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2011年3月 1日 (火)

タマゴクロバチ科の1種(Trissolcus sp.)?

 最近は、どうも本ばかり読んでいて、Weblogの方はすっかり御無沙汰です。2月の更新は2回のみ、写真は沢山あると云うのに、一寸酷いですね。今日から3月、反省を込めて少し気合いを入れて行こうと思います。
 3月最初の記事は、「三丁目緑地」に生えているケヤキの樹皮下で集団越冬していた小さなハチについての紹介です。前回の「クロハナカメムシ」が居たのと同じ樹です(昨年、同じ樹で撮影した「ヒシモンナガタマムシ?」の最後の写真に写っているハチは、多分今日のハチと同じ種類)。10頭前後の集団が2個所に居ました。

Trissolcus_110219_134
ケヤキの樹皮下で越冬するタマゴクロバチ科のTrissolcus sp.
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 体長は、尾端が良く分かりませんが、1.5mm程度、翅端までは約1.7mm、前翅長は約1.2mmです。通常の等倍接写では一寸小さ過ぎるので、テレプラス×2を使用して撮影しました。
 見た時はコバチ類(コバチ上科)と思ったのですが、似た様な形をした小型のハチは他の上科にも居ます。今回の写真は殆ど背面からの写真ばかりです。樹皮下に居る虫は、周囲より窪んだところにいるので、側面からは撮り難いことが多く、今回も何枚か撮ったのですが、使いものにはなりませんでした。背面からの写真だけで保育社や北隆館の図鑑にある検索表を引くのは一寸無理です。しかし、写真を良く見ると、前胸は肩板に達している様に思えます。コバチ上科では前胸が肩板に達しないので、別の上科に属すことになります。
Trissolcus_110219_111
Trissolcus sp.?.翅には単純な枝脈があるが分かり難い
翅端まで約1.7mmの小さなハチである
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 ハチ類の検索表としては、図鑑のものとは別に晶文社の「あっ!ハチがいる」に図解検索表があったのを思い出しました。
 早速これを見てみると、細腰亜目→有翅→腹部は前伸腹節の下部に付いている(ヤセバチ上科ではない)→側方から見て触角はテラス状に突出した部分の上に付き、触角柄節は長い→クロバチ上科(Proctotrupoidea)と簡単にクロバチ上科に落ちてしまいました。
 「テラス状に突出した部分」は、横からの写真が無いので不明瞭なのですが、3番目の写真を見ると、触角は顔面から直接伸びているのではなく、何らかの突起の上(背側)から生えている様に見えます。この突起が「テラス状に突出した部分」なのだろうと思います。
Trissolcus_110219_113
胸部背面後部には2本の縦溝が認められる
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 クロバチ上科より下への検索は、今日の写真からでは無理です。其処で、北隆館の圖鑑で絵合わせと相成ります。「触角は膝状で棍棒状部があり、翅脈は前縁脈と真っ直ぐな枝脈(縁紋脈)があるのみ」として探してみると、どうやらタマゴクロバチ科(Scelionidae)の様です(クロバチ上科は5種しか載って居らず、その内の4種がタマゴクロバチ科でした)。  写真のハチには、胸背(中胸楯板)の下半分に少し斜めになった1対の縦溝が認められます。圖鑑の解説を読むと、ミツクリクロタマゴバチ(ミツクリタマゴクロバチ:Trissolcus mitsukurii)には「中盾板の下部に短い側片溝あり」とあります。この縦溝は、或いはTrissolcus属の特徴かも知れません。
 いつも拝見している、おちゃたてむし氏の「明石・神戸の虫 ときどきプランクトン」や、フッカーS氏の「どっこい生きてる」にも、この冬に撮影されたタマゴクロバチが登場しています。その記事の中で、クロバチ類の専門家と思われるKurobachi氏(ほぼ間違いなく名城大学の山岸健三教授)がこのTrissolcus属に付いて幾つかコメントを書かれていました(ezo-aphid氏による伝言もあり)。
 それらに拠ると、Trissolcus属はケヤキの樹皮下などで集団越冬することが昔から知られており、また、コメントを総合すると、中胸楯板に2本の長い溝があるのはTrissolcus属の特徴の様です。
Trissolcus_110219_136
やや横から見た図.脚の基節は褐色、腿節は暗褐色
脛節付節は褐色.触角柄節は褐色で先端部は
色濃く、梗節繋節は褐色、棍棒状部は暗褐色
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 フッカーS氏の「タマゴクロバチ」は、今日のハチと同じくケヤキの樹皮下に居たもので、Kurobachi氏によりチャバネタマゴクロバチ(Trissolcus plautiae)と同定されています。しかし、Kurobachi氏が作成された標本写真を見ると、今日のハチとは胸部の形(小楯板の大きさ)がかなり異なります。また、北隆館の圖鑑にあるミツクリクロタマゴバチ(ミツクリタマゴクロバチ:Trissolcus mitsukurii)も、記載の多くは一致するのですが、やはり胸部の形が違って見えます。
 九州大学の日本産昆虫目録には、10種のTrissolcus属が記録されていました。しかし、名城大学の山岸健三教授の「農耕地におけるタマゴクロバチ科の属構成」(2004年)を読むと、日本産タマゴクロバチ科は研究が殆ど進んで居らず、未知種が既知種より遥かに多いと云う世界の様です。
 今日のハチは、タマゴクロバチ科に属し、ほぼ間違いなくTrissolcus属の1種と思いますが、決定的な根拠を欠きます。其処で、「Trissolcus sp.?」と「?」を付けておくことにしました。
 尚、このTrissolcus属のハチは、カメムシ類の卵に単寄生します。カメムシ類の天敵として利用する研究も行われている様です。

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コメント

おはようございます。ひげぶとです。
おちゃたてむしさんには連絡をしたのですが、T. japonicus のシノニムとされていた T. plautiae が good species として復活しました。
区別点は、Scutellum 全体が細かな印刻で覆われているのが T. japonicus、Scutellum の後半に印刻がなくピカピカしているのが T. plautiae です。
このページに掲載されている写真では、肝心の部分が見えないので判別はできませんでした。

別件ですが、ケヤキの樹皮下で越冬している Trissolcus 集団は、普通数種が一緒のことが多いです。3枚目の写真は全体のプロポーションから判断すると、断定はできませんが T. flavipes のように見えます。

投稿: ひげぶと | 2014年12月20日 (土) 07時41分

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