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2010年2月15日 (月)

クダアザミウマ科の一種(カキクダアザミウマ?)

 今日はまたケヤキの樹皮下に居た虫を紹介します。アザミウマの1種、今まで樹皮下では見たことのない虫です。
 「七丁目緑地」に生えているケヤキの樹皮下に居ました。

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ケヤキの樹皮下に潜むクダアザミウマの1種(カキクダアザミウマ?)
その左側と右側に種類の異なるトビムシが居る
左上の黄色い楕円形のは多分ダニの1種
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/19)

 最初の写真は少し倍率を低くして、周りにいた虫も一緒に示すことにしました。真ん中の真っ黒なのがアザミウマで、体長は反り返っているので正確には分かりませんが3mm弱、その左にいる薄い縞模様のはトビムシで、以前紹介した「トビムシの1種」と同じ種類ではないかと思います。このトビムシの体長は1.0mm、右下に居る暗灰青色のもトビムシの1種で体長0.8mm、左上に黄色い楕円形の虫が2匹ボケて写っていますが、これは恐らくダニでしょう。体長は0.3~0.4mm程度。
 こんな風に、樹皮下には極く小さな色々な生き物が潜んで居ます。しかし、メガネを掛けても肉眼で見分けられたのは黒いアザミウマと暗灰青色のトビムシだけで、他は家に帰って写真を拡大してから漸く気が付きました。
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体長は反り返っているので良く分からないが3.0mm弱
翅には羽毛状の長い縁毛がある.前腿節が太い
翅は淡褐色、白く見えるのは反射による
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/19)

 アザミウマは総翅目(アザミウマ目)に属する虫の総称で、多くは体長1.5mm以下、しかし、中には写真のアザミウマの様に3mm位の種類もかなり居ますし、もっと大きなアザミウマも知られています。
 全農教の「農作物のアザミウマ」に拠ると、世界で2亜目8科約5000種が記録されており、日本にはその内の2亜目4科200種前後が棲息するとのことです。
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前脚の先端部は多少色が薄い様に見える
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/19)

 この2亜目とは、クダアザミウマ亜目とアザミウマ亜目のことです。「農作物のアザミウマ」の検索表に拠ると、前者は「腹部第10節は管状をなし、その先端に付着する環状小板から長刺毛が生える。前翅は微刺と翅脈刺毛ともに欠き、周縁毛は幕状部から直接生じる(後略)」とあり、後者は「腹部第10節は管状をなさず、背板中央から長刺毛が生える。前翅は微刺と翅脈刺毛を備え、周縁毛は小さな受け口から生じる(後略)」となっています。
 何分にも虫が小さいので、良く分からないのですが、最後の2枚の写真を見ると腹部の先端は管状に近く、また、前掲書の図に描かれた前翅を見ると、どうもこのアザミウマはクダアザミウマ亜目に属す様です。
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触角第1~2節は色濃く、第3~5節は明るく、第6節はやや暗く
第7~8節は色濃い様に見えるがハッキリしない
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/19)

 クダアザミウマ亜目はクダアザミウマ科(Phlaeothripidae)1科からなり、「日本産アザミウマ文献・寄主植物目録」では107種(1988年)、九州大学の日本産目録では94種、東京都本土部昆虫目録では40種の記録があります。
 「農作物のアザミウマ」には、「主要属および種の検索表」もあるのですが、この写真では細微な構造は分からず、検索は一寸無理です。
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ほぼ真上から撮ったクダアザミウマの1種
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/19)

 そこで絵合わせになるのですが、「農作物のアザミウマ」にはクダアザミウマ科は僅か7種しか載っていません。この本は農業害虫としてのアザミウマを扱っている訳ですから、まァ、仕方がないでしょう。
 この7種の中ではカキクダアザミウマ(Ponticulothrips diospyrosi)が一番よく似ています。解説から写真である程度判別の付く部分を切り出すと「(雌は)体長約3.1mm。一様に黒ないし黒褐色、但し各脚の付節と前脚の脛節の先端1/3は明るい。逆に尾管はより暗い。触角第1,2節は黒褐色で、第2節の先端部から第6節の中央付近までは淡褐色、第6節後半はくもる。第7節の基部1/3は淡褐色で、第7節の他の部分と第8節は褐色である。主な刺毛と翅の総毛は淡褐色(中略)。頭部は長さが幅より長く5/4倍。(中略)尾管は頭長より短く、中央部でわずかにくびれている」とあります(なお、Wikipediaの「アザミウマ」に載っているカキクダアザミウマの写真は、画像検索すると色々な所で使用されている様ですが、上記の特徴とは悉く一致しません)。
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暗灰青色のトビムシとアザミウマの御対面
触角がトビムシに殆ど触れている
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/19)

 写真と比較すると、一致する写真もありますが、違う様に見える写真もあります。最後の写真などでは触角の第1~3節が黒褐色の様に見えますが、触角は全部で8節しかないので、これは第2節が2つに分かれて見えているのだと思います。
 「農作物のアザミウマ」にある同種の分布図を見ると、東京都はその範囲に含まれていません。しかし、東京都本土部昆虫目録を見ると皇居で記録がありますから、この辺り(東京都世田谷区西部)に居てもおかしくはありません。また、この種は6月に羽化し、その後はカキ、アカマツ、ヒノキ、クヌギ等の粗皮間隙に潜伏し、そのまま越冬するそうです。カキクダアザミウマとすれば樹皮下に潜んでいたのも不思議ではありません。樹皮下で成虫越冬するアザミウマは余り多くないと思います。
 写真は解像度不足で、写真のアザミウマをカキクダアザミウマとするには不充分です。しかし、「クダアザミウマ科の1種」では些か寂しいので、状況証拠を含めて「カキクダアザミウマ?」と「?」を付けて種名を出しておくことにしました。但し、これはあくまで参考の為です。
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触角の第1~3節が色濃い様に見えるが

第2節が2つに見えるのだと思う
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/19)

 アザミウマはコナジラミ、キジラミ、アブラムシ等と並んで、微小ではあるが甚大な被害をもたらす吸汁性の害虫として知られています(アザミウマの中には、葉や球根を食害するもの、花粉食性、食菌性、更には捕食性の種類も居ます)。
 しかし、興味深いことに、アザミウマ類が重要な農業害虫として登場したのは昭和40年代からで、それ迄はイネアザミウマなどの2~3種が謂わば二流の害虫として知られていただけだそうです。その理由は確実には分かりませんが、化学合成殺虫剤の多量使用に因って引き起こされた生態系の攪乱、薬剤抵抗性の獲得、また、以前使われていた強力ではあるが危険な農薬の使用禁止措置などが、複雑に入り組んで生じた現象だと思われます。また、社会が豊かになるにつれて、昔は気にしなかった様な農作物の微細な欠陥(アザミウマに因る小さな損傷)が現在では大きな問題になることも関係している様です。
 アザミウマは微小でしかも細長く、一般には殆ど目に付くことの無い虫です。しかし、私の知っている限り、一つだけハッキリ目に見える場合があります。6月から7月にかけて咲くクチナシの花に集るアザミウマです。これらについては別のWeblogで紹介していますので、興味ある読者はこちらを御覧下さい。

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