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2010年3月の25件の記事

2010年3月31日 (水)

ホトケノザ(Lamium amplexicaule

 もう3月も終わりと言うのに、毎日寒い日が続いています。余り春らしい天候ではありませんが、今日は春の野草(雑草)を紹介します。シソ科(Lamiaceae)のホトケノザ(Lamium amplexicaule)です。
 今日の写真は昨年の今頃に国分寺崖線下の四丁目で撮影したものです。その時は忙しくて時間がありませんでしたので、1年後に掲載する次第です。

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ホトケノザ(中央)とヒメオドリコソウ(手前、左右)
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/20)

 ホトケノザは、昨年紹介したヒメオドリコソウと同じ様な所に生えています。何方も同じシソ科のオドリコソウ属(Lamium)ですし、この両者を間違える人も居る様です。しかし、並べてみればその違いは歴然としています。上の写真で画面中央がホトケノザ、手前や左右に写っているのがヒメオドリコソウです。
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ホトケノザ.茎を巻く葉を蓮華座に見立てた命名
春らしく少し明るめに調整した
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/21)

 このシソ科のホトケノザは、春の七草に出て来る「ほとけのざ」とは全然違う植物です。これはコオニタビラコ(小鬼田平子)のことで、キク科の植物です。シソ科のホトケノザは食用にはならないそうです(毒があると云う話が何処かで拡がったらしいですが、毒草ではありません)。
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同じ様な写真をもう一枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 ホトケノザは勿論漢字で書けば「仏之座」です。北隆館の「原色牧野植物大圖鑑」(普段は使わないので書庫から引っ張り出して来た)に拠ると、花部に付く茎を取巻いた葉を蓮華座に見立てた命名とのことです。写真で示した様に、茎を取巻く葉は数段あるので、サンガイグサ(三階草)と呼ばれることもあるそうです。牧野圖鑑には、この他、ホトケノツヅレ、カスミソウの別名も出ています。なお、これらの別名は、保育社の「原色日本植物図鑑」には載っていません。
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ホトケノザの上部を拡大.左右対称に咲いている
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 春の雑草としてよく知られているオオイヌノフグリヒメオドリコソウは何れも帰化植物ですが、このホトケノザは在来種です。図鑑に拠れば、逆に北アメリカに進出し帰化しているそうです。
 この辺り(東京都世田谷区西部)の住宅地に生える雑草の多くは帰化種です。日本人としては、在来種を見るとやはりホッとします。
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花が咲き始めたホトケノザ
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 ホトケノザの花を拡大してみました(下の4枚)。以前紹介した同属のヒメオドリコソウの花とよく似ています。図鑑の解説には「御ずいは4本で下の2本は長く葯は有毛」とありますが、写真では葯はひとかたまりになっています。4個の葯が縦に並び互いにくっ付いているのでしょうか。ヒメオドリコソウでは、葯は上下左右に明確に離れていました。或いは、開花の経過に伴って葯の位置が変化するのかも知れません。
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横から見たホトケノザの花
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

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正面から見たホトケノザの花
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

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下から覗いたホトケノザの花
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

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斜めから見たホトケノザの花
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 今日は昼過ぎ迄は晴れ、との天気予報でした。しかし、9時過ぎには既に高層雲が出て高曇りになってしまいました。所謂花曇りですが、気温が低く寒々としています。寒さの苦手な私としては、早く暖かくなって欲しいものです。

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2010年3月30日 (火)

トビケラの1種

 先日掲載したカジイチゴを撮影したのは「三丁目緑地」の北西部にある泉の脇でしたが、その泉ではトビケラやカワゲラが発生しており、周囲の樹に留まっていました。今日はその内のトビケラの1種を紹介します。
 尾端が隠れているので体長は分かりませんが、翅端までは13~14mm、裸眼でもトビケラであることが分かりました。

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「三丁目緑地」の泉で発生したトビケラの1種
毛が多く、触角が非常に長い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 と言っても、種はまるで分かりません[追記参照]。種どころか科すらも分かりません。保育社の図鑑でも北隆館の圖鑑でも、検索表は翅脈と小腮鬚(口器の一部)の構造を検索キーに使用しています。翅脈は翅表面の毛を除去しなければ分からず、小腮鬚はこの写真では良く見えません。
 また、図鑑の図版はその殆どが展翅した標本写真です。この写真のトビケラを展翅するとどんな風になるのか良く分かりませんし、載っている種類数は多くありません。絵合わせをするのも一寸無理な様です。
 仕方なく、「トビケラの1種」です。トビケラは毛翅目に属し、毛翅目には「トビケラ」の名の付く虫しか居ませんから、分類名を使用するのならば「毛翅目の1種」とすべきでしょうが、科にも落ちないと云うのは一寸カッコ悪いので「トビケラの1種」としておきます[追記参照]。
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上から見るとこんな感じ.翅を屋根型に畳んでいる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 トビケラ、カワゲラ、カゲロウ等の水棲昆虫は、一般には余り縁のある生き物ではないでしょう。私もこの類の虫には縁が薄く、トビケラを撮影したのは実はこれが初めてです。
 しかし、有名な天竜川の食用昆虫「ザザムシ」はトビケラの幼虫が主体ですから、そう云う点では、多少の縁があるとも言えます(10年ほど前に食べたことがあります)。
 北隆館の圖鑑に拠れば、「日本からは現在約430種が記録されている.しかし、この種類数は将来には倍近くなる可能性もある」とのことです。翅長は5~40mm程度ですから、昆虫としては決して小さい方ではありませんが、その割りには研究が進んでいない様です。やはり、水のある所にしか生息しない虫は、研究するのに制約があるのかも知れません。
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頭部の拡大.毛が邪魔をしてどれが小腮鬚か良く分からない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 写真を見ると、トビケラはかなり原始的な昆虫の様にも感じられます。しかし、カゲロウ、カワゲラとは異なり、トビケラは鱗翅目(蝶、蛾)に近い、相当に高等な昆虫です。「人は見かけによらぬもの」と言いますが、虫も外見で決めつけると、往々にして誤りを犯す様です。

[追記]: Caddis<英語でトビケラの意>氏より、「写真の種は,サイズや触角基部の形態からオオカクツツトビケラ(Lepidostoma crassicorne)だと思います」とのコメントを賜りました。
 オオカクツツトビケラはカクツツトビケラ科(Leoidostomatidae)に属し、北隆館の圖鑑には「成虫の体長8mm前後、開翅長20mm前後.(中略)(触角)第1節は2節とほぼ同長(中略).燈火に良く飛来する.年に1世代あるいは2年に3世代で、夏あるいは春から初夏と秋に成虫が出現.終齢幼虫は、樹皮などの木質植物片で四角錐の筒巣を作るが、その前は葉片で井桁型の巣も作る.湧水流や細流に多い傾向がある.分布:北海道・本州・四国・九州」とあります。
 また、筑波大学の生物学研究者、田邉(田辺)晶史の公式個人Webサイトを見ると、「河川細流部の捕食者(魚、肉食性トビケラ)のほとんどいない環境に生息する、カクツツトビケラ科で最も大きくなる種.巣には飛行機の羽のような突起があり、特徴的.幼虫は1齢から落葉を巣材に使う」と書かれています。(2010/04/26)

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2010年3月29日 (月)

キノコヨトウ(Cryphia obscura)の幼虫(若齢)

 今日は久しぶりに芋虫・毛虫の登場です。昨年の今頃に撮影した幼虫で、体長は約1cm、「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮上を這っていました。
 こんな小さな若齢幼虫など、どうせ種類など分からないだろうと思い、いい加減に撮影してその儘放置していました。ところが、今年も「四丁目緑地」や「七丁目緑地」のケヤキの樹皮上で何度か見かけたので、これはかなりの普通種で調べれば種類が分かるかも知れないと思い、群馬大学の青木繁信教授のHP「幼虫図鑑」で調べてみたところ、ヤガ科(Noctuidae)キノコヨトウ亜科(Bryophilinae)のキノコヨトウ(Cryphia obscura)の幼虫に酷似していることが分かりました。

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「四丁目緑地」のケヤキの樹皮上にいたキノコヨトウの幼虫
体長は約10mmでまだ若齢幼虫
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 手元にある保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」にも載っていました。体長は約20mmとのことですから、写真の幼虫は、まだ3齢か4齢の様です。また、この亜科の幼虫は地衣類を食すと書いてあります。どおりで大きな樹の樹皮上に居たはずです。
 この亜科には、神保宇嗣氏の「List-MJ 日本産蛾類総目録」に拠ると、3属17種が記録されており、Cryphia属にはその内の8種が属します。ヒョッとすると、キノコヨトウではなく、その近縁種かも知れません。
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頭部は黒く、頭楯前片と触角基部は灰白色
刺毛硬皮板は黒色、胸脚は淡褐色
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 東京都本土部昆虫目録を見ると、Cryphia属は4種記録されています。何も形容の付かない無印キノコヨトウは10報の文献で記録されているのに対し、他の3種は何れも山奥である東京都西多摩郡奥多摩町日原で得られた稀少種で、この辺り(東京都世田谷区西部)に居る可能性は零に等しいでしょう。無印キノコヨトウの可能性が大です。
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背楯(前胸硬皮板)は正中線と前縁を除いて黒色
肛上板にも黒斑がある
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 「原色日本蛾類幼虫図鑑」の解説には、「(前略)頭部黒色で光沢鈍く、頭楯前片及び触角基部灰白色.胴部地色は淡く緑色を帯びる暗灰黄色で黒斑が多い.背楯ほか硬皮板はいずれも黒色、背楯の正中線と前縁は細く灰白色.(中略)気門下線より上腹線にわたり暗色部が多く、腹面は淡色である.肛上板は暗斑を持つ.気門黒色.胸脚淡褐色(後略)」とあります。「背楯」は前胸(胸部第1節)の背側にある固い部分で、前胸硬皮板とも呼びます。また、解説中の硬皮板とは刺毛の基部にある固い部分のことで、刺毛硬皮板と呼ぶこともある様です。肛上板は第10腹節(お尻)の背側にある固い部分です。これも硬皮板の1種です。
 これら図鑑に書かれている特徴は、写真の幼虫と一致しています。キノコヨトウの幼虫として問題ないでしょう。
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オマケにもう一枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/19)

 キノコヨトウは幼虫で越冬し、保育社の蛾類幼虫図鑑に拠れば、5月上・中旬に終齢幼虫が見られ、発生(羽化)は年1化で、成虫は7~8月に得られるそうです。
 成虫は、保育社の蛾類図鑑を見ると、開張21~23mm、ヤガ科としてはかなり小型の蛾です。前翅はオリーブ色~褐色で、横に走る筋が数本あります。この蛾類図鑑には「少ない」と書いてありますが、この辺り(東京都世田谷区西部)でも幼虫を良く目にする位ですし、Web上の「みんなで作る日本産蛾類図鑑」にはかなり沢山の成虫写真が載っていますから、やはり極く普通種の様です。

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2010年3月28日 (日)

カワノキクイムシ亜科(Hylesininae)の1種

 先日、「四丁目緑地」の脇にあるケヤキの樹皮を剥がしていたところ、キクイムシの1種が出て来ました。キクイムシと云うのは一般にもよく知られた森林害虫ですが、多くは体長2~3mmと小さく、目に止まる機会は余り無いのではないかと思います。Web上で生態写真を探しても、日本のサイトは極く僅かしかヒットしません。今日の写真は余り鮮明ではないのですが、読者諸氏の参考の為、掲載することにしました。

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カワノキクイムシ亜科(Hylesininae)の1種
体長は約2.7mmと小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 体長は約2.7mm、テレプラスを挟んで約2倍で接写していますが、虫に厚みがある為、中々全体に焦点が合いません。撮った写真の殆どは没になりました。
 実は、キクイムシを調べるのは初めてです。九州大学の日本産昆虫目録に拠ると、キクイムシ科(Scolytidae)には4亜科303種もあり、かなり大きなグループと言えるでしょう。保育社の甲虫図鑑には、亜科への検索表があります。しかし、肝腎の部分が良く見えず、正確に検索表を辿るのは一寸無理です。それでも何とか、写真や検索表のキーを見て全体的に判断すると、カワノキクイムシ亜科(Hylesininae:和名は九大目録による)に属す様です。
 下の写真を見ると、前肢脛節の外側には後方に曲がった爪状の突起がある様に見えます。また、頭部は上方から見て前胸の前に現れ、前胸背は均一に点刻されており、更に、上翅の基縁は隆起して小鈍鋸歯状となっています。これらはカワノキクイムシ亜科の特徴と一致します。
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上翅の基縁は隆起して小鈍鋸歯状となっている
前脛節に不明瞭だが歯状の突起が見える
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 保育社の甲虫図鑑には、キクイムシ科全部で91種、Hylesininae(カワノキクイムシ亜科)では29種が載っています。その中で絵合わせをすると、ハルニレノキクイムシが一番良く似ていました。解説を読むと「2.1-2.7mm.触角の中間節は6節、腹部は水平、1属1種.加害樹種:クリ・ハルニレ・ケヤキ・カツラ・サイカチ・イタヤカエデ.本州、九州、朝鮮半島」となっています。
 体長や寄主、分布では一致しますが、九大目録を見るとこの亜科には71種も記録されており、その中の29種からの絵合わせでは、信頼性がありません。また、図鑑に載っている同種の触角の形も、写真とは少し違っている様にも見えます。
 此処では、「カワノキクイムシ亜科」の1種に留めておくのが無難でしょう。
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前胸背は均一に点刻されている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 キクイムシの多くは、樹皮や木部に穴を空ける穿孔虫です。しかし、ドングリ等の種子や枝の髄を食害する種類もあります。また、木部に穴を空けるキクイムシには、菌を「栽培」して材ではなくその菌を食べる「養菌性キクイムシ」が沢山居ます。
 雄と雌の関係も、一夫一婦制や一夫多妻制等があり、更に近縁のナガキクイムシ科には、女王と多数のワーカーによる真社会性を持つ種類も居ます。私は詳しくは知りませんが、その生態は多岐に亘り、中々興味深いものがある様です。
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触角球桿部は4節ある様に見えるが定かでない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 なお、キクイムシ科は、ゾウムシ科(Curculionidae)キクイムシ亜科(Scolytinae)とする見方もあります。Bugguide.netではその様になっています。外国のサイトで検索するときは、大分類が日本で主流の分類体系とは異なることがあるので、注意が必要です。

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2010年3月27日 (土)

ノコギリヒザグモ(Erigone prominens

 今日は微小なクモを紹介します。「四丁目緑地」の横に生えているケヤキの樹皮下に居ました。これまでかなりの本数のケヤキで樹皮を剥がしてきましたが、このクモを見るのは初めてです。しかし、この樹には沢山いて、小さな樹皮片を剥がしても必ず1頭は出て来る、と云う感じでした。
 体長は1.5mm、テレプラスを挟んで約2倍で接写しましたが、画像は鮮明ではありません。今日の写真は暗部が潰れない様にやや明度を高めに調整してあります。モニターによっては明るすぎるかも知れません。

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ケヤキの樹皮下に居たノコギリヒザグモの雄亜成体
頭胸部周縁に歯状の小突起があると云うが見えない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 さて、このクモ、小さ過ぎてまるで種類が分かりませんでした。文一総合出版の「日本のクモ」を端から端まで、写真を何回かジックリ見較べてみましたが、該当するものがありません。サラグモ科のクモに似ているものが多いのですが、樹皮下に生息すると云う種類は見当たりませんでした。
 体長僅か1.5mm、しかし、触肢を見ると既に移精器官の形をしているので、既に幼体ではなく雄ないしはその亜成体の様です。確か3個体を撮影した筈ですが、何れも同じ形の触肢をしているので、全部雄と云うことになります。今時、雄ばかり居ると云うのは一寸奇妙な感じです。
 分からないことだらけで、私一人では解決不能です。そこで、例によってクモのBBS「クモ蟲画像掲示板」に御伺いを立ててみました。
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触肢は移精器官の形をしているがまだ亜成体
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 掲示板の主催者、きどばん氏が対応して下さいました。「サラグモ科のノコギリヒザグモと思われます。(中略)触肢の様子から♂亜成体でしょうね」との御話でした。サラグモ科のクモの殆どは、この程度のマクロ写真だけでは同定不可能の様ですが、「練馬区の公園ではケヤキやアキニレの樹皮下で越冬しているのがよく見られます.ケヤキ樹皮下で同様の外見を持つ別種は見たことがありません」とのことなので、サラグモ科(Linyphiidae)のノコギリヒザグモ(Erigone prominens)雄亜成体で先ず間違いないでしょう。
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体を縮めるノコギリヒザグモの雄亜成体
腹部が輪状に光っているが、これは
腹部に窪みがあることによる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 このノコギリヒザグモは「日本のクモ」にも載っていました。雌成体の写真が出ていますが、殆ど真っ黒です。また、きどばん氏が示して下さった雄成体の写真は、腹部が相対的に小さくかなりホッソリとしていて、今日の写真とはまるで似ていません。どうもサラグモ科と云うのは、亜成体から成体になるときに、劇的に外観が変わる様です。
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横から見たノコギリヒザグモの雄亜成体(別個体)
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/24)

 「日本のクモ」の解説には、「平地に多く生息.庭園、水田、河原、畑地などの下草の根本付近や地表のくぼみにシート網を張る.バルーニング(空中飛行)によって飛んできた個体を、都市部から山地まで広く見つけることができる.全体黒褐色であるが、個体により濃淡がある.ヒザグモ属は頭胸部の周縁にギザギザの小突起があり、また上顎の前面にものこぎり歯状の突起がある」と書かれています。
 ケヤキの樹皮下に居たのは越冬の為で、普段の生活場所ではなかったことになります。また、写真からは、上顎の歯状突起は勿論、頭胸部周縁の突起も確認できません。やはり、サラグモ科には手を出さない方が無難の様です。

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2010年3月26日 (金)

キンケハラナガツチバチ(Campsomeris prismatica

 先日、「四丁目緑地」に行った帰りに、今の季節としては珍しいハチを見付けました。ツチバチ科(Scoliidae)ツチバチ亜科(Scoliinae)に属すキンケハラナガツチバチ(Campsomeris prismatica)の雌です。
 「四丁目緑地」の南に「十一山市民緑地」と云う殆ど階段だけの小さな緑地があり、その入り口近くの地面を這っていました。かなり大型のハチで、体長25mm位はあります。

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越冬から目覚めたキンケハラナガツチバチの雌
体長は25mm位で、かなり大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 ツチバチ亜科のハチとしては、かなり以前にキオビツチバチの雄を紹介しました。しかし、この種はツチバチ族(Scoliini)に属し、このキンケハラナガツチバチの方は別族のハラナガツチバチ族(Campsomerini)に属します。
 キンケハラナガツチバチは、普通は晩夏から秋にかけて出現する虫です。今頃いるとは一寸驚きで、晩春に現れる何も形容のつかないハラナガツチバチ(北隆館の新訂圖鑑ではシロオビハラナガツチバチ)かとも思ったのですが、腹部には黄白帯が認められず、やはりキンケハラナガツチバチでした。
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地面の上を這い回るキンケハラナガツチバチ
まだ体が温まっておらず良く飛べない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 家に帰ってから北隆館の圖鑑にあるキンケハラナガツチバチの項を読むと、その長い解説の一番最後に「♀のみ越冬する」と書いてありました。今頃居てもおかしくないどころか、居なければならない存在でした。
 しかし、秋にはその数が非常に多く、セイタカアワダチソウや菊の花などには群がっていると言っても良い程沢山居るのですが、今まで春に見たことはありません。越冬の成功率が非常に小さいのでしょうか?
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腹部や胸部下側の毛は色が薄い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 この辺り(東京都世田谷区西部)に生息するハラナガツチバチ族としては、他にヒメハラナガツチバチが居ます。数はキンケよりも大部少ない様です。他に只のハラナガツチバチ(シロオビハラナガツチバチ)も居るかも知れません。この種は、北隆館の圖鑑に拠れば春から夏にかけて出現するそうで、確かに、その頃にそれらしきハチ見ることがあるのですが、まだ確認していません。
 ハラナガツチバチ族のハチは互いに良く似ていて、種の判別が難しい場合もあります。また、雄と雌で大きく形態が異なります。種や雌雄の区別の仕方は、少し前に別のWeblogで詳しく書きましたから此処では省略します(キンケハラナガツチバチの、ヒメハラナガツチバチの)。
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頭部胸部を拡大.複眼は腎臓型
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 初めて見た春のキンケハラナガツチバチは、まだ少し寒いせいか、元気は良くありませんでした。一応飛ぶことも出来なくはないのですが、20~30cmで着地してしまいます。しかし、ジッと止まっていることは少なく、歩き回って中々思う様には写真が撮れません。やがて、体が温まったのか、撮った写真をチェックしている間に、何処かに飛んで行ってしまいました。
 そんな訳で、今回撮ることの出来なかった正面と真横からの写真は、昔我が家の庭で撮ったものを使うことにしました。
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ハラナガツチバチ類は大人しい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/15)

 ハチに慣れ親しんでいる者には信じ難い話ですが、このキンケハラナガツチバチをスズメバチ(例えばオオスズメバチコガタスズメバチ)と間違える人が居るそうです。
 しかし、ハラナガツチバチ類は極めて大人しいハチで、これまでこの蜂に刺されたと云う人を知りません。特に雌は警戒心も少ない様で、花の上を歩いているときなど、手を出すと直ぐに乗ってきます。実は、上の写真も、撮り難い場所にハチが移動すると手を出してハチを乗せ、撮り易い場所に降ろしてからまた撮る、と云うことを繰り返して撮影しました。
 しかし、雌はチャンと毒針を持っていますから、指で摘んだりすれば刺されるでしょう。
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北米産シオンの1種の花にしがみ付くキンケハラナガツチバチ(雌)
(写真クリックで拡大表示)
(2006/10/10)

 上と下の2枚の写真はかなり前に我が家の庭で撮りました。上は北米原産のシオンの1種(孔雀草の名で売られているらしい)、下はセイタカアワダチソウの花に来たところです。何方も雌ですが、雄も勿論これらの花にやって来ます。しかし、シオンの方には雄雌共に多いのに対し、セイタカアワダチソウに来るのは殆どが雌で、雄を見ることはあまりありません。
 雌は卵を形成する為に多量の蛋白質を必要とします。それ為、雌は蛋白含量の多い花粉を食べなければならず、一方、雄の方は当分のエネルギー源となる花蜜を摂るだけで充分なのでしょう。恐らく、セイタカアワダチソウには花粉は多いが蜜は少なく、逆にシオンの方は花粉は少ないが蜜は多いのだと思います。
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キンケハラナガツチバチ(雌)の顔
(写真クリックで拡大表示)
(2008/10/20)

 ここ数日、雨模様の寒い日が続いています。今日は昼前には晴れ、午後には気温も上がるとの予報でしたが、どうも時々陽が射す程度で空気は冷たいままです。カメラを持って散歩に出掛けようと思っていたのですが、当てが外れた様です。

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2010年3月25日 (木)

イヌビワハマキモドキ(Choreutis japonica

 先日、ゴボウハマキモドキを掲載しましたが、今日は同じハマキモドキガ科(Choreutidae)のイヌビワハマキモドキ(Choreutis japonica)を紹介します。場所はゴボウハマキモドキと同じ七丁目にある世田谷区の家庭菜園です。しかし、撮影したのは約1年遅く、昨年の10月下旬です。
 体長は約5.5mm、翅端まで約7.5mm、開張は図鑑に拠れば11~14mm、ゴボウハマキモドキよりはかなり大きいと言えます。食草は和名にある様にイヌビワやホソバイヌビワですから、家庭菜園の農業害虫ではありません。バジルの葉に留まっているところを撮りましたが、花が咲いていたので、或いは、吸蜜に来ていたのかも知れません。背側から数枚撮ったところで逃げられてしまい、使える写真はこの2枚しかありません。

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イヌビワハマキモドキ.1枚目は少し遠くから
体長約5.5mm、翅端まで約7.5mm
(写真クリックで拡大表示)
(2009/10/22)

 先日のゴボウハマキモドキでは、翅の部分により異なった形をした鱗粉がありました。しかし、このイヌビワハマキモドキでは、細長い鱗粉1種類に統一されています。
 九州大学の日本産昆虫目録を見ると、ハマキモドキガ科には2亜科しかなく、この2種共にハマキモドキガ亜科(Choreutinae)に属します。歩き方は、何れも良く似ており、ツッツーと素早く前進しては、ピタッと止まり、これを繰り返します。この仲間に共通した動きなのかも知れません。
 保育社の古い蛾類図鑑を見ると、「紀伊半島南部・四国・九州の太平洋岸地帯に普通におり、九州北部の海岸でも採れる.4~5月に幼虫、5~6月に蛾が現れる」とあります。南方系で年1化と云う印象を受けます。しかし、Webで検索すると東京都本土部昆虫目録を始め、東京都内にも記録があります。東京都本土部昆虫目録に載っているのは、皇居と赤坂御所の記録で、何れも21世紀に入ってからです。ヒョッとすると、これも温暖化による北上なのかも知れません。また、「みんなで作る日本産蛾類図鑑」に拠ると、成虫出現月は5~10月となっています。年に複数回発生している可能性が大です。
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黒に近い焦げ茶色、茶色、薄黄色、濃い灰色、薄い灰色、殆ど白
と様々な色が調和良く配置されている
(写真クリックで拡大表示)
(2009/10/22)

 ハマキモドキガ科の蛾は、何れも開張10~20mm程度と小型ですが、中々味わいのある模様、色合いをしています。私としては、結構気に入ってしまいました。皇居にはこれまでに7種の記録がありますから、この辺り(東京都世田谷区西部)にももう少しは居るでしょう。是非見付けて紹介したいと思っています。

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2010年3月24日 (水)

カジイチゴ(Rubus trifidus

 今日は久しぶりに植物を紹介します。最後に掲載した植物はツタバウンランで、昨年の3月30日のことですから、ほぼ1年前になります。植物には随分無沙汰をしてしまいました。
 植物部門再開の第1回目はキイチゴの1種、カジイチゴ(Rubus trifidus)です。開花は毎年3月中旬頃の様で、今はもう花期を若干過ぎた感じです。
 今日の写真は、一昨日撮影したものと、昨年の写真が一緒になっています。本当は、昨年載せるつもりだったのですが、花の写真ばかりで枝振りを撮った写真が無かったので、掲載を見合わせたのです。

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三丁目緑地に生えているカジイチゴ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 このカジイチゴは、昔から三丁目の国分寺崖線の彼方此方に生えていました。崖の上にも下にも少なく、崖の途中に多いので、傾斜地を好むのかも知れません。現在では、明正小学校の直ぐ横の「三丁目緑地」の中に特に多い様です。また、山縣邸の下の方にもかなり生えています。
 今日紹介するのは花だけですが、果実は5月頃橙黄色に熟し、小学生(明正小学校)の頃は、学校の帰りに「お茶坂」の脇に生えているのをよく食べたものです。飽食の時代に生まれた今の子供達は、屹度食べないでしょう。上の写真を撮った後で、お茶坂へも行ってみましたが、もうカジイチゴの姿は全く見当たりませんでした。
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カジイチゴの枝.もう咲き終わった花もある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 写真を撮ったのは、「三丁目緑地」にある2つの泉の内、北西部にある方の直ぐ横の斜面です。林野庁宿舎の後に建てられたマンション、ガーデンコートの真裏に当たります。
 高さは2.5mm位もあり、かなり大型です。最初の写真は、株の先端部のみを示しています。全体像は、ワイドレンズを持って行かなかったのと地形の関係で、撮影できませんでした。
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2つの花を拡大.横に見える蕾は毛の多い萼に包まれている
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/17)

 実は、「カジイチゴ」と云う和名を知りませんでした。子供の頃から、これを「キイチゴ」と呼んでいたからです。保育社の「原色日本植物図鑑木本編第2巻」で調べてみると、「キイチゴ」は、橙黄色の果実が着くナガバモミジイチゴ(R. palmatus)の別名となっています。
 しかし、「キイチゴ」とは、「黄苺」ではなく「木苺」ですから、キイチゴ(Rubus)属の木本植物全部がキイチゴとしての資格を持っていると言えるでしょう。因みに、キイチゴ(Rubus)属の多くは、その属名の示す通り(Rubus→ruber=赤い)、赤い果実を着けます(中には、ブラックベリーの様に充分に熟すと黒紫色になるものもあります)。
 カジイチゴの漢字名は、北隆館の「原色牧野植物大圖鑑」を見ると、「構苺」で、これはその葉がカジノキ(構)の葉に似ていることに拠るそうです。「構」の字を「カジ」と読むとは知りませんでした。最近は、カジノキは「梶の木」と書くのが一般的な様です。
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別の花.もう少し接近して撮影
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/17)

 このキイチゴ(Rubus)属、種間雑種が出来易いので、分類はかなり混乱している様です。しかし、カジイチゴの特徴はかなりハッキリしていますから、他種と間違える可能性は少ないのではないかと思います。
 托葉は葉柄に合生、茎は棘を欠き、葉は3~7中裂の掌状、若枝、葉柄、花柄は腺毛が多く、古い枝は無毛、枝の先に3~5花の聚繖(集散)花序を付け、萼には両面に密毛があること、等がその特徴です。しかし、保育社の図鑑には「他種との間に雑種がある」と書かれており、注意が必要な様です。
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別の花を更に拡大して撮影
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/17)

 カジイチゴの花は、バラ科(Rosaceae)の花らしく、花弁は5枚ですが、花弁には皺がよっており、余りパッとしません。しかし、中心部を拡大すると、多数の雌蕊の集合体を雄蕊が幾重にも取り巻いていて、中々見映えがします。中央に近い側に少し大きな葯が見えますが、これは、まだ葯がまだ反り返っていないので大きく見えるのだと思います。
 キイチゴ属の果実(槳果)は、多くの果実が一つに集まった集合果で、果実にあるモコモコ(粒々)が1つの果実に相当します。雌蕊が沢山あるのは、その粒々の1つひとつにそれぞれの雌蕊が対応しているからでしょう。
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上の花の中心部を等倍で撮影
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/17)

 今日は薄ら寒い雨模様ですが、もう確実に春です。これからは、少し春らしい雑草の花も合間に入れて紹介して行くつもりです。

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2010年3月23日 (火)

ヒトフシムカデ属の1種(Monotarsobius sp.

 大木の樹皮下で越冬しているのは、昆虫やクモだけではありません。樹の低い位置にある樹皮を剥がすと、時々極く小さなムカデを見付けることがあります。今日は、その微小なムカデを紹介することにしましょう。場所は、先日のヒゲブトハムシダマシと同じ七丁目の藪です。
 体長は約10.5mm、ケヤキの樹皮片の方にくっ付いていました。

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ケヤキの樹皮下に居たヒトフシムカデ属の1種
見付けたときの状態.頭を曲げている
赤い粒々はダニの1種であろう
体長は約10.5mmと小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 日本産ムカデ綱(唇脚綱)にはゲジ、イシムカデ、オオムカデ、ジムカデの4目があります。これらの目は、成体の歩脚数やその形態で簡単に区別することが出来ます。ゲジは非常に細長い15対の歩脚を持ちます。イシムカデも15対ですが、歩脚の長さは普通です。オオムカデは21対か23対、ジムカデには31対以上(日本産)の歩脚があります。ゲジとイシムカデは、幼体では体節数が少なく、脱皮により体節数が増加し、これに伴い歩脚数も増加しますから注意が必要です。しかし、ある段階から脱皮しても体節数は変わらなくなります(半増節変態)。一方、オオムカデとジムカデは幼体から体節数は一定しており、脱皮しても体が大きくなるだけです(整形変態)。
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体を伸ばしたヒトフシムカデ
胴部の第2,4,6,9,
11,13節は極く短い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 写真のムカデを見ると、普通の長さの歩脚が15対ありますからイシムカデ目に属します。イシムカデ目では、第2,4,6,9,11,13有肢胴節(多足類の体節は頭部と胴部の2つに分けられます)の背板が、他の節よりも短くなる特徴があります。写真のムカデでは、これらの節は極端に短くなっており、拡大しないとその存在が分からない程です。
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上の写真の部分拡大.触角は19節
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 日本産イシムカデ目は、トゲイシムカデ科、イッスンムカデ科、イシムカデ科の3科から構成されます。東海大学出版会の「日本産土壌動物」の科・属への検索表に拠ると、トゲイシムカデ科の歩脚各節には棘(武装棘)が無いそうで、写真のムカデの歩脚には明らかに棘があります(5番目の写真)から、先ずこの科は除外されます。イッスンムカデ科は、検索表では判断出来ませんが、解説を読むと「単眼が約20以上集まっている」と書かれています。写真のムカデの単眼は数個しか無い様に見えます(下の写真)から、これも除外されます。従って、写真のムカデは、イシムカデ科(Lithobiidae)となります。
 日本産イシムカデ科についての研究は、余り進んでいない様です。世界的には数10属以上あると推定されているそうですが、日本産で確実なのは、イシムカデ属とヒトフシムカデ属の2属のみです。検索表に拠れば、第1~13歩脚の付節が2節であればイシムカデ属、1節であればヒトフシムカデ属となります。
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眼は数個の大きさの異なる単眼からなる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 ムカデ類の歩脚は、基節、転節、前腿節、後腿節、脛節、付節からなります。腿節が前後2節ある点が昆虫とは異なっています。写真を見ると、太くて短い基節、細くてやはり短い転節に続き、やや不明瞭ですが太い腿節が2節あり、そこから急に細長くなって、脛節と少し色の異なる付節がそれぞれ1節づつあります(下の写真)。付節が1節ですから、ヒトフシムカデ属(Monotarsobius)と相成ります。
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歩脚の付節は1節のみからなる
歩脚には細かい棘が沢山ある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 「日本産土壌動物」のヒトフシムカデ属の解説を読むと、「小さなイシムカデ類のグループで、体色は淡褐色のものが多く、体長10mm以下が多い.触角小節数20個以下.眼には数個の単眼が1列か2列に並ぶ.全国に分布し、特に北方に多く土壌中に生息している.代表的な種はホルストヒトフシムカデM. holstii (Pocock)、ダイダイヒトフシムカデM. elegans Shinoharaがある」と書かれています。
 写真のムカデの体長は約10.5mm、触角は19節(3番目の写真)、単眼は数個(4番目の写真)です。体長は10mmを超えていますが、記述では「体長10mm以下が多い」ですから、記述と一致しているとして問題無いでしょう。種は分かりませんので、Monotarsobius sp.としておきます。
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おまけにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 今回、触角や眼、歩脚等の細かな写真をチャンと撮ってあったのは、実は、先日もう一方のWeblogでイシムカデを掲載した際、これらの構造が検索時に問題になることを知ったからです。その時は、どうしても歩脚の付節数が写真から判断出来ず、ヒトフシムカデ属か否かを決められませんでした。今回は、その経験を生かすことが出来、何とか属まで落とすことが出来ました。
 この我が家の庭にいた方のイシムカデは、今日のヒトフシムカデよりもかなり可愛い感じがします。興味のある読者諸氏はこちらをどうぞ。

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2010年3月22日 (月)

ハナグモ(Misumenops tricuspidatus)(雄)

 最近紹介するクモは、ケヤキやプラタナス等の樹皮下に潜んでいたものばかりでしたが、今日は一寸趣向を変えて、菊花の上に居たハナグモ(Misumenops tricuspidatus)を紹介します。しかし、撮影したのは一昨年の晩秋、場所は七丁目に位置する世田谷区の家庭菜園です。
 ハナグモはカニグモ科(Thomisidae)に属します。写真の個体は、体長4mm前後ですが、脚が長く、しかもかなり太いので、もっと大きく感じられます。

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先ずは全体写真.菊花の上で食事中のハナグモ
体長は4mm前後だが、脚が太い長い
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 丁度、獲物を捕らえて居ました。餌食になっているのはハナバエ科の1種で、種類は分かりませんが(このハエの写真はシッカリ撮ってあるのですが、属も分からないので未掲載の儘放置されています)、此処に植えられている菊に沢山来ていた普通種です。
 文一総合出版の「日本のクモ」を見ると、写真の様に、第1~第2歩脚が縞模様で、頭胸部が褐色を帯びてその背面に1対の縦筋があるハナグモは雄で、雌にはこの様な紋はありません。代わりに、腹部背面に雄には見られない三角に配置された不定型の褐色斑を持ち、頭胸部や脚は全て緑色です。しかし、腹部の斑紋を欠く個体も多いとのことです。
 なお、雄であることは、触肢が膨らんで移精器官になっていることでも分かります。
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犠牲者?はハナバエ科の1種(属不明)
前側眼が一番大きくやや横向き
後側眼も大きくやや後ろ向き
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 これまで、カニグモ科のクモとしては、ワカバグモキハダカニグモコカニグモを紹介して来ました。このハナグモも、これらのクモと同様、前側眼が大きく、前中眼と後中眼は小さく、また、後側眼も大きくて側方やや後を向いています。また、個々の単眼の大きさや方向だけでなく、その配置も殆ど同じです。
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脚や頭胸部が茶色を帯び縞があるのは雄
雌は緑色で腹部以外に縞は無い
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 ハナグモは、その名前の様に、花の上やその近く、或いは、葉や枝先等に居て獲物を待ち伏せています。私が子供の頃には極く普通に見かけたのですが、最近はその機会がずっと少なくなりました。餌となる昆虫の絶対数の減少に伴って、それを補食するクモの数も減らざろうを得ないのでしょう。
 何処かで書きましたが、昔はサツキやドウダンに無数と言っても良い程のタナグモの巣がありました。子供の頃、祖母に命じられて、よく箒で巣を取り除いたものです。しかし、最近では殆ど見なくなりました。クモ類も昔と較べ、種、個体数共に相当減少しているのは間違いありません。
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少しブレボケがあるがアンシャープで誤魔化した
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 昨日は、早朝は台風並み(以上?)の風、以降は黄砂と酷い天気でしたが、今日はスッキリと晴れ、風も穏やかです。午後は、カメラを持って散歩に出掛けることにします。

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2010年3月21日 (日)

ヒゲブトハムシダマシ(Luprops orientalis

 成城名物の桜並木を真っ直ぐ北に進むと、やがて一寸した行き止まりとなり、そこから更に北へ細い路が続いています。これを道なりに進んで暫く行くと、ケヤキ、ムクノキ、シラカシ等の生い茂った藪の前を通ります。一寸前までは竹藪もあったのですが、今は刈り取られてしまいました。七丁目にあるこの藪は個人の所有地とは思いますが、隣家とは壁で隔たっているので、一寸中に入って虫を探してみました。
 今日は、そこで見付けた虫を紹介します。ケヤキの樹皮下に居た、体長8mm強の少し平べったい甲虫です。

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ケヤキの樹皮下に居たヒゲブトハムシダマシ
剥がした樹皮の側にくっ付いていた
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 見付けたときは、ゴミムシの1種かと思いました。しかし、良く見ると、触角も脚も太くて短く、ゴミムシの仲間ではありません。更に、大顎の目立たないテントウムシの様な口器をしています。また、小腮鬚も斧型で、この点でもテントウムシに良く似ています。一体、何処の科に属す虫なのか、少し考えてしまいました。
 こう云う格好をした、鞘翅に模様が無い、茶~黒色の良く分からない甲虫は、先ず、ゴミムシダマシ科を調べることにしています。何故かと云えば、以前、ゴミムシダマシ科に属す「セスジナガキマワリ」の記事で書いた様に、「このゴミムシダマシ科には、外見的な統一がまるで有りません.オサムシの様な格好をしたのもいれば、テントウやシデムシみたいな連中も居ますし、シバンムシと間違える様なのも居ます.まるで、○○○モドキ、×××ダマシの百貨店の様な科です」、と云う訳だからです。
 しかし、保育社の甲虫図鑑でゴミムシダマシ科を調べても、写真の様な虫は見付かりませんでした。
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ケヤキの樹に移した後、樹皮面を歩くヒゲブトハムシダマシ
かつてはヒゲブトゴミムシダマシと呼ばれていた
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 その後、色々探し回って、漸く直ぐ隣のハムシダマシ科(Lagriidae)に属すヒゲブトハムシダマシであることが分かりました。余りに近すぎて見逃してしまった様です。
 ハムシダマシは既に紹介済みですが、毛むくじゃらのかなり細長い多少華奢な感じのする虫で、写真のヒゲブトハムシダマシとはかなり感じが違います。調べてみると、ハムシダマシ科には2亜科があり、前者の様な細長いのはハムシダマシ亜科、後者の様なややズングリしたのはチビヒサゴゴミムシダマシ亜科(Adeliinae)に属す様です。
 ハムシダマシ科なのにチビヒサゴゴミムシダマシ亜科と云うのはどう見ても変です。しかし、この亜科はかつてはゴミムシダマシ科所属で、九州大学の目録でも「チビヒサゴゴミムシダマシ亜科」とされており、まだ、何方も「チビヒサゴハムシダマシ亜科」とは呼んで居ない様です。この手の科の変更に伴う和名の混乱は時として色々な分類群に生じます。例えば、ハナバエ科ではなくイエバエ科なのに、○○○ハナバエと云う和名がかなりの数ありました(現在では篠永氏が「日本のイエバエ科」で全て○○○イエバエに変更されています)。
 このヒゲブトハムシダマシの和名も、以前はヒゲブトゴミムシダマシと呼ばれて居たとのことです。一寸気になったので、保育社の甲虫図鑑より古い「原色日本昆虫図鑑(上)甲虫編」を見てみると、やはり、ゴミムシダマシ科のヒゲブトゴミムシダマシになっていました。
 まァ、そんな訳で、始めゴミムシダマシ科を調べたのも、そう見当違いでは無かった様です。
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テントウムシの様に、大顎が不明瞭で、小腮鬚は斧型
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 この藪は、通りに面した部分では頑丈な壁で隣家と隔てられています。しかし、中に入ってゆくと、何と、その御宅の庭と繋がっていました。写真の枚数が少ないのは、不審者と間違えられるといけないので、急いで帰って来たからです。

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2010年3月19日 (金)

ゴボウハマキモドキ(Tebenna micalis

 火曜日(16日)の朝から体の調子を崩して、3日ほど寝込んでしまいました。連続更新は敢えなく9日で中断です。
 今日は、また、一昨年の晩秋に撮った蛾を紹介します。ゴボウハマキモドキ(Tebenna micalis)、体長約3.5mm、翅端まで5mm弱、開張は図鑑に拠れば8~10mm、ハマキモドキガ科(Choreutidae)ハマキモドキガ亜科(Choreutinae)に属す昼行性の小蛾です。

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菊の花を訪れたゴボウハマキモドキ.少し翅を拡げている
翅端まで5mm弱.銀色に光る斑紋が散在する
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 七丁目にある世田谷区の家庭菜園に植えられている菊の花に来ていました。小さいですが、前翅に銀色に光る部分があり、良く見ると結構綺麗な蛾です。
 全体的に茶色を基調とするものが多いと思いますが、灰色を帯びる個体もある様です。この写真の場合は、黄色い菊の花が背景になっている為、黄色カブリを起こして少し変な色になっています。以前紹介した「シマバエ科の未記載種(その2:Steganopsis sp.2」と同じで、黄色カブリの写真は、トーンカーブを使って色補正をしても、本来の色から少しずれた色になってしまいます。
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翅を閉じたゴボウハマキモドキ
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 前翅にある銀色の部分の位置や数は、個体によりかなりの変化があります。少し前に、もう一つのWeblogで同じゴボウハマキモドキを紹介していますが、今日の写真の個体よりも、紋の数が少なくなっています。
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横から見たゴボウハマキモドキ
小さいので鱗粉が大きく見える
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 保育社の古い蛾類図鑑を見ると、「害虫として農業昆虫の書物に載っている」と書かれています。しかし、「"ゴボウハマキモドキ" 駆除」をキーワードにしてGoogle検索しても、有効なヒットは一つもありませんでした。殆ど、問題にならない程度の害虫なのでしょう。
 この辺りでは、私の子供の頃から現在に至るまで、ゴボウは全く植えられていません(砂地でないと真っ直ぐにならないし、収穫が大変)。ゴボウは独特の植物なので見れば一目で分かります。図鑑に拠れば、「各地で幼虫は種々の菊科植物にいるが、特にアザミに多いとある」とあります。ゴボウは、本来は薬用植物として支那から渡来した植物で、アザミ族に属します。恐らく、本来はアザミを中心的な食草としていたのが、渡来したゴボウも食べる様になったのでしょう。
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正面から見たゴボウハマキモドキ
余り可愛い顔をしていない
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 ここ数日暖かい日が続いて、兪々本格的に春になって来た様です。これからは、少し春らしい植物なども掲載したいと思っています。

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2010年3月15日 (月)

マルトビムシの1種

 虫の写真を撮っているとき、別の虫が近くにやって来て、一緒に写り込むことがあります。撮影中は焦点合わせに神経を集中していますし、ファインダーから覗く像は焦点深度が浅いので、中々その存在に気が付かないものです。しかし、時に気が付くこともあります。
 今日紹介するのは、今年の1月に掲載したナガケチャタテを撮影しているとき、横から入って来た虫です。この時は、ファインダーの隅にチョコチョコ歩く腹の丸い黒っぽい虫が居るのに気が付いていました。チャタテムシの幼虫かと思いながらも、先ず、ナガケチャタテの方をシッカリ撮ってからでないと虻蜂取らずになると思い、その撮影に専念していたところ、いつの間にか居なくなっていました。
 当然、この横から入って来た虫に焦点を合わせることはなかったのですが、家に帰ってから写真を見ると、偶然にも、ナガケチャタテから外れて、横に居た虫の方に焦点が合っている写真がありました。
 良く見ると、チャタテムシの幼虫ではありません。マルトビムシ科(Sminthuridae)の1種でした。

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ナガケチャタテと一緒にタラヨウの葉裏に居たマルトビムシ科の1種
チャタテムシから焦点が外れてトビムシに合ってしまった
左下にカイガラムシの様な妙なものが写っている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/08)

 体長は、約1.2mm。種は分かりませんが、北隆館の圖鑑に載っているマルトビムシ科の多くは1.3mm以上ですから、まだ幼虫なのかも知れません。チャタテムシの幼虫とは異なり、胸部は短く、その体節や腹部の体節(第4節まで)は融合して一つになっています。
 普通の昆虫とは、眼が一寸違って見えます。トビムシ類の眼は、種によって異なりますが、最大8個の小眼からなり、眼斑と呼ぶのだそうです。見た感じは、昆虫よりもムカデやヤスデの眼に似ています。
 この虫が居たのは、「三丁目緑地」に生えているタラヨウの葉裏です。トビムシが葉裏に居ると云うのは一寸意外でしたが、Webで調べてみると、マルトビムシには葉裏で見付かる種類が結構いる様です。まァ、捕食性のトビムシも居るそうですから、トビムシにも色々あるのでしょう。
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上の写真の部分拡大.普通の昆虫とは眼が違う
(拡大してピクセル等倍)
(2010/01/08)

 今日は時間がないので、写真の少ないもので済ませました。このところ毎日更新しています。これは非常に珍しいことです。今日で連続9日ですが、果たして何日まで続くでありましょうか。

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2010年3月14日 (日)

ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)(雌)

 今日は、昨年の丁度今頃撮影したチャタテムシを紹介します。これまで掲載してきたチャタテムシ類(ケチャタテ科、ホソチャタテ科等)とは一寸違うチャタテムシで、ウスイロチャタテ科(Ectopsocidae)のEctopsocus(和名無し)属に属す様です。
 国分寺崖線下の四丁目にあるミカンの木の葉裏に居ました。体長2.9mm、翅端まで3.3mm、前翅長は2.4mmとやや小さめです。

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ミカンの葉裏に居たウスイロチャタテ科のEctopsocus sp.
3個の単眼の内、前に位置するのは少し小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 翅脈はかなりハッキリ見えますが、残念ながら上下の翅が重なっていて、科の判別に役立てるのは一寸キツイところです。しかし、このチャタテムシと非常に良く似たチャタテムシの1種を我が家で見付けており、この時は偶然にも、翅脈相がかなりハッキリ見えました。
 それを「Yosizawa K. (2005) Morphology of Psocomorpha. Insecta Matsumurana,Series entomology,New series,62,1-44」に載っている各科の翅脈相と比較すると、これはウスイロチャタテ科の翅脈です。前翅は後小室を欠き、M脈とRs脈がほぼ1点で交わり、また、後翅のM脈とRs脈の間に横脈があります(翅脈相についてはこちらの3番目の写真をどうぞ)。
 BugGuide.netで画像を探しても、このチャタテムシに良く似ているのは、ウスイロチャタテ科の虫だけです。ウスイロチャタテ科として間違いないでしょう。
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汎世界のE. briggsiに似るが、色が少し違う
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 この個体は、雌と思われます。と云うのは、これとソックリの色合いと翅脈をした雄と思われる腹部が遙かに小さい(従って、相対的に翅が長い)個体も居たからです。BugGuide.netでウスイロチャタテ科(Ectopsocidae)の写真を見ると、今日の写真の様な翅の長くない個体を雌、腹部に比して翅の長い個体を雄としています。
 雄の方も写真はシッカリ撮ってありますので、今日は雌のみにして、雄の方は、また別の機会に紹介したいと思います[追記:雄の方は2012/03/03に漸く掲載しました]。
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チャタテムシの幼虫が一緒に居るが恐らく別種
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 日本産ウスイロチャタテ科は、「富田・芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表(1991)」では8種(未記載種を含めず)、北海道大学の吉澤教授の目録(Checklist of Japanese Psocoptera、2004)でも8種で、全て同じ種が記録されています。この2つの目録の間には、ケチャタテ科やケブカチャタテ科などでは相当の違いがあるのですが、ウスイロチャタテ科では何故か一致しています。分類が安定しているのか、未研究なのかは良く分かりませんが、多分後者でしょう。
 しかし、残念ながら、富田・芳賀の検索表は写真からの判別には利用出来ません。この論文のウスイロチャタテ科の検索表では、検索キーに写真からは判別できない生殖器やその他の非常に細かい構造を使用しているからです。
 それでも属の判別は出来ます。日本産のウスイロチャタテ科は、Ectopsocopsis属とEctopsocus属の2属からなり、前者に属すのはクリイロチャタテ(Ectopsocopsis cryptomeriae)1種のみです。このチャタテムシは北隆館の圖鑑にも載っており、また、BugGuide.netにも写真が沢山あります。翅全体が一様に栗色をしたチャタテムシで、明らかに今日の写真の虫とは違っています。従って、消去法によりこのチャタテムシはEctopsocus属と相成ります。
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チャタテムシの顔は漫画的で楽しい
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 次に、種を決めたいところです。しかし、状況的証拠と絵合わせしか使えません。東京都本土部昆虫目録を見ると、Ectopsocus属はE. briggsi1種のみで、皇居からの報告です。これは吉澤教授の「皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」を元にして書かれています。そこで、この吉澤教授の論文を見てみると、その他に未記載種が1種が載っていました。皇居の昆虫相は、一般にこの辺りよりもかなり豊富ですから、今日の写真のチャタテムシはこの2種の何れかの可能性が大です。
 幸い、この論文には虫の特徴が簡単に書かれています。未記載種の方は、雄生殖器の形態についての記述ばかりですが、前翅長約1.5mmとあります。また、E. briggsiについては、「前翅長約2mm.前翅が透明または淡褐色で、翅縁の各脈の末端部に褐色の微小斑を具える点が特徴的.(中略)国内に広く分布する普通種」とあります。
 写真のチャタテムシは、前翅長が約2.4mm、各脈の末端部には褐色の斑が認められます。前翅長が少し長いですが、E. briggsiの特徴を持って居ると言えます。
 このE. briggsiは汎世界種で、写真はBugGuide.netに沢山あります。それを見ると、写真のチャタテムシに良く似ています。しかし、BugGuide.netの写真では腹部の色が茶色をしているのに対し、写真のチャタテムシには白っぽい斑の帯があり、また、全体の色も少し灰色を帯びています。
 どうも、E. briggsiとするには些か不安があります。ここでは、グッと我慢?して、種未同定のEctopsocus sp.としておきましょう。
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オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/03/15)

 昨年の春は、このEctopsocus sp.を色々な所で見付けました。何れも、常緑樹の葉裏ですが、その多くはクモが捕食した昆虫の滓が溜まっている所でした。
 一昨年の夏に、もう一つWeblog「我が家の庭の生き物たち」で紹介した月桂樹の葉裏に群れていた「チャタテムシの1種」は、このEctopsocus sp.に非常に良く似ています。このチャタテムシも、古い葉裏に沢山付いている吸汁性昆虫の脱皮殻や排泄物などに生えたカビを食べていたものと思われます。この手のチャタテムシは、或いは、動物性の残渣に生えるカビを好むのかも知れません。

[追記]表題及び本文中の5個所に、Ectopsocusとすべき所を、Escopsocus或いはExtopsocusと書き間違えをしていた部分がありましたので、本来のEctopsocusに書き換えておきました。また、EctopsocopsisExtopscopsisと打ち間違えて居りましたので、これも訂正致しました。(2012/02/26)

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2010年3月13日 (土)

アリグモ(Myrmarachne japonica)の幼体

 先日、越冬中のキイロクビナガハムシを掲載しましたが、その最後の写真にアリグモらしきクモの幼体が一緒に写っていました。今日はこのクモの幼体を紹介します。
 「七丁目緑地」に生えている大きなムクノキの樹皮下に居ました。左の第4歩脚がありませんが、気にしないことにします。体長は約5mm、図鑑に拠れば成体雌では7~8mmとありますから、まだその点でも大人にはなっていません。

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七丁目緑地のムクノキの樹皮下に居たアリグモの幼体
色は薄く、体長も5mmでまだ小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 成体のアリグモは全体的に黒っぽい色をしています。しかし、幼体は写真で示した様に色が薄く、余りアリグモ的な感じがしません。
 アリグモには、成体での体色は違いますが、体形の良く似たヤガタアリグモとネッタイアリグモと云う近縁種が居ます。写真のクモはこれらの種類の幼体かも知れません。
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同じ様な写真だが、腹が光っていないの見易い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 文一総合出版の「日本のクモ」にあるタイリクアリグモの解説を読むと、「アリグモより茶色が強く、成体での区別はつけやすいが、アリグモも幼体期は茶色であるため、幼体での正確な同定は不可能」とあります。
 そこで、このクモを無印アリグモの幼体としてよいか、クモの掲示板「クモ蟲画像掲示板」に御伺いを立ててみました。
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横から見たアリグモの幼体.後側眼はかなり大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 掲示板の主催者きどばん氏が対応して下さいました。「識別しにくいのはタイリクアリグモです.我流の識別ポイントは体長と腹部白斑の位置関係です.投稿していただいた画像[2番目と下の写真]の個体は白斑が前方にありますよね.タイリクアリグモではこれほど前方に来ることはありません.無論例外もあり得るので確実な識別法ではありませんが」との御話でした。
 不確定要素はありますが、ここではクモに詳しいきどばん氏に従い「アリグモの幼体」としておきます。
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斜め前から.後中眼は後側眼の前にあるが分かり難い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 アリグモ類は、名前ばかりでなく、実際アリによく似ています。形ばかりでなく、獲物を求めて徘徊しているときには、第1歩脚をアリの触覚の様に上下に忙しく振るので、動作もアリとソックリになります。
 しかし、暫く見ていると、時折ジャンプしたり、お尻から出る糸を使ってツーと下に降りたりするので、クモであることが分かります。
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正面から見たアリグモの幼体.前中眼が大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 また、正面から見ると、上の写真の様に双眼鏡の様な大きな前中眼が目立ち、とてもアリには見えません。
 この様な眼の形は、ハエトリグモと非常によく似ています。それもその筈、アリグモは、ハエトリグモ科(Salticidae)のMyrmarachninae(和名無し、「アリグモ亜科」とでも訳すか?)亜科に属します。だから、眼の配置や形はハエトリグモと基本的に同じなのです。
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同じ様な写真をもう1枚.厚レンズの前中眼が印象的
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 このアリグモの幼体には、左の第4歩脚がありません。この様なことは極く普通で、以前もう一つのWeblogで紹介したアリグモの成体(雌)(2、3番目の写真)も左の第1歩脚が取れていました。
 クモの聖典とも呼ばれる吉倉眞著の「クモの生物学」に拠ると、クモは自ら脚を放棄して逃げること(自切)があり、その場合、切れる場所は普通決まっていて、多くのクモでは基節と転節の間であり、そこで切れると再生が上手く行くのだそうです。写真のアリグモも、基節しか見えませんから、基節と転節の間で切れたことになります。なお、サラグモ科の脚の長い種では、膝節と脛節の間が切れやすいとのことです。
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オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 今日は、風は強いですが、気温は既に20℃を越えています。寒さを大の苦手とする私としては、一刻も早く本物の春が来て欲しいと思います。

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2010年3月12日 (金)

カブラヤガ(Agrotis segetum

 今日も著名な農業害虫を紹介します。カブラヤガ(Agrotis segetum)、開張40mm前後のかなり大きな蛾で、ヤガ科(Noctuidae)モンヤガ亜科(Noctuinae)に属します。
 幼虫は、昼間は土中に潜んでおり、夜になると出没して、野菜や花卉の根際を食べて枯らします。その為、ネキリムシと呼ばれています(コガネムシ類の幼虫もネキリムシと呼ばれます)。保育社の蛾類幼虫図鑑の解説には、食草はキャベツ、ハクサイ、ダイコン、カブラ、アブラナ、ナス、トマト、タバコ、ジャガイモ、ウリ類、エンドウ、ソバ、サツマイモ、ネギ、タマネギ、ムギ類、トウモロコシなど各種農作物、クローバーとあり、非常に広範囲の草本植物を食べる様です。当然、花卉の害虫にもなります。

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サザンカの花に来ていたカブラヤガ(雄)
触角が両櫛歯状になっている
(写真クリックで拡大表示)
(2008/10/25)

 農業害虫ですが、これは七丁目の家庭菜園で撮ったのではなく、一昨年の秋の夜、六丁目のサザンカの花に来ていたのを撮影したものです。
 現場で見たときは、何か白っぽく擦れた感じで、これでは撮っても仕方がないと思い、いい加減にしか撮らなかったのですが(写真が3枚しかないのはそのせいです)、家に帰って良く見てみると、鱗粉はチャンと付いて居り、本来こう云う感じの蛾であることが分かりました。
 この個体は、触角が両櫛歯状になっていますから、雄です。雌の触角は鞭の様な糸状に近い形です。また、一般に、雄で前翅後翅共に白っぽく、雌では茶色を帯びるそうですが、かなりの個体変異があるとのことです。
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横から見たカブラヤガ.一寸影になっているのが難点
(写真クリックで拡大表示)
(2008/10/25)

 真横からも撮ってみました。雄の個体ですが、何かムートンを羽織ったお嬢さんと云う感じです。
 もっと近づいて等倍で撮影したのが下の写真、黒い瞳?が中々印象的です。複眼の個眼が見えませんが、原画をピクセル等倍まで拡大すると、チャンと個眼が写っているのが分かります。個眼が非常に小さいのです。
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等倍接写したカブラヤガの横顔.複眼が印象的
雄だがムートンを羽織ったお嬢さんの如し
(写真クリックで拡大表示)
(2008/10/25)

 この六丁目のサザンカに訪花していた虫は、これまでにも色々紹介して来ました(ホシヒメホウジャクウスキツバメエダシャクヘリグロヒメアオシャクワタヘリクロノメイガエグリヅマエダシャクコガタスズメバチ)。しかし、まだ未掲載の種類が少し残っています。倉庫に眠らせておいても仕方がないので、ドシドシ掲載することにします。

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2010年3月11日 (木)

エサキモンキツノカメムシ(Sastragala esakii

 先日、ヒメコバネナガカメムシについての記事の最後に、もっと大きな越冬中の新顔カメムシを見付けた、と書きました。今日はその新顔カメムシ君を紹介します。
 ツノカメムシ科(Acanthosomatidae)のエサキモンキツノカメムシ(Sastragala esakii)です。背中のど真ん中(小楯板の中央)に大きなハート型の黄紋があるのでよく知られています。
 「七丁目緑地」に生えているムクノキの樹皮下に居ました。

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「七丁目緑地」のムクノキの樹皮下に居たエサキモンキツノカメムシ
ジッと動かないが勿論生きている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 樹皮を剥がしたとき、上の写真の様な格好をしてジッとしていました。斜め上から見たのが下の写真です。全く動かず、死んでいるのではないかと思ったのですが、チャンと生きていました。
 この格好では写真を撮るのに些か不都合なので、一寸突っついたら、極くゆっくりと歩き始めました。しかし、足許が何とも頼りなく、やがて落葉の中に落下、幸い体長が11mmと大きく、明るい色をしてたので何とか見付けることができ、また、樹の幹に戻ってもらいました。
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斜め上から見た越冬中のエサキモンキツノカメムシ
付節が2節しかないことに注意
触角を2段に折り畳んでいる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 実は、ツノカメムシ科の虫を紹介するのは今回が初めてです。名前の通り、肩が角状に尖っています。しかし、ツノカメムシ科の中には殆ど尖っていない種類もありますし、逆にカメムシ科の中にもクチブトカメムシ類(捕食性)の様に尖った肩を持つグループも居ます。「角」の有無だけではツノカメムシ科の証拠にはなりません。
 如何にもカメムシらしいカメムシ(ノコギリカメムシ科を除くカメムシ上科:クヌギカメムシ科、マルカメムシ科、ツチカメムシ科、キンカメムシ科、カメムシ科、ツノカメムシ科、触角は何れも5節)の中では、ツノカメムシだけ付節が2節しかありません。他の科では全て3節です。なお、ノコギリカメムシも付節は2節ですが、格好が独特ですし、触角が4節なので区別は容易です。
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落下後幹に戻して撮影.中々カッコイイ
触角は5節、付節は2節からなる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 エサキモンキツノカメムシと只のモンキツノカメムシはかなり良く似ています。エサキではハート型となる黄紋上部の窪みがありますが、無印モンキツノカメムシの方は窪みが無く半月形、或いは、三角形に近い形になります。尤も、カメムシの掲示板「カメムシBBS」の議論を読むと、この紋の形には中間形があり、判別の難しい場合は、触角を見て、触角第1節と2節がほぼ同長ならエサキ、第2節の方が長ければ無印だそうです。また、肩の角の形による判別法も紹介されていました。無印の方がエサキより長く張り出していながら先端は丸みを帯びているとのことです。しかし、これは比較表現ですから、両方の写真か標本が無ければ適用出来ません。
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横から見たエサキモンキツノカメムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 このツノカメムシの和名に付いている「エサキ」は、種名のesakii(「エサキの」の意)から来ていると考えて良いでしょう。「エサキ」とは、ほぼ間違いなくかつての昆虫学の大御所、江崎悌三氏のことと思われます。従って、エサキモンキツノカメムシは、漢字で書くと「江崎紋黄角亀虫」となります。
 なお、記載者も江崎氏であると書いているサイトもありますが、記載者が種名に自分の名を付けることはありません。学名を全部書くと、「Sastragala esakii Hasegawa, 1959」となり、記載者(命名者)は長谷川氏です。しかし、1959年とは随分最近のことで、一寸驚きです。江崎氏は1957年に逝去されていますので、その追悼の意味でesakiiと種名を付けたのかも知れません。
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エサキモンキツノカメムシの横顔.複眼が銀色
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 ところで、このカメムシ、肩が尖っていてまるで裃を着ている様な格好です。また、黄紋は背中の真ん中にあり家紋を思わせます。そこで、私はこのカメムシの名をず~とエサキモンツキノカメムシ(江崎紋付之亀虫)だと思っていました。誤りに気が付いたのは、かなり最近のことです。私は子供の頃からこの手の過誤を時々犯します。読者諸氏も御用心下さい。
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エサキモンキツノカメムシの顔写真
銀色の複眼と赤い単眼が印象的
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 最後に、このカメムシの習性等について一寸書いておきます。全農教の「日本原色カメムシ図鑑」の解説には、「成虫はミズキ、クマノミズキ、コシアブラ、ウド、ケンポナシ、ハゼノキ、カラスザンショウ、ツタウルシなどの植物で得られるが、繁殖は大部分ミズキ上で行われる」と書かれています。幼虫はミズキに寄生し、成虫になると食物スペクトルが広くなるのでしょう。なお、雌成虫は、卵や幼虫の保護をする習性があるそうです。
 久しぶりに大きく綺麗な虫に出合ってすっかり感激し、写真を沢山撮ってしまいました。以下、カメムシ君の雄姿?をお楽しみ下さい。。
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カメムシ君の雄姿.関取の土俵入り?
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

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カメムシ君の雄姿?(その2)
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

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カメムシ君の雄姿?(その3)
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

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カメムシ君の雄姿?(その4)
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 昔撮った写真は沢山ありますが、今年の写真はそろそろ底を付きそうです。今日は久しぶりに天気が良いので、散歩がてら、カメラを持って虫撮りに出掛けることにします。

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2010年3月10日 (水)

シバツトガ(Parapediasia teterella

 今日は、また一昨年(2008年)の写真です。シバツトガ(Parapediasia teterella)、ツトガ科(Crambidae)ツトガ亜科(Crambinae)に属す小さな蛾で、芝の害虫としてよく知られています(以前はメイガ科ツトガ亜科とされていました)。
 撮影したのは七丁目の世田谷区の家庭菜園(第2)、9月の上旬ですからまだ暑い盛りです。この時は、かなりの数が飛んでいましたが、昨年は余り見なかった様に記憶しています。年により、発生量にかなりの変動があるのかも知れません。

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七丁目の家庭菜園に居たシバツトガ
シバの害虫として知られている
(写真クリックで拡大表示)
(2008/09/08)

 白っぽい蛾で、翅の大部分には明瞭な斑紋は有りませんが、前翅の翅端近くに小さな暗色斑が等間隔で並ぶのが特徴です。
 小蛾と云っても、下唇鬚(頭部の前方に突き出ている刷毛の様なもの)の先端から翼端まで約8mmです。このWeblogで紹介している昆虫としては大きな方で、この程度の大きさがあると写真を撮る方も気が楽です。
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前翅の翅端付近に暗色の小班が規則的に並ぶ
前翅の中央付近に不明瞭な暗色斑がある
一部に黄色い鱗粉が認められる
(写真クリックで拡大表示)
(2008/09/08)

 このシバツトガ、手元の蛾類図鑑や幼虫圖鑑には載っていません。と云うのは、この蛾は1964年に米国ジョージア州から芝と共に入った、かなり新しい移入種だからです(ビンボーなので新しい図鑑は買えません)。
 芝の害虫としてかなり恐れられている様です。しかし、この家庭菜園には芝は植えられていません。かなりの数が居たところを見ると、菜園の隅に生えているイネ科の雑草に寄生していた可能性もあります。
 よく考えてみると、近くに芝を植えた生産緑地があります。恐らく、そこからやって来たと考える方が順当でしょう。
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前から見たシバツトガ.一寸首を傾げている
(写真クリックで拡大表示)
(2008/09/08)

 家庭菜園は、色々な虫が居るので、私にとっては有難い撮影場所です。しかし、必然的に菜園に植えられた野菜に付く虫が多いので、その結果として農業害虫(例えば、ウリハムシホソヘリカメムシ)の紹介をしている様な感じになってしまいます。今後も農業害虫を扱う機会が多いと思いますが、まァ、それはそれで役に立つかも知れません。

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2010年3月 9日 (火)

ヒメコバネナガカメムシ(dimorphopterus bicoloripes
(その2)

 先日、「コカニグモ」のところで書いた様に、「七丁目緑地」に生えているケヤキの樹皮下にはヒメコバネナガカメムシが集団越冬していました。このカメムシは、既に一昨年の暮れに掲載してあるので撮影しなかったのですが、改めてその時の記事を見ると、写真は僅か2枚、しかも背面からの写真だけなので、再度掲載すべく、撮り直しに行って来ました。
 ヒメコバネナガカメムシ(dimorphopterus bicoloripes)はナガカメムシ科(Lygaeidae)Blissinae亜科に属し、体長約3.5mmとかなり小型です。

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「七丁目緑地」のケヤキの樹皮下で越冬するヒメコバネナガカメムシ
全部で15頭と余り大きな集団ではない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 コカニグモを撮影した時にはかなり沢山居たのですが、今回は大部数が減っていました。前回、樹皮を剥がした所にいた虫が、まだ剥がしていない樹皮下に逃げ込んで、かなり密度が上がっているのではないかと思ったのですが、そうは問屋が卸さなかった様です。一番密集して居て上の写真程度、僅か15頭で、しかも分散しています。これで「集団越冬」と言うのは、一寸大袈裟かも知れません。
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別の場所で越冬するヒメコバネナガカメムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 こう云う密集した虫を焦点深度の浅い一眼レフで撮るのは結構大変です。個々の虫の位置にかなり凹凸があり、中々全面に焦点が合わないのです。上の写真は、幸い一つの平面上に9頭が密集していて、何とか全面に焦点を合わせて撮ることが出来ました(一番下の個体は一寸ボケていますが・・・)。これは、「七丁目緑地」ではなく、以前紹介した「ムツボシテントウ」を撮影した、緑地近くの裏道に生えているケヤキの樹で撮りました。
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ヒメコバネナガカメムシ.体長は3.5mmと小さい
「七丁目緑地」のケヤキで撮影(以下同じ)
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 このヒメコバネナガカメムシと云うのは、一寸変なカメムシです。全農教の「日本原色カメムシ図鑑」には載っていません。以前掲載したときは、カメムシの掲示板「カメムシBBS」で探して漸くヒメコバネナガカメムシであることが分かった次第です。
 この掲示板は、2004年11月12日から始められており、その中でこのカメムシが最初に現れるのは2006年5月24日です。質問されているのは、某掲示板を主催しておられる虫に大変詳しい方で、この方が御存じなかったと云うのは、恐らく、それ以前はカメムシ専門の人以外には知られていない種類だったのでしょう。実際、その時の応答で「あまり記録はないように思いますが,私も今年の春にケヤキの樹皮下で越冬しているのを観察しました」とあり、また、この掲示板のそれ以降の記事を見ると、何処で採れるのか産地を教えて欲しい、と云う様なことも書かれています。当時、と云っても僅か4年前ですが、その頃はまだ珍しい種類だった様です。
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横から見たヒメコバネナガカメムシ.かなり毛深い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 それが、今では極く普通種、この辺りのケヤキやムクノキの樹皮を剥がせば容易に見付かります。最近は、温暖化のせいか否かは別として、御時勢に応じて?昆虫相もかなり「乱れている」様ですから、その1例なのかも知れません。
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ヒメコバネナガカメムシの顔.矢鱈にデコボコしている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 しかし、ケヤキ等の樹皮下で越冬しているヒメコバネナガカメムシを探すのは容易でも、活動期の個体は相変わらず中々見付からないそうです。その生態は良く分かって居らず、寄主もイネ科植物であろうと推測されているらしいですが、未だにハッキリはしていない様です。
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斜め上から見たヒメコバネナガカメムシ
アンシャープで誤魔化している
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 今回は、目的とする虫が小さいので、2倍のテレプラスを挟んで撮影しました。しかし、撮れた写真を見ると思ったほど解像度は上がっておらず、些かガッカリしました。キャノンの例のシステムを使えば遙かにスッキリした写真が撮れると思いますが、一寸高価過ぎます。費用を掛けず、大袈裟にならない高解像度システムを少し真剣に考える必要がある様です。
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オマケにもう1枚.背中の中心は少しボケており
脛節も焦点を外れている.深度が浅いのである
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 このヒメコバネナガカメムシを撮影したのは、先日紹介したキイロクビナガハムシムツボシテントウと同じ日です。この日は、実は、他にもっと大きな越冬中の新顔カメムシを見付けたのです。まだ、写真の整理が出来ていませんが、近日中に紹介する予定です。

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2010年3月 8日 (月)

キョウコシマハナアブ(Eristalis kyokoae)(雌:黒色型)

 一昨年に撮影した写真を整理したところ(まだ終わっていません)、未掲載の写真が思ったよりも沢山ありました。そこで、これから暫くは今年撮った写真と交互に紹介することにします。このWeblogには殆ど日記の要素はありませんので、それでも構わないでしょう。
 先ずは、キョウコシマハナアブの黒色型から。複眼間が開いていますから雌です。

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菊の花にやってきたキョウコシマハナアブ(雌)
黒色型で、腹部の黄紋は消えている
胸背には暗色の幅広い帯がある
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 撮影したのは一昨年(2008年)の11月23日、場所は七丁目にある世田谷区の家庭菜園で、隣の家の壁に沿って植えられている菊の花に来ていたものです。ここの菊には毎年多くの双翅目昆虫が訪花していて、これまでにも多くの種類を紹介してきました。
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顔面には明確な縦の黒条(黒色中条)が認められない
前脛節の毛は短く、且つ、疎ら
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 「キョウコシマハナアブ」と云うのは余り聞き慣れない名前かも知れません。しかし、実際はこの辺りにも沢山居る極く普通の種類で、ナミハナアブやシマハナアブ等と混在して一緒に花粉を舐めています。
 検索するとある程度ヒットします。しかし、その大半は恐らく根拠のない判断でしょう。と云うのは、体のある部分がかなり高精度で写っていないと、シマハナアブとの区別が出来ないからです。
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前腿節には長い毛がある様にみえるが
前脛節に長毛は認められない
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 実は、私もこのハナアブの正体が分からず、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立てて漸くキョウコシマハナアブであることが判明した次第です。
 ナミハナアブやシマハナアブの属すEristalis属 では、腹部背面の模様は殆ど同定の役には立ちません。顔の黒色中条(顔の真ん中にある縦の黒条)の有無や脚の色、小楯板や脚の毛などを見て判断します。
 ナミハナアブは翅に褐色の紋があり、顔の黒色中条は幅広く明らかなので区別が付きます。スルスミシマハナアブ、カオスジコモンシマハナアブ、カトウハナアブも黒色中条が明確です。一方、シマハナアブやキョウコシマハナアブでは、何れもこの黒色中条が薄くて不明瞭となります。
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前脛節に花粉がかなり付いているが毛は立っていない
このハナアブの触角が有毛であることが分かる
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 シマハナアブとキョウコシマハナアブの見分け方は、先の掲示板でPakenya氏に教えていただきました。前脛節の毛の生え方で区別するのだそうです。シマハナアブでは、前脛節の外側に脛節の幅と同じ位の長い毛が密生しており、しかも、この毛は立ち気味です。これに対して、キョウコシマハナアブでは、毛はずっと短く、また斜めに寝ており、且つ、シマハナアブよりかなり疎になるのだそうです。
 今日のハナアブの写真を見ると、前掲節の毛は短く疎らです。従って、シマハナアブではなく、キョウコシマハナアブと云うことになります。
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オマケにもう1枚.複眼には毛が生えている
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/23)

 何も形容が付かない只のシマハナアブは、まだこのWeblogでは紹介していません。しかし、比較の為に掲載する必要がありそうです。どうも、この手のハナアブが来ても余り撮影する気がしないのですが、今年は撮ってみることにします。

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2010年3月 7日 (日)

キイロクビナガハムシ(Lilioceris rugata

 この辺り(東京都世田谷区西部)に昔から生えている背の高い落葉広葉樹と云えば、武蔵野の樹とされているケヤキが目立ちますが、ムクノキもかなり彼方此方に生えています。
 ムクノキは、ケヤキとは異なり、縦に樹皮が剥がれます。今日はそのムクノキの樹皮下で越冬していたキイロクビナガハムシ(Lilioceris rugata)を紹介しましょう。「七丁目緑地」には何本かのムクノキが生えており、その内の1本です。

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ムクノキの樹皮下に居たキイロクビナガハムシ
「キイロ」と付くが、黄色ではない
頭頂部に縦溝が見える
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 キイロクビナガハムシの鞘翅は、普段は赤味の強い綺麗な色をしています(決して「キイロ」ではありません)。しかし、越冬中は部分的に黒みを帯びた赤褐色で、始めは何ハムシなのか、良く分かりませんでした。
 こう云う首の長いハムシは、ハムシ科(Chrysomelidae)内の数亜科に亘っています。しかし、鞘翅の先端が尖らず、全体的にガッチリしており、頭頂に縦溝を持ち、前胸背板が中央部で括れるのは、クビボソハムシ亜科(Criocerinae)です。
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ムクノキの根の上を歩くキイロクビナガハムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 九州大学の日本産昆虫目録ではクビボソハムシ亜科は27種、東京都本土部昆虫目録では14種が記録されています。保育社の甲虫図鑑を見ると、クビボソハムシ亜科には24種の図版が載っています。まァ、この辺りに珍種は居ないと思いますので、この図鑑の中に載っていると考えて良いでしょう。
 鞘翅の点刻が強く赤色系、脚は全体黒色、前胸は膨らまないと云う基準で図鑑と絵合わせすると、候補はルイスクビナガハムシ、ホソクビナガハムシ、キイロクビナガハムシの3種になりました。
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キイロクビナガハムシの顔.ハムシ類の顔はみな険悪
テレプラスを挟んで撮ったので少し解像度が高い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 鞘翅の色ではルイスクビナガハムシが一番近かったのですが、Web上の写真を見ると多くは縦に明確な3本の黒条があり、また、図鑑の図版を天眼鏡で拡大して見ると前胸背の点刻は数がずっと少ない様です。ルイスは除外しても良いでしょう。
 次に、ホソクビナガの特徴は、図鑑に拠れば「6.8-7.0mm.(中略)小楯板には細い剛毛を全面に密生する.体腹面は黒色の中・後胸側方部を除き赤褐色.肢は赤褐色の腿節基部を除き黒色・・・」とあります。
 写真のハムシは、体長8.0mm、小楯板に剛毛は見えず、腹面も腿節基部も全て黒色です(ここには載せていない写真から明らかです)。これでホソクビナガも失格となり、キイロクビナガだけが残りました。
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斜めに見たキイロクビナガハムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 キイロクビナガの特徴は「6.2-8.0mm.前種[ホソクビナガ]に似るが、小楯板は殆ど剛毛を欠き、触角はやや幅広く、末端節近くでは幅は長さよりわずかに狭く、前胸背板は赤褐色.頭部・触覚・体腹面・肢は全体黒色.小楯板はほとんど暗褐色」となっています。写真のハムシとほぼ一致します。・・・と云うことで、写真のハムシはキイロクビナガハムシと相成りました。
 「キイロクビナガハムシ」で検索すると、「越冬中のキイロクビナガハムシ」がかなりの数出て来ます。同定の根拠は一切書かれていないので、本当にそうなのか良く分かりませんが、今日のハムシに酷似していました。
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最初の写真とほぼ同じ.頭頂部の溝はこの方が明らか
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 上の写真のハムシは、樹皮を剥がしたときに落ちてきた為、地上に出ているムクノキの根に乗せて写真を撮りました。かなりゴミで汚れていますが、落ちてきたときに樹皮の断片が付着したのでしょう。
 実は、これらの写真を撮る1ヶ月程前に、同じ樹の樹皮下で同じキイロクビナガハムシを見付け、写真もシッカリ撮ってあるのです。しかし、露出が不足で増感したところ、かなり荒れてしまったので、掲載はしませんでした。しかし、その時の写真を1枚だけ載せることにします。アリグモと思われる幼体と一緒に居ました。ハムシにはクモの糸がかかっていて、一見死んでいる様に見えますが、チャンと生きていました。この写真を撮った後、ストロボの光に刺激されたらしく、少しずつ動き始めました。
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これまでの写真の1月前に撮ったもの
アリグモらしき幼体と同居していた
体にはクモの糸が絡んでいる
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 キイロクビナガハムシは、クビボソハムシ亜科なのに、「クビボソハムシ」ではなく「クビナガハムシ」と名が付いています。図鑑を見ると、「クビナガハムシ」の名は、Crioceris属とこのLilioceris属に属す全てのハムシに付けられている様です。
 調べてみると、この2属はCriocerini族に属しており、逆にこのCriocerini族にはこの2属しかありません。Criocerini族は、「クビナガハムシ族」とでも言うべきグループなのでしょう。

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2010年3月 5日 (金)

シラヒゲハエトリ(Menemerus fulvus

 今日もまた、一昨年の秋に撮った写真を出します。「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮上に居たシラヒゲハエトリ(Menemerus fulvus:ハエトリグモ科)です。
 以前紹介した「キハダカニグモ」や「トビムシの1種」を撮影したのと同じ樹で、撮影日も同じです。

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「四丁目緑地」のケヤキの樹皮上に居たシラヒゲハエトリ(幼体)
背景に見事に溶け込んでいる
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 体長は約6.5mm、文一総合出版の「日本のクモ」に拠れば、雌8~10mm、雄7~9mmですから、まだ幼体の様です。
 何とも言い様の無いほど見事な保護色になっています。頭部が黒いので何とか見分けが付きますが、背景にすっかり溶け込んでいます。実際、撮影中に何度も見失いました。幸い、下に跳んで逃げることは無かったので、見失ってもよく捜すと何とか見付けることが出来ました。
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部分を拡大すると存在がもう少しハッキリする
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 シラヒゲハエトリは、2年半ほど前に、もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」で紹介したことがあります。その時は、衣服に付いて部屋に入って来たので本来何処にいたものか分からず、庭木の上に放して撮ったのですが、緑の枝や葉の上では非常に目立っていました。
 「日本のクモ」に拠ると、シラヒゲハエトリは「人家、神社、寺院、公園内の建物などに生息する。壁、板塀、ブロック塀に多いが、土台石、地表面、樹皮面にも居ることがある」とあり、その存在が目立つ枝葉上は、やはり普段の生活場所ではない様です。
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顔は真っ黒なのでその部分だけが目立つ
後側眼と極く小さな後中眼が見える
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 肉眼的にはネコハエトリの雌や幼体と一寸似ています。しかし、その名の通り、眼の下の毛が白く、頭胸部の側面全体に亘る白色の帯があるので、容易に見分けることが出来ます。写真では眼の下の白毛は帯状にはなっていませんが、成体ではこれも帯状となる様です。しかし、体側の白帯よりは上に位置するので、体側の白帯と繋がることはありません。
 腹部の側面にも筋があるのですが、これは余り目立ちません。
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頭を下げるとあまり目立たなくなる
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 ここでは、シラヒゲハエトリの学名は「日本のクモ」に従ってMenemerus fulvusとしました。しかし、保育社の「原色日本クモ類図鑑」(「日本のクモ」より20年古い)を見るとM. confususとなって居ます。また、この図鑑にはシラヒゲハエトリに酷似するアゴブトハエトリと云う種が載っており、M. brachygnathusの学名が当てられています。調べてみると、Web上ではこれをシラヒゲハエトリの学名としているサイトもあります。
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頭胸部の側面にある白帯がクッキリ
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 かなり混乱している様ですが、谷川明男氏の「日本産クモ類目録Ver.2009R1」を見ると、M. brachygnathus(アゴブトハエトリ)とM. confusus(キイロハエトリ)は何れもM. fulvus(シラヒゲハエトリ)のシノニム(異名)となっています。どうやら「日本のクモ」に載っている学名で問題はない様です。
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大きな前中眼がハエトリグモの特徴
成体では眼の下が白い帯状になる
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 最後にシラヒゲハエトリの顔写真を出しておきます。大きな厚レンズの前中眼が何とも印象的です。
 ハエトリグモ科(Salticidae)では眼は3列に配置されており、前中眼と前側眼で前1列、その後に極く小さな後中眼があり、更にその後に後側眼があります。後中眼と後側眼は上の写真にも写っていますが、3番目の写真を見るとその存在が良く分かると思います。

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2010年3月 4日 (木)

コクヌスト科?の幼虫

 先日掲載した「キハダエビグモ」を撮影していたとき、樹皮下に奇妙な幼虫を見付けました。体長約4.5mmの扁平な芋虫状で、頭部は赤褐色、お尻にハサミムシの様な同色の突起が1対あります。
 小さい幼虫ですが、幸いこの日はテレプラスを持っていたので、普段よりは少し高解像度で撮ることが出来ました。

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コクヌスト科?の幼虫.大きな顎が見える
プラタナスの樹皮下に潜んでいた
体長は約4.5mmと小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 ファインダーから覗いていると、お尻は動かさずに上半身を彼方此方に向けて何かを探っていました。殆ど移動はせず、一体何をしているのかは不明です。お尻のハサミで樹皮を挟んで体を固定しているのかと思いましたが、3枚目の写真を見るとそうではない様です。
 撮影中に大きな顎が見えたので、甲虫の幼虫と思われます。しかし、今までに見たことのある如何なる幼虫とも異なり、その正体が何なのか、全く見当が付きません。
 そこで、家に帰ってから北隆館の古い幼虫圖鑑で、甲虫の部分を1ページずつ見て行くことと相成ります。すると、お尻にハサミを持つ幼虫は色々な分類群に亘って存在することが分かりました。
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赤褐色の尾部突起を持つ.突起にキカワムシ幼虫の様な歯は見えない
第1胸節背面は赤褐色を帯び、第9腹節背面には
鱗翅目幼虫の肛上板の様な赤褐色の部分がある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 その中でハサミの形が一番良く似ていたのはアカハネムシ科の幼虫で、また、キカワムシ科幼虫にも大きなハサミがあります。しかし、圖鑑には余り多くの種類は載っていません。そこで、BugGuide.netでアカハネムシ科やキカワムシ科の幼虫を探したところ、沢山の写真が出て来ました。
 これらの写真を見ると、アカハネムシの幼虫に共通する特徴としては、頭がもっと横に膨らんでおり、第8腹節の長さは幅よりも大きいことが挙げられます。また、キカワムシ科幼虫の尾部突起(お尻のハサミ)は、形や程度は種により様々ですが、何れも歯を持つ様です。
 これに対し、写真の幼虫の第8腹節は他の腹節と同じで長くはありません。また、尾部突起には木屑が付いていて不明瞭ですが、キカワムシ幼虫の様な歯は持たない様に見えます。
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お尻は動かさずに上半身を彼方此方に向けて
何かを探っている様に見えた
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 写真の幼虫の頭部には、縦に走る長い溝(頭蓋縫合線)が明瞭です。また、第1胸節は第2~3胸節とは違って赤褐色を帯びており、第9腹節の背面には、鱗翅目幼虫に見られる肛上板(こちらの最後の写真を参照)の様な、かなり濃い赤褐色の部分があります。
 これはアカハネムシ科やキカワムシ科の幼虫には見られない特徴です。どうも、写真の虫は、これらの科の幼虫とはかなり異なる様です。
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頭部はアカハネムシ科幼虫の様に横には拡がらない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 アカハネムシ科とキカワムシ科は共にヒラタムシ上科異節群に属し、近縁の科が沢山あります。その多くは、日本産が僅か1種とか数種しか居ない非常に小さな科で、それらの幼虫は北隆館の圖鑑には載っていません。写真の虫は、或いは、これらの科の何れかの幼虫かも知れません。
 そこで、それらの近縁科の幼虫写真を探していたところ、偶然にもFlickr(フリッカー)で写真の虫とソックリなものを見付けました。上に書いた写真の虫の特徴をチャンと持っています。ヒラタムシ上科ではなく、カッコウムシ上科コクヌスト科(Trogossitidae)マルコクヌスト亜科(Peltinae)のAncyrona sp.の幼虫とされていました。
 写真を投稿したのはA. Zaitsevと云う方です。BugGuide.netにある自己紹介を見ると、ファーストネームはArtjom、国立?モスクワ教育大学(Moscow Pedagogical State University)の研究者で、甲虫類の幼虫が専門だそうです。Net上には、色々怪しげな人や愉快犯が居るので注意が必要ですが、Google Scholarで検索すると、ロシア昆虫学会誌(Russian Entomological Journal)に投稿したベニボタル科の幼虫に関する論文が1報だけ見付かりました。Flickrに載っている写真は非常に整備されていますし、信用しても良さそうです。論文が1報しかないのは、まだ若い人なのかも知れません。
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体は扁平.頭部中央を縦に走る溝がある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 北隆館の圖鑑を見ると、コクヌスト科の幼虫は3種載っています。しかし、尾部突起は写真の幼虫より何れもずっと小さく、余り似ているとは言えません。Web上でコクヌスト科幼虫の画像を検索すると、この科の幼虫は形態的にかなりの幅を持つ様です。支那のサイトに、写真の幼虫とソックリなものが見付かりましたが、残念ながらコクヌスト科の未同定種となっています。
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同じ様な写真だが、オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 もう結論を出さなければいけません・・・。基本的に情報不足ですが、A. Zaitsev氏に敬意を表してコクヌスト科の幼虫とし、「?」を付けておくことにしました。
 今日の記事は、科の判定に関してかなりの不安があります。普通ならば、こう云うハッキリしないものはお蔵にしてしまいます。しかし、この手の甲虫の幼虫写真はWeb上には多くないので、読者の参考の為、掲載することにした次第です。

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2010年3月 3日 (水)

ケチャタテ科の1種(その4:卵塊の網掛け)

 今日は一寸古い写真を出すことにします。一昨年の秋や昨年の冬~春にかけて撮影したまま倉庫に眠っている写真が沢山残っているのです。その中から今日は、チャタテムシが産卵後、卵塊に網を掛けているところを紹介しましょう。
 場所は国分寺崖線下の四丁目で、これまで何回も登場したミカンの木に居ました。葉裏ではなく、何故か、葉表に産卵していました。

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卵塊の上に糸を張るケチャタテ科の1種
まだ糸は何処にも見えない
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 このチャタテムシは以前「ケチャタテ科の1種?」として紹介したのと同じ種類に見えます。尾端が見えないので体長は分かりませんが、翅端まで4.5mm強、前翅長は4mm近くもある、かなり大きなチャタテムシです。
 全体の形や翅脈からケチャタテ科(Caeciliusidae)に属すことは間違いないでしょう。「富田&芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表」を見ると、多分Valenzuela属の1種だと思います(この論文ではCaeciliusとなっていますが、現在ではValenzuela)。しかし、種は未だに良く分かりません。トビモンケチャタテ(Valenzuela badiostigma)の色が薄い個体なのではないかと云う気もします。Web上にあるトビモンケチャタテの写真を見ると、多くは殆ど翅全体が非常に色の濃い茶褐色を呈していますが、トビモンケチャタテの種名badiostigmaとは「栗色の斑」の意なので、本来はまだら模様ではないのか、と思うからです。
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普通は葉裏に産卵することが多いが葉表である
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 しかし、先の検索表を辿ると一寸違う様です。この検索表では「縁紋は後角の位置に斑紋を持つ」を経ないとトビモンケチャタテには落ちません。ところが写真のチャタテムシでは、縁紋の後角ではなく、前半に斑紋があります。
 まァ、この検索表が書かれた(1991年)後に、日本産ケチャタテ科は8種も追加され、全部で22種となっていますから、その8種の中に含まれているのかも知れません。
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卵塊の上に縦横斜めに糸を張る
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 さて、母虫の網掛けの方に話を移しましょう。クサカゲロウの糸はお尻から出ますが、母虫の動作を見ると、チャタテムシは、芋虫毛虫と同じく、口から糸を吐く様です。何とか糸が写らないか、沢山撮ってみたのですが、残念ならが口から糸が出ていることを示す写真は遂に撮れませんでした。
 このチャタテムシを見付けたのは、糸を張り始めた直後の様です。最初の2枚の写真には糸は1本も写っていません(勿論、光の加減で見えていない糸もあると思います)。
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ケチャタテ母さんはおっかない顔をしている
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 卵塊の上を縦横斜めと色々な方向に糸を張って行きます。その速度は、特に速くもなく遅くもありませんが、休むことなく、一生懸命やっていると云う感じがしました。最初の写真から最後までの間に約13分が経過しています。
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卵塊に平行して糸を張る.典型的なケチャタテ科の
翅脈をしている.後小室が大きい
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 ストロボを何回も光らせたせいか、母虫は途中で逃げ出してしまいました。下の写真に示す様に、まだ糸は充分張られていません。普通は、もっとビッシリと糸を張ります。
 母虫にとって大切な作業の邪魔をしてしまったことになり、一寸申し訳ない感じがしました。その後、この母虫が戻って糸張り作業を再開したか否かは分かりません。多分、戻らなかっただろうと思います。
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卵塊と糸.母虫は途中で網掛けを放棄した
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 一寸、画像倉庫を調べてみたら、一昨年の秋に撮影したまま放置してある写真は相当な数に上る様です。お蔵にしてしまうのも勿体無い話なので、出来るだけ更新頻度を上げて、これらの写真も紹介することにしたいと思います。

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2010年3月 2日 (火)

キハダエビグモ(Philodromus spinitarsis

 以前、ケヤキの樹皮下に居たキハダカニグモを掲載しましたが、今日は、良く似た名前のキハダエビグモ(Philodromus spinitarsis)を紹介します。
 七丁目の成城学園高校の前に街路樹として植えられているプラタナスの樹皮下に居ました。先日掲載した「ハイイロチビフサヤスデ」や「チリグモ」が居たのと同じ樹です。

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プラタナスの樹皮下にいたキハダエビグモ
こんな感じで斜めに張り付いていた
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 体長は丁度4.0mmですから、チリグモよりはずっと大型です。しかし、文一総合出版の「日本のクモ」に拠れば、雌の体長5~7mm、雄では4~6mmとなっていますので、まだ幼体なのでしょう。触肢を見る限り、少なくとも雄の成体でないことは明らかです。
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正面から見たキハダエビグモ.こんなに真っ平らなのも珍しい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 キハダエビグモはエビグモ科(Philodromidae)、キハダカニグモはカニグモ科(Thomisidae)に属します。エビグモ科の中には、ヤドカリグモとかシャコグモ、また、カニグモ科にはガザミグモ等と云う種類が居ます。一寸、混乱しそうですね。
 しかし、この様な海の生き物の名前が付いたクモが多いと云うことは、思うに、日本人はクモよりも先に海岸動物の方を良く知っていたと云うことなのでしょう。尤も、クモヒトデ等というのもありますが・・・。
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斜めに張り付いているので見やすくする為、軸を合わせて撮った
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 キハダエビグモは、先の図鑑に拠れば、「神社、寺院、学校、校庭、公園、人家の周辺、樹林地、林道などの太い樹木の樹皮面、枝葉間を歩き回って獲物を探す.樹皮下や樹皮上に静止して近づいて来る昆虫を捕らえることも多い」とあります。樹皮下専門のクモと云う訳ではない様です。
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キハダエビグモの顔.前中眼と前側眼は何れもほぼ前を向いている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 今日も、また、クモの眼を見てみましょう。上の写真の様に、正面から見ると前中眼と前側眼はほぼ前を向いており、前側眼の方が前中眼よりもやや大きめです。
 後中眼や後側眼は正面からは良く見えません。しかし、横からは良く見えます(下の写真)。後中眼は頭胸部の上に、後側眼は少し後よりの側方にあります。後側眼はやや後を向いている感じがします。
 4対の眼の中で一番大きいのは後側眼です。後側眼が大きいと云うのは珍しいのではないかと思いましたが、以前掲載したキンイロエビグモも、良く見てみると、後側眼が一番大きい様です。やはり、眼の配置と大きさは科の特徴なのでしょう。
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後中眼は頭の上、後側眼はかなり離れて側方にある
後側眼が一番大きくキンイロエビグモと似ている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/02/22)

 先日掲載した「プラタナスグンバイ(その2:集団越冬中)」の中で、成城学園高校の前にあるプラタナスの樹皮下にはプラタナスグンバイが全く見られなかったと書きました。しかし、このキハダエビグモを撮影した後で、少し離れた道路の反対側に植えられているプラタナスの樹皮を剥がしてみたところ、物凄い数のプラタナスグンバイが潜んで居ました。クモの多い樹では捕食されてしまうので越冬しないのかとも思われますが、この木では数cm四方の樹皮下にチリグモ4頭とプラタナスグンバイが同居している光景も見られましたから、余り関係はない様です。
 僅か20メートル位離れているだけなのに、何故こうも違うのか、不思議なことだと思います。

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