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2011年2月の2件の記事

2011年2月21日 (月)

クロハナカメムシ(Anthocoris japonicus

 今年の冬はどうも寒い日や風の強い日が多く、余り虫撮りに出かける気になりません。しかし先日、買い物ついでに「三丁目緑地」へ行って来ました。収穫は少なかったのですが、今日はその中からケヤキの樹皮下で越冬していたハナカメムシの1種を紹介します。
 体長は腹部が翅に隠れて良く分かりませんが、翅端まで3.5mm程度。小さなカメムシですが、ハナカメムシとしては大きい方に属します。同じくケヤキの樹皮下で越冬しているヒメコバネナガカメムシとほぼ同じ大きさです(このケヤキの樹にはヒメコバネもいました)。

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ケヤキの樹皮下に居たクロハナカメムシ.尾端まで約3.5mm
樹皮の幹側ではなく皮側に居た.少し動き始めている
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 かなり平たいカメムシで、全体に黒っぽく、膜質部の前の方にある白帯が目立ちます。頭部が尖っているので、サシガメ科かハナカメムシ科のどちらかだと思っていましたが、家に帰って調べると、サシガメにはこんな小さな種類は無く、ハナカメムシ科のクロハナカメムシ(Anthocoris japonicus)であることが分かりました。全農教のカメムシ図鑑第1巻には載って居らず、第2巻の方にありました。
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越冬中のクロハナカメムシ.これも樹皮側
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 上記図鑑には「成虫は年1回発生し、夏期に現れる新成虫は分散していろいろな広葉樹上で見つかるが、秋になると樹皮下に集まり冬を越す.とくにケヤキに多く、数十個体が集まることがある」と書かれています。
 毎年冬になると、彼方此方でケヤキの樹皮を剥がしていますが、このカメムシを見るのは今年が初めてです。このクロハナの居たケヤキも以前に剥がしており、昨年掲載した「ヒシモンナガタマムシ?」はこの樹で撮影したものです。
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樹皮を剥がされて幹を歩き回るクロハナカメムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 かなりの数の個体を見ましたが、図鑑に書かれている様な大きな集団はなく、最初の写真にある4頭一緒のが最大の集団でした。他は何れも1頭ずつバラバラに越冬していました。
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横から見たクロハナカメムシ.この写真だけ
普通の等倍接写.他はテレプラスを使用
ヒメコバネナガカメムシより平べったい
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 前述の様に、カメムシ図鑑には「夏期に現れる新成虫は分散していろいろな広葉樹上で見つかる」と書かれていますが、北隆館の新訂圖鑑を見ると、このハナカメムシは「ケヤキフシアブラムシの虫癭に入りアブラムシを補食する」と書いてあります。ケヤキの樹皮下に居たのには、それなりの必然性があった訳です。ケヤキの虫癭で育ち羽化した成虫は、方々に分散して何らかの生き物を補食して生き長らえ、秋になると、来年の春の産卵に具えて?またケヤキの樹に戻るのでしょう。
 なお、ケヤキフシアブラムシの学名は、全農教のアブラムシ図鑑ではColopha moriokaensisとなっていますが、九大目録や東京都本土部昆虫目録ではParacolopha morrisoniです。アブラムシ図鑑は少し古い(1983年)ので、後者が現在の正しい学名と思われます。
 和名の方も一通りではなく、「ある虫屋の毎日」と云うサイトに拠ると、このアブラムシにはケヤキヒトスジワタムシ、ケヤキヒトスジタマワタムシの別名もあるとのことです。
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ストロボで眼を醒ましたクロハナカメムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 カメムシ図鑑第2巻に拠れば、このクロハナカメムシが属すAnthocoris属は全北区に50種余り、日本では現在6種(九大目録では5種)が生息するそうです。殆どの種は膜質部の白い模様の形で区別出来ますが、チビクロハナカメムシ(A. chibi)の白帯の形状は今日のクロハナカメムシによく似ています。
 しかし、全体に小型(体長2.8~3.3mm)であること(細長くない)、触角第2節と第3節の基部が広く淡色なこと、脚や触角が褐色であること等で区別出来るとのことです(上記図鑑と「カメムシBBS」に拠る)。
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上と同一個体.歩き始めた
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 クロハナカメムシは、ハナカメムシ科(Anthocoridae)ハナカメムシ亜科(Anthocorinae)に属します。ハナカメムシ類は何れも捕食性で、特にハナカメムシ亜科には農業害虫の防除に使われている種類があります。多くはヒメハナカメムシ属(Orius)ですが、カメムシ図鑑第2巻には、このクロハナカメムシ属(Antocoris)も「一部の種は果樹害虫の防除に導入されている」と書かれています。
 この様な天敵による害虫駆除は、化学農薬に代わる「安全」な方法として注目されており、カメムシ類ではハナカメムシ以外にカスミカメムシの仲間も「生物農薬」として販売、或いは、利用されています。
 「生物」と「農薬」とは殆ど対立概念に近いと思いますが、それを一緒にした「生物農薬」と云う呼び方は、慣れないと一寸奇妙な印象を与えますね。

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2011年2月 3日 (木)

ヒメコバチ科の1種(Euplectromorpha nigromaculatus

 今日は、昨年の今頃に撮影したコバチを紹介することにします。虫体が小さいにも拘わらず普通の等倍接写をしたので画質は相当酷いのですが、綺麗な種であるのと、種名が判明したので紹介することにしました。
 四丁目の何も生産していない「生産緑地」に生えていたビワの木の葉裏に居ました。ビワもヤツデと並んで、越冬中の虫を探すのには良い場所の様です(残念ながら、このビワの木は昨年の春に伐採されてしまいました)。

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ビワの葉裏に居たEuplectromorpha nigromaculatus
ヒメコバチ科に属す.胸部の構造が独特
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 体長は2.3mm、この小さいハチがコバチ上科に属すことは、翅脈が著しく退化していること、前胸背版の側面が肩板に達しないこと、触角が膝状(柄節=第1節と梗節=第2節の間で折れ曲がる)であることなどから推定出来ます。しかし、コバチ上科には20もの科があり、科を検索表で調べようとすると迷子になってしまいました。
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ビワの葉裏を歩き回るEuplectromorpha nigromaculatus
前翅にはかなり長い縁毛が認められる
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 しかし、北隆館の圖鑑を見ると136種ものコバチの図が載っています。そこで、胸部の構造が類似している科を探すと、ヒメコバチ科(Eulophidae)がよく似ていました。しかし、手元の検索表では、何れもヒメコバチ科は最後の方にあってどうしても辿り着けません。インチキして、ヒメコバチ科から逆に辿っても一寸無理の様です。
 暫く迷っていたのですが、結局ハチ類の掲示板「蜂が好き」にヒメコバチ科で合っているか否かを御伺いすることと相成りました。
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肩には1本のかなり長い剛毛がある
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 コバチやヒメバチは種類が多く、未記載種や未記録種も相当あり、科だけでも分かればよいと思っていたのですが、何と、コバチの研究をされているいしざき氏より、「写真のハチはヒメコバチ科のEuplectromorpha nigromaculatusです.今のところ、この属は日本から1種しか記録されていません」との御回答を賜りました。外見が非常に特徴的な種とは思いますが、科どころか種まで分かってしまったのには、一寸驚きました。
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転節は2節から成るそうだが写真では良く分からない
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 この種は、九州大学の日本産昆虫目録や東京都本土部昆虫目録には載っていません。学名を全て記すとEuplectromorpha nigromaculatus (Ashmead 1904) ですから、目録作成後に記載された新種ではなく、日本では最近まで未記録種であったことになります。[追記:ezo-aphid氏の御指摘により、命名当初の属名はEuplectrusであり、その後Euplectromorpha属に移されたこと、九大目録には昔の儘のEuplectrusで載っていることが分かりました。原記載地は箱根なので、日本では命名年の1904年(明治37年)から知られていたことになります]。
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顔には「人」の形をした黒色の筋がある
前ピンの酷い写真だが、御勘弁を
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 また、いしざき氏の御話では「寄主はわかっていませんが、他種がガ類の幼虫に寄生することが知られています。私も現在寄主探索中です」とのことです。
 実は、このコバチは一昨年に、このビワの木から僅か2~3m離れた所に植わっているミカンの木の葉裏で見つけたことがあります。この話を掲示板に書き込んだところ、いしざき氏もミカンの木で採集されたことがあるそうです。ミカンに付く蛾に寄生するのかも知れませんが、周りには他にも色々な木が植わっており、当然草本もありますから、これだけでは何とも言えません。
 今頃の常緑樹の葉裏や樹皮下を探すと、越冬中のコバチが結構見付かります。小さ過ぎて中々旨く撮れないのですが、金属光沢を放つ綺麗な種類も多く、出来るだけ紹介して行きたいと思います。

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