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2010年12月の6件の記事

2010年12月17日 (金)

ハイイロチビフサヤスデ(その2:集団越冬)(Eudigraphis takakuwai kinutensis


 今年の1月に、ハイイロチビフサヤスデEudigraphis takakuwai kinutensis、或いは、Eudigraphis kinutensis.「チビ」を取ったハイイロフサヤスデと呼ぶこともある)と云う余り知られていないヤスデの1種を紹介しました。

 この時は、ケヤキとプラタナスの樹皮下に居た越冬中の個体を1頭ずつ見付けただけです。ところが、先日(11月18日)、とあるケヤキの樹の皮を剥がしたところ、1枚の樹皮片の下に70頭以上が大きく2個所に分かれて集団越冬していました。

 このフサヤスデは全国的には珍しい種類の様ですし、集団越冬していると云う話は聞いたことがありません。そこで、重複掲載にはなりますが、もう一度、ハイイロチビフサヤスデを掲載することにしました。


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ケヤキの樹皮下で集団越冬中のハイイロチビフサヤスデ

中央右端近くにトビムシの1種が写っている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/18)



 「ヤスデ」と名のある通り、多足亜門のヤスデ綱フサヤスデ亜綱(触顎亜綱:Pselaphognatha)に属しています。しかし、御覧の通りとてもヤスデとは思えない独特な外観をしています。フサヤスデ亜綱は、たったの2科3属3種+2亜種(「多足類読本」では5種)しか居ない非常に小さなグループです。

 フサヤスデ類についての詳細や、写真のフサヤスデをハイイロチビフサヤスデと判断した根拠については、1月に掲載した記事を参照して下さい。なおここでは、ハイイロチビフサヤスデはフサヤスデ科(Polyxenidae)ニホンフサヤスデ(Eudigraphis takakuwai)の亜種(kinutensis)としていますが、亜種から種に昇格させて学名をEudigraphis kinutensisとすることもあります(此方の方が新しい分類なのかも知れません)。

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同じ樹皮片下で別の位置にかたまるハイイロチビフサヤスデ

この2枚の写真に写っていない個体もかなり居た

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/18)



 ウスアカフサヤスデが集団越冬している写真はWeb上で屡々見かけます。しかし、ハイイロチビフサヤスデに関しては、集団越冬をすると云うことすら知られていないのではないでしょうか(これは素人の推測に過ぎません)。

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最初の写真の中央やや左下の部分.虫は少し動いている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/18)



 実は、これまで主に使用していたマクロレンズが10月の16日に故障した為、それ以降は別のカメラとレンズを使用しています。こちらのカメラの方が画素数が多く、横幅のピクセル数は1.2倍になります。

 今日の写真もこの新しい方のシステムで撮影しています。ピクセル数が1.2倍になっても、CCDの大きさは同じですから、ピクセル等倍にした時の拡大率は以前のカメラよりも1.2倍大きくなります。

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上の写真の直ぐ下だが、虫が動いているので

最初の写真とは虫の配置が違っている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/18)



 最初2枚の全体像以外の写真は、拡大するとピクセル等倍かそれに近い倍率です。以前に掲載したハイイロチビフサヤスデよりかなり大きい感じがしますが、スケールと比較すると(長い針状の毛の束=尾毛叢を除く)、1枚目の拡大写真で左下の個体が約2.1mm、2枚目の少し曲がった左下の個体で約2.2mmです。

 1月に掲載した写真では、1.7~2.2mmでしたから、殆ど差はありません。高島&芳賀「日本産触顎類知見補遺」(1950,Acta Arachnol.,12:21-26)に書かれているニホンフサヤスデ(Eudigraphis takakuwai)の3亜種(或いは3種)の体長は、ウスアカフサヤスデが4~4.5mm、イソフサヤスデが3~3.5mm、ハイイロチビフサヤスデでは2.5~3mmです。この論文の「体長」に尾毛叢が含まれているのか記述がありませんが、本文中にハイイロチビフサヤスデは「成体では尾毛叢を除き体長約2.5mm」とあるので、ハイイロチビフサヤスデとしても少し小さめで、他の2亜種と較べるとずっと小さいと言えます

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最初の写真の下、枠外の部分

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/18)



 上述の論文には「本亜種は東京都世田谷区大蔵町即ち以前の砧村(Kinuta)で獲られたので(中略)同地から既に100頭近くの個体を採っているが他産地のに此の亜種に該当するものが見当たらないのは妙である」とあります。大蔵町は現在の世田谷区大蔵で、このWeblogの写真を撮っている成城の隣町です。このハイイロチビフサヤスデが全国的にどう分布するのか良く分からないのですが、どうも関東地方に限られる様です。「日本のレッドデ-タ検索システム」に拠ると、現時点では千葉県と栃木県では絶滅危惧Ⅰ類に入っています。

 そこで思うのですが、このハイイロチビフサヤスデ、ヒョッとするとアオマツムシウスグモスズの様な外来種で、何処かの国から東京、或いは、横浜の港へ運ばれ、その後関東各地に広がったのではないでしょうか。ウスグモスズは外来種とは言うものの、原産地は不明と云う奇妙な虫です。このハイイロチビフサヤスデも同じ様な立場にあるのかも知れません。

 この説には、他に根拠はありません。単なる素人の憶測に過ぎませんので、あしからず。


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2010年12月14日 (火)

シラホシカメムシ(Eysarcoris ventralis


 このところ虫撮りには出かけていないので、11月に撮った写真を出すことにします。シラホシカメムシ(Eysarcoris ventralis)、カメムシ科(Pentatomidae)カメムシ亜科(Pentatominae)に属す典型的なカメムシの一種です。イネ科植物を好み、斑点米を作るカメムシとしてその名が知られています。


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シラホシカメムシ.小楯板が短く基部両側の黄白紋が小さい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/03)



 これまでこの辺り(東京都世田谷区西部)では見た記憶のないカメムシですが、世田谷区の第一七丁目ファミリー農園跡の草原に沢山発生していました。イネ科の雑草がシッカリ生えていますから、その種子を吸汁しているのでしょう。

 チョコマカと歩き回り、中々良い写真が撮れません。風も結構吹いており、御蔭で少し焦点の外れた写真もありますが、御寛恕下さい。

 なお、普通は同一個体を色々な角度から撮影するのですが、今日のシラホシカメムシは、何回も途中で逃げられた為、少なくとも3個体が混ざっています。

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斜め前から見たシラホシカメムシ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/03)



 シラホシカメムシはEysarcoris属ですが、九州大学の日本産昆虫目録を見ると、同属には7種が記録されており、全てに「シラホシカメムシ」の名が付いています。中にはよく似た種類も居ます。

 その7種の内のヒメシラホシカメムシは、九大目録に拠ると、小笠原やミクロネシアに生息し、本土で見られる可能性はない様です。オオトゲシラホシカメムシ、トゲシラホシカメムシは両側の前胸背角(肩に当たる部分)が鋭く尖っているので、これも区別は容易です。オオトゲとトゲの区別は、北隆館の圖鑑に拠れば、トゲの方が「小型なこと、前胸背両側の棘状突起が鋭く尖っていること、小楯板基部両側にある黄白色紋が大型で長形などによって区別できる」とあります。

 またズグロシラホシカメムシは、同圖鑑の解説に「頭部背面、前胸背前縁の両側部および小楯板基半を占める三角紋は紫黒色である」と書かれており、大分色具合が異なります。また、かなりの珍種の様です。

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斜め上から見たシラホシカメムシ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/03)



 残る3種が、只のシラホシカメムシ、マルシラホシカメムシ、マルツヤシラホシカメムシ(ムラサキシラホシカメムシ)です。この3種の中で、シラホシカメムシは小楯板が小さくて革質部の先端に届かず、また、小楯板基部両側の黄白紋が他よりずっと小さいので容易に区別が出来ます。

 後2者は、全農教の「日本原色カメムシ図鑑」に拠れば、マルシラホシの方が「光沢が弱く、腹部がやや長めで、小楯板基部両側の黄白色の紋が小さいので区別出来る」とのことです。

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同じ様な写真をもう1枚.真横からの写真は没になった

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/03)



 マルツヤシラホシカメムシは我が家のイヌタデに毎年発生します。遠くから見ると殆ど真っ黒で、大きさからしてダンダラテントウの様に見えます。しかし、このシラホシテントウは色がずっと薄く、遠くから見ても淡灰褐色です。

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真ん前から見たシラホシカメムシ.後ピンで些か見苦しい写真!!

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/03)



 シラホシカメムシは極く普通種だと思っていたのですが、Web上には意外と写真がありません。類似種を除外して検索すると1000件位がヒットしますが、大半は農業害虫としての記事です。どうやら、かなり「悪者度」の高いカメムシの様です。


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2010年12月12日 (日)

コナガ(Plutella xylostella


 まだ、新しい写真の調整が出来ていないので、今日も、溜まっている昔の写真を出すことにしました。

 キャベツ等のアブラナ科の害虫として名高いコナガ(Plutella xylostella)、翅端まで7.5mm程度の小さな蛾です。一昨年の11月下旬に、今は草地になっている世田谷区の第一成城七丁目ファミリー農園で撮影しました。写真が2枚しかないので、倉庫に放り込んだままにしていたのですが、その後、見かけないので掲載してしまうことにしました。

 実は、写真を撮ってから図鑑で調べて漸く有名なコナガと分かった次第です。名前は当然よく知っていたのですが、害虫には余り興味が無かったので、実際の蛾がどんな虫かは知りませんでした。

 しかも、コナガは「粉蛾」だと思い込み、ノシメマダラメイガの様な穀類を食害する蛾だと思っていたのです。コナガは漢字で書くと「小菜蛾」で、野菜の害虫でした。全く赤面の至りです。


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第一成城七丁目ファミリー農園で撮影したコナガ

背中に菱形の模様が連なるので、英語では

Diamondback mothと呼ばれている

頭から先に出ているのは下唇鬚

(写真クリックで拡大表示)

(2008/11/23)



 コナガは、昔はそれ程重要な害虫とは見なされていなかったそうです。キャベツ等のアブラナ科の害虫としては、かつては何と言ってもモンシロチョウが最大の害虫でした。私が中学生の頃までは、キャベツ畑にはモンシロチョウが花吹雪の様に舞っていたものです。現在では一寸信じがたい光景でしょう。しかし、農薬の普及につれてモンシロチョウが激減し、代わりにこのコナガが大害虫として登場して来たのです。

 これはモンシロチョウは1世代にかかる時間が長いので薬剤耐性を獲得し難いのに対し、コナガは卵から成虫までの発育所要日数が25℃で約16日間と短く(シンジェンタジャパン株式会社のHPに拠る)、容易に薬剤耐性を獲得してしまうからです。謂わば、人間がコナガを大害虫にしてしまった訳です。

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横から見たコナガ.大害虫だが結構綺麗

(写真クリックで拡大表示)

(2008/11/23)



 このコナガ、殆どの書籍、図鑑、サイトでは、学名をPlutella xylostellaとしていますが、古い北隆館の「日本幼虫図鑑」ではP. maculipennisとなっていました。調べてみると、この学名も所々で使われています。しかし、現在ではP. xylostellaのシノニムとされている様です。

 一方、科名はラテン名、和名ともに図鑑やサイトにより様々です。保育社の蛾類幼虫図鑑や蛾類図鑑ではPlutellidae(クチブサガ科)ですが、九大目録、東京都本土部昆虫目録や神保宇嗣氏の「List-MJ 日本産蛾類総目録」ではYponomeutidae(スガ科)Plutellinae(クチブサガ亜科)、「みんなで作る日本産蛾類図鑑」ではPlutellidae(コナガ科)となっています。

 コナガの様な小蛾類の大分類は、まだ、結論が出ていないことが多い様です。


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2010年12月10日 (金)

ツユムシ(Phaneroptera falcata)(雄)


 今日は、また画像倉庫で眠っていた写真を出します。細めのキリギリスの仲間、ツユムシ(Phaneroptera falcata)です。今まで何回も撮影しているのですが、どうも直翅目(バッタ、キリギリス、コオロギ)が好きでないのと、写真が完全でないので、掲載していなかったのです。


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ツユムシ.触角が長過ぎて全部は写っていない

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/24)



 何処が完全でないかと言うと、触角が長過ぎて何時もその先端がチャンと写っていないのです。上の写真も左の触角は多分先端まで写っていますが、右は途中で切れています。触角が余りに細いので、ファインダーで覗いていても、何処まで続いているのか良く分からないのでこう云うことになります。

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横から見たツユムシ.触角の先の方は省略

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/24)



 場所は4丁目の「神明の森みつ池特別保護区」に隣接する「みつ池緑地」で、国分寺崖線の上側です。昨年から世田谷区の各緑地は除草の頻度が上がった様で、こちとらとしては何とも不都合なのですが、今日の写真を撮影した一昨年まではしばしば草ボーボーの状態になっていました。このツユムシもその草ボーボーの時に撮影したものです。留まっている草は、メヒシバでしょう。典型的な草地の「雑草」です。

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もう少し近づいてみる.前脛節基部に「耳」が見える

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/24)



 ツユムシは、キリギリス科(Tettigoniidae)ツユムシ亜科(Phaneropterinae)に属します。似た様な種類に、同属のアシグロツユムシ、別属(Ducetia)のセスジツユムシがあります。

 アシグロは、名前の通り後脛節が黒く、また、触角も黒色でその中に小さな黄白色の斑があり、区別は簡単です。また、セスジツユムシは、前翅からはみ出している後翅の長さがツユムシよりもかなり短いと云う特徴で判別出来ます。

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背面の拡大.背中の模様は胸部ではなく前翅の後縁

両方の前脛節基部に「耳」があるのが分かる

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/24)



 写真のツユムシは雄で、背中に不明瞭な暗色斑があります。「福光村昆虫記」に拠ると、この暗色斑を持つのは雄のみで、雌には無いそうです。

 この色の付いた部分、良く見ると、胸部ではなく前翅の後縁です。左側の翅が上になっていますが、保育社の昆虫図鑑の検索表を見ると、これはキリギリス上科の特徴で、コオロギ上科では右の翅が上になります。

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ツユムシの顔写真.口の周りには複雑な構造がある

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/24)



 同図鑑に拠ると、「ジ・ジ・ジ・ジィ・ジィ・ジィ(しだいに強く)」と鳴くが、弱くて注意しないと聞こえないそうです。私は、これまでに何処かで聞いているかも知れませんが、これがツユムシの声だとして聴いたことは一度もありません。

 3番目、4番目の写真を良く見ると、前脛節の基部近くが膨らんで、真ん中が窪んでいます。これがキリギリス類の「耳」です。バッタ類では腹部第1背板の側方に耳があります。また、カマドウマ科やコロギス科等には「耳」はありません。

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斜め横から見た顔写真.口の横から出て上の方を折れ曲がり

口の前に終わるのが小腮鬚、下から伸びているのは下唇鬚

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/24)



 最後にツユムシの顔写真を2枚出しておきました。口の周りにややこしい構造があります。2枚を比較すると、これは2つの別の構造からなっていることが分かります。顔の横から出て複雑に折れ曲がり口の前で終わっているのが小腮鬚、下から出て、同じく口の前で終わっているのが下唇鬚です。

 以前、クビキリギスの口器の構造を別のWeblogで説明しました。分からない部分もありましたが、興味のある読者はこちらをどうぞ。


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2010年12月 4日 (土)

ルリタテハの幼虫(Kaniska canace)(4齢と5齢)


 今日は、一寸時期遅れですが、ルリタテハ(Kaniska canace)の幼虫を紹介します。4齢と5齢(終齢)です。

 1年程前、「四丁目緑地」に追加部分が出来ました。ビール坂(注を参照)から上がって来て南へ走る一方通行の道から、直接国分寺崖線下の「四丁目緑地」に通じる、殆ど坂だけの幅の狭い緑地です。

 その緑地にホトトギス(タイワンホトトギスとの交雑種でしょう)が何個所か植えられています。ルリタテハの幼虫が居るのではないかと思い、10月の2日に一番下にある群落を調べてみたところ、大きな終齢幼虫が1頭だけ居ました(下の写真)。


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ホトトギスの茎の上でJ字形になったルリタテハの5齢(終齢)幼虫

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 始めは、葉の下で体を真っ直ぐにしていたのですが、一寸葉に触れた途端、上の様なルリタテハ幼虫お得意のJ(C、U)の字になってしまいました。

 真っ直ぐにならないか、暫く待っていたのですが、ヒトスジシマカの襲撃がスザマジク、数分で退散を強いられました。結果として、この個体が体を真っ直ぐにした写真はありません。

 その数日後、蛹が無いか探してみましたが、一寸見当たりませんでした。

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ルリタテハの4齢幼虫.3齢幼虫に似ているが大きい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/11)



 更に数日経って、坂の上の方にあるホトトギスの群落も調べてみたところ、やはりこちらにも居ました。4齢と5齢幼虫が10頭位、此方に1頭、彼方に1頭と言う具合に、かなり広い範囲に分散して目立たない様にしていました。

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体色の明るい4齢幼虫.棘の基部が黄褐色

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/11)



 以前、我が家のホトトギス(交雑種)に付いたルリタテハを卵から成虫まで飼育し、もう一方のWeblogで詳しく紹介したことがあります(「卵と初齢」、「2齢と3齢」、「4齢」、「終齢=5齢」、「前蛹、蛹と成虫」)。

 そんな訳で、同じものを此方に載せる気がしなかったのですが、一応別のWeblogですし、カテゴリーの「昆虫(毛虫、芋虫)」を参照される方が多いので、此方でも紹介することにしたのです。

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5齢(終齢)幼虫.体は黒と赤、棘の殆どは黄白色

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/11)



 ルリタテハの4齢幼虫は、写真を同じ大きさに拡大してしまうと、3齢幼虫と区別が付き難くなります。体の模様や棘の構造の変化は比較的少ないのですが、3齢の体長は1~2cmで、4齢では2~3cm位と、大きさにかなりの違いがあります。

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お食事中の5齢幼虫.驚かすと直ぐにJ字形になるので要注意

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/11)



 しかし、細かい点では、3齢と4齢で、体の構造にも多少の違いが認められます。棘の長さと体の太さを比較すると(成長に伴って太りますが)、3齢の方が比率が高い(体幅に対して長い)と言えます。また4齢の方が、1つの突起から出る棘の数が少し多い様です。

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ほぼ背側からみた同一個体.移動中

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/11)



 5齢(終齢)幼虫では、体長は45mm程度に増加します。また、色も4齢以下の黄と黒の2色から、赤、黒、黄白の3色に変わります。黒かった棘も、先端部を除いて大半が黄白色です(体色には個体差があります)。

 また、4齢以下ではビニール細工の様な感触であった棘も、5齢ではかなり固くなり、手の柔らかい部分が触れたりすると、結構傷みを感じます。

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5齢(終齢)幼虫の顔と棘

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/11)



 最後の写真では、棘の感じを少し「芸術的」に表現してみました。しかし、これは既にもう一方のWeblogでやったことですので1枚だけにしておきます。棘の美しさにを更に御覧になりたい方は、こちらをどうぞ。



[注]:「ビール坂」は成城の西北部、世田谷区成城4丁目と調布市入間町3丁目の境にある、国分寺崖線を下る緩やかな長い坂で、昔、この下にサッポロビール(株)のグランド(野球場:現在はパークシティー成城)があったので、そう呼ばれています。

 サッポロビールと旧国鉄の間には何らかの関係があったのか、国鉄スワローズ(現ヤクルト・スワローズ)の選手達(例えば、ピッチャーの金田正一)がよく練習に来ていました(昭和30年代前半?)。そんな訳で、昔から成城に住んでいる人は「ビール坂」の名前をよく知っています。


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2010年12月 2日 (木)

ザクロソウ(Mollugo pentaphylla


 今日は久しぶりに植物を紹介します。ザクロソウ(Mollugo pentaphylla)です。国分寺崖線下の4丁目にある、何も生産していない生産緑地に、畳半分位の広さで群生していました。


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ザクロソウの群落.畳半分位の広さがあった

午後に撮影したせいか、開いている花が無い

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 上部の茎に付いている葉は対生しており、花は子房が大きく5弁花なので、ナデシコ科かとも思いましたが、ザクロソウ科(Molluginaceae)でした。園芸種として有名なマツバギク(アフリカ原産)もかつてはこのザクロソウ科に含まれていました。しかし、現在ではハマミズナ科(Aizoaceae)の所属になっています。当時は、Aizoaceaeの和名はザクロソウ科でした。AizoaceaeからMolluginaceaeが分離し、和名はAizoaceaeがハマミズナ科、Molluginaceaeがザクロソウ科となった訳です。

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群落の周辺部.這う様にして拡がる

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 近縁種に、クルマバザクロソウがあります。ザクロソウの下部の葉は3~5輪生するのに対し、クルマバでは4~7と多く、また、葉の形は前者では細長い倒披針形ですが、後者ではもっと幅が広く特に下部では匙状になるのが普通の様です。茎にも違いがあり、前者には稜がありますが、後者にはありません。

 決定的な違いは、花の付き方です。ザクロソウでは、写真で明らかな様に、茎の先端に聚繖(集散)花序に付きます。これに対し、クルマバは腋生します。前者の花被片(萼)には中央に1本の脈がありますが、後者では更に周辺に沿って1本ずつ、全部で3本の脈があります。

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上の写真の右上部分を少し違う角度から拡大撮影

クルマバザクロソウとは異なり、花は頂生する

茎には分かり難いが稜が認められる

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 今日の写真は、今年の10月2日に撮ったのですが、色々な理由で掲載が遅れました。先ず、写真の群落の中に咲いている花が全くと言って良い程ありませんでした。開いている花は、最後の2枚の写真に写っている2輪だけでした。

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最初の写真の中央部を低い確度から撮影

虫はオオタバコガの5齢幼虫であろう

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 調べてみると、花は午前中には開いているが午後になると閉じる、とのことなので、カメラを持っていない時に確認したところ、確かに12時近くまでは咲いていました。2回確認したので、その後カメラを持って天候の良い日の午前中に出掛けたのですが、何故か全く開いていません。やはり、植物、特に草本の写真は花が沢山開いていないと、合格点は上げられません。

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2輪だけ咲いていた花。花弁ではなく花被片(萼片)

中央に1本だけ脈が認められ、周辺に脈はない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 ザクロソウは、果実が熟すと、果皮が割れて中から真っ赤な種子がこぼれる出るそうで、これがその和名の起源とのことです。そこで、是非その赤い種子が見える割れた果実を撮ろうと思い、1ヶ月程経ってからまたカメラを持って見に行きました。しかし、何と、除草剤をかけられて写真の群落は勿論、他の草本も完全に枯れていました。和名の元になっている果実を撮影出来なかったのは、誠に残念でした。

 この2つの理由で、掲載を躊躇していたのです。

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同じ花を斜めから撮影.雄蕊は3本

花柱も3本の筈だが明瞭でない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/02)



 来年まで待とうかとも思ったのですが、来年もこの様な大群落が出現する可能性はまず無いでしょう。3年前に掲載したオオケタデ(オオベニタデ)オオイヌタデは、その後全く見られません。また、未掲載で倉庫に眠っている植物の写真は他にもかなり沢山あります。

 そこで、写真としては些か不充分なのですが、これ以上在庫を増やすのも問題なので、思い切って掲載してしまうことにしたのです。


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