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2010年1月の11件の記事

2010年1月30日 (土)

ツリガネヒメグモ(?)の幼体


 前回は少し頑張り過ぎたので、今日は簡単な(写真が少ない)ものにします。

 四丁目の不動坂下に植えられているヤツデの葉裏に居たクモです。撮影したのは昨年の暮れ。体長2mm弱、腹部が丸くて脚が短く、最初見たときはダニの1種かと思いましたが、良く見るとクモでした。

 ヒメグモの1種と思い、家に帰ってから文一総合出版の「日本のクモ」で種類を調べたのですが、良く分かりません。


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ツリガネヒメグモ(?)の幼体.ヤツデの葉裏に居た

体長2mm弱、始めはダニかと思った

(写真クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 始めは、葉裏にいるクモと云うことでシモフリヒメグモかと思いました。しかし、色々調べてみると、どうも腹部の模様が違う様です。クモに関しては相当の初心者なので、図鑑で彼方此方探してみると、他にカラカラグモやカレハグモなどにも似ています。この2種のクモについては、Web上に写真が少なく、何とも判断できません。実は、クモに関しては、東海大学出版会から最近出た「日本産クモ類」と云う専門的な本があります。この本を見ればかなり詳細が分かるのではないかと思うのですが、高くてまだ買っていませんし、近くの図書館にも置いてありません。

 そこで、「クモ蟲画像掲示板」に御伺いを立ててみました。

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ヤツデの葉裏に張った網を渡るツリガネヒメグモ(?)の幼体

(写真クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 早速、きどばんさんが対応して下さいました。「体形と歩脚長のバランス等から中齢以前のヒメグモ類幼体のよう」との御話です。やはりヒメグモだった様ですが、中齢以前の幼体とは思いませんでした。クモの幼体と云うのは成体とはかなり異なることが多く、図鑑にも余り出ていないので、素人には良く分からない世界です。更にきどばんさんに拠ると、「腹部背面及び腹面の様子からツリガネヒメグモ幼体である可能性が最も高いと思われます」とのことです。ツリガネヒメグモやカラカラグモの写真も添付して下さり、実際、前者はこの写真のクモとよく似ていました(カラカラグモの写真はかなり違っていました)。しかし、「ツリガネヒメグモの幼体」と断定はされていないので、ここでは和名の後に「?」を付けておくことにします。

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左はヤツデの中肋.クモの小ささが分かる

(写真クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 「日本のクモ」でツリガネヒメグモ(Achaearanea angulithorax:ヒメグモ科)を見てみると、♀成体は第1歩脚が非常に長い(体長の2倍以上)クモでした。写真のクモ(幼体)とはかなり違います。また、解説には「崖地、石垣、樹木の根元付近、倒木や樹木にできた祠などに、土、砂、木くず、食べかすなどで吊鐘状の住居を作り、その中に潜む」とあります。木の葉裏とは随分違う環境です。きどばんさんに拠ると、「若齢に近い幼体は成体とは異なる場所に生息していることがしばしば見受けられます」とのこと。形態ばかりでなく生態も違うとなれば、これはもうお手上げです。やはり幼体と思しきクモは敬遠しておいた方が無難な様です。


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2010年1月28日 (木)

ハイイロチビフサヤスデ


 今日はフサヤスデと云う一寸変わった生き物を紹介します。

 フサヤスデと言っても御存じない方が大多数だと思います。「ヤスデ」と付く通り、多足亜門のヤスデ綱に属しますが、とてもヤスデとは思えない非常に独特な外観をしています。ヤスデ綱(倍脚綱)にはフサヤスデ亜綱(触顎亜綱)と唇顎亜綱があり(タマヤスデ類を別の亜綱とすることもある)、普通のヤスデは全て唇顎亜綱に属します。日本産ヤスデには、300以上の種類があるとのことですが、東海大学出版の「日本産土壌動物」に拠れば、フサヤスデ亜綱にはたったの2科3属3種+2亜種(「多足類読本」では5種)しか居ません。非常に小さなグループです。


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ケヤキの樹皮下にいたハイイロチビフサヤスデ

体を少し丸めているので、長さは1.7mm

周りに沢山居るのはトビムシの1種

拡大してピクセル等倍、以下同じ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮下に居ました。見付けたときは、上の写真の様に体を少し丸めていたので、長さは1.7mmしかありませんでした。樹皮をめくる時は、非常に小さかったり保護色で見分けの付き難い虫が居ることもあるので、細かい作業用の+3の老眼鏡をかけて、よ~く見るのですが、その強老眼鏡の補助があっても横筋があること以外は良く見えず、始めはワラジムシの幼体かと思いました。撮った写真を拡大再生して、漸く「変な虫」であることに気が付きました。

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ストロボの光に驚いて歩き回るハイイロチビフサヤスデ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 以前に多足類の本を読んだことがあるせいか、形に見覚えはあるのですが、正体が何であったか思い出せません。しかし、家に帰り、調べ始めて10秒でフサヤスデの1種であることが分かりました。

 フサヤスデは、普通のヤスデとは異なって外骨格にキチン質を殆ど含まず、柔らかい体をしています。その代わり、体表には剛毛が密生し、尾端には長い針状の毛の束(尾毛叢)があります。この尾毛には逆さ向きの棘があり、アリなどに襲われると、この尾毛を叩き付けて身を守るとのことです。

 ヤスデの多くは、刺激を加えると頭を中心にして丸くなります。しかし、このフサヤスデは体を丸めることが出来ません。また、ヤスデは敵に襲われると防御液を分泌することが知られていますが、フサヤスデは、ツムギヤスデやネッタイタマヤスデなどと同様、この防御手段を持ちません。

 ヤスデの多くは腐植質や菌類を食べます。中には肉食性の種類もあるそうですが、フサヤスデの食性については手元の文献には何も書かれていませんでした。しかし、「虫ナビ」と云うサイトに拠ると、このフサヤスデは「生物の死骸などを食べているよう」と書かれています。写真の周囲にはトビムシの1種が沢山写っていますが、その脱皮殻などを食べているのかも知れません(捕食性の可能性もあるかも?)。

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頭部の下に触角が見える.眼らしきものも微かに認められる

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 さて、この写真のフサヤスデ、3種(或いは5種)しか居ない中で、種類は一体何でしょうか。

 「日本産土壌動物」に拠ると、フサヤスデには、眼のあるフサヤスデ科(Polyxenidae)と、沖縄以南に生息する眼のないリュウキュウフサヤスデ科の2科があります。リュウキュウフサヤスデ科は、分布から明らかに除外されます。

 フサヤスデ科は、胴節背面の剛毛の列が左右に分かれるニホンフサヤスデ属(Eudigraphis)と、左右で分かれないシノハラフサヤスデ属(Polyzenus)の2属から構成されます。写真のフサヤスデは背面の剛毛が左右に分かれているのでニホンフサヤスデ属に属すことになります。

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横から見た歩行中のハイイロチビフサヤスデ.体長2.0mm

歩脚は青(青紫?)みがかった色をしている

尾毛叢が白いのはストロボの反射

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 全部で3属3種しか居ないのですから、ニホンフサヤスデ属には1種しかなく、種としてはニホンフサヤスデ(Eudigraphis takakuwai)になります。

 ところが、この種には3つの亜種があり、基亜種のウスアカフサヤスデ(E. takakuwai takakuwai)、イソフサヤスデ(E. takakuwai nigricans)、ハイイロチビフサヤスデ(ハイイロフサヤスデ:E. takakuwai kinutensis)と、それぞれ別の和名が付けられています(なお、これらの3亜種をそれぞれ独立の種とすることもあります。その場合の学名は亜種名が種名に昇格され、それぞれ、E. takakuwaiE. nigricansE. kinutensisとなります)。

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同じく横から見た歩行中のハイイロチビフサヤスデ

歩脚はやはり青みがかった色をしている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 この3者の違いは、高島&芳賀「日本産触顎類知見補遺」(1950,Acta Arachnol.,12:21-26)に書かれています(この論文はWeb上からダウンロード出来ます)。見易くして引用すると次の様になります。


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          ウスアカフサヤスデ    イソフサヤスデ   ハイイロチビフサヤスデ


   体  長    4~4.5mm     3~3.5mm     2.5~3mm



   背板の色    淡 黄 褐 色      淡 黄 色       黄 褐 色



   頭部背面    淡黄褐色で頭部      黒紫色で頭部      黄褐色で前方は

   及び触角    背面に光沢あり     背面に光沢有り     灰褐色.頭部背面

                                    に光沢がない



  腹面及び歩脚   淡 黄 褐 色      淡 黄 色       淡 紫 色



   背面 及び  淡褐色でイソフサより    黄褐色でウスアカ      灰褐色で短く

   側面の剛毛   も長く且つ湾曲する   より短く且つそれ程    殆ど湾曲しない

                        湾曲しない



   背面の斑紋     赤 褐 色       黒 紫 色       灰 褐 色



   尾 毛 叢      白 色         黒 色         灰 色



   尾毛叢中      3~4       3~6(5が多く    3~4(稀に5)

   の逆鉤数                  稀に6)

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背板の色はやや褐色を帯びた灰色に見える

尾毛叢はやや褐色を帯びた灰色

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 このフサヤスデの体長は、尾端の毛の束(尾毛叢)を入れないで、約2.0mm。上の表の「体長」にこの尾毛叢が含まれているのかは記載がありませんが、本文中のハイイロチビフサヤスデの記述に「成体では尾毛叢を除き体長約2.5mm」とあるので、ハイイロチビフサヤスデとしても、かなり小さいと言えます。まだ、幼体なのでしょうか。

 「多足類読本」に拠ると、フサヤスデの変態様式は、半増節変態と呼ばれる方式です。始めは脱皮に伴い体節数が増加しますが、ある時点でその増加は止まり、以降は脱皮をしても体節は増えません。しかし、脱皮の回数に制限はないとのことです。

 フサヤスデ類の成体、亜成体では、種に拘わらず胴節数(頭部以外の体節の数)は11、歩肢は13対です。写真から体節数を見極めるのは一寸難しいですが、松本&蒲生「相模湾沿岸に見られるフサヤスデ類2種」と云う論文を見ると、ウスアカフサヤスデの亜成体の図と一致するだけの剛毛列があります。従って、幼体ではなく、亜成体か成体(体の構造は同じ)と云うことになります。それ以降に脱皮して体長が増えるのか否かは良く分かりませんが、体長からはウスアカやイソよりずっと小さく、ハイイロチビの可能性が高いと言えます。

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背側から見た歩行中のハイイロチビフサヤスデ

尾毛叢はやはりやや褐色を帯びた灰色

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 背板の色は、写真ではやや褐色を帯びた灰色に見えます。先の表では何れも黄色~黄褐色で、写真とは大部違います。写真の色はRAWファイルを現像するときの条件で変化しますが、この写真を現像したときの条件は何時もと同じですし、周囲の樹皮の色も色カブリする程偏っては居ないので、ほぼ実際通りの色を出していると思います。背板の色に関しては該当するものがない、と云うことになります。

 「頭部背面及び触角」の色は、写真からは良く分かりません。頭部背面は剛毛に隠れて見えません。触角は小さくて色が今一つハッキリしませんが、横から撮った3番目や4番目の写真を見ると、赤褐色をしている様にも思えます。これも、表の何れとも一致しません。

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前から見たハイイロチビフサヤスデ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 「腹面及び歩脚」はどうかと言うと、腹面は見えませんが、歩脚は多少青みがかった色をしています。この点では、ハイイロチビでは淡紫色となっていますから、かなり近いと言えます。

 「背面及び側面の剛毛」に関しては、写真を見ると褐色を帯びた灰色をしており、余り長くなく少し曲がっています。前述の、高島&芳賀「日本産触顎類知見補遺」には3亜種のかなり大きな全体図が載っており、ハイイロチビの剛毛は、写真とほぼ同じ長さ(体長との比率)ですが、、真っ直ぐで殆ど曲がっていません。この曲りの点では写真のフサヤスデはイソに一番よく似ています。
 「背面の斑紋」と云うのは良く分からないのですが、横から見たとき剛毛の間に見える斑紋のことではないでしょうか。それならば、黒っぽい良く分からない色をしています。この点ではイソに近いと言えます。

 尾毛叢の色は、写真によっては白く光っていますが、これはストロボの反射の為で、6番目や7番目の写真では、剛毛とほぼ同じやや褐色を帯びた灰色をしています。ハイイロチビでは灰色となっていますから、これに近いと言えます。イソは黒ですから、明らかに異なります。

 最後の「尾毛叢中の逆鉤数」とは、尾毛1本当たりの逆向きの棘の数です。顕微鏡で観察しないと分からない形質ですから、此処で議論することは不可能です。

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歩行中のハイイロチビフサヤスデ.やや後から

尾毛叢が白く光っているのはストロボの反射

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 他に問題になるのは産地です。松本&蒲生「相模湾沿岸に見られるフサヤスデ類2種」に拠れば、イソは仙台湾以南の太平洋岸の岩の割れ目などに潜んでおり、内陸での記録は無い様です。これに対し、ウスアカは南関東以西の太平洋岸の海岸付近から内陸にかけて分布し、「4~9月頃は地上の落葉の下、植物の葉上等にいるが、10月から翌年6月頃までは常に樹皮下、樹木の根元の部分の幹の間度に多数集まって棲息する(夏期でも樹皮下に認められることもある)」(高島&芳賀「日本産触顎類知見補遺」からの引用)とのことです。

 問題はハイイロチビです。この亜種は高島&芳賀「日本産触顎類知見補遺」に拠ると、「・・・樹皮下に見受けられ1年中見つけることが出来る。地上では未だに採ったことがない。年2回産卵するのか周年大小の幼生及び成体が認められる」とあり、更に重大なことには「本亜種は東京都世田谷区大蔵町即ち以前の砧村(Kinuta)で獲られたので(中略)同地から既に100頭近くの個体を採っているが他産地のに此の亜種に該当するものが見当たらないのは妙である」と書かれています。


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成城6丁目のプラタナスの樹皮下にいたフサヤスデ.体長2.2mm

黄褐色を帯びているのは色カブリで本来は灰色に近いと思われる

ISO400で撮影した為、解像度がやや低い

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/21)



 読者の中にはお気付きの方も居られると思いますが、大蔵町(今は大蔵)はこのWeblogの撮影場所である成城の隣町です。採集されたのは大蔵のどの当たりか分かりませんが、直線距離にして2~3kmしか離れていないでしょう。この辺りが産地なのであれば、この写真のフサヤスデがハイイロチビフサヤスデであってもおかしくありません。

 実は、上の写真を撮った3日後、また同じ様なフサヤスデを見付けたのです。6丁目の成城学園高校の前に並木として植えられている大きなプラタナスの樹皮下に居ました(上と下の2枚の写真)。黄色い樹皮のため色カブリを起こしていますが、剛毛の色は「四丁目緑地」で撮影した個体と同じだと思います。体長も約2.2mmで、ほぼ同じです。

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上の写真と同じ個体(オマケの1枚)

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/21)



 これらを総合すると、幾つか一致しない点もありますが、大きさ、背面及び側面の剛毛の色、歩脚の色、尾毛叢の色、産地等から、このフサヤスデはハイイロチビフサヤスデ(ハイイロフサヤスデ:E. takakuwai kinutensis)とするのが一番順当ではないかと思います(素人としては、未記載種の可能性については触れません)。

 なお、この亜種(種)は千葉県と栃木県で絶滅危惧1類に指定されています(「世田谷区大蔵町」以外からも記録があることになります)。東京都のリストでは、無脊椎動物は軟体動物しか載っておらず、節足動物に関する情報はありません。

 今日は一寸珍しい生き物なので、随分張り切って書いてしまいました。写真も11枚載せました。Web上にハイイロチビフサヤスデの写真は無い様ですから、同じ様なものでも沢山出すことにしました。



[追記]:同じ年の11月にこのハイイロチビフサヤスデが集団越冬しているところを見つけ、「ハイイロチビフサヤスデ(その2:集団越冬)」の表題で12月17日に掲載しました。興味ある読者諸氏は此方を御覧下さい。(2010/12/17)

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2010年1月26日 (火)

ヒメヨコバイの1種(その3)


 越冬中の虫を探すのは実は余り得意ではありません。子供の頃は冬期に昆虫採集をしなかったので、どう云う所に虫が潜んでいるのか、経験的知識が不足しているからです。ヤツデやビワ、タラヨウの様な、大きな葉の裏には、越冬している虫が多いと云うことも、此のWeblogを始めてから知ったことです。

 今日紹介するヒメヨコバイの1種も、ビワの大きな葉の裏にいました。国分寺崖線下の4丁目に生えているかなり大きなビワの木です。


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ヒメヨコバイの1種.翅端まで約3.3mm

ビワの葉裏に居た.毛が多くて暖かそう

翅に黄色い縦筋が2本あるのが特徴

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 そのビワの木の根元から出ているひこばえの部分に数頭居ました。しかし、その他の場所でこのヒメヨコバイを見たことはありません。

 ヒメヨコバイ類は、このWeblogでこれまでに6種位紹介したと思います(昆虫(ヨコバイ、ウンカ)のカテゴリーを参照)。これらの種類の中に、一個所のみに沢山いて他では見ない、と云う種類は居ませんでした。或いは、この写真のヒメヨコバイにとって、ビワは越冬の為の場所だけでなく、寄主を兼ねているのかも知れません。

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西日が当たって暖かく、活動的で真横からは遂に撮れなかった

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 体長は尾端が何処か不明瞭で正確には分かりませんが、翅端までは3.3mm位です。まァ、ヒメヨコバイとして普通の大きさと言えるでしょう。しかし、長さは3mm以上あっても、幅はその1/5位なので、肉眼は勿論、マクロレンズを通して見ても、これまで撮った種類と同じかが良く分かりません。試しに撮った画像を拡大再生して、漸く「これは違うぞ」と云うことになり、本格的に撮影を始める訳です。

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真っ正面からも撮れなかった

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 今日のヒメヨコバイは、翅に黄色い縦筋が2本あるのが大きな特徴です。これまで撮った種類と比較してみると、額や胸背の模様も異なります。しかし、撮影したときは翅の黄筋以外の違いには気が付きませんでした。

 最近はヒメヨコバイの新顔を見ることは非常に少なくなりました。ヒョッとすると、本当は新顔だったのに気が付かないで撮らなかったと云うこともあったかも知れません。

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斜めからみたヒメヨコバイの1種

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/18)



 私のもう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」は、現在酷いネタ不足に陥り、仕方なく植木鉢の下に居るトビムシを探したりしている有様です。しかし、此方の方では写真がダブ付いています。大きな葉を持つ常緑樹や剥がれる樹皮を持つ大木が無いと、冬の虫は中々見つからない様です。


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2010年1月24日 (日)

イナズマハエトリ(雌)


 今日は写真を調整する時間がないので、既に出来ている少し前の写真を出すことにします。昨年の9月に撮ったハエトリグモです。

 イナズマハエトリ(Pseudicius vulpes)(雌)、体長は約4.5mm、ハエトリグモとしてはやや小型です。


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ケヤキの樹皮面に居たイナズマハエトリ(雌)

(写真クリックで拡大表示)

(2009/09/19)



 「イナズマ」の名前は、腹部にあるギザギザの模様が稲妻を連想させるところから来ている様です。

 この様な白帯が複数あるのは雌で、雄では多くの場合1本しかなく、全体的に黒っぽい感じがします。

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横から見ると、前中眼が凸面であるのが良く分かる

(写真クリックで拡大表示)

(2009/09/19)



 「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮面に居ました。冬のクモとは違い、元気に走り回るので撮影には苦労させられました。

 ハエトリグモ類は、正面から撮ると、大きな前中眼が双眼鏡で覗いている様で、中々可愛いのですが、遂に真っ正面から撮ることは出来ませんでした。

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略正面からみたイナズマハエトリ.前中眼が大きい

(写真クリックで拡大表示)

(2009/09/19)



 以前掲載したマミジロハエトリや、我が家の庭に沢山居るネコハエトリなどは、普通は植物の葉や枝上を徘徊しています。しかし、このイナズマハエトリは、文一総合出版の「日本のクモ」に拠ると、大きな樹の樹皮面の他、建物や塀、電柱などの人工物にいることが多いとのことです。ハエトリグモの仲間には、この様な人家や人工物を好む種類が沢山居ます。

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余り代わり映えのしない写真だがもう一枚

(写真クリックで拡大表示)

(2009/09/19)



 これまでこのWeblogで紹介したハエトリグモ類は、マミジロハエトリアオオビハエトリヤサアリグモの3種だけで、今日で漸く4種になりました。この辺りにはもっと多種類のハエトリグモが生息しています。今後、少しずつ紹介して行きたいと思います。


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2010年1月22日 (金)

ヒカゲチョウの幼虫(越冬中:4齢?)


 これまでヤツデの葉裏で越冬している様々な虫を紹介して来ました。その多くはヨコバイ類でしたが、先日、ヤツデの葉裏としては一寸意外な虫を見付けました。

 ヒカゲチョウ(Lethe sicelis)の幼虫です。体長はまだ12~3mmなので、多分4齢幼虫でしょう。


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越冬中のヒカゲチョウの幼虫.体長12~3mmで多分4齢

体の前後に同じ様な角があり、何方が頭か分かり難い

前胸硬皮板の見える右側が頭

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/14)



 国分寺崖線下の三丁目にある空地で見付けました。この空地には昔から小型のタケ(種は調べていません)が沢山生えており、私が子供の頃は、そのタケに付くアブラムシを餌とするゴイシシジミが生息していました。しかし残念ながら、その姿はずっと以前に消えてしまいました。

 ヒカゲチョウの食草はササやタケ類です。このタケを食草にしていたのが、越冬をする為に構造的にもっと頑丈なヤツデの葉裏に移動したのでしょう。

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横から見たヒカゲチョウの幼虫.ピッタリと張り付いているので

胸脚も腹脚も全く見えない.頭は左側

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/14)



 葉裏にシッカリ糸を張って、それにしがみ付いていました。ジャノメチョウ類の幼虫には、頭と尾端の双方に角を持つ種類が多く、このヒカゲチョウも体の前後に同じ様な形の長さの角を持っています。


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前から見ても顔は見えない.体を保持する為に糸を張っている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/14)



 食事中ならば頭を持ち上げるので、頭の位置は直ぐに分かります。しかし、寝ている場合、肉眼では何方が頭かお尻か一寸区別が付きません。マクロレンズで覗いて漸く分かりました。

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次の日も同じ場所にいたが、少し体を動かした

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/15)



 肉眼的には黄緑色をした普通の芋虫です。しかし、拡大してみると、体中に細かい毛が生えており、体表も随分デコボコしています。まるでヤスリみたいです。

 なお、この写真の個体は黄緑色に黄白色の縦筋を持つだけですが、中には体側に黄色と茶色からなる斑を数個持つものも居るとのことです。

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頭部の拡大.頭部の構造は良く見えない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/14)



 最初に見付けた日には、何故か斜めからの写真を撮り忘れてしまいました。背側、横、正面の3方向からだけでは、全体の雰囲気がよく伝わりません。そこで次の日に、買い物ついでに寄ってみました。前日と全く同じ場所にいました。

 当然、斜めからの写真を撮ったのですが、家に帰って整理中に、焦点深度を深くして撮影した写真を誤操作で削除してしまいました。それで、下の様な深度不足の写真しかありません。本来は没にすべきところですが、まぁ、タマには御愛敬と云うことで御勘弁下さい。

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ヤツデの葉裏にしがみ付いている雰囲気が分かるであろう

頭部に焦点を合わせた写真なので尾部はボケている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/15)



 もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」は、現在ネタ不足のため殆ど休業状態に陥っています。しかし、此方の方は写真が溜まる一方、都内の住宅地でも探せば越冬中の虫は結構沢山居る様です。


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2010年1月20日 (水)

コマバムツボシヒラタアブ


 今日は久しぶりにハナアブ類を紹介します。一昨年(平成20年)の12月15日掲載のフタホシヒラタアブ以来、1年1ヶ月ぶりとなります。今日紹介するハナアブは、コマバムツシヒラタアブ(Scaeva komabensis:コマバムツシヒラタアブ)と云う余り聞き慣れないヒラタアブの1種です。

 七丁目にある世田谷区の家庭菜園で撮影しました。体長は約13.5mmと大型で、これまでこの辺り(東京都世田谷区西部)で見た記憶はありません。


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コマバムツボシヒラタアブ.第2腹節の黄色紋は半月形で短い

第3~4腹節の黄色紋は三日月型で側縁を越える

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/19)



 家庭菜園は季節柄、今は殆ど休業状態です。しかし、小松菜の類や収穫後に残されたブロッコリーの株などがまだかなり沢山あり、その辺りを徘徊していました。動きが緩慢だったので油断をしていたところ、撮影結果を確認している間に逃げられてしまいました。そんな訳で、今日は写真の出来が、些か良くありません。

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側面から見ると、額の黒色毛が目立つ

胸部下部や小楯板の毛も長い

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/19)



 このコマバムツシヒラタアブ(或いは、コマバムツシヒラタアブ)、WEB上には余り写真が見当たりません。「埼玉県三郷市・千葉県流山市/昆虫観察ガイド」と云うサイトには、「かつては高山性の稀種と言われたこともあったらしい。秋に高山から平地に移動する移動性があることがわかってからは、普通種となった」と書かれています。普段は低地にいて、夏になると涼しい高地へ避暑に出掛ける習性がある様です(この様な行動様式は、オオクロバエにも見られます)。


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斜め上から見たコマバムツボシヒラタアブ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/19)



 まァ、成城の様な住宅地の中もにいるのですから、稀種の筈はありません。東京都本土部昆虫目録を見ると、皇居、赤坂御所、井の頭公園の3個所で記録があります。また、ハナアブ研究家の市毛氏に拠ると、種の記載に使われた標本に付いているラベルには「KOMABA Tokyo Japan ・・・」と書かれているとのことです(「一寸のハエにも五分の大和魂」No.1903)。こうしてみると、この辺りにいても別段おかしくない種類の様です。

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コマバムツボシヒラタアブの顔

顔の黒色中条と複眼の毛が顕著

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/19)



 珍しい種類でもないのにWeb上に写真が少ないのは、恐らく、他のヒラタアブと種類を間違えているのでしょう。ハナアブ類の同定には、中々難しいものがあります。

 このコマバムツボシヒラタアブの特徴を挙げると次の様になります(主に北隆館の大圖鑑と「札幌の昆虫」に拠る)。

 1)体長は11.5~15mmと大型。

 2)第2腹節の黄色紋は上縁が水平で半月状であり、側方は側縁には達しない。

 3)第3~4腹節の黄色紋は上縁が下方に窪んで三日月状となり、側方は側縁に達する。

 4)複眼は有毛。

 5)顔面は黄色、中隆起は顕著で末端は黒褐色(黒色中条がある)。

 6)額(特に上部)に(長い)黒色毛がある。

 7)触角は黒褐色(黒灰色)。

 8)脚は概ね赤褐~黒色。

 9)R2+3脈(翅前縁の色の濃い幅広い部分=縁紋の後にある翅脈)とR4+5脈(R2+3脈の一つ後の翅脈)は、翅端の手前で暫く平行する。

 この内、9)は色々なヒラタアブの写真を見て私が気が付いたことで、正しいか否か、保証の限りではありません。

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オマケにもう一枚

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/19)



 最近は、脊柱管狭窄のリハビリを兼ねて、写真を撮りに出かけてばかりいます。写真の整理、調整にはかなりの時間を要します。余り写真を沢山撮ると、結果として原稿を書く時間がなくなってしまい、更新が遅れてしまいます。今日の更新も結局夕方になってしまいました。今後、更新が滞らない様、十分注意するつもりです。


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2010年1月18日 (月)

ヒシモンナガタマムシ?


 ケヤキの樹皮下には色々な虫やクモが潜んでいます。これまでにも、キンイロエビグモ
ウスキホシテントウ
キハダカニグモヒメコバネナガカメムシメダカチビカワゴミムシトビムシの1種セスジナガキマワリトビイロクチキムシ等を掲載してきましたが、今日は、越冬中のナガタマムシの1種を紹介します。


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ケヤキの樹皮下にいたヒシモンナガタマムシ?.体長約7.5mm

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/15)



 「三丁目緑地」の国分寺崖線の上部に当たる場所に生えているケヤキの木に居ました。体長は約7.5mmですから、ナガタマムシ(Agrilus属)としては普通の大きさです。

 私は、どうもこの手の虫は苦手です。Agrilus属には、九州大学の日本産昆虫目録で85種、東京都本土部昆虫目録でも25種が記録されており、しかもよく似た種類が多いのです。ケヤキに寄生する種類だけでも何種類もありますし、また、ケヤキの樹皮下で越冬してたからと言って、必ずしもケヤキに寄生する種類とは限らないでしょう。

 しかし、このナガタマムシには鞘翅のやや後側に菱形の黒っぽい部分があり、また、全体の色合いが茶色を帯ています。この様な特徴を持つのは、どうやらヒシモンナガタマムシ(Agrilus discalis)の様です。保育社の甲虫図鑑を見ると、この種は「エノキ、ムクノキ、ケヤキなどにつく」とあり、この点でも一致します[追記参照]。

 残念ながら、甲虫図鑑の解説には形態に関する記述は全くありません。ややこしいグループでもあり、絵合わせだけでは些か不安が残りますので、「ヒシモンナガタマムシ?」と「?」を付けておくことにしました。

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横から見たヒシモンナガタマムシ?

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/15)



 肩くらいの高さのやや窪んだ場所に居た為、余り色々な方向から撮ることが出来ませんでした。そんな訳で、今日の写真は3枚しかありません。

 同じ場所に、コバチの1種が1頭居ました。撮影中、ナガタマムシは全く動きませんでしたが、このコバチの方はストロボの光に驚いたのか彼方此方と歩き回り、ナガタマムシと「睨めっこ」する様な場面(下)もありました。

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同じ樹皮下に居たコバチの1種と睨めっこ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/01/15)



 ケヤキの樹皮下には、チビタマムシの1種も潜んで居ました。近日中に紹介する予定です。



[追記] この記事は、当初表題を「ナガタマムシの1種」としていましたが、yamasanae氏よりヒシモンナガタマムシに一票というコメントを頂きました。検討の結果、ヒシモンナガタマムシの可能性が強いので、「ヒシモンナガタマムシ?」と表題を改め、関連する本文も必要に応じて書換えました。(2010/05/30)

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2010年1月16日 (土)

キンイロエビグモ


 チャタテムシが2回続きましたので、今日は気分を変えてクモを紹介することにします。

 エビグモ科のキンイロエビグモ(Philodromus auricomus)です。国分寺崖線下側の3丁目にあるケヤキの樹皮下に居ました。


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ケヤキの樹皮下に居たキンイロエビグモ.体長は約5mm

(クリックで拡大表示)

(2010/01/08)



 このキンイロエビグモには色彩の異なる2つの型があり、この個体は白型、或いは、腹白型と呼ばれるもので、他に金色型と云うのがあるそうです。

 図鑑等に拠ると、金色型は白型を全体的に黄褐色にした様な色合いをしています。名前には「キンイロ」とありますが、金色はしていません。

 写真の個体は普通の白型にしてはやや濃い色をしています。しかし、越冬中の個体は一般に濃色になるらしいので、白型で間違いないと思います。

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シッカリと樹皮にしがみ付いている

(クリックで拡大表示)

(2010/01/08)



 クモには普通4対8個の単眼があり、その配列には色々なパターンがあります。このキンイロエビグモでは、前中眼と前側眼がほぼ同じ大きさで前方やや側方を向き、後中眼はその後にあって上向き、後側眼はかなり側方に寄っており横を向いています。

 これは以前紹介したカニグモ科のワカバグモにかなり良く似た配列です。しかし、向いている方向は僅かに異なる様です。

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キンイロエビグモの顔

(クリックで拡大表示)

(2010/01/08)



 このキンイロエビグモは、先日「四丁目緑地」でも見付けました。写真の個体はケヤキの樹皮下に居たものですが、「四丁目緑地」では植木に巻いたコモの下にいました。文一総合出版の「日本のクモ」には、本種は「各地のわら巻き調査で最優占種になっている」と書かれています。

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斜めから見たキンイロエビグモ

(クリックで拡大表示)

(2010/01/08)



 この図鑑に拠れば、活動期には「都市部~山地まで広く生息。神社、寺院、学校、庭園、口縁、人家の周辺、街路樹、樹林地、林道などの樹木の樹皮面、枝葉上、草の葉上などを歩き回って獲物を探す」のだそうです。

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正面上方から見たキンイロエビグモ.中々カッコイイ

(クリックで拡大表示)

(2010/01/08)



 ケヤキの樹皮下には色々な昆虫やクモが越冬しています。今後もケヤキ樹皮下の生き物が登場するでしょう。


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2010年1月14日 (木)

ホソチャタテ


 今日もまたチャタテムシです。ホソチャタテ(Stenopsocus aphidiformis)、ホソチャタテ科(Stenopsocidae)に属し、チャタテムシの中では最もよく見られる種類の様です。体長約4mm、翅端まで約7mmの比較的大きなチャタテムシです。

 尚、これまで拡大写真は最大幅750ピクセルとしてきましたが、今日は1024ピクセルです。今後も、大きく伸ばせる写真は1024ピクセルにして行くつもりです。


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「四丁目緑地」のトウネズミモチの葉裏にいたホソチャタテ

体長約4mm、翅端まで約7mmとかなり大きい

(クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 見付けたのは「四丁目緑地」と「三丁目緑地」の双方です。前回のナガケチャタテと同じタラヨウの葉裏にも居ましたが、その少し前に「四丁目緑地」に生えているトウネズミモチの葉裏にいた個体をシッカリ撮ってあったので、今日は主に其方の写真を載せることにします。

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横から見たホソチャタテ.ガラスの様な翅が印象的

(クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 北隆館の圖鑑に拠ると、ケチャタテ科とホソチャタテ科の昆虫は、群を作らず、専ら葉裏に潜んでカビを食べる種類が多いそうです。確かに、このWeblogでこれまで紹介してきたチャタテムシは全て葉裏に居たものですが、ナガケチャタテを除いて、この2つの科以外に属すものは居ない様です。

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ホソチャタテの翅脈とその名称

(クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 ホソチャタテ科の翅脈はケチャタテ科のものとよく似ています。しかし、縁紋とR脈が1本の横脈で繋がっています。検索表に拠ると、横脈の有無がこの2つの科を分ける決め手です。これは北隆館の圖鑑でも保育社の図鑑でも同じです。

 更に、ホソチャタテ科の多くは、後小室とM脈の間にも1横脈を持ちます。このホソチャタテも同様です。

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葉裏に逃げ込むので撮り難く、赤松の幹に移して撮影

真正面からの写真は撮れなかった

(クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 富田&芳賀「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」(1991,菅平研報12号,35-54)に拠れば、ホソチャタテ科で後小室とM脈の間に横脈を持たないのは、ホソヒゲチャタテ(Kodamaius brevicornis)とマダラヒゲナガチャタテ(Taeniostigma ingens)の2種のみで、他のホソチャタテ科5種は皆この横脈を持ちます。尚、ホソヒゲチャタテは、九州大学の日本産昆虫目録では、何故か、ケチャタテ科に入れられています。理由は分かりません。

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赤松の幹を這い回るホソチャタテ(その1)

(クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 先に挙げた検索表に拠ると、ホソチャタテの特徴は、上記の翅脈の他に、後小室とM脈間の横脈が長くて前翅には目立った斑紋はなく、縁紋は後縁部が褐色味を帯びているのみで、前翅のCu2脈(3枚目の写真参照)に毛を持つことです。

 このCu2脈の毛はこれらの写真では明らかではありません。しかし、此処には示していない余り質の良くない写真に写っています。Cu2脈だけでなく、他の多くの翅脈上にも毛が生えています。

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赤松の幹を這い回るホソチャタテ(その2)

(クリックで拡大表示)

(2009/12/19)



 写真を撮影した日は何れも暖かい日で、ホソチャタテはかなり元気よく歩き回り、撮影には苦労しました。葉の上で撮影すると直ぐに暗い裏側に逃げようとするので、近くにある横に伸びた赤松の幹の上に移して撮影しました。これは本来の住処ではありませんので御注意下さい。

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「三丁目緑地」のタラヨウの葉裏にいたホソチャタテ

(クリックで拡大表示)

(2010/01/08)



 最後の写真は、「三丁目緑地」に生えているタラヨウの葉裏に居た個体です。この個体も元気に歩き回って、撮影には苦労させられました。

 今年の冬は、まだ2回しか写真を撮りに出かけていませんが、既に5種類ものチャタテムシを見付けました。頭数も多い様です。今年はチャタテムシの当たり年なのかも知れません。


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2010年1月12日 (火)

ナガケチャタテ


 今日も「三丁目緑地」で越冬をしていた虫を紹介します。

 チャタテムシの1種です。「三丁目緑地」には清水が2個所ありますが、西側にある清水の湧き出し口近くに小さなタラヨウの木が1本あり、その葉裏に居ました。このタラヨウの葉裏は、越冬に向いているらしく、色々な昆虫の姿を見かけます。以前紹介した「チャタテムシの1種」や「ハチの1種」もこのタラヨウの葉裏で越冬していました。


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ナガケチャタテ.「三丁目緑地」のタラヨウの葉裏に居た

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2010/01/08)



 体長2.3mm、翅端まで3.0mmのやや小さなチャタテムシです。このチャタテムシは種類が分かりました。昆虫HPとして有名な「虫ナビ」にこれと同種と思われるチャタテムシが出ていました。ナガケチャタテと云う種類だそうです。

 解説によると、「チャタテムシに大変詳しい吉澤先生に伺ったところ本種とご教示いただけた」とあります。この「吉澤先生」とは、チャタテムシの専門家である北海道大学農学部昆虫体系学教室の吉澤和徳準教授(現時点)のことだと思いますから、同定には充分信頼が置けます。

 外見がソックリでも、交尾器を見ないと区別の付かない虫がこの世には沢山います。しかし、チャタテムシはそれ程微妙でない様なので、今日のチャタテムシはナガケチャタテ(Mepleres suzukii)として問題ないでしょう。

 なお、虫ナビ」の解説には、「結構珍しい種であるそうだ」と書かれています。確かに、「"ナガケチャタテ"」でGoogle検索しても僅か6件しかヒットしません。この辺り(東京都世田谷区西部)の住宅地に珍しい種類が居るとも思えませんが、東京都本土部昆虫目録を見ると、皇居で記録があるので、都会に居てもおかしくないが、余り数が多い種類では無いと云うことの様です。

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横から見たナガケチャタテ.かなり恐い顔をしている様に見える

(2010/01/08)



 このナガケチャタテ、先のサイトに拠ると、ニセケチャタテ科に属すとあります。恐らくこれも吉澤氏のお話でしょうから、此処でもニセケチャタテ科(Pseudocaeciliidae)としておきます。

 東京都本土部昆虫目録でも、ナガケチャタテをニセケチャタテ科に入れています。しかし、九州大学の日本産昆虫目録ではケチャタテ科(Caeciliidae)に所属しており、ニセケチャタテ科にはPseudocaecilius属の3種があるのみです。何か、所属に関して微妙なものがあるのかも知れません。

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しかし、正面から見るとやはり漫画顔

(2010/01/08)



 北隆館の圖鑑に拠ると、ニセケチャタテ科の大きな特徴は前翅縁に交叉毛があることです。しかし残念ながら、これらの写真からは交叉毛の存在は確認できません。今日の写真は、虫体が小さいので、何れも拡大するとピクセル等倍となり、これが限界です。もう少し解像力の高いシステムを使わないと、交叉毛の有無は確認出来ない様です。

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斜めから見たナガケチャタテ

(2010/01/08)



 このチャタテムシも、以前紹介した「チャタテムシの1種(その2)」と同じく、粗く引いた蜘蛛の糸の様なものの下(葉と糸との間)に居ました(下の写真)。この様な糸は、他のチャタテムシの場合にも何度か見ています。普通、チャタテムシは産卵の後糸を吐いて卵を保護しますが、越冬中は自分を保護する為に葉の表面近くに糸を吐いて、その内側でジッとして居ることが多い様です。

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最初の写真と同じ様だが、チャタテムシの張った糸が見える

(2010/01/08)



 チャタテムシに関しては、これまで殆ど種類が分からず、表題も「チャタテムシの1種」とか「ケチャタテ科の一種」としてきました。しかし、最近「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」と云う文献を手に入れました(「筑波リポジトリ」からダウンロード出来ます)。1991年なので少し古いのですが、これを使うと今まで「・・・の1種」としていたチャタテムシの種類がある程度は分かります。今後、これまでの記事に訂正を入れて行こうと思っています。


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2010年1月10日 (日)

クロトガリキジラミ


 昨年の12月21日から更新を再開しましたが、やはり暮れは忙しく、その後書込みをする余裕はありませんでした。また、新年になっても、その第1回目に旧年の写真を出す訳にも行かないので、新たに写真を撮りに出かけるつもりだったのですが、正月は正月でそれなりに忙しく、一昨日の8日になって漸く「三丁目緑地」に出掛けて写真を撮ってきました。

 新年らしい被写体があれば良いのですが、やはり葉裏で越冬中の小さい虫が殆どです。新年第1回目は、先ずトガリキジラミの仲間を紹介することにしました。


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ヤツデの葉裏にいたクロトガリキジラミ

体長2.5mm、翅端まで4.0mm

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2010/01/08)



 ヤツデの葉裏に居ました。ヤツデに付くキジラミとしてはヤツデキジラミがよく知られていますが、これは別の種類で、エゴノキに付くクロトガリキジラミ(Trioza nigra)でした。体長2.5mm、翅端まで4.0mmのかなり小さな虫です。

 ヤツデの大きな葉裏は虫の越冬場所として格好の場所らしく、色々な虫が越冬しています。キジラミとしては他にムクノトガリキジラミも居ました。

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横から見たクロトガリキジラミ

(2010/01/08)



 クロトガリキジラミはエゴノキに寄生し、エゴノキハクボミフシ(エゴノキ・葉・窪み・節)と呼ばれる虫えい(虫瘤:gall)を作ります。全農教の「日本原色虫えい図鑑」には、「翅表に形成される、小さないぼ状の虫えいで、直径2~3mm、ほとんど変色せず、やや淡緑色になることもある。葉裏に黄緑色の幼虫が1匹ずついるが、完全な固着生活ではなく、ときに移動することが出来る。(中略)虫えいは枝の先の葉のみか、先の2~3枚の葉のみに見られる。幼虫はほとんどろう物質を分泌しない」と書かれています。

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葉裏を歩き回るクロトガリキジラミ

この後、ピッと跳んで逃げた

(2010/01/08)



 尚、東京農大の松本浩一氏(1995、日本応用動物昆虫学会大会講演要旨39)に拠ると、「琉球を含めた日本産のT. nigra[クロトガリキジラミ]はエゴノキを寄主とする少なくとも3タイプのものから構成されて」いるが、「種名の特定は模式標本の検視後に残された」とのことです。今後、クロトガリキジラミが数種に分けられる可能性があります。

 撮影した1月8日はかなり暖かく、キジラミは撮影中に動きだし、やがてピッと跳んで逃げてしまいました。そんな訳で、正面や斜めからの写真は有りません。越冬中の虫を撮るには、寒い日に出掛ける方が賢明の様です。


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