ツユムシ(Phaneroptera falcata)(雄)
今日は、また画像倉庫で眠っていた写真を出します。細めのキリギリスの仲間、ツユムシ(Phaneroptera falcata)です。今まで何回も撮影しているのですが、どうも直翅目(バッタ、キリギリス、コオロギ)が好きでないのと、写真が完全でないので、掲載していなかったのです。
![]() ツユムシ.触角が長過ぎて全部は写っていない (写真クリックで拡大表示) (2008/09/24) |
何処が完全でないかと言うと、触角が長過ぎて何時もその先端がチャンと写っていないのです。上の写真も左の触角は多分先端まで写っていますが、右は途中で切れています。触角が余りに細いので、ファインダーで覗いていても、何処まで続いているのか良く分からないのでこう云うことになります。
![]() 横から見たツユムシ.触角の先の方は省略 (写真クリックで拡大表示) (2008/09/24) |
場所は4丁目の「神明の森みつ池特別保護区」に隣接する「みつ池緑地」で、国分寺崖線の上側です。昨年から世田谷区の各緑地は除草の頻度が上がった様で、こちとらとしては何とも不都合なのですが、今日の写真を撮影した一昨年まではしばしば草ボーボーの状態になっていました。このツユムシもその草ボーボーの時に撮影したものです。留まっている草は、メヒシバでしょう。典型的な草地の「雑草」です。
![]() もう少し近づいてみる.前脛節基部に「耳」が見える (写真クリックで拡大表示) (2008/09/24) |
ツユムシは、キリギリス科(Tettigoniidae)ツユムシ亜科(Phaneropterinae)に属します。似た様な種類に、同属のアシグロツユムシ、別属(Ducetia)のセスジツユムシがあります。
アシグロは、名前の通り後脛節が黒く、また、触角も黒色でその中に小さな黄白色の斑があり、区別は簡単です。また、セスジツユムシは、前翅からはみ出している後翅の長さがツユムシよりもかなり短いと云う特徴で判別出来ます。
![]() 背面の拡大.背中の模様は胸部ではなく前翅の後縁 両方の前脛節基部に「耳」があるのが分かる (写真クリックで拡大表示) (2008/09/24) |
写真のツユムシは雄で、背中に不明瞭な暗色斑があります。「福光村昆虫記」に拠ると、この暗色斑を持つのは雄のみで、雌には無いそうです。
この色の付いた部分、良く見ると、胸部ではなく前翅の後縁です。左側の翅が上になっていますが、保育社の昆虫図鑑の検索表を見ると、これはキリギリス上科の特徴で、コオロギ上科では右の翅が上になります。
![]() ツユムシの顔写真.口の周りには複雑な構造がある (写真クリックで拡大表示) (2008/09/24) |
同図鑑に拠ると、「ジ・ジ・ジ・ジィ・ジィ・ジィ(しだいに強く)」と鳴くが、弱くて注意しないと聞こえないそうです。私は、これまでに何処かで聞いているかも知れませんが、これがツユムシの声だとして聴いたことは一度もありません。
3番目、4番目の写真を良く見ると、前脛節の基部近くが膨らんで、真ん中が窪んでいます。これがキリギリス類の「耳」です。バッタ類では腹部第1背板の側方に耳があります。また、カマドウマ科やコロギス科等には「耳」はありません。
![]() 斜め横から見た顔写真.口の横から出て上の方を折れ曲がり 口の前に終わるのが小腮鬚、下から伸びているのは下唇鬚 (写真クリックで拡大表示) (2008/09/24) |
最後にツユムシの顔写真を2枚出しておきました。口の周りにややこしい構造があります。2枚を比較すると、これは2つの別の構造からなっていることが分かります。顔の横から出て複雑に折れ曲がり口の前で終わっているのが小腮鬚、下から出て、同じく口の前で終わっているのが下唇鬚です。
以前、クビキリギスの口器の構造を別のWeblogで説明しました。分からない部分もありましたが、興味のある読者はこちらをどうぞ。
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