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2009年2月25日 (水)

シナホソカトリバエ(Lispe sinica


 昨年の晩秋に、かなり沢山のハエを撮ったせいで、ハエの写真が溜まっています。そこで今日もハエを紹介することと相成りました。

 シナホソカトリバエ(Lispe sinica)です。撮影したのは、先日のヒメフンバエやウスイロアシブトケバエ()(これはハエと付いても蚊の仲間)と同じく、「三丁目緑地」の上部に群生しているシャクチリソバの葉上です。体長約5mm、翅端まで6.5mmですから、ハエとしてはやや小さめと言えますが、このWeblogで最近紹介しているハエと較べるとかなり大型です。


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シナホソカトリバエ(Lispe sinica).イエバエ科に属すが

M1脈(下端右から前縁脈を除いて3本目の翅脈)が真っ直ぐ

(クリックで拡大表示、以下同じ)

(2008/11/13)



 イエバエ科に属しますが、衛生害虫として有名な「イエバエ」とは随分形が違っています。これが双翅目の困ったところで、1つの科に属するにも拘わらず、様々な外見の種類が居ます。

 特にイエバエ科の場合は、このシナホソカトリバエの様にM1と呼ばれる翅脈(上の写真参照)が真っ直ぐな連中と、ニクバエ科やヤドリバエ科(例えば「アシナガヤドリバエの1種」)の様に前方に強く曲がる仲間の両方が居ます。

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腹側板(前肢と中肢の間)に3本の剛毛があるのだが

写真の解像度が低くて些か分かり難い

前脛節の中程に後ろ向きの剛毛がある

(写真を拡大して見て下さい)

(2008/11/10)



 イエバエ科に至るまでの検索や、その下の亜科や属の検索には、写真には写り難い(中肢や後肢の腿節で隠れてしまう)翅や胸弁の下側にある剛毛の有無やその数が問題になることが多く、ここに掲載した写真からは良く検索が出来ませんでした。こう言う場合は、WEB上にあるハエの写真を探して、似たような種類を見付ける以外に手がありません。

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小顎鬚(頭部の下に見える1対の構造)は幅広く黄色

(2008/11/13)



 探してみると、カトリバエの仲間によく似ていました。そこで、次は双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」でカトリバエの詳細な写真を探すことになります。この掲示板にはワード検索がありますので、直ぐに幾つかの生態写真や標本写真が見つかり、その内のシナホソカトリバエと非常に良く似ていることが分かりました。特に、Acleris氏が出されている標本写真と較べてみたところ、頭部、胸部、脚の剛毛は基本的に一致している様に見えました。しかし、双翅目に関して恐ろしいのは「他人の空似」です。

 イエバエ科に関しては「日本のイエバエ科」と言う文献があります(色々問題が指摘されていますが・・・)。亜科や属の検索は写真からでは無理でしたが、カトリバエ(Lispe)属内の検索では、些か怪しげですが、シナホソカトリバエに落ちました。

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解像度が低くて、翅の下の剛毛が良く見えない

(2008/11/10)



 そこでまた、この掲示板に御伺いを立てることと相成ります。するとたちどころにアノニモミイア氏より「ほぼ間違いなくシナホソカトリバエでしょう」との御回答を得ました。氏はその後、5枚もの同定の決め手となる詳細な標本写真を載せて下さいました。これらの写真と比較した結果、また、東京都本土部昆虫目録を見るとLispe属はシナホソカトリバエとトウヨウカトリバエの2種しか記録が無いことから、このハエはシナホソカトリバエとして問題ないものと判断しました。

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最初の写真とほぼ同じだが、横線前背中剛毛は明らかに1本

(2008/11/10)



 カトリバエとは「蚊取蠅」の意で、「日本のイエバエ科」に拠れば、この属(Lispe)の仲間のあるもの(成虫)は、蚊の幼虫、蛹、或いは、羽化してきた成虫を食べる肉食で、幼虫は水棲とのことです。

 また、成虫は海、汽水、川などの縁に普通に見られる、とあります。「三丁目緑地」に沢山いたところを見ると、このシナホソカトリバエは、緑地内に2個所ある清水から発生している可能性が大です。

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オマケにもう1枚(2008/11/13)



 このシナホソカトリバエ、11月の10日頃には非常に沢山いたので、後で撮ればよいと思い余りキチンと撮りませんでした(絞りを絞って深度を深くして撮ってあるので、解像度が低い)。しかし、22日に行ってみたところ、何と、1頭も見られませんでした。御蔭で解像度の高い写真が無く、剛毛の有無が分からなくて苦労しました。

 これに懲りて、その後はもう少し絞りを開けて解像力を上げて撮る様にしています(焦点深度が浅くなるので撮影は難しくなる)。既に紹介済みのセンダングサケブカミバエノゲシケブカミバエヒゲブトキモグリバエ?キタモンヒゲブトキモグリバエ等は、体長はこのシナホソカトリバエよりずっと小さいにも拘わらず、かなり高解像度で撮ってあるので、それなりに鮮明に写っています。


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