« シナホソカトリバエ(Lispe sinica | トップページ | シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.1)(その2) »

2009年2月27日 (金)

ハムシダマシ

 最近は微小なハエやチャタテムシ等の掲載が続いています。今日は、一寸雰囲気を変えて、昨年の初秋に我が家の庭で撮った甲虫を紹介することにします。
 ハムシダマシ(Lagria rufipennis)、体長は図鑑に拠れば6.2~8.0mm、写真の個体は何れも約7mmです。遠目にはハムシの様に見えますが、写真に撮って見ると全身に細毛を帯びていて、随分ザラザラした感じです。ハムシ科は、Wikipediaに拠れば現在日本に約780種も棲息する大きなグループですが、体や鞘翅に細かいデコボコはあっても、細毛に被われている種類はいません。

_080901_002
ハムシダマシの雌.全身が細毛で覆われている
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/01)

 ハムシダマシはゴミムシダマシ上科ハムシダマシ科(ゴミムシダマシ上科ゴミムシダマシ科ハムシダマシ亜科)に属すのに対し、ハムシはハムシ上科ハムシ科に属します。上科のレベルで所属が違うのですから、これはかなり遠縁であると言えます。以前紹介したセスジナガキマワリはゴミムシダマシ科ですから、このハムシダマシとはかなり近い訳です。一方、ハムシ上科には、他にカミキリムシやゾウムシの仲間が所属します。
 鞘翅目(甲虫類)も、双翅目(虻、蚊、ハエ)と並んで、「他人の空似」が所々に居る要注意のグループです。
 なお、ハムシダマシは、もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」では、一昨年に既に掲載済みです(内容はかなり異なります)。
_080901_009
上と同じ個体.触角の末端節は比較的短く、胸部はかなり太い
(2008/09/01)

 今日掲載した6枚の写真の内、最初の2枚とその後の4枚では個体が異なります(撮影日が違います)。前の個体は胸部が太いのに対し、後の個体は胸部が細く、頭部も少し細長くて菱形をしています。始めは前者が雌、後者は雄だと思っていたのですが、保育社の甲虫図鑑を見ると、「雄の前頭幅は複眼横径の0.6倍、触角は非常に長く、末端節は第3~10節の和にほぼ等しい」と書いてあります。
 後の個体の写真を見ると、前頭幅はもっと広い様ですし、触角の末端節は第6~10節の和にほぼ等しく、明らかに図鑑の記載よりも短くなっています。
_080913_002
ハムシダマシの雄に似た個体.しかし、触角の末端節は
図鑑の記載よりずっと短い
(2008/09/13)

 他に近縁種が居るのかも知れません。しかし、保育社の甲虫図鑑にはLagria属は3種しか載って居らず、他の2種は明らかに該当しません。また、他のハムシダマシ科にも似た種類は見当たりませんでした。
 そこで、九州大学の日本産昆虫目録を参照してみると、図鑑の3種の他にニセハムシダマシと言う種類が載っていました。学名を見ると、何と、甲虫図鑑でハムシダマシに当てられているLagria nigricollisは、九大の目録ではニセハムシダマシ(Lagria nigricollis Hope, 1842)であり、ハムシダマシの学名はLagria rufipennis Marseul, 1876 になっています。分布は何れも日本全土(島嶼については不明)の様です。命名年は何れも19世紀ですから、新種が発見された訳ではなく、また、分布も広いことから、これは以前から日本全土に棲息していた「ハムシダマシ」が、よく見てみると2種類であった、と言うことだと思われます。
_080913_008
細毛に被われていて頭部の詳細が分からない
(2008/09/13)

 残念ながら、ハムシダマシとニセハムシダマシとの違いについて書かれた文献やWebサイトは見つかりませんでした。図鑑の記載その他から判断して、最初の2枚の写真に写っている個体はハムシダマシの雌として特に問題ない様です。
 しかし、後の細長い個体については、ここでは一応「ハムシダマシ」としておきますが、ハムシダマシの異常型、ニセハムシダマシ、或いは、その他の全然違うグループである可能性もあります。
_080913_009
普通は見えるはずの顔が毛でよく見えない
(2008/09/13)

 ニセハムシダマシは、ハムシダマシと同属近縁種ですから、分けて書くとニセ・ハムシダマシとなります。昆虫の名前にはニセ○○○、○○○ダマシ。○○○モドキの類が沢山あります。ニセハムシダマシについて調べていると、余り虫に詳しくないと思しき人が、この様なややこしい虫の名前を面白がって、色々と書いているサイトがかなりの数見つかりました。ニセハムシダマシに付いても、「ニセハムシとハムシダマシの両方があるから、ニセハムシ・ダマシなのかニセ・ハムシダマシなのか分からん」と言う様なことを書いているサイトがありました。しかし、ニセハムシというハムシは居ません。ニセハムシと付く虫は、一見ハムシ的な、カミキリムシ科ハナカミキリ亜科に属すニセハムシハナカミキリ属(Lemula)の仲間が居るだけです。
_080913_015
横から見ると頭部も毛だらけなのが分かる
(2008/09/13)

 ハムシダマシの話は簡単に済むだろうと思っていたのですが、本文記述中に念の為図鑑の解説を読んだ結果、途中から面倒なことになってしまいました。ややこしいのは双翅目だけではない様です。

|

« シナホソカトリバエ(Lispe sinica | トップページ | シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.1)(その2) »

昆虫-6」カテゴリの記事

昆虫(甲虫)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/156274/28391518

この記事へのトラックバック一覧です: ハムシダマシ:

« シナホソカトリバエ(Lispe sinica | トップページ | シマバエ科の未記載種(Steganopsis sp.1)(その2) »