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2010年2月27日 (土)

ケチャタテ科の1種(Valenzuela flavidus?)

 今日は、またチャタテムシです。この黄色と茶色のチャタテムシはこの辺り(東京都世田谷区西部)では良く見る種類で以前から何度も撮っているのですが、種が分かりそうで分からず、今まで掲載を保留していたのです。
 最初の3枚は、一昨年の11月末に「四丁目緑地」と「神明の森みつ池特別保護区」との間に位置する空地(生産緑地となっているが何も生産していない)にあるミカンの木で撮影したもので、後の4枚は不動坂下の4丁目に生えているヤツデの葉裏に居たものです。

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ミカンの木にいたValenzuela flavidusと思われるチャタテムシ
体長3.2mm、翅端まで4.3mm、前翅長は3.4mm
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 その他、写真は出していませんが、「神明の森」の上に位置する「みつ池緑地」や「四丁目緑地」で見たこともあります。
 体長は3.2mm、翅端まで4.2~4.3mm、前翅長は3.4mmです。中型のチャタテムシで、翅脈相からケチャタテ科(Caeciliusidae)の1種として間違いないでしょう。
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上と同一個体.後小室が大きく、縁紋を縁取る翅脈は黄色
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 一見したところ、以前紹介した「ケチャタテ科の1種(その2)」や「チャタテムシの1種」と似ています。特に後者は前翅後縁基部や胸背が茶色をしており、今日のチャタテムシとソックリです。
 この2種に共通する特徴としては、複眼が黄色く、後小室(こちらの2番目の写真を参照)が狭く膨らんでいないこと、翅脈の色が一様であることなどが挙げられます。
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上と同一個体.複眼は褐色、触角の先端部は黒いが基部は褐色
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 しかし、今日のチャタテムシは、複眼は茶色で、後小室は大きく半月形をなし、縁紋(こちらの3枚目の写真を参照)を縁取る翅脈が鮮やかな黄色をしています。明らかに別種です。
 「富田&芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表」では、「縁紋は全体に黄色」とするとキイロケチャタテ(この文献では「Caecilius yapanus」となっていますが、現在では属が変わり「Valenzuela japanus」.なお、「yapanus」は「japanus」の誤植)に落ちます。しかし、「吉澤和徳:皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」に拠ると、キイロケチャタテは「前翅を含め、体が一様に黄色を呈する」とあり、また、吉澤教授がHPに載せられているキイロケチャタテの写真を見ると、実際に殆ど全体が真っ黄色で、複眼も黄色をしています。今日のチャタテムシとは異なる様です。
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ヤツデの葉裏に居たV. flavidusと思われるチャタテムシ
体長3.2mm、翅端まで4.2mm、前翅長は3.4mm
手前はチャタテムシの卵で、この個体が産んだものらしい
暗青色のチャタテムシの卵はこれまで見たことがない
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 前述の検索表で「縁紋は全体に黄色ではない」を辿ると、Valenzuela luteovenosusV. kamakurensisV. gracilis(何れも和名なし)の何れかとなります(この内、V. gracilisの分布は北海道で、この辺りには生息しないらしい)。しかし、問題はこの検索表が些か古い(1991年)ことで、この論文ではケチャタテ科は15種(現在ではニセケチャタテ科に入れられているナガケチャタテが入っているので実際は14種)となっていますが、吉澤教授の最新のリストを見るとケチャタテ科は全部で22種で、実質8種も増えています。
 こうなると、素人としてはどうしようもありません。
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同一個体(以下同じ).胸背、触角や縁紋の色
大きな後小室など、全て最初の個体と一致する
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 しかし、「吉澤和徳:皇居の動物相調査で得られたチャタテムシ目昆虫」(2000年)を見ると、ケチャタテ科は5種しかありません。皇居は昆虫相の豊富な所で、この辺りよりも多くの種類が生息しています。逆さに云えば、この論文に載っていないチャタテムシがこの辺りにいる可能性はかなり少ないでしょう。幸いなことに、この論文には種の簡単な記述が載っています。それを読むと今日のチャタテムシに近いのはV. flavidus(和名なし)です。「前翅長約3mm、黄色中型のチャタテムシで、黒色の触角と、前翅翅脈の端半部のみが黒色を呈する点が特徴.国内からはこれが初記録となるが、広く分布する普通種である.・・・」とあります。
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何時見てもチャタテムシの顔は漫画的
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 しかし、写真のチャタテムシでは、触角の基部側半分は褐色で、前翅翅脈の端半部も黒色ではなく褐色です。今日のチャタテムシが本当にV. flavidusなのか、些か疑問を感じます。そこで写真を探すことと相成ります。幸い、このV. flavidusは全北区に分布するので、Bugguide.netにも沢山の写真が載っています。
 それらの写真を見ると、今日のチャタテムシに非常に良く似たものが相当数あります。しかし、かなりの変異が認められ、中には触角の基部から黒い個体もあり、また、縁紋を縁取る翅脈が黄色くない個体もあります。
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オマケにもう1枚
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 buguguide.netの情報がどの程度正確なのか良く分かりませんが、これらの写真を見る限り、今日のチャタテムシはValenzuela flavidusの可能性が高いのではないかと思います。しかし、確証に欠けますので、此処では「Valenzuela flavidus?」と「?」を付けておくことにしました。
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オマケの2枚目.しかし、チャタテムシは二枚目ではなく三枚目?
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 尚、吉澤論文に拠ると、1910年に岡本半次郎氏が記載したV. kamakurensisV. flavidusに極めて似ており、同種の可能性もあるとのことです。どうも、まだ日本のケチャタテ科は充分に研究されていない感じがします。今後、新種が出る可能性も高いのではないでしょうか。

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