カテゴリー「昆虫(甲虫)」の41件の記事

2012年3月11日 (日)

クチキムシ(Allecula melanaria


 6日、7日と春の様な日が訪れましたが、それ以外はここ2週間ばかし雨模様の肌寒い日が続いています。それでも、今日は、少し薄日が射してきました。しかし、まだ土はグチャグチャ、草木も濡れたままです。虫撮りに行くのはまだ一寸無理の様です。

 そこで、今回も昨年の冬に撮った写真を出すことにしました。


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ケヤキの樹皮下で越冬するクチキムシ

右下の白いのは越冬中のクモの巣

(写真クリックで拡大表示)

(2011/01/11)



 クチキムシ(Allecula melanaria)です。昨年の1月に掲載した「マドチャタテ科の1種」が居たのと同じ、7丁目にあるケヤキの樹皮下で、3頭一緒に越冬していました。

 「集団越冬」と云うには少な過ぎますが、条件によっては多くの個体が集まって越冬することがあるのかも知れません。同属近縁種のオオクチキムシは時に集団越冬することが知られています。

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胸部は、腹部に向かって細まらず、側面には稜が無い

鞘翅、胸部背面、頭部上部は黒、他は赤褐色

オオクチキムシとは異なりツヤがある

(写真クリックで拡大表示)

(2011/01/11)



 どうも、この手の虫は(も)苦手で、見つけた時はゴミムシ類かと思いました。しかし、正面から見ると(下)、大顎がよく見えず、ゴミムシダマシ科かその近縁の虫の顔をしています。

 以前(2008年8月)、「七丁目緑地」に生えているケヤキの樹皮下に居たゴミムシダマシ科のセスジナガキマワリを紹介しましたが、その顔ととかなりよく似ています。

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一見ゴミムシに似ているが、顔は全く異なる

触角第3節と第4節はほぼ等長

(写真クリックで拡大表示)

(2011/01/11)



 家に帰り、早速、保育社の甲虫図鑑第3巻で探してみました。胸部は、腹部に向かって細まらず、側面には稜が無く、釣鐘に近い形です。脚や頭部前半、触角、胸部下面は赤褐色で他は黒色、胸部や鞘翅の上には黄色い短毛が生えています。残念ながら、ゴミムシダマシ科には該当する種がありませんでした。

 そこで、近縁の科を調べて見たところ、名前だけはよく知っているが実物は見た記憶のない、超普通種のクチキムシ(Allecula melanaria)であることが分かりました。些かガッカリ・・・。

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胸部下面は赤褐色をしており、前腿節が太い

胸部、鞘翅には黄色の短毛が生えている

(写真クリックで拡大表示)

(2011/01/11)



 クチキムシはクチキムシ科(Alleculidae)クチキムシ亜科(Alleculinae)に属し、ゴミムシダマシ科と同じゴミムシダマシ上科(ヒラタムシ上科)に属します。

 名前の通り朽木に多く、幼虫も、「虫ナビ」に拠れば、朽木を餌とするそうです。また、同サイトには「触れるとやや臭い匂いを出す」とあります。写真の虫には触れてはいないので確認は出来ませんでしたが、この次見つけたら試してみましょう。

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斜め上から見たクチキムシ.撮影中全く動かなかった

(写真クリックで拡大表示)

(2011/01/11)



 本種に似た種として、先に挙げたオオクチキムシ(A. fuliginosa)が居ます。写真のクチキムシの体長は10mm強(甲虫図鑑では10~12mm)ですが、オオクチキムシは14~16mm(同図鑑に拠る)とかなり大型です。図鑑に拠れば、上翅には黒褐色短毛があり、触角第3節は第4節よりも明らかに短いとのこと。

 また、図鑑では良く分かりませんが、Web上の写真を見ると、キクイムシにはツヤがあるのに対し、オオキクイムシは体全体が「艶消し」になっており、かなり印象が異なります。

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オマケの1枚.

(写真クリックで拡大表示)

(2011/01/11)



 保育社の図鑑を見ると、クチキムシ科の近縁に、クチキムシダマシ科(Elacatidae)と云う科があります。日本には2属4種しか居ない小さな科です。この科はチビキカワムシ科(Salpingidae)に入れられることもあるとのことで、九大の目録では、この科に属す4種はチビキカワムシ科所属となっていました。

 この辺りの科には、「ダマシ」や「モドキ」がゴマンと居るので、充分に注意する必要があります。


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2010年10月25日 (月)

マクガタテントウ(Coccinula crotchi


 先日、成城町内のある草地でダンダラテントウに似た、斑紋が橙色のテントウムシを見つけました。生憎、細かい枝の沢山あるヨモギの茎の辺りを歩き回っており、枝が邪魔をして中々写真が撮れません。やがてポトリと下に落ちてしまい(隠遁の術)、それっきりになってしまいました。

 そんな訳で、辛うじて使える写真が2枚撮れただけでした。出来映えは良くありませんが、後述の様に、この辺り(東京都世田谷区西部)では「珍種」の部類に入るテントウムシの様ですから、何卒御勘弁下さい。


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ヨモギの花の上を歩くマクガタテントウ

ダンダラテントウに似るが別属

前ピンで触角がぼけている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/17)



 家に帰って調べてみると、どうやらマクガタテントウ(Coccinula crotchi)の様です。体長は約3.5mm。ダンダラテントウと同じく、テントウムシ亜科(Coccinellinae)テントウムシ族(Coccinellini)に属し、斑紋もよく似ていますが、マクガタテントウはジュウシホシテントウ属(Coccinula)、ダンダラテントウはダンダラテントウ属(Menochilus)で別属です。

 保育社の甲虫図鑑にある「テントウムシ族の属の検索表」を読むと、ダンダラテントウ属の特徴は「触角は前頭の幅と等長かより短い.触角末端節は前節より狭く先端は尖る.触角基節は長[さ]より幅広く、内方に強くふくらむ」とあり(カギ括弧内の「さ」は恐らく誤植で抜けたと思われる)、ジュウシホシテントウ属を含む数属(ナナホシテントウ属、ウスキホシテントウ属、ナミテントウ属)では、「触角は前頭の幅よりも短くない.触角末端節は横長で先端は裁断状か長卵形.触角第1節は細長く、正常」とあります。

 ダンダラテントウはもう一つのWeblogの方で紹介していますが、確かに触角は短く、その基節は随分太く、また、先端は尖っています(Weblogの写真ではやや小さく、余りハッキリしませんが、原画がを見ると明らかです)。

 これに対し、今日のテントウムシでは、触角は前頭の幅(両複眼間の距離)よりも長く、触角の基部はダンダラテントウの様に太くはなく、先端は丸くなっており、ダンダラテントウ属ではないことは明らかです。

 検索表のその先は、写真からは見えない中胸腹板や前胸腹板等の特徴により、先に挙げた数属の内の何れかに落ちることになりますが、この数属の中で、写真のテントウムシの様な斑紋を持つのはマクガタテントウ1種のみです。マクガタテントウとして問題無いと思います。

 また、ダンダラテントウの斑紋は赤いのに対し、マクガタテントウでは写真でお分かりの通り橙色で、見た時の感じがかなり違います。

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斜め前から見たマクガタテントウ

触角が前頭幅よりも長く、先端は丸い

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/17)



 マクガタテントウは、Webで調べると、河川敷の様な場所に特異的に見出される種類だそうで、図鑑にも「やや少ない」とあります。日本全国で「やや少ない」のであれば、この辺りでは「珍種」と言って良いでしょう。

 不思議なのは、河川敷などに見出されるテントウムシが、何故、成城の様な住宅地に出現したかと云うことです。成城の東西には野川と仙川が流れていますが、河川敷と言える程のものはありません。

 実は、このマクガタテントウを見つけた同じ場所で、やはり河川敷に特異的に見られると云うシママメヒラタアブが多数居るのを見付けました(我が家の庭にも来ました→こちら)。このハナアブは、東京都本土部昆虫目録に載っていない、東京都未記録種です。

 今年の夏は記録的な猛暑だったそうで(私は日本に居なかったので実感がありません)、それで普通の草地が河川敷と同じ様な環境条件になってしまったのかも知れません。


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2010年5月25日 (火)

ホソサビキコリ(Agrypnus fuliginosus


 先日、四丁目にある「みつ池緑地」(「神明の森・みつ池特別保護区」に上部に接する)に寄ったとき、オニタビラコの咲き終わった花の上にサビキコリの1種が居るのを見つけました。体長は15mm位、以前紹介したサビキコリよりも細長く、家に帰ってから調べてみると、どうもホソサビキコリの様です。


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咲き終わったオニタビラコの花に留まるホソサビキコリ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 保育社の甲虫図鑑に拠ると、サビキコリ族(Agrypnini)の特徴は「前胸腹板線は触角を受け入れる深い凹溝を前半部または全部にわたって有する」と書いてあります。4番目の写真で、触角が前胸の溝に隠れているのが確認出来ますから、サビキコリ族であることは間違い無いでしょう。

 普通ならば、更に属への検索表を引くのですが、キー1の「中胸後側板は中基節窩に達する」が判断出来ません。どの範囲まで中基節窩なのかが写真からでは良く分からないのです。・・・絵合わせ以外に手がない様です。

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横から見たホソサビキコリ.意外と眼が大きい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 絵合わせでまず第1に注目したのが、前胸背板の後角の形状です。写真で明らかな様に、後角は尖らずにやや膨らんで丸まっています。この特徴を持つサビキコリは、図鑑ではサビキコリ、ムナビロサビキコリ、シロモンサビキコリ、ホソサビキコリの4種しかありません。何れもAgrypnus属のコメツキムシです。

 この4種の中で、細長いのはホソサビキコリ1種のみです。ホソサビキコリの解説には、「13~20mm.体は細長く、地色は黒褐色~黒色.前胸背板はやや縦長で両側が基方で強く波曲し、後角は後方外側へ突き出し、隆起線はない.小楯板は幅より明らかに長く、両側は基方で強くくびれる(後略)」と書いてあります。これらの特徴は、写真のコメツキと一致していると言えるでしょう。

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撮影中に何故か眠ってしまった

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 しかし、図鑑には載っていない類似種の可能性もあります。

 九州大学の日本産昆虫目録を見ると、Agrypnus属には33種が記録されています。しかし、その殆どは南西諸島産で、本州産は僅か7種、この内、図鑑に載っていないのは、戦後になって記録されたコガタヒメサビキコリとミカワサビキコリの2種のみです。
 また、東京都本土部昆虫目録を見ると、この内のミカワを除く6種の記録があります。ミカワは分布が愛知県から京都府に限られて居る様で、この辺り(東京都世田谷区西部)に居る可能性は無いでしょう。

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横から見たお休み中のホソサビキコリ

触角が前胸の溝に隠れている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 コガタヒメの方は23内での記録が幾つかあり、Web上にも写真が出ています。信頼度は不明ですが、何れもかなり太めの種類で、写真のコメツキムシとは大きく異なります。

 以上から、多少の不安はありますが、写真のコメツキはホソサビキコリ(Agrypnus fuliginosus)として良いのではないかと思います。なお、ホソサビキコリはコメツキムシ科(Elateridae)サビキコリ亜科(Pyrophorinae)サビキコリ族(Agrypnini)に属します。

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オマケにもう1枚.丸い頭部が印象的

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 このコメツキ君、撮影中に何故か寝てしまいました。前方から撮りたかったのですが、オニタビラコの萎れた花が邪魔になって撮れません。そこで少しチョッカイを出してみました。すると・・、コメツキ君、シッカリと花に掴まっていなかったのか、ポロリと下の藪に落ちて見えなくなってしまいました。

 そんな訳で、今日は正面から撮った写真はありません。


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2010年5月23日 (日)

トホシテントウ(Epilachna admirabilis


 一週間ほど前、久しぶりに四丁目方面に写真を撮りに行って来ました。気温が高いせいか中々敏感で、容易に撮らせて貰えませんでしたが、それでも比較的大きな虫を数種撮影することが出来ました。今日は、その中からトホシテントウ(Epilachna admirabilis)を紹介します。


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トホシテントウ.ニジュウヤホシテントウと同じく食植性

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 体長6~7mm位のやや大型のテントウムシです。上の写真の様に背側から撮ると分かりませんが、横から見ると(下の写真)、このテントウムシは非常にかさ高であることが分かります。まるで旧ドイツ軍のヘルメットの様な格好です。

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横から見ると、非常にかさ高

脚は全体的に殆ど赤色

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 トホシテントウは、ニジュウヤホシテントウ等と同じくテントウムシ科(Coccinellidae)マダラテントウ亜科(Epilachninae)マダラテントウ族(Epilachnini)に属し、アブラムシ等の捕食性ではなく、食植性です。

 体の背面全体に毛が生えています。毛の生えたテントウは他にも沢山ありますが、体長5mm以上になる種類は、マダラテントウ族だけの様です(アミダテントウ族のアミダテントウは体長4.0~4.6mm)。

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ナミテントウなどとは異なり吻が随分飛び出している

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 写真の個体では、前胸背の黒斑は面積としては1/2程度、鞘翅には名前の通り明瞭な10個の黒斑があり、脚は全体的に殆ど赤色です。しかし、保育社の甲虫図鑑に拠れば、胸背の黒斑は拡大して胸背全体が殆ど黒色になったり、上翅の黒斑も大きくなって融合することがあるそうです。また、脚の色も変化に富むと書いてあります。

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葉の上を忙しく歩き回る.何時ものことだが苦労する

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 このトホシテントウ、「神明の森・みつ池特別保護区」からはみ出しているミズヒキと思われるタデ科の植物に居ました。しかし、図鑑には「食草はカラスウリなど」と書かれています。この場所にはカラスウリも沢山生えているので、偶々カラスウリから離れてミズヒキに留まっていたのでしょう。

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飛び立つ直前のトホシテントウ.宙に浮いているのは中肢

慌ててシャッターを押したので少しブレている

直ぐ上の葉にぶつかって落ちた、ドジ!!

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 トホシテントウ等のマダラテントウ亜科のテントウムシは植物食ですが、幼虫は背中に分岐する鋭い突起を持っており、これは、カイガラムシを食べるクチビルテントウ亜科の幼虫と似ています。しかし、佐々木寛之著「テントウムシの自然史」を読むと、見かけは似ているが、形態上の著しい相違も多数認められる、と云う意味のことが書いてあり、系統的な関係を示している訳ではない様です。

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オマケにもう1枚.かさ高なので影が大きい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/05/17)



 最近はヤボ用が多く、中々更新が捗りません。5月に入ってからは、今回で漸く5回目です。時節の虫の写真はあるのですが、まだ整理・調整が出来ていません。出来るだけ時間を見つけ、鋭意更新に向け邁進して行く所存で御座いマス。


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2010年5月12日 (水)

クモガタテントウ(Psyllobora vigintimaculata


 今日は我が家の庭に居たテントウムシを紹介します。クモガタテントウ(Psyllobora vigintimaculata)、体長2.3mmのかなり小さなテントウムシです。

 我が家の庭で撮影した虫は、本来、もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」に掲載することになっています。しかし、我が家の庭ではこのテントウムシはかなり普通で、もう3回も「我が家の庭・・・」に掲載しているのですが、家の外では全く見ていません。この分では、此方に掲載する機会は無いかも知れないので、この際出してしまうことにしたのです。


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セイタカアワダチソウに居たクモガタテントウ

個体により模様にかなりの変異がある

体長は約2.3mmでかなり小型

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/04/26)



 クモガタテントウはテントウムシ科(Coccinellidae)テントウムシ亜科(Coccinellinae)カビクイテントウ族(Halyziini=Psylloborini)に属す北米原産の帰化種です。2009年11月に発行された文教出版の「テントウムシの調べ方」に拠ると、発見は1984年で、分布は九州、本州、北米となっています。

 日本には、イセリアカイガラムシを捕食させる為に導入されたベダリアテントウの他にもかなり多くの外来テントウムシが棲んでおり、「テントウムシの調べ方」には12種の外来テントウムシのリストが載っています。これらの種類の多くは、普通の昆虫図鑑には載っていません。図鑑で迷子になったら、外来種を疑った方が良いかも知れません。

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横から見たクモガタテントウ.まだ寝ている

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/04/26)



 テントウムシには鞘翅の模様に変化のある種類が多いですが、このクモガタテントウにもかなりの変異が認められます。しかし、ナミテントウヒメカメノコテントウの様に2紋型とか4紋型と云うのではなく、模様がハッキリしているか否かの違いと言えます。日本では、今日の写真の様な、象牙色の下地に薄い茶色から黒に近い茶色の斑がある個体が多い様ですが、全体的にかなり薄い場合もあります。

 原産が北米ですから、学名で画像検索すると非常に多くの写真が出て来ます。それらを見ると、北米では象牙色の下地に殆ど一様に黒に近い斑を持つ個体が多い様です。そのせいか、英語ではTwenty-Spotted Lady Beetle<ニジュウホシテントウ>と呼ばれています。因みに、テントウムシの和名で「ニジュウホシテントウ」と云う種はありません。

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正面から見たクモガタテントウ.キイロテントウに似た可愛い顔

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/04/26)



 クモガタテントウはカビクイテントウ族ですから、葉の上に繁殖した白渋菌(うどん粉病菌)を餌にしています。Webにあるクモガタテントウの記事を読むと、セイタカアワダチソウ、エノキなどで良く見つかるそうですが、餌は菌で植物ではありませんから、色々な植物上で見付かります。但し、うどん粉病は寄主により菌の種類が違うそうですから、特定の植物に寄生する白渋菌を好む傾向があるかも知れません。

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斜めから見たクモガタテントウ

(写真クリックでピクセル等倍)

(2010/04/26)



 現在、日本産カビクイテントウ族としては、クモガタテントウの他に、キイロテントウ、シロジュウロクホシテントウ、シロホシテントウ、アラキシロホシテントウの4種が記録されて居ます。後三者は何れも赤っぽい下地に白斑を持つ種で、外見的にはシロトホシテントウやムーアシロホシテントウ等のCalvia属のテントウムシとよく似ています。しかし、これらのテントウムシはテントウムシ族(Coccinellini)に属し、捕食性です。名前もかなり紛らわしいので、注意が必要です。

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テレプラスを挟んで撮影したクモガタテントウ

激しく動き回るので少しブレている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/04/26)



 この個体は、虫集めの為に植木鉢で栽培しているセイタカアワダチソウに居ました。カメラは普段からベランダのテーブルに置いてあるので、葉を切り取って直ぐにテーブルの上で写真を撮ったのですが、体長2.3mmの虫を撮るには普通の等倍マクロではやや力不足です。そこで一通り撮ってから、部屋に戻ってテレプラスを持って来て撮り直しをすることにしました。テントウムシ君、始めはすっかり寝込んでいる様子でしたが、戻って来た時には目覚めて葉の上を忙しく歩き回って居ました。数枚撮ってから、動きを止めさせようと思い一寸息を吹きかけたところ、小さなテントウムシ君は吹っ飛んでしまい、それっきり行方不明になってしまいました。そんな訳で、テレプラスを挟んで撮った高倍率の写真は1枚しかありません。


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2010年4月18日 (日)

ヒメカメノコテントウ(Propylea japonica


 先日、買い物ついでに「三丁目緑地」に寄ったとき、一寸面白い色合いのテントウムシを見つけました。黒地に6つの白斑があり、その白い部分が所々で赤くなっています。ユキヤナギの葉上で交尾中でした。見たこともない模様ですし、2頭とも同じ模様をしていたので、新顔のテントウムシかと思い撮影しましたが、家に帰って調べると、残念ながら普通種のヒメカメノコテントウ(Propylea japonica)でした。テントウムシの仲間には、模様の変異が著しい種類が多く、時々この様なことがあります。

 体長は、何れの写真もやや斜めなので正確には分かりませんが、上(雄)が約3.5mm、下(雌)が約4.5mmです。


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ユキヤナギの葉上で交尾中のヒメカメノコテントウ

本来黄色の筈の部分が白と赤の斑

(写真クリックで拡大表示)

(2010/04/13)



 ヒメカメノコテントウには幾つかの型があり、カメノコ模様の基本型、上翅の殆どが黄色で会合線の部分だけが黒い背筋型、これの肩部に小黒斑を持つ肩紋型、更に後側部に小黒斑を加えた4紋型、殆ど真っ黒の黒色型等があります。更にこれらの型の中間形(例えば、基本型と黒色型の中間形)もありますので、模様の変化は非常に広くなります。

 しかし、今日のヒメカメノコテントウの様に、本来黄色の筈の明色斑が、白と赤の斑になっている場合があるとは知りませんでした。

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頭部と胸部の模様は、それぞれ雌雄の典型的な模様

(写真クリックで拡大表示)

(2010/04/13)



 実は、上翅(鞘翅)の模様に変化が多いテントウムシでも、頭部や胸部の模様はかなり一定しています。この雌雄の場合も、頭部と胸部は典型的なヒメカメノコテントウの模様をしています。上と下の個体で模様が違うではないか、と思われる読者も居られると思いますが、この頭胸部の模様は雌雄で異なるのです。上は雄の、下は雌の典型的な模様です(文教出版の「テントウムシの調べ方」に拠る)。

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雌は約4.5mm、雄は約3.5mm.蚤の夫婦??

(写真クリックで拡大表示)

(2010/04/13)



 昨日は時ならぬ春の雪が降ってビックリしました。虫達も困惑しているのではないかと思います。早く安定した暖かい陽気になって欲しいものです。

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2010年3月28日 (日)

カワノキクイムシ亜科(Hylesininae)の1種


 先日、「四丁目緑地」の脇にあるケヤキの樹皮を剥がしていたところ、キクイムシの1種が出て来ました。キクイムシと云うのは一般にもよく知られた森林害虫ですが、多くは体長2~3mmと小さく、目に止まる機会は余り無いのではないかと思います。Web上で生態写真を探しても、日本のサイトは極く僅かしかヒットしません。今日の写真は余り鮮明ではないのですが、読者諸氏の参考の為、掲載することにしました。


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カワノキクイムシ亜科(Hylesininae)の1種

体長は約2.7mmと小さい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/24)



 体長は約2.7mm、テレプラスを挟んで約2倍で接写していますが、虫に厚みがある為、中々全体に焦点が合いません。撮った写真の殆どは没になりました。

 実は、キクイムシを調べるのは初めてです。九州大学の日本産昆虫目録に拠ると、キクイムシ科(Scolytidae)には4亜科303種もあり、かなり大きなグループと言えるでしょう。保育社の甲虫図鑑には、亜科への検索表があります。しかし、肝腎の部分が良く見えず、正確に検索表を辿るのは一寸無理です。それでも何とか、写真や検索表のキーを見て全体的に判断すると、カワノキクイムシ亜科(Hylesininae:和名は九大目録による)に属す様です。

 下の写真を見ると、前肢脛節の外側には後方に曲がった爪状の突起がある様に見えます。また、頭部は上方から見て前胸の前に現れ、前胸背は均一に点刻されており、更に、上翅の基縁は隆起して小鈍鋸歯状となっています。これらはカワノキクイムシ亜科の特徴と一致します。

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上翅の基縁は隆起して小鈍鋸歯状となっている

前脛節に不明瞭だが歯状の突起が見える

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/24)



 保育社の甲虫図鑑には、キクイムシ科全部で91種、Hylesininae(カワノキクイムシ亜科)では29種が載っています。その中で絵合わせをすると、ハルニレノキクイムシが一番良く似ていました。解説を読むと「2.1-2.7mm.触角の中間節は6節、腹部は水平、1属1種.加害樹種:クリ・ハルニレ・ケヤキ・カツラ・サイカチ・イタヤカエデ.本州、九州、朝鮮半島」となっています。

 体長や寄主、分布では一致しますが、九大目録を見るとこの亜科には71種も記録されており、その中の29種からの絵合わせでは、信頼性がありません。また、図鑑に載っている同種の触角の形も、写真とは少し違っている様にも見えます。

 此処では、「カワノキクイムシ亜科」の1種に留めておくのが無難でしょう。

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前胸背は均一に点刻されている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/24)



 キクイムシの多くは、樹皮や木部に穴を空ける穿孔虫です。しかし、ドングリ等の種子や枝の髄を食害する種類もあります。また、木部に穴を空けるキクイムシには、菌を「栽培」して材ではなくその菌を食べる「養菌性キクイムシ」が沢山居ます。

 雄と雌の関係も、一夫一婦制や一夫多妻制等があり、更に近縁のナガキクイムシ科には、女王と多数のワーカーによる真社会性を持つ種類も居ます。私は詳しくは知りませんが、その生態は多岐に亘り、中々興味深いものがある様です。

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触角球桿部は4節ある様に見えるが定かでない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/02/24)



 なお、キクイムシ科は、ゾウムシ科(Curculionidae)キクイムシ亜科(Scolytinae)とする見方もあります。Bugguide.netではその様になっています。外国のサイトで検索するときは、大分類が日本で主流の分類体系とは異なることがあるので、注意が必要です。

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2010年3月26日 (金)

キンケハラナガツチバチ(Campsomeris prismatica


 先日、「四丁目緑地」に行った帰りに、今の季節としては珍しいハチを見付けました。ツチバチ科(Scoliidae)ツチバチ亜科(Scoliinae)に属すキンケハラナガツチバチ(Campsomeris prismatica)の雌です。

 「四丁目緑地」の南に「十一山市民緑地」と云う殆ど階段だけの小さな緑地があり、その入り口近くの地面を這っていました。かなり大型のハチで、体長25mm位はあります。


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越冬から目覚めたキンケハラナガツチバチの雌

体長は25mm位で、かなり大きい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/03/15)



 ツチバチ亜科のハチとしては、かなり以前にキオビツチバチの雄を紹介しました。しかし、この種はツチバチ族(Scoliini)に属し、このキンケハラナガツチバチの方は別族のハラナガツチバチ族(Campsomerini)に属します。

 キンケハラナガツチバチは、普通は晩夏から秋にかけて出現する虫です。今頃いるとは一寸驚きで、晩春に現れる何も形容のつかないハラナガツチバチ(北隆館の新訂圖鑑ではシロオビハラナガツチバチ)かとも思ったのですが、腹部には黄白帯が認められず、やはりキンケハラナガツチバチでした。

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地面の上を這い回るキンケハラナガツチバチ

まだ体が温まっておらず良く飛べない

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(2010/03/15)



 家に帰ってから北隆館の圖鑑にあるキンケハラナガツチバチの項を読むと、その長い解説の一番最後に「♀のみ越冬する」と書いてありました。今頃居てもおかしくないどころか、居なければならない存在でした。

 しかし、秋にはその数が非常に多く、セイタカアワダチソウや菊の花などには群がっていると言っても良い程沢山居るのですが、今まで春に見たことはありません。越冬の成功率が非常に小さいのでしょうか?

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腹部や胸部下側の毛は色が薄い

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(2010/03/15)



 この辺り(東京都世田谷区西部)に生息するハラナガツチバチ族としては、他にヒメハラナガツチバチが居ます。数はキンケよりも大部少ない様です。他に只のハラナガツチバチ(シロオビハラナガツチバチ)も居るかも知れません。この種は、北隆館の圖鑑に拠れば春から夏にかけて出現するそうで、確かに、その頃にそれらしきハチ見ることがあるのですが、まだ確認していません。

 ハラナガツチバチ族のハチは互いに良く似ていて、種の判別が難しい場合もあります。また、雄と雌で大きく形態が異なります。種や雌雄の区別の仕方は、少し前に別のWeblogで詳しく書きましたから此処では省略します(キンケハラナガツチバチの、ヒメハラナガツチバチの)。

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頭部胸部を拡大.複眼は腎臓型

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(2010/03/15)



 初めて見た春のキンケハラナガツチバチは、まだ少し寒いせいか、元気は良くありませんでした。一応飛ぶことも出来なくはないのですが、20~30cmで着地してしまいます。しかし、ジッと止まっていることは少なく、歩き回って中々思う様には写真が撮れません。やがて、体が温まったのか、撮った写真をチェックしている間に、何処かに飛んで行ってしまいました。

 そんな訳で、今回撮ることの出来なかった正面と真横からの写真は、昔我が家の庭で撮ったものを使うことにしました。

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ハラナガツチバチ類は大人しい

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(2010/03/15)



 ハチに慣れ親しんでいる者には信じ難い話ですが、このキンケハラナガツチバチをスズメバチ(例えばオオスズメバチコガタスズメバチ)と間違える人が居るそうです。

 しかし、ハラナガツチバチ類は極めて大人しいハチで、これまでこの蜂に刺されたと云う人を知りません。特に雌は警戒心も少ない様で、花の上を歩いているときなど、手を出すと直ぐに乗ってきます。実は、上の写真も、撮り難い場所にハチが移動すると手を出してハチを乗せ、撮り易い場所に降ろしてからまた撮る、と云うことを繰り返して撮影しました。

 しかし、雌はチャンと毒針を持っていますから、指で摘んだりすれば刺されるでしょう。

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北米産シオンの1種の花にしがみ付くキンケハラナガツチバチ(雌)

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(2006/10/10)



 上と下の2枚の写真はかなり前に我が家の庭で撮りました。上は北米原産のシオンの1種(孔雀草の名で売られているらしい)、下はセイタカアワダチソウの花に来たところです。何方も雌ですが、雄も勿論これらの花にやって来ます。しかし、シオンの方には雄雌共に多いのに対し、セイタカアワダチソウに来るのは殆どが雌で、雄を見ることはあまりありません。

 雌は卵を形成する為に多量の蛋白質を必要とします。それ為、雌は蛋白含量の多い花粉を食べなければならず、一方、雄の方は当分のエネルギー源となる花蜜を摂るだけで充分なのでしょう。恐らく、セイタカアワダチソウには花粉は多いが蜜は少なく、逆にシオンの方は花粉は少ないが蜜は多いのだと思います。

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キンケハラナガツチバチ(雌)の顔

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(2008/10/20)



 ここ数日、雨模様の寒い日が続いています。今日は昼前には晴れ、午後には気温も上がるとの予報でしたが、どうも時々陽が射す程度で空気は冷たいままです。カメラを持って散歩に出掛けようと思っていたのですが、当てが外れた様です。


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2010年3月21日 (日)

ヒゲブトハムシダマシ(Luprops orientalis


 成城名物の桜並木を真っ直ぐ北に進むと、やがて一寸した行き止まりとなり、そこから更に北へ細い路が続いています。これを道なりに進んで暫く行くと、ケヤキ、ムクノキ、シラカシ等の生い茂った藪の前を通ります。一寸前までは竹藪もあったのですが、今は刈り取られてしまいました。七丁目にあるこの藪は個人の所有地とは思いますが、隣家とは壁で隔たっているので、一寸中に入って虫を探してみました。

 今日は、そこで見付けた虫を紹介します。ケヤキの樹皮下に居た、体長8mm強の少し平べったい甲虫です。


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ケヤキの樹皮下に居たヒゲブトハムシダマシ

剥がした樹皮の側にくっ付いていた

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(2010/03/11)



 見付けたときは、ゴミムシの1種かと思いました。しかし、良く見ると、触角も脚も太くて短く、ゴミムシの仲間ではありません。更に、大顎の目立たないテントウムシの様な口器をしています。また、小腮鬚も斧型で、この点でもテントウムシに良く似ています。一体、何処の科に属す虫なのか、少し考えてしまいました。

 こう云う格好をした、鞘翅に模様が無い、茶~黒色の良く分からない甲虫は、先ず、ゴミムシダマシ科を調べることにしています。何故かと云えば、以前、ゴミムシダマシ科に属す「セスジナガキマワリ」の記事で書いた様に、「このゴミムシダマシ科には、外見的な統一がまるで有りません.オサムシの様な格好をしたのもいれば、テントウやシデムシみたいな連中も居ますし、シバンムシと間違える様なのも居ます.まるで、○○○モドキ、×××ダマシの百貨店の様な科です」、と云う訳だからです。

 しかし、保育社の甲虫図鑑でゴミムシダマシ科を調べても、写真の様な虫は見付かりませんでした。

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ケヤキの樹に移した後、樹皮面を歩くヒゲブトハムシダマシ

かつてはヒゲブトゴミムシダマシと呼ばれていた

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(2010/03/11)



 その後、色々探し回って、漸く直ぐ隣のハムシダマシ科(Lagriidae)に属すヒゲブトハムシダマシであることが分かりました。余りに近すぎて見逃してしまった様です。

 ハムシダマシは既に紹介済みですが、毛むくじゃらのかなり細長い多少華奢な感じのする虫で、写真のヒゲブトハムシダマシとはかなり感じが違います。調べてみると、ハムシダマシ科には2亜科があり、前者の様な細長いのはハムシダマシ亜科、後者の様なややズングリしたのはチビヒサゴゴミムシダマシ亜科(Adeliinae)に属す様です。

 ハムシダマシ科なのにチビヒサゴゴミムシダマシ亜科と云うのはどう見ても変です。しかし、この亜科はかつてはゴミムシダマシ科所属で、九州大学の目録でも「チビヒサゴゴミムシダマシ亜科」とされており、まだ、何方も「チビヒサゴハムシダマシ亜科」とは呼んで居ない様です。この手の科の変更に伴う和名の混乱は時として色々な分類群に生じます。例えば、ハナバエ科ではなくイエバエ科なのに、○○○ハナバエと云う和名がかなりの数ありました(現在では篠永氏が「日本のイエバエ科」で全て○○○イエバエに変更されています)。

 このヒゲブトハムシダマシの和名も、以前はヒゲブトゴミムシダマシと呼ばれて居たとのことです。一寸気になったので、保育社の甲虫図鑑より古い「原色日本昆虫図鑑(上)甲虫編」を見てみると、やはり、ゴミムシダマシ科のヒゲブトゴミムシダマシになっていました。

 まァ、そんな訳で、始めゴミムシダマシ科を調べたのも、そう見当違いでは無かった様です。

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テントウムシの様に、大顎が不明瞭で、小腮鬚は斧型

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(2010/03/11)



 この藪は、通りに面した部分では頑丈な壁で隣家と隔てられています。しかし、中に入ってゆくと、何と、その御宅の庭と繋がっていました。写真の枚数が少ないのは、不審者と間違えられるといけないので、急いで帰って来たからです。


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2010年3月 7日 (日)

キイロクビナガハムシ(Lilioceris rugata


 この辺り(東京都世田谷区西部)に昔から生えている背の高い落葉広葉樹と云えば、武蔵野の樹とされているケヤキが目立ちますが、ムクノキもかなり彼方此方に生えています。

 ムクノキは、ケヤキとは異なり、縦に樹皮が剥がれます。今日はそのムクノキの樹皮下で越冬していたキイロクビナガハムシ(Lilioceris rugata)を紹介しましょう。「七丁目緑地」には何本かのムクノキが生えており、その内の1本です。


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ムクノキの樹皮下に居たキイロクビナガハムシ

「キイロ」と付くが、黄色ではない

頭頂部に縦溝が見える

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(2010/02/22)



 キイロクビナガハムシの鞘翅は、普段は赤味の強い綺麗な色をしています(決して「キイロ」ではありません)。しかし、越冬中は部分的に黒みを帯びた赤褐色で、始めは何ハムシなのか、良く分かりませんでした。

 こう云う首の長いハムシは、ハムシ科(Chrysomelidae)内の数亜科に亘っています。しかし、鞘翅の先端が尖らず、全体的にガッチリしており、頭頂に縦溝を持ち、前胸背板が中央部で括れるのは、クビボソハムシ亜科(Criocerinae)です。

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ムクノキの根の上を歩くキイロクビナガハムシ

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(2010/02/22)



 九州大学の日本産昆虫目録ではクビボソハムシ亜科は27種、東京都本土部昆虫目録では14種が記録されています。保育社の甲虫図鑑を見ると、クビボソハムシ亜科には24種の図版が載っています。まァ、この辺りに珍種は居ないと思いますので、この図鑑の中に載っていると考えて良いでしょう。

 鞘翅の点刻が強く赤色系、脚は全体黒色、前胸は膨らまないと云う基準で図鑑と絵合わせすると、候補はルイスクビナガハムシ、ホソクビナガハムシ、キイロクビナガハムシの3種になりました。

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キイロクビナガハムシの顔.ハムシ類の顔はみな険悪

テレプラスを挟んで撮ったので少し解像度が高い

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(2010/02/22)



 鞘翅の色ではルイスクビナガハムシが一番近かったのですが、Web上の写真を見ると多くは縦に明確な3本の黒条があり、また、図鑑の図版を天眼鏡で拡大して見ると前胸背の点刻は数がずっと少ない様です。ルイスは除外しても良いでしょう。

 次に、ホソクビナガの特徴は、図鑑に拠れば「6.8-7.0mm.(中略)小楯板には細い剛毛を全面に密生する.体腹面は黒色の中・後胸側方部を除き赤褐色.肢は赤褐色の腿節基部を除き黒色・・・」とあります。

 写真のハムシは、体長8.0mm、小楯板に剛毛は見えず、腹面も腿節基部も全て黒色です(ここには載せていない写真から明らかです)。これでホソクビナガも失格となり、キイロクビナガだけが残りました。

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斜めに見たキイロクビナガハムシ

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(2010/02/22)



 キイロクビナガの特徴は「6.2-8.0mm.前種[ホソクビナガ]に似るが、小楯板は殆ど剛毛を欠き、触角はやや幅広く、末端節近くでは幅は長さよりわずかに狭く、前胸背板は赤褐色.頭部・触覚・体腹面・肢は全体黒色.小楯板はほとんど暗褐色」となっています。写真のハムシとほぼ一致します。・・・と云うことで、写真のハムシはキイロクビナガハムシと相成りました。

 「キイロクビナガハムシ」で検索すると、「越冬中のキイロクビナガハムシ」がかなりの数出て来ます。同定の根拠は一切書かれていないので、本当にそうなのか良く分かりませんが、今日のハムシに酷似していました。


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最初の写真とほぼ同じ.頭頂部の溝はこの方が明らか

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(2010/02/22)



 上の写真のハムシは、樹皮を剥がしたときに落ちてきた為、地上に出ているムクノキの根に乗せて写真を撮りました。かなりゴミで汚れていますが、落ちてきたときに樹皮の断片が付着したのでしょう。

 実は、これらの写真を撮る1ヶ月程前に、同じ樹の樹皮下で同じキイロクビナガハムシを見付け、写真もシッカリ撮ってあるのです。しかし、露出が不足で増感したところ、かなり荒れてしまったので、掲載はしませんでした。しかし、その時の写真を1枚だけ載せることにします。アリグモと思われる幼体と一緒に居ました。ハムシにはクモの糸がかかっていて、一見死んでいる様に見えますが、チャンと生きていました。この写真を撮った後、ストロボの光に刺激されたらしく、少しずつ動き始めました。

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これまでの写真の1月前に撮ったもの

アリグモらしき幼体と同居していた

体にはクモの糸が絡んでいる

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(2010/01/19)



 キイロクビナガハムシは、クビボソハムシ亜科なのに、「クビボソハムシ」ではなく「クビナガハムシ」と名が付いています。図鑑を見ると、「クビナガハムシ」の名は、Crioceris属とこのLilioceris属に属す全てのハムシに付けられている様です。

 調べてみると、この2属はCriocerini族に属しており、逆にこのCriocerini族にはこの2属しかありません。Criocerini族は、「クビナガハムシ族」とでも言うべきグループなのでしょう。


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