« ワカバグモ(その2:捕食) | トップページ | エグリヅマエダシャク »

2009年3月 8日 (日)

シマバエ科の未記載種(その2:Steganopsis sp.2

 今日は以前から予告していたシマバエ科の未記載種、「埼玉県昆虫誌」でSteganopsis sp.2とされているハエを紹介します。S. sp.1の方は既に掲載済みです。
 尚、このハエに関する情報は、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」から得たものです。私自身は、未だに「埼玉県昆虫誌」を持っておりません(一寸高いので・・・)。

Stegano_2_081125_1_091
シマバエ科の未記載種Steganopsis sp.2
黄色い菊花に来ていたので黄色カブリで色調が少し変
色が黒くて背が丸く、遠くから見ると甲虫の様
翅が下側に急角度で曲がる点はカスミカメムシ的
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/25)

 撮影したのは先日のSteganopsis sp.1と同時同所で、昨年の11月25日に七丁目の第1家庭菜園(世田谷区ファミリー農園)の縁に植えられている菊の花に来ていました。残念ながら黄色い菊に留まっていたので、写真は黄色カブリを起こし、色調が少し変になっています。sp.1の方はこの時期に何度か見付け、赤い花にも来ていたので綺麗な写真も撮れましたが、このsp.2は、写真の黄色い菊花に来ていた1頭1度だけで、色調の良い写真は遂に撮れませんでした。
Stegano_2_081125_1_101_2
真横から見たSteganopsis sp.2
シマバエ科のハエでは、触角は有毛で
前腿節下面に剛毛列がある
(2008/11/25)

 sp.1は褐色を基調とし、胸部背面に筋があり、京劇役者の化粧の様な赤、黒、白の派手な顔をしていました。中々の美麗種と言えますが、このsp.2の方は頭部を除いて殆ど真っ黒で、余り綺麗とは言えません。しかし、頭頂から顔面にかけてはやや黄色みを帯びた白色をしており、複眼は茶色の様に見えます。複眼の中に見える青や黄~赤色の模様は、ストロボ光の反射による構造色で、本来の色ではありません。
Stegano_2_081125_1_104
斜め前から見たSteganopsis sp.2
額と顔面の大部分はは黄味を帯びた白色
真っ正面からは遂に撮れなかった
(2008/11/25)

 体長は、写真に見られる様な体を丸めた状態で、約3mmです。伸ばせばもう少し大きくなると思います。しかし、こう言う場合、何方を取るべきなのか、私には良く分かりません。「みんなで作る双翅目図鑑」にアノニモミイア氏提供の本種の標本写真が出ていますが、やはり、体は丸まった儘です。この標本写真を見ると、翅は少し赤みを帯びた黒色をしており、前縁部で特に色濃くなっています。
 大きさも色も体の輪郭も、少し遠くから見ると、やはり菊の花に来ていたルリマルノミハムシと間違えそうです。
Stegano_2_081125_1_058
単眼域と額眼縁剛毛の基部は黒い
(2008/11/25)

 写真を見た限りでは、このsp.2も先日のsp.1も、何となく頼り無く鈍感な感じがします。しかし、実際は非常に敏感です。花に留まって食事中だったので写真をシッカリ撮ることが出来ましたが、草の上などに居るときは直ぐに逃げられてしまいます。
 sp.1は一度我が家の庭で見たことがあります。当然写真を撮ろうとしたのですが、”ニセ”アシナガキンバエマダラホソアシナガバエと同様、ストロボ光の増光に反応してストロボが充分明るくなる前に逃げてしまい、写真には葉っぱしか写っていませんでした。
Stegano_2_081125_1_099
花弁の表から裏に回るSteganopsis sp.2
何となくぎこちない感じがするが実際は敏捷
(2008/11/25)

 未記載種と言うことは、まだこのハエを正式に記載した論文が無い、従って学名もないと言うことです。この様なまだ名前のない虫が、成城の様な都会の住宅地にも居ると言う事実は、一般の方には些か不可解なことかも知れません。しかし、双翅目(蚊、虻、ハエ)やその他の微小な昆虫では極く普通のことで、この辺りにもまだまだ未記載種がいる筈です。
 先日紹介したトガリキジラミの1種(その2)も、キジラミの研究をされているとりおざ氏によると、未記載種だそうです。
Stegano_2_081125_1_087
本種の写真はWeb上に多くないので沢山貼っておく
黄色カブリで色調がおかしいのが何とも残念
(2008/11/25)

 しかし、未記載種と言っても、決して珍種なのではありません。このsp.2の方はやや少ないらしいですが、sp.1の方は普通種と言ってよく、このWeblog以外にも幾つかのサイトで紹介されています。
 普通種であるにも拘わらず、未だに記載されていないのは何故かというと、それは分類を担当する研究者の数が絶対的に不足しているからです。
Stegano_2_081125_1_083
オマケその1(2008/11/25)

 北隆館の新訂原色昆虫大圖鑑第3巻にある双翅目の解説に拠ると、その時点(発行は平成20年)での日本産双翅目昆虫の総数は約5,400種ですが、未開拓の分野が多いので、将来的には約10,000種に上るであろう、とのことです。まだ、未記載種や未記録種が5,000種近くもあると言うことです。
 一方、研究者の数の方はどうかと言うと、「一寸のハエにも五分の大和魂」に九大名誉教授の三枝先生が「10年ほど前には10数名の双翅類分類学者が大学や博物館に在籍していたのですが,現在は1/3以下の数になってしまっています」と書かれている様に、甚だ寂しい状況です。数名の研究者で約5,000種を記載するのは、明らかに不可能です。
Stegano_2_081125_1_049
オマケその2(2008/11/25)

 何故研究者が少ないかと言えば、それは分類学が地道で目立たない学問だからでしょう。本来、分類が正しく出来ていなければ生物学のあらゆる分野は科学として成り立ち得ないのですが、学生は電子顕微鏡、超遠心分離器、DNA自動分析機、高性能ガスクロマトグラフィーその他の最新鋭の機器を使ったカッコイイ分野に進みたがります。また、日本では一般に分類学を軽視する傾向がある様です。
 今の内に大学や関連する研究所で若い分類学者をもっと沢山育てる様にしないと、やがて日本は同定を外国に依頼しなければならない分類学後進国になってしまいます。

|

« ワカバグモ(その2:捕食) | トップページ | エグリヅマエダシャク »

昆虫-6」カテゴリの記事

昆虫(双翅目) 」カテゴリの記事

コメント

BABA様

 実は、このハエ、未記載種ではないらしいのです。「一寸のハエにも五分の大和魂・改」の http://diptera.jp/usr/local/bin/perl/dipbbs/joyful.cgi?list=pickup&num=6265#6265 を御覧下さい。
 しかし、私としては、結論に達するにはまだ少し早いのではないか、と云う気がするので、訂正記事は書いておりません。

投稿: アーチャーン | 2011年12月 7日 (水) 09時40分

こんばんは。はじめまして。

撮影した虫の名前を調べるとき結構、こちらのページにたどり着きます。
詳細な記述がとても参考になります。

こちらのページとブログにリンクさせて頂きました。

投稿: BABA | 2011年12月 6日 (火) 21時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/156274/28525588

この記事へのトラックバック一覧です: シマバエ科の未記載種(その2:Steganopsis sp.2:

« ワカバグモ(その2:捕食) | トップページ | エグリヅマエダシャク »