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2009年3月29日 (日)

ヒゲユスリカ族(Tanytarsini)の1種

 この春撮った虫の写真はまだあるのですが、調整が出来ていません。そこで、昨年の1月に撮影した越冬中の虫を出すことにしました。
 この虫、何故今まで掲載しなかったのかと言うと、長い間正体不明だったからです。最初見付けたのは「三丁目緑地」に生えているヤツデの葉裏で、体長約2mmの小さな虫がワサワサと這い回る感じで歩いていました。マクロレンズで覗いた最初の印象は、非常に長い前脚を触角と見間違えたせいもあり、奇怪な格好をした捕食性の虫と言う感じでした。この時は直ぐに逃げられてしまったので、充分写真を撮ることが出来ませんでした。

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ヒゲユスリカ族の1種.前脚が非常に長い
ヤツデの葉裏に居た.体長は2mmと小さい
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/01/11)

 数日後に、同じく「三丁目緑地」のビワの葉裏で同種と思われる虫を見付けました。この時はシッカリ撮ることが出来たのですが、毛の生えた翅、翅よりも短く太い腹部、異常に長い前脚・・・、一体何者なのか全く分かりません。目(分類学の目、綱の下、科の上)のレベルで分からないと言う最悪の事態に陥ってしまいました。
 しかし、良く見てみると、横からみた頭部胸部はガガンボなどに似ており、また、平均棍を持っています。触角は明らかに3節を越えていますから、双翅目糸角亜目(広義の蚊の仲間)であることは確かの様です。しかし、その先の科の検索は、虫が小さ過ぎることと翅に毛が生えていて翅脈が良く見えないことにより、全く不可能でした。
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ビワの葉裏を歩き回るヒゲユスリカ族の1種
翅にストロボの光が反射して構造色を生じている
上の写真とは別個体で別の日に撮影
(2008/01/14)

 ほぼ1年経ってから、「ユスリカの世界」と言う本を見たところ、どうもこれはユスリカ科(Chironomidae)の虫の様に思われてきました。しかし、「ユスリカ科」で検索しても此処に掲載した写真と似た様な虫は見当たりません。そこで「Chironomidae」で海外の写真を探してみると、Tanytarsus pallidicornisと言う、掲載の写真に非常に良く似たユスリカが見つかりました。Tanytarsusの和名はヒゲユスリカ属です。
 しかし、「ユスリカの世界」のヒゲユスリカ属の解説を読むと、此処に掲載した写真の虫とは一寸違う様です。そこで、もう一度この本にあるユスリカ科の検索表を辿ってみると、かなり怪しげですが、ユスリカ亜科(Chironominae)のヒゲユスリカ族(Tanytarsini:ヒゲユスリカ属Tanytarsusより一つ上のレベル)に属す可能性が高い様に思われました。
_080114_1_009
上の写真と同一個体(以下同じ)
前から見ると変な顔をしている
(2008/01/14)

 次は、例によって双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に、ヒゲユスリカ族の1種ではないか、との御伺いを立てることと相成ります。
 すると、たちどころにユスリカの専門家であるエリユスリカ氏より、「写真からの判定では、ヒゲユスリカ族の一種までしか判りません。(中略)。残念ながらヒゲユスリカ族には外見では属までは識別するのは困難です。雄生殖器を見れば一瞬で属までは判るのですが。色彩も似たものが沢山います。黄白色のものが殆どです」との御回答を得ました。
 これで、漸く「ヒゲユスリカ族の1種」と安心して書くことが出来ます。これもみな、エリユスリカ氏の御蔭です。
_080114_1_018
斜め前から見たヒゲユスリカ族の1種
平均棍が良く見える
(2008/01/14)

 このヒゲユスリカ、越冬中の個体は少なく、この2頭しか見ることが出来ませんでした。しかし、5月中下旬に「三丁目緑地」と「三ツ池緑地」内の草むらを歩いたところ、今度は正にウンカが沸き上がるが如く沢山出て来ました(同種か否かは分かりませんが、外見的には同じでした)。冬とは違い非常に機敏で、葉に留まるや否やアッと言う間に葉裏に逃げ込んでしまいます。かなり粘ったのですが、まともな写真は1枚も撮れませんでした。
 先のエリユスリカ氏の御話では、「5月頃にヒゲユスリカ属[族?]は水田脇の水路、溜め池等から非常に沢山出てきます。平地ではこの時期がこの族のピーク期です」とのことですから、この点でも一致しています。
 この2つの緑地には何れもかなり水量のある泉があります。どうやら、そこから発生している様です。
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横から見ると頭部胸部はガガンボなどと似ている
翅の上に毛が生えているのが見える
(2008/01/14)

 釣りの餌にする赤虫は、主にアカムシユスリカの幼虫です。このアカムシユスリカやオオユスリカ、セスジユスリカなどは1cmかそれ以上もある大型のユスリカです。しかし、ユスリカ科には2mm以下の小型の種類も沢山います。Web上にあるユスリカの生態写真と言えば大型のユスリカばかりで、今日紹介した様な小型種の写真は皆無に近い状態です。写真から種まで落とすのは、ユスリカの場合、通常は無理ですが、族や属のレベルまでなら何とかなるかも知れません。これからは、ユスリカ類の写真も撮ってみようかと思っています。

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