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2008年12月17日 (水)

ウスグモスズ

 今日はこのWeblogで初めてのコオロギ科の虫を紹介します。と言っても、普通のコオロギではありません。クサヒバリ亜科のウスグモスズ(Usugumona genji Furukawa, 1970)と言う、体長6mm前後の小さな虫です。
 「四丁目緑地」の横に植えられている灌木(サツキ?)の上にいました。余り記憶が定かでないのですが、写真を見ると、灌木に絡んでいたヤブガラシの葉上に居るところを撮影した様です。

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ウスグモスズ(雄).体長6mm、触角が非常に長い
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/24)

 この虫、暫く名前が分かりませんでした。体に模様らしい模様がない点や体色では、キンヒバリに良く似ています。しかし、頭部の形は全然違います。頭部の形ではクサヒバリに近いのですが、クサヒバリの様な斑紋はありません。また、体が全体的に少し長目です。
 日本直翅類学会の編纂した「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」でも見れば載っているかも知れません。しかし、私はこんな高い図鑑(定価5万円です)は持っていませんし、世田谷区中央図書館の所蔵図書の中にもありませんでした。
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触角を片方曲げる時は警戒中らしい
(2008/09/24)

 暫く放置していたのですが、兪々掲載する段になってもう一度、Internetで調べてみました。人間、その気になると、随分違うものです。直ぐにウスグモスズと言うかなり最近入って来た帰化昆虫(外来種)であることが分かりました。
 北隆館の圖鑑にも載っており、「1960年代に東京都区部西部に入り、後、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡県、奈良県と分布を広げている」と書かれています。「東京都区部西部」と言えば、正にこの辺り(東京都世田谷区西部)です。
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背側から見たウスグモスズ.斑紋らしい斑紋はない
後肢脛節には長い棘が沢山ある
(2008/09/24)

 この虫、変な虫です。帰化昆虫とされているにも拘わらず、原産地がよく分からないと言うのです。今回は特に学名に命名者と命名年を付けておきました。学名(Usugumona genji Furukawa, 1970)を見てお分かりの通り、Furukawaと称する日本人と思しき人物が、昭和45年に「源氏の薄雲」と言う甚だ風雅な名前を付けています。帰化種だと言うのに、日本人が最近になって初めて記載したとは、一寸変な話です。
 更に奇妙なことに、学名のUsugumona genjiでGoogle検索すると、朝鮮半島、台湾を含めて外国のサイトは一つもヒットしません。属名のUsugumonaだけでも同じです。これは、外国では一切報告が無い、と言うことを意味していると考えて良いでしょう。日本でしか記録がないのに帰化種、何とも変な話です。
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近くから見ると透明感があり綺麗な虫である
葉裏に逃げ込んだのをひっくり返して撮影
(2008/09/24)

 九州大学の日本産昆虫目録を見ると、Usugumonaには、このウスグモスズ1種しか載っていません。前述の様に、外国では全く報告が無いのですから、これは世界で1属1種であることを意味しています。と言うことは、命名したときに新属を立てたことになります。
 双翅目(ハエ、アブ、蚊)や膜翅目(ハチ)などには未記載種が普通に居ますし(例えば、シマバエ科の未記載種)、未知の種も相当居ると考えられています。トビムシの様な微小な昆虫の場合も同様です。しかし、新種はそれ程珍しくなくても、新属と言うのはそう易々と出るものではありません。
 思うに、直翅目(バッタ、コオロギ、キリギリス)の昆虫はかなり大型ですし、種類数も偶産種を含めて400数10種とかなり小さいグループです。日本産直翅目には未だ分類の確定しない未記載種がかなり居るそうですが、未整理ではあってもどういう種類が居るのかはかなり徹底的に調べられているものと思われます。特に東京都区内ではもう新種の出る可能性など殆どゼロに等しいでしょう。其処に、突如として有り得べからざる新属が現れた(しかも、恐らくかなりの頭数で)、と言うのが、このウスグモスズが帰化種と考えられている根拠なのではないでしょうか。
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正面から見たウスグモスズ.拡大し過ぎで画質が良くない
(2008/09/24)

 クサヒバリ亜科には、クサヒバリを始めキンヒバリやカヤヒバリの様に、大きくはありませんが棲んだ声でなく虫が沢山居ます。しかし、このウスグモスズは翅に発音器が無く、鳴くことが出来ません。普通コオロギ科やキリギリス科に属す鳴く虫の前脛節には、聴器(耳)があります(例えばサトクダマキモドキ)。しかし、このウスグモスズの前脛節を見ると、若干膨らんだ部分がありますが、聴器と言える程のものは見えません。
 同じ亜科に属すクロヒバリモドキやその近縁種も発音器と聴器を共に欠くそうです。コオロギ科だからと言っても、必ずしも音に頼った生活をしているとは限らない様です。
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葉裏に逃げたウスグモスズ.黒い眼が円らで可愛い
(2008/09/24)

 本当は、この虫は「クサヒバリ亜科の1種」として種名不明のまま掲載するつもりでした。しかし、もう一度調べてみようと言うところから話がややこしくなり、原稿を書くのに随分手間がかかってしまいました。明日はもう少し簡単な種類にしようと思います。

[追記]:ウスグモスズの属名は、北隆館の原色昆虫大圖鑑第3巻、九州大学の日本産昆虫目録や東京都本土部昆虫目録ではUsugumonaになっていますのでその様に書きましたが、その後Usgmonaとしているサイトもあることが分かりました。
 このUgsmonaで検索すると、外国のサイトの方が沢山出て来ます。しかし、それらは何れも種の目録の様なもので、やはり日本以外に産すると言う報告は含まれていませんでした。
 これらのサイトを参照すると、どうも最初の記載はUsgmonaで行われた様です。何時、何故、UsgmonaUsugumonaに替わったのかは良く分かりません。

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コメント

昨年より幼生を目にしましたが、お陰で名前がわかりました。ありがとうございます。
「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」を見ました。以下抜粋
ウスグモスズ属 Genus Metiochodes Chopard, 1931 14種が知られ日本に2種
形態的特徴からはヒバリモドキ属に含みうるが、まだ未解明の問題もあり、本図鑑では従来どおり別属としておく。
ウスグモスズ Metiochodes genji(Furukawa, 1970) 本種は外来種であろう。
カルニーウブゲヒバリ Metiochodes karnyi(Chopard, 1930)石垣島、西表島

投稿: のしめはん | 2010年8月10日 (火) 20時25分

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