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2010年3月 4日 (木)

コクヌスト科?の幼虫

 先日掲載した「キハダエビグモ」を撮影していたとき、樹皮下に奇妙な幼虫を見付けました。体長約4.5mmの扁平な芋虫状で、頭部は赤褐色、お尻にハサミムシの様な同色の突起が1対あります。
 小さい幼虫ですが、幸いこの日はテレプラスを持っていたので、普段よりは少し高解像度で撮ることが出来ました。

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コクヌスト科?の幼虫.大きな顎が見える
プラタナスの樹皮下に潜んでいた
体長は約4.5mmと小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 ファインダーから覗いていると、お尻は動かさずに上半身を彼方此方に向けて何かを探っていました。殆ど移動はせず、一体何をしているのかは不明です。お尻のハサミで樹皮を挟んで体を固定しているのかと思いましたが、3枚目の写真を見るとそうではない様です。
 撮影中に大きな顎が見えたので、甲虫の幼虫と思われます。しかし、今までに見たことのある如何なる幼虫とも異なり、その正体が何なのか、全く見当が付きません。
 そこで、家に帰ってから北隆館の古い幼虫圖鑑で、甲虫の部分を1ページずつ見て行くことと相成ります。すると、お尻にハサミを持つ幼虫は色々な分類群に亘って存在することが分かりました。
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赤褐色の尾部突起を持つ.突起にキカワムシ幼虫の様な歯は見えない
第1胸節背面は赤褐色を帯び、第9腹節背面には
鱗翅目幼虫の肛上板の様な赤褐色の部分がある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 その中でハサミの形が一番良く似ていたのはアカハネムシ科の幼虫で、また、キカワムシ科幼虫にも大きなハサミがあります。しかし、圖鑑には余り多くの種類は載っていません。そこで、BugGuide.netでアカハネムシ科やキカワムシ科の幼虫を探したところ、沢山の写真が出て来ました。
 これらの写真を見ると、アカハネムシの幼虫に共通する特徴としては、頭がもっと横に膨らんでおり、第8腹節の長さは幅よりも大きいことが挙げられます。また、キカワムシ科幼虫の尾部突起(お尻のハサミ)は、形や程度は種により様々ですが、何れも歯を持つ様です。
 これに対し、写真の幼虫の第8腹節は他の腹節と同じで長くはありません。また、尾部突起には木屑が付いていて不明瞭ですが、キカワムシ幼虫の様な歯は持たない様に見えます。
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お尻は動かさずに上半身を彼方此方に向けて
何かを探っている様に見えた
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 写真の幼虫の頭部には、縦に走る長い溝(頭蓋縫合線)が明瞭です。また、第1胸節は第2~3胸節とは違って赤褐色を帯びており、第9腹節の背面には、鱗翅目幼虫に見られる肛上板(こちらの最後の写真を参照)の様な、かなり濃い赤褐色の部分があります。
 これはアカハネムシ科やキカワムシ科の幼虫には見られない特徴です。どうも、写真の虫は、これらの科の幼虫とはかなり異なる様です。
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頭部はアカハネムシ科幼虫の様に横には拡がらない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 アカハネムシ科とキカワムシ科は共にヒラタムシ上科異節群に属し、近縁の科が沢山あります。その多くは、日本産が僅か1種とか数種しか居ない非常に小さな科で、それらの幼虫は北隆館の圖鑑には載っていません。写真の虫は、或いは、これらの科の何れかの幼虫かも知れません。
 そこで、それらの近縁科の幼虫写真を探していたところ、偶然にもFlickr(フリッカー)で写真の虫とソックリなものを見付けました。上に書いた写真の虫の特徴をチャンと持っています。ヒラタムシ上科ではなく、カッコウムシ上科コクヌスト科(Trogossitidae)マルコクヌスト亜科(Peltinae)のAncyrona sp.の幼虫とされていました。
 写真を投稿したのはA. Zaitsevと云う方です。BugGuide.netにある自己紹介を見ると、ファーストネームはArtjom、国立?モスクワ教育大学(Moscow Pedagogical State University)の研究者で、甲虫類の幼虫が専門だそうです。Net上には、色々怪しげな人や愉快犯が居るので注意が必要ですが、Google Scholarで検索すると、ロシア昆虫学会誌(Russian Entomological Journal)に投稿したベニボタル科の幼虫に関する論文が1報だけ見付かりました。Flickrに載っている写真は非常に整備されていますし、信用しても良さそうです。論文が1報しかないのは、まだ若い人なのかも知れません。
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体は扁平.頭部中央を縦に走る溝がある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 北隆館の圖鑑を見ると、コクヌスト科の幼虫は3種載っています。しかし、尾部突起は写真の幼虫より何れもずっと小さく、余り似ているとは言えません。Web上でコクヌスト科幼虫の画像を検索すると、この科の幼虫は形態的にかなりの幅を持つ様です。支那のサイトに、写真の幼虫とソックリなものが見付かりましたが、残念ながらコクヌスト科の未同定種となっています。
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同じ様な写真だが、オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 もう結論を出さなければいけません・・・。基本的に情報不足ですが、A. Zaitsev氏に敬意を表してコクヌスト科の幼虫とし、「?」を付けておくことにしました。
 今日の記事は、科の判定に関してかなりの不安があります。普通ならば、こう云うハッキリしないものはお蔵にしてしまいます。しかし、この手の甲虫の幼虫写真はWeb上には多くないので、読者の参考の為、掲載することにした次第です。

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