、写真自体も余り良くありませんが、居たのはこの1頭のみなので、これで御勘弁願います。


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ヒトツメヨコバイ.体長5mm程度

上に居るのはクロスジホソサジヨコバイの幼虫

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/01/11)



 ヒトツメヨコバイ(一眼横這)と言う名前は、頭頂部に黒斑が一つあることから命名されたと思われます。しかし、眼にも黒斑があるので三眼の様にも見えます。因みに、「ミツメヨコバイ」と言う種類は存在しない様です。

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横から見たヒトツメヨコバイ(2008/01/11)



 斑紋のよく似た種類にヒトツメヒメヨコバイと言うのがあります。ヒトツメヨコバイよりもやや細長く、黒斑が頭頂の前方にあります。ヒトツメヨコバイの黒斑は頭頂の後の方にあるので真上から良く見えますが、ヒトツメヒメヨコバイの場合は頭頂の前の方にあるので、真上ではなく少し正面からでないと良く見えません。

 ヒトツメヨコバイが何を食べているのかは、調べてみましたが、良く分かりませんでした。北隆館の図鑑には「雑草間で獲られる」と書かれています。

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正面から見たヒトツメヨコバイ(2008/01/11)



 先日、「三丁目緑地」の直ぐ傍にある「オーケーストア」に買い物に行ったら、「三丁目緑地」の東南にある湧き水の横で工事をしていました。一寸した草原が残っていて、子供達の遊び場になっていたのですが、成城自治会の会報「砧」に拠ると、この部分を整備して公園にするとの様です。

 この草原は、これまでに紹介したナナホシテントウイネホソミドリカスミカメ(アカヒゲホソミドリカスミカメ)コバネヒョウタンナガカメムシヒゲナガカメムシ等を撮ったところですが、これでもう虫は居なくなってしまいます。また、この部分にはサワラのかなり大きな木が3本位と、昨年の春に掲載したエゴノキやイボタ等が生えていたのですが、何れも切られてしまいました。もうこの手の環境整備と称する環境破壊はいい加減にして欲しいものです。造園業者の利益の為にやっているとしか思えません。


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