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2010年2月 1日 (月)

シマバエ科Luzonomyza属の1種


 昔の写真が溜まっているので、今日は、一昨年の秋に撮ったシマバエ科のハエを紹介します。体長は4mm強、翅端まで6mm強の、中型のハエです。撮影したのは国分寺崖線下の4丁目にある畑の中です。確か、ズッキーニの茎に居たものと記憶しています。

 シマバエ科(Lauxaniidae)と云うのは、1つの科の中に外観の非常に異なるハエが色々いて、細部を調べないとシマバエ科であると判断出来ません。今日のハエも、遠目にはヤチバエ的な感じがしました。普段ならば、検索表を辿るのですが、今日は簡便法を紹介することにします。

 これは以前、双翅目の掲示板「一寸の虫にも五分の魂」(今はURLが変わり、名称も「一寸の虫にも五分の魂・改」となっています)で、双翅目分類学の権威であるアノニモミイア先生(Amonimo-myia:<名の無いハエ>の意、勿論ハンドル名です)に教えて頂いた方法です。先生に拠ると

 先ず頭部を見て,

  1.鬚刺毛を欠く.

  2.触角刺毛に短い軟毛が背腹両面に多数生じている.

  3.2対の後ろ向きの強い額眼縁刺毛がある.  これでほぼ確定して,

 それでも不安の場合に,

  4.脛節背面に1本の亜(末)端剛毛を具える.

  5.翅の前縁脈に切目や抉れを欠く.

 さらに,

  6.Cu融合脈が翅縁に達しない.

  7.後単眼刺毛が収斂する.

 と云う基準で判断出来るとのことです。

 この内、5番目と6番目の特徴は、今日の写真からは判断出来ませんが、シマバエ科であることは間違いありません(他に「The European Families of the Diptera」でもシマバエ科に落ちました)。触角の毛が良く見えませんが、少しボワーとして写っているのは有毛だからでしょう。


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シマバエ科のLuzonomyza sp.

頭部の上部が前方に突き出している

本当は下向きに留まっていたが、

見易くする為、水平にした

(写真クリックで拡大表示)

(2008/11/14)



 シマバエ科内の検索には、文献を持っていませんので、(株)エコリスのHPにあるシマバエ科の検索表を使いました。これを辿ってみると、多少怪しげながらもTrigonometopus属に行き着きました。次に、先の双翅目掲示板のワード検索でこの属を調べると、Acleris氏が「埼玉県昆虫誌に出てくるTrigonometopusに似ているような気がします」として載せている写真の個体に、腹部の模様を除き、良く似ていました。そこで、この写真のハエもTrigonometopusか否か、御伺いを立ててみることと相成ります。

 問い合わせにはバグリッチ氏が対応して下さいました。「画像の種は、Luzonomyza属の一種ではないかと思います。エコリスのシマバエ科の検索表では、key4の『前方の額眼縁剛毛は前傾するか否か』というのがこの2属の区別のkeyの一つとなっていますが、非常に微妙な傾斜なので判断に困ります。またTrigonometopusと思われる個体でも前傾していないことも多々あります。これまで私が採ったものに限っては、触覚先端がの尖る方がTrigonometopusで、丸いのがLuzonomyzaで 区分可能のようでした。ある程度はこの部分で識別できそうです」とのことです。また、Luzonomyza属とTrigonometopus属の双方の標本写真を提示して下さいました。

 エコリスの検索表のkey4には、「頭部は側面から見ると上部が前方に突き出し,鋭い角をなすことがある.単眼剛毛はないか微毛状.前方の額眼縁剛毛 (orbital setae) 前傾する.触覚先端は尖る」とあります。これに対するkey4'の方は「前方の額眼縁剛毛 (orbital setae) は前傾しない.触覚先端は丸い.♂の第9腹背板の先端は両側が多少とも角状に突出する」となっています。私の写真では、前方の額眼縁剛毛は、向かって左のは前傾していますが、右側のは後を向いています。余り当てにならない指標の様なので、触角を見たのですが、1枚目の写真では丸く見えますが、2枚目ではかなり尖って見えます。これも写真から判断するには適切な指標ではない様に思えました。そこで「頭部は側面から見ると上部が前方に突き出し」とあるのに対し、key4'の方にはこの記述が無いのでTrigonometopusだと判断してしまったのです。

 しかし、バグリッチ氏の写真を見るとLuzonomyzaの頭部も同様に上部が前方に突き出しています。それならば、話は違ってきます。触角も上から見ると多少は尖って見えますが、貼って頂いたTrigonometopusの写真を見ると、尖り方が全然違います。

 これらから判断すると、写真のハエは、バグリッチ氏の言われるとおり、Trigonometopusではなく、Luzonomyzaとするのが適当でしょう。種名は分からないので、Luzonomyza sp.となります。

07_081114_1_088

背面から見たシマバエ科のLuzonomyza sp.

(写真クリックで拡大表示)

(2008/11/14)



 このWeblogでは、これまでにシマバエ科所属のハエを3種、Protrigonometopus maculifronsSteganopsis sp1.Steganopsis sp2.を紹介しています。また、もう一方のWeblog「我が家の庭の生き物たち」でもHomoneura sp.が紹介済みです(まだ倉庫で眠っている種もあります)。Steganopsisの2種は同属ですから互いに似ていますが、他は全く外観が異なります。全く双翅目と云うのは困った連中ですが、またそれ故に面白いとも言えます。



 なお、今日は一昨年の3月に掲載した「お知らせ+ハチの1種」のハチの種類がある程度分かった為、本文を全面的に改定し、表題も「ホソハネコバチ科Gonatocerus属の1種(?)+お知らせ」に変更しました。御笑覧下さい。


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