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2011年1月20日 (木)

マツカレハの幼虫(Dendrolimus spectabilis)(越冬中)

 先日、ケヤキの樹皮下に居た「マドチャタテ科の1種」を掲載しましたが、今日はその直ぐ近くに生えているアカマツの樹皮下で越冬をしてたマツカレハ(Dendrolimus spectabilis)の幼虫を紹介します。

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アカマツの樹皮下で越冬中のマツカレハの中齢幼虫
体長は約17mmで4~5齢らしい
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 体長は約17mmで、齢は分かりません。マツカレハの幼虫は、終齢では60mm(北隆館の「日本幼虫圖鑑」)から70mm(保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」)になるそうですから、それよりはかなり若い齢期にあるとものと思われます。
 (財)農林水産技術情報協会HPの一部である「昆虫科学館」の中に「庭の刺す毛虫・刺さない毛虫」と云う項目があり、その中に「マツカレハ」のページがあります。これに拠ると、「10月下旬までに体長20mm内外の5齢に育ち、幹から下りて根際や落ち葉の下などで越冬します。(中略)翌年の4月ころから幼虫は再び樹に登り、 針葉を食べ続け、さらに3回脱皮して8齢幼虫となり、6~7月ころに葉を綴って灰褐色のマユを作ってサナギになります」 とのことです。
 一方、日本応用動物昆虫学会大会講演要旨((08), 13, 1964-04-02)「マツカレハ越冬時幼虫の頭巾について」には、「マツカレハ幼虫(マツケムシ)は、東京周辺においては、4齢および5齢で越冬する個体が多いが、地域によっては3齢や6齢で越冬する場合もあることが知られている」と書かれています。
 体長約17mmですから5齢かも知れませんが、4齢の可能性もあり、ここでは単に中齢幼虫としておきます。
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横から見た図.胸部第2~3節、腹節の背面には1対の
黒色毛の束があり、第8節では非常に顕著
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 マツカレハの幼虫は、同属近縁種のツガカレハの幼虫によく似ており、両種共に色の変化に富んでいます。後者は、名前は「ツガ」カレハでも、マツカレハと同じくアカマツやクロマツも食害します。ですから、アカマツの樹皮下に居たと言うだけでは、マツカレハの幼虫と断定する訳には行きません。
 何方も上述の2つの図鑑に載っており、詳しい記載があります。しかし、図鑑にあるのは終齢幼虫についての記載です。写真の様な中齢幼虫にも適用出来るか否かは保証の限りではありません。多くの点では一致しないと考える方が無難でしょう。
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マツカレハ幼虫の顔.中央最下部にある褐色の部分が上唇
上唇下側の凹み(刻み)は極く浅い
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 しかし、上唇の凹み(刻み)が極く浅いこと(上の写真)、東京都本土部昆虫目録を見るとツガカレハは区内では余り記録のないこと(丘陵地帯に多い)、昆虫写真家海野和男氏の「デジタル昆虫記」で今日の写真とソックリな幼虫を「マツカレハの幼虫」としていること等から、ここでは「マツカレハの幼虫」としておきました。
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背面から見た頭部と胸部.胸部第2~3節には
横や斜めを向いた毛が生えている
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 マツカレハはカレハガ科(Lasiocampidae)カレハガ亜科(Lasiocampinae)に属しますが、この亜科の幼虫には毒針毛を持つ種類がかなりあります。マツカレハ、ツガカレハの他にもタケカレハ、リンゴカレハ、クヌギカレハ等が毒針毛を持っています。
 保育社の図鑑に拠ると、マツカレハの幼虫は「中・後胸節の背面には藍黒色の叢毛帯があり、針状の毒毛を密生している」とのことです(中・後胸とは胸部第2第3節のこと)。また、北隆館の図鑑には「中胸及び後胸には毒毛を叢生するが、常には襞内に隠されている」とあります。
 下の写真には束になった黒色毛が中・後胸節に見えますが、これのことではありません。この束になった黒色毛は腹部にもあり、特に腹部第8節で非常に顕著となります(2番目の写真:これはツガカレハの幼虫にもある)。毒針毛は、上の写真では襞の中に隠れて見えないのだと思います。
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斜め前から見た頭部と胸部.胸部2~3節の背面には
太い黒色毛の束が1対づつ存在する
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 どうも最近は、頭部等の細部ばかりが気になって、全体の雰囲気を一番よく示す斜めからの写真を撮り忘れることがあります。今回は斜めからの全体像も一応撮ったのですが、撮り方を間違えて、頭部胸部以外には焦点が合っていません(下)。本来ならば没にする写真ですが、1、2番目の写真だけでは全体像が掴みにくいので、敢えて恥を忍んで掲載することにしました。
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斜めから見たマツカレハの幼虫.腹部には焦点が合っていない
(写真クリックで拡大表示)
(2011/01/11)

 このマツカレハの幼虫が越冬していたアカマツは、樹皮が殆ど剥がされて居らず、ブワブワの樹皮が3~4cmも「積もって」います。マツカレハの幼虫以外にも、一寸この辺りでは珍しいと思われる虫を見つけました。これは近々紹介の予定です。
 このアカマツには、まだまだ柔らかい樹皮が残っています。この冬はこれを少しずつ剥がしながら、何が出て来るかを楽しもうと思っています。

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