ケチャタテ科の1種(Caeciliusidae gen. sp.)(その5)
どうも最近は、体がすっかり熱帯向きになって来たのか、寒くなると外出するのが億劫になります。それでも先日、「四丁目緑地」のケヤキの樹が気になって、カメラを持って出掛けました。
しかし、そのケヤキの樹皮下には、以前掲載した「ハイイロチビフサヤスデ(その2:集団越冬)」よりも、もっと高密度に集まったハイイロチビフサヤスデがいた程度で、目新しい被写体は何も見当たりませんでした(ヨツモンホソチャタテが1頭、樹皮下で越冬していました。これまで、樹皮下でホソチャタテ科の虫を見たことはありません)。
そこで、1.2kmほど南にある「三丁目緑地」に行ってみました。緑地の北西部にある、泉の横に生えているタラヨウの葉裏には大概何かが居るのです。本当は、双翅目が目当てだったのですが、そこでこれまで見たことのないチャタテムシを見つけました。
![]() タラヨウの葉裏に居たケチャタテ科の1種 翅膜は淡黄褐色、翅脈は黄色い (写真クリックで拡大表示) (2012/01/06) |
翅脈(「YOSHIZAWA,Kazunori(2005):Morphology of Psocomorpha」に拠る)や体形からして、ケチャタテ科(Caeciliusidae)の1種なのは間違いないでしょう。翅端まで約4.0mm、前翅長約3.2mmですから、ケチャタテ科としては中程度の大きさです。
上の写真の様な、目の黄色いケチャタテはこれまでにも何回か紹介しており、特に後小室(「ホソチャタテ」の3番目の写真を参照して下さい)が小さい点で「ケチャタテ科の1種(その2)」とよく似ています。
![]() 横から見ると、全体的に結構毛深い 後小室は少し見難いが小さい (写真クリックで拡大表示) (2012/01/06) |
しかし、「その2」の方は、翅膜も翅脈も殆ど無色なのに対し、今日のチャタテムシは翅膜が薄い黄褐色で、翅脈は黄色をしています。特に縁紋の辺りの黄色が目立ちます(最後の写真)。
黄色の目立つケチャタテ科としては、キイロケチャタテがよく知られています(但し、Web上にある「キイロケチャタテ」の多くは誤認です)。しかし、富田・芳賀(1991)の「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」を見ると、キイロケチャタテは後小室が大きく、縁紋は全体に黄色となっており、一致しません。
![]() 小顎鬚(小腮鬚)は殆ど無色透明.先端も同様 (写真クリックで拡大表示) (2012/01/06) |
そら氏のブログ「ご近所の小さな生き物たち」に掲載されている記事「キイロケチャタテでは無いそうです」に、psocodea氏(北海道大学吉澤教授のハンドルネーム)が次の様なコメントを書かれています。「キイロケチャタテに外観的に良く似た種はたくさんいるのですが,実は結構遠縁の仲間も含まれます.というか,キイロケチャタテは,ケチャタテ科から独立させた方が良いかとも考えています(現在論文が進行中).・・・」。どうやら、本当のキイロケチャタテは、少し普通のケチャタテとは違った虫の様です。
![]() 斜めから見ると、縁紋付近の黄色が目立つ (写真クリックで拡大表示) (2012/01/06) |
ケチャタテ科であることは問題ないとして富田・芳賀の検索表を辿ると、和名のないValenzuela flavidorsalis(この検索表は少し古いので属名はCaesilius)が一番近い様です。この種の特徴は、「後小室が小さく、小顎鬚は淡黄褐色で、端節はやや暗色.翅脈及び翅膜は黄褐色.前翅長約3.0mm」となっています。しかし、今日のチャタテムシでは、小顎鬚は殆ど無色でその端が暗色とは言えません(3番目の写真)。
学術論文ではないので、Valenzuela flavidorsalis?とする手もありますが、吉澤教授の上記コメントから察せられる様に、ケチャタテ科はまだ未整理部分が多い様です。此処では単にケチャタテ科の1種(Caeciliusidae gen. sp.)として置くことにしました。
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