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2010年2月19日 (金)

ヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus

 以前「チャタテムシの1種(その2)」として掲載した虫の種類が分かりました。その時は、翅が少し歪んだ個体でしたし、写真も余り高精度ではなかったので、もう一度改めて紹介することにします。

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「四丁目緑地」のトウネズミモチの葉裏に居たヨツモンホソチャタテ
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 この冬、「四丁目緑地」ではこのチャタテムシが多く、アオキやトウネズミモチの葉を探せば必ず複数の個体を見付けることが出来ました。僅か数cm離れている所に2頭居たり、普通は葉裏に居るはずなのが翅表に居たりすることもありました。大きさはやや小さめで、体長3mm弱、翅端まで4mm弱、前翅長は約3mmです。
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横から見たヨツモンホソチャタテ(別個体)
翅脈については次の写真を参照
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 先ず、このチャタテムシの科を調べる必要があります。北隆館や保育社の図鑑にある検索表では非常に細微な特徴が問題となるので、残念ながら検索は出来ません。そこで、簡便法?を採って先ず翅脈を見てみましょう。上の写真に示した様に、前翅の縁紋とRs脈の間に横脈が1本あり、また、後小室とM脈との間にも横脈があります(下図参照)。
 この様な翅脈を持つのはホソチャタテ科(Stenopsocidae、例えばこちら)です。何分にも、検索表を辿ったのではありませんから、他の科にはこの様な横脈を持つ種類は全く居ないと云う確証はありません。しかし、北海道大学農学部の吉澤和徳準教授が執筆された「Morphology of Pscocomorpha(チャタテ亜目の形態学)」(ダウンロード出来ます)に載っている外国産を含めた25科の翅脈図を見てもこの様な横脈があるのはホソチャタテ科だけです。些か不安がありますが、ホソチャタテ科と云うことにして以降の検索を進めてみましょう。
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上の写真に説明を入れた.前翅の縁紋とRs脈の間
また、後小室とM脈との間にも横脈が1本ある
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 1991年に書かれた「富田&芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表」ではホソチャタテ科には7種が所属しています。一方、吉澤準教授のHPにある「Checklist of Japanese Psocoptera」を見ると、同じく7種ですが、種の構成は大部変わっています。特に、縁紋とRs脈との間に横脈を持たない、ホソヒゲチャタテ(Kodamaius brevicornis)とマダラヒゲナガチャタテ(Taeniostigma ingens)はホソチャタテ科には見当たりません。吉澤準教授のリストには和名が附記されていないので、学名で所属を調べてみると、何故か両種ともリストには載っていません。しかし、「Psocodea Species File Online」と云うチャタテムシ専門のサイトを参照すると、何方もケブカチャタテ科に属しています。この辺りの事情は全く分かりませんが、今日のチャタテムシは縁紋とRs脈の間に横脈がありますので、これらの事情は今日のチャタテムシの検索とは関係ないと思います。気にしないことにしましょう。
 また、吉澤準教授のリストには、新たに2種がホソチャタテ科に加わっていますが、2種とも北方領土に分布する種です。これも気にする必要はありません。
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動き回って写真が撮り難いので松の幹に移して撮影
本来の生息環境ではない(最初の写真と同じ個体)
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 そこで写真のチャタテムシはホソチャタテ科として、前掲の論文にあるホソチャタテ科内の検索表で種を調べてみます。すると・・・、「縁紋はRs脈と横脈で結合する」→「後小室と中脈(M脈)の間の横脈は短い.前翅には目立った斑紋がある.前翅長は約3.0mm」となり、2段目でGraphopsocus cruciatus(ヨツモンホソチャタテ)に落ちてしまいます。後小室と中脈の横脈が短いか否かは見方によって異なるかも知れませんが、2段目の反対は「後小室と中脈の間の横脈は長い.前翅には縁紋を除いて目立った斑紋はない」ですから、その可能性は全く無く、ヨツモンホソチャタテで決まりとなります。
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自分で張った網の下で越冬している(別個体)
(写真クリックで拡大表示)
(2009/12/19)

 ヨツモンホソチャタテは北隆館の圖鑑にも、保育社の図鑑にも載っていません。そこで、Web上で検索すると、僅かですが、ヒットしました。写真のチャタテムシとソックリな虫の写真がありました。しかし、ヒットした件数は余りに僅かですし、同定の根拠が書かれていないので心配が残ります。
 こう云う時は学名で検索してみます。「Graphopsocus cruciatus」で検索すると・・・、ワンサと出て来ました。先の「Psocodea Species File Online」で分布を調べてみると、東南アジアから中東を除く、殆ど全世界に分布している様です。
 ヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)で間違いないでしょう。
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アオキの葉裏に居た(2、3番目の写真と同一個体)
白いのは黴で、越冬中も餌を食べているらしい
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 前述の様に、日本にはホソチャタテ科が7種棲息しているとのことですが、「Borror & Delong:Introduction to the Study of Insects」を見ると、アメリカ合衆国に棲息するホソチャタテ科は1種のみで、それがこのヨツモンホソチャタテだそうです。「多分ヨーロッパから移入されたものであろう」と書かれています。
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正面から見たヨツモンホソチャタテ(上と同一個体)
(写真クリックで拡大表示)
(2010/01/14)

 実は、まだ紹介していないチャタテムシが何種かあります。どうも種類が良く分からないので掲載を躊躇しているのですが、これ以上調べても分かる可能性は少ないので、近々紹介することにしましょう。

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