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2011年12月の1件の記事

2011年12月22日 (木)

タイワンキシタアツバ(Hypena trigonalis)?の幼虫


 先月の末に帰国しました。その後約1週間は雨模様の日が多く、写真を撮りに出かける様な状態ではありませんでしたが、今月4日の日曜日になって漸く良い天気になりました。買い物ついでに写真を撮って来たのですが、色々と雑用などがあって、此方のWeblogは、今日が帰国第1回目の更新になってしまいました。


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カラムシの葉裏を歩くタイワンキシタアツバ?の幼虫

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(2011/12/04)



 「三丁目緑地」の一番下にある人工的な公園(道路の反対側はオーケー・ストア)の縁に、昔からイラクサ科の大きな雑草が沢山生えています。何時も芋虫でも居ないか見ているのですが、これまで何らかの食痕すら見たことがありませんでした。

 ところが、・・・今度は居ました。

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アツバ亜科の幼虫は一般に第3腹節の腹脚を欠く

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(2011/12/04)



 体長は40mm程度、多分終齢幼虫でしょう。この写真の様な、黄色~緑の体色に黒い斑点と云う蛾の幼虫は色々な科に居ます。一々調べるのは面倒ですから、「イラクサ科 毛虫」でGoogleの画像検索をしてみると、一発でよく似た毛虫が出て来ました。クロキシタアツバ(Hypena amica)の幼虫でした。

 しかし、同属のタイワンキシタアツバ(Hypena trigonalis)も非常によく似た模様をしており、食草も同じです。保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」に拠れば、「両者の幼虫は識別することが出来ない」と書かれています(なお、同図鑑では、これらのアツバ類は何れもDichromia属となっています。昭和40年の出版ですから、その程度の変更は驚くに当たりません)。

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急いで移動する時は尺取虫状になる

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(2011/12/04)



 また、何も形容の付かないキシタアツバ(H. claripennis)の幼虫もかなり似ています。食草もこれまた同じイラクサ科です。キシタアツバとクロキシタアツバ(タイワンキシタアツバ)の幼虫の違いは、同図鑑に拠れば、前者は地色が橙褐色で、体表には24倍の拡大で認め得る棘状突起を密布するのに対し、後者では地色が黄緑色を主とし、体表には150倍で識別出来る微突起を密布する、とのことです(頭部の刺毛配列の違い(角度)についても書いてありましたが、写真からの判断は一寸難しい様です)。

 写真の幼虫は地色は黄緑色を主としており、また、下2枚の写真の様に、かなり拡大しても、表面がザラザラしているのは分かっても、微突起は認められません。キシタアツバの可能性は無い様です。

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タイワンキシタアツバ?幼虫の横顔

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(2011/12/04)



 タイワンキシタアツバの成虫は、以前掲載したことがあります。その後も成虫を何回か見ていますので、今日の幼虫は多分タイワンキシタアツバの幼虫だと思います。しかし、成虫の方もクロキシタアツバとよく似ていて、両者を混同した可能性もあります。其処で、表題には「?」マークを付けて置きました。

 実は、掲載が遅れた理由の一つに、もう一度行って幼虫を拉致し、飼育して羽化させ、種を決定しようと思ったことがあります。残念ながら、幾ら探しても、もう幼虫は見つかりませんでした。或いは、何処かで営繭してしまったのかも知れません。

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タイワンキシタアツバ?幼虫の顔写真

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(2011/12/04)



 これらのキシタアツバ類が属すHypena属は、ヤガ科(Noctuidae)アツバ亜科(Hypeninae)に属します。一般にこの亜科では、腹脚は第3節が退化して3対しかありません。3対あるので普通の毛虫・芋虫の動きも出来る様ですが、大きく動く時は、3番目の写真の様に尺取虫型になります。

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オマケの1枚.尺取虫状の姿を撮ろうとしてタイミングを外した

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(2011/12/04)



 私は、植物は科が分かれば普通は種まで調べたりはしないのですが、今回は調べる必要があるでしょう。植物では、多くの場合、科さえ分かれば検索は簡単です(どんな花が咲くのか、以前観察しています)。カラムシでした。葉には目立った毛がありませんからナンバンカラムシではなく、また、葉裏は白っぽいので、アオカラムシでもありません。


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