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2011年3月 8日 (火)

ツチトビムシ亜科の1種(Isotominae gen. sp.


 漸く暖かくなってきたかと喜んでいたのですが、昨日は9時少し前から雪となり、昼頃までに結構積もりました。しかし、所詮春の淡雪、夕方には殆ど消えてしまいました。

 今日は、昨年の今頃に撮ったトビムシの1種を紹介します。七丁目に大きな樹の繁った区画があり、其処に生えている大きなムクノキの樹皮下で越冬していました。


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ムクノキの樹皮下で越冬しているツチトビムシの1種

根元の部分に、非常に沢山生息していた

保護色で分かり難いので、明度と

コントラストを少し上げている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/03/11)



 根元に近い部分の樹皮を剥がすと、何処の部分でも夥しい数が見られました。しかし、他の場所では、見た記憶のないトビムシです。

 体長は2mm程度、特に大きな個体(下の写真)では約2.3mmでした。トビムシは変態をしませんから、外見は殆ど同じでも、体長が半分位の小さな個体も居ます。

 体節が同じ様な間隔で並んでいるので、昆虫よりは、甲殻類に近いと云う感じがします。実際、最近ではトビムシは昆虫綱には入れず、コムシやカマアシムシと共に、六脚上綱内顎綱とするのが主流です(拙Weblogでは、便宜上「昆虫」に入れています)。

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大型の個体、体長は2.3mm.胸部第1節は見えず

胸部第2節と3節が膨らんで大きい

後続の腹節は丸くなくやや短い

絞り過ぎて解像度が高くない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/03/11)



 トビムシの種類を調べるのは中々厄介です。小さくて細部がよく分からない上に、背面からは見えない跳躍器の構造が問題になるからです。しかし、北隆館の大圖鑑を見ると、アヤトビムシ上科(Entomobryomorpha)に属すのは間違いないと思います。

 アヤトビムシ上科の特徴は、分離した体節を持ち、胸部第1節が退化して背板を持たないことです。下の写真を見ると、頭と胸部の間から前脚が出ている様に見えます。これは胸部第1節が背側から見えないことによると考えられます。

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前脚は頭部と胸部の間(胸部第1節)から出ている

胸部第1節は背板を欠くので背側からは見えない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/03/11)



 胸部第1節は背面からは見えないのですから、背側から見て頭部に続くのは胸部第2節、次が第3節で、以降は腹節になります。胸部の2節はやや丸くて大きく、第1腹節はやや短く、以降の2~4節はほぼ同じ長さに見えます。なお、大圖鑑の解説に拠ると、トビムシの「腹節はわずか6節で他の昆虫に比べ最も少ない」とのことです。


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別個体.昆虫と云うよりは甲殻類的

(写真クリックで拡大表示)

(2010/03/11)



 さて、こう云う毛の長いトビムシは、アヤトビムシ科に多い様に思いますが、大圖鑑の検索表に拠ると、アヤトビムシ科では腹部第4節は第3節より明確に長いので、今日のトビムシとは異なる様です(以前紹介した「トビムシの1種」は第4節が明らかに長く、また、触角が長くないので、アヤトビムシ科の可能性が大です)。

 大圖鑑の検索表に拠れば、アヤトビムシ上科に属し、触角が4節で、腹節第3節と第4節がほぼ等長なのは、ツチトビムシ科、トゲトビムシ科、キヌトビムシ科の何れかです。この内、トゲトビムシ科は、触角が長く、その第3節と第4節は分節しており、今日のトビムシとは触角の感じが随分異なります。また、キヌトビムシ科は、小型で体色は白か灰色とのことなので、これも該当しません。

 以上から、今日のトビムシは、消去法により、ツチトビムシ科(Isotomidae)に属すと云うことになります。

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オマケにもう1枚.

(写真クリックで拡大表示)

(2010/03/11)



 さて、次は絵合わせでの確認です。ツチトビムシ科は九州大学の日本産昆虫目録で71種、東京都本土部昆虫目録では21種が記録されています。やや大きなグループであり、また、世界的に分布する様なので、BugGuide.Netにもかなりの写真が載っています。しかし、Web上で調べている間に、スザマジク強力なトビムシ専門のサイトを見つけてしまいました。「Checklist of the Collembola of the World」と云う複数の研究者によるHPで、トビムシについてのボーダイな情報が公開されています。

 HPの全体は、まだよく読んでいませんが、ツチトビムシ科の写真だけでも500枚位はあります。一通り見るだけでも大変ですが、ツチトビムシ亜科(Isotominae)のIsotoma属に良く似た種類が居ました。Isotomurus属もかなり似ていますが、胸部と腹部の体節に余り違いが無く、写真のトビムシの様に胸部第2、第3節が丸くて長いのはIsotoma属の様です。Isotima属は、九州大学の日本産昆虫目録では8種、東京都本土部昆虫目録には4種の記録があります。

 しかし、絵合わせで属まで決めるのには、些か抵抗があります。ツチトビムシ亜科であることは間違いないと思いますので、今日は「ツチトビムシ亜科の1種(Isotominae gen. sp.)」としておくことにしました。

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