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2010年3月29日 (月)

キノコヨトウ(Cryphia obscura)の幼虫(若齢)


 今日は久しぶりに芋虫・毛虫の登場です。昨年の今頃に撮影した幼虫で、体長は約1cm、「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮上を這っていました。

 こんな小さな若齢幼虫など、どうせ種類など分からないだろうと思い、いい加減に撮影してその儘放置していました。ところが、今年も「四丁目緑地」や「七丁目緑地」のケヤキの樹皮上で何度か見かけたので、これはかなりの普通種で調べれば種類が分かるかも知れないと思い、群馬大学の青木繁信教授のHP「幼虫図鑑」で調べてみたところ、ヤガ科(Noctuidae)キノコヨトウ亜科(Bryophilinae)のキノコヨトウ(Cryphia obscura)の幼虫に酷似していることが分かりました。


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「四丁目緑地」のケヤキの樹皮上にいたキノコヨトウの幼虫

体長は約10mmでまだ若齢幼虫

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(2009/03/19)



 手元にある保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」にも載っていました。体長は約20mmとのことですから、写真の幼虫は、まだ3齢か4齢の様です。また、この亜科の幼虫は地衣類を食すと書いてあります。どおりで大きな樹の樹皮上に居たはずです。

 この亜科には、神保宇嗣氏の「List-MJ 日本産蛾類総目録」に拠ると、3属17種が記録されており、Cryphia属にはその内の8種が属します。ヒョッとすると、キノコヨトウではなく、その近縁種かも知れません。

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頭部は黒く、頭楯前片と触角基部は灰白色

刺毛硬皮板は黒色、胸脚は淡褐色

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(2009/03/19)



 東京都本土部昆虫目録を見ると、Cryphia属は4種記録されています。何も形容の付かない無印キノコヨトウは10報の文献で記録されているのに対し、他の3種は何れも山奥である東京都西多摩郡奥多摩町日原で得られた稀少種で、この辺り(東京都世田谷区西部)に居る可能性は零に等しいでしょう。無印キノコヨトウの可能性が大です。

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背楯(前胸硬皮板)は正中線と前縁を除いて黒色

肛上板にも黒斑がある

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(2009/03/19)



 「原色日本蛾類幼虫図鑑」の解説には、「(前略)頭部黒色で光沢鈍く、頭楯前片及び触角基部灰白色.胴部地色は淡く緑色を帯びる暗灰黄色で黒斑が多い.背楯ほか硬皮板はいずれも黒色、背楯の正中線と前縁は細く灰白色.(中略)気門下線より上腹線にわたり暗色部が多く、腹面は淡色である.肛上板は暗斑を持つ.気門黒色.胸脚淡褐色(後略)」とあります。「背楯」は前胸(胸部第1節)の背側にある固い部分で、前胸硬皮板とも呼びます。また、解説中の硬皮板とは刺毛の基部にある固い部分のことで、刺毛硬皮板と呼ぶこともある様です。肛上板は第10腹節(お尻)の背側にある固い部分です。これも硬皮板の1種です。

 これら図鑑に書かれている特徴は、写真の幼虫と一致しています。キノコヨトウの幼虫として問題ないでしょう。

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オマケにもう一枚

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(2009/03/19)



 キノコヨトウは幼虫で越冬し、保育社の蛾類幼虫図鑑に拠れば、5月上・中旬に終齢幼虫が見られ、発生(羽化)は年1化で、成虫は7~8月に得られるそうです。

 成虫は、保育社の蛾類図鑑を見ると、開張21~23mm、ヤガ科としてはかなり小型の蛾です。前翅はオリーブ色~褐色で、横に走る筋が数本あります。この蛾類図鑑には「少ない」と書いてありますが、この辺り(東京都世田谷区西部)でも幼虫を良く目にする位ですし、Web上の「みんなで作る日本産蛾類図鑑」にはかなり沢山の成虫写真が載っていますから、やはり極く普通種の様です。


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