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2010年4月 5日 (月)

ウズキコモリグモ(Pardosa astrigera


 日当たりの良い乾燥した草地を歩くと、脚を含めて2cm位の中型のクモが沢山飛び出して来ます。地表性のクモと云うのは、直ぐに草の下に逃げ込んでしまったり、撮影するのに無理な体勢を強いられるので、余り撮る気にならないのですが、「四丁目緑地」の草地には非常に沢山のクモが居たので一寸撮ってみました。

 撮影したのは、実はこれも昨年の春です。何頭か撮ったのですが、調べてみると全てコモリグモ科(Lycosidae)のウズキコモリグモ(Pardosa astrigera)の様です。


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「四丁目緑地」に沢山居たウズキコモリグモ

頭胸部の正中線に沿った凸凹の縦筋が特徴

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(2009/03/19)



 コモリグモ科は似た様な種類が多くて種の判別が難しいグループです。コモリグモの多くには、頭胸部に正中線に沿った白っぽい縦筋があります。ウズキコモリグモの場合は、これが所々で膨らんでいる(或いは、太い筋の所々に切り込みがある)様な形になっているのが特徴の様です。文一総合出版の「日本のクモ」には「頭胸部の黒褐色の縦条の中央に、灰白色のT字型の斑紋があるのが本種の特徴」とありますが、掲げられている写真にはその様なT字型の紋は見当たりません。

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やや黒く脚は細い.雄の亜成体ではないかと思う

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(2009/03/19)



 図鑑を見ると、フジイコモリグモにも類似の縦筋があります。しかし、このクモの場合は、縦筋の前半部が全体的に横へ拡がっており、ウズキの様な凸凹状にはならない様です。また、撮影したのは、落ち葉の沢山ありますが、日当たりの良い乾燥した場所です。図鑑に拠るとフジイコモリグモは「特に湿度の高い樹林内の落葉中に多い」とありますし、クモ蟲画像掲示板の主催者であるきどばん氏の「石神井公園の蟲日記:2006年12月前半3」に、「乾燥した荒地ではウヅキコモリグモ、水辺ではキバラコモリグモが優先種.そして林床での優先種はフジイコモリグモ」とあります。生息環境からも今日のクモはウズキコモリグモとして良いでしょう。

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別個体.後側眼は大きく後にあり横少し後を向いている

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(2009/03/19)



 「コモリグモ」とは「子守り蜘蛛」のことで、雌は産卵後、卵嚢をお尻(糸疣)に付けて移動し、卵の孵化後は仔グモを腹部の載せて保護するのでその名があります。吉倉眞著「クモの生物学」に拠ると、ウズキコモリグモの場合、母子生活をするのは5~6日で、その間、仔グモは餌を摂らない(水は飲む)そうです。また、仔グモが親からはぐれた場合、仔グモは違った親の体へも上がって行き、登られた方も平気でそれを受け入れ、保育に努めるとのことです。

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別個体.肉眼で見れば結構保護色になっている筈

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(2009/03/19)



 コモリグモ科のクモの眼は、前中眼と前側眼が何れも小さく横一列に並び、後中眼と後側眼は大きく、後中眼は前列眼の直ぐ後にあって前を向き、後側眼は少し後に離れて位置し、横少し後方を向いています。

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正面から見た同一個体.中々格好良い

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(2009/03/19)



 コモリグモ科に一見類似した同じく地表性のクモとしては、ヤチグモ科があります。しかし、眼の配列は随分違います(こちらをどうぞ)。また、ヤチグモの正面から見た顔は、ヴァイキングに似てかなり凶暴な感じがしますが、コモリグモの場合は下の写真の様に、結構愛嬌のある顔をしています。

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上の写真の部分拡大.後中眼が大きく前を向いている

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(2009/03/19)



 全く今年の春は碌でもない天気の日ばかりです。この2週間の間、雨は多いし、寒くなければ大風が吹くかで、春らしく晴れた日は1日もありません。今、世田谷区百景の一つ「成城の桜並木」は満開ですが、こんな天気では見に行く気にもなりません。


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