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2008年12月の15件の記事

2008年12月30日 (火)

マルゴミグモ

 やはり暮れになると、雑用に追われて更新が滞りがちになります。もう今年はサボってしまおうか、と思ったのですが、写真の方は溜まりに溜まって居ます。そこで、今年最後として一寸変わったクモを紹介することにしました。
 マルゴミグモ(Cyclosa vallata)と言う腹部が真ん丸に近いクモです。ゴミグモは漢字で書けば塵蜘蛛で、捕まえた獲物の残骸や風で飛んで来て巣に引っ掛かったもの等を巣の中心近くに並べておくので、その名があります。

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ほぼ水平に張った網に背位占座するマルゴミグモ
折り畳んだ脚からお尻の端まで5mm弱
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/12/08)

 オニグモや、ジョロウグモに一寸似たコガネグモ等が属すコガネグモ科のクモです。コガネグモ科の下にゴミグモ属(Cyclosa)があり、日本には20数種が棲息している様です。細長い体をした種を除けば、何れも体長1cm未満の小さなクモで、このマルゴミグモは5mm前後です。
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近くで見るとこんな感じ(2008/12/08)

 図鑑には、最近急激な北上傾向が認められる、と書いてありますから、南方系の種の様です。Internetで調べてみると、1960年代の太平洋側での北限は紀伊半島の潮岬だったのが、1982年に横浜市、2002年に世田谷区で1匹ずつ見つかり、今年(2008年)の7月下旬には国会議事堂周辺で、何と67匹ものマルゴミグモが見つかったそうです。東京では、もう普通種と言っても良い様です。
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体の下にある白い糸の固まりは何?
(2008/12/08)

 また図鑑には、海岸地域に多く棲息、とありました。成城は海岸地帯とは言えません。図鑑に載っていない、マルゴミグモに似た別の種類があるのかも知れません。こでまた検索してみると、ゴミグモ属に関する「Akio TANIKAWA1:A Revisional Study of the Japanese Spiders of the Genus Cyclosa MENGE (Araneae:Araneidae)」と言う論文が見つかりました。これを読んでみると、似た様な形をしたヒメマルゴミグモはずっと小型ですし、トゲゴミグモはこの辺りに分布していないので、候補はマルゴミグモしか残りません。しかし、それでも多少の不安が残ります。そこで、「クモ蟲画像掲示板」に御伺いを立ててみたところ、マルゴミグモで間違いないとの御回答を得ました。
 「海岸性」と言うのは余り関係なく、東京では少なくとも、小金井、八王子当たりまでは進出しているそうです。
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正面から見たマルゴミグモ.脚の間から頭が覗いている
(2008/12/08)

 居たのは「三丁目緑地」です。国分寺崖線の上側に当たる、シャクチリソバの群落近くに植えられたドウダンツツジの間に、ほぼ水平に巣を張り、その上側に乗っかっていました。「クモ蟲画像掲示板」に拠ると、こう言うのを背位占座と称すのだそうで、一般にマルゴミグモ以外では見られない占座方式なのだそうです(前の方で「一寸変わったクモ」と書いた所以です)。しかし、マルゴミグモの占座様式はこれに限らず、水平、垂直、斜め等の網に上向き、横向き、下向きなど様々とのことです。
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オマケにもう1枚.網は少し傾斜していたが
この写真では実際よりも傾斜が急に見える
(2008/12/08)

 今年はこれが最後の更新になります。このWeblogに関して今年を振り返ると、書き込み回数は今回を入れて134回、昨年と比較すると、私が日本に居なかった時期を除いて、マァマァの更新率でした。もう一方のWeblogは、我が家の庭で撮った写真しか載せませんので、今後、段々と慢性的なネタ切れ状態になるものと思われます。
 しかし成城の町全体としては、容易にネタ切れになることはありません。来年は、結果的に此方の方に重点が移るのではないかと思われます。
 それでは皆様、良い御年をお迎え下さい。

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2008年12月25日 (木)

キタモンヒゲブトキモグリバエ

 暮れも兪々押し迫って来ました。余り時間が有りませんので、今日は写真の少ない虫を紹介します。
 キタモンヒゲブトキモグリバエ(Gampsocera numerata)、体長2.5mm、翅端まで3.0mmのキモグリバエ科に属す小さなハエです。
 「四丁目緑地」の近くに植えられているミカンの木の葉裏に居ました。もう夕方で、しかも良く繁ったミカンの木の奥なので見え難くかったのですが、小さいながらも非常に綺麗なハエだと言うことが分かりました。是非、横からも撮りたかったのですが、この日は暖かかったせいか敏感で、すぐに逃げられてしまいました。そんな訳で、写真は1枚しか有りません。

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キタモンヒゲブトキモグリバエ(Gampsocera numerata
触角や頭部の形が独特、翅にも斑模様がある
(クリックで拡大表示)
(2008/11/30)

 初めて見る種類のハエです。触角が太く、翅には模様があります。何科に属すのか見当も付かないので、検索表を引かなければなりません。しかし、写真はかなり高解像度で(絞りを空けて)撮ってあるにも拘わらず、何となくボーとしています。これは、複眼、胸部、翅の前縁脈等に細かい毛が生えているからです。この程度の写真で検索表を引くのは一寸無理と言うものです。  しかし、触角や頭部の形と翅の斑紋が一種独特ですから、画像を検索すれば何とかなるかも知れません。そこで、「みんなで作る双翅目図鑑」の画像一覧で、似たようなハエが居ないか一つひとつ照らし合わせてみました。
 ・・・すると、Gampsocera numerataと言うキモグリバエ科のハエが、写真とそっくりな翅の模様をしていました。また、このサイト内にある掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」にもこのハエに関する記事があり、和名はキタモンヒゲブトキモグリバエであることが分かりました。しかし、何れも標本写真で、生態写真とは随分違って見えます。そこで同掲示板に御伺いを立ててみたところ、バグリッチ氏より、このハエはキタモンヒゲブトキモグリバエGampsocera numerataであると考えています、と言う主旨の御回答を頂きました。
 CiNiiに収録されている論文「上宮健吉:赤坂御用地のキモグリバエ科」に拠ると、このハエの幼虫は腐植を食べ、ハワイではバナナやパパイヤ等の腐った茎で飼育した例があるそうです。また、過去には採集の記録が非常に少ないにも拘わらず、赤坂御用地ではかなりの数が採れたと書かれていました。しかし、少なくとも現在では珍しいハエではないらしく、バグリッチ氏によると、氏のフィールドでは秋から冬にかけて最も多く見つかるキモグリバエの一つだそうです。
 もし、この辺りでも普通の種であれば、この冬にまたこのキタモンヒゲブトキモグリバエに御目に掛かることが出来るかも知れません。その時は、横、前、斜めからも写真を撮って、再度掲載したいと思っております。

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2008年12月24日 (水)

ハラヒシバッタ

 先日メダカチビカワゴミムシを掲載しましたが、今日は同じ日に同じケヤキの木にいたハラヒシバッタを紹介します。尤も、同じケヤキの木と言っても、ゴミムシが居たのは樹皮の裏で、このバッタが居たのは樹皮の表面です。
 以前はこの類のバッタは単にヒシバッタと呼ばれていました。しかし、最近は研究が進んで、ハラヒシバッタ、ヤセヒシバッタ、コバネヒシバッタ、ヒメヒシバッタ等に分けられたとのことです。最も普通なのがハラヒシバッタで、写真のバッタはこのハラヒシバッタとしてありますが、ヒシバッタ類については手持ちの資料がなく、別の種類の可能性もあります。

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ケヤキの樹皮上に居たハラヒシバッタ
体長約1cm.見事な保護色
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/24)

 普通ハラヒシバッタを見るのは地面の上か背の低い草の上です。しかし、このヒシバッタは陽の当たるケヤキの木の高さ160cm位の所にいました。或いは、ハラヒシバッタではないのかも知れません。
 これまで余り樹皮の表面にいる虫に興味を持ったことがないせいか、こう言うところにヒシバッタが居るとは全然知りませんでした。実に見事な保護色で、地面に居るときよりも見付けるのがずっと困難です。このヒシバッタは本来樹上生活者ではないのか、と考えたくなる程です。
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側面から見ても分かり難い
(2008/09/24)

 しかし、この写真を撮った後1ヶ月程経ってから、七丁目の「ファミリー農園」で西日の当たるコンクリートの壁にもヒシバッタがかなりの数張り付いて居るのを見付けました。この時は保護色の反対で、その存在はかなり目立ちました。こう言う少し高い陽の当たる所に居るのは、どうやら日向ぼっこが目的の様です。
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背景をぼかして撮れば分かり易い
しかし、肉眼ではこうは見えない
(2008/09/24)

 ヒシバッタ類は直翅目バッタ亜目ヒシバッタ科に属します。バッタの仲間ですが、翅が退化していて飛べません。その代わり太い後腿節を使い、大きさに比してかなりの距離を跳びます。
 飛べないバッタ類としては、他にフキバッタやオンブバッタ等があります。
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ハラヒシバッタの顔.クルマバッタモドキコバネイナゴとは
また少し違った顔をしている(2008/09/24)

 ハラヒシバッタは体色や模様の変化が著しいバッタです。しかし、多くは背中の菱形の部分(肥大した小楯板)の外側に、最初の写真で明らかな様に黒斑が1対あります。
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黒斑の無いヒシバッタ.右後脚が無く、眼が潰れている
(2007/07/24)

 上の写真は昨年の夏に「三丁目緑地」で撮ったヒシバッタです。黒斑が無く、全身ほぼ一様の配色です。右後脚が無く、眼も潰れているので没にしていたのですが、無紋の例として復活させました。ヒョッとすると、別種のヒシバッタなのかも知れません。

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2008年12月23日 (火)

トホシクビボソハムシ

 この秋に撮ったハエの写真の整理と調整をしていたら、4日も更新を空けてしまいました。ハエ類の写真を撮ったのは良いのですが、何れも一見しただけでは種名どころか科すら分かりません。ハエの分類は難しく、科を調べるだけでもヒジョウーに時間がかかるのです。
 そこで今日は、12月に入ってから撮ったハムシの写真を出すことにしました。トホシクビボソハムシ(Lema decempunctata)、以前紹介したキバラルリクビボソハムシと同じく、ハムシ科クビボソハムシ亜科に属します。

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トホシクビボソハムシ.背側からはヨホシ(四星)に見える
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/12/04)

 「三丁目緑地」の一番下にある公園に居ました。数本のサワラと以前紹介したエゴノキを切り倒して作った人工的な公園です。端の方に残っていたシャクチリソバの葉裏に留まっていましたが、直ぐ横に食草のクコがありましたから、そこが本来の居場所なのでしょう。
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横から見ると片側に5、左右で10の黒斑があるのが分かる
(2008/12/04)

 背側から見ると4つの黒斑が目立ち、これでは「ヨホシ=四星」ではないか、と言う感じがします。しかし、横から撮った写真を見ると、鞘翅の下寄りに小さい黒斑が3つ、上の方にやや大きいのが2つ、左右で丁度10個、「トホシ=十星」で間違いない様です。
 ところが、このトホシクビボソハムシ、斑紋の変化が著しく、黒斑が全く消失した個体も居るとのことです。この黒斑が無いと、図鑑で探すのに一寸時間がかかるかも知れません。因みに、保育社の甲虫図鑑に載っている個体には黒斑が4つしかありません。
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このハムシも正面から見ると険悪な顔をしている
(2008/12/04)

 12月にハムシを見た記憶は余りありません。晩秋の生き残りかと思いましたが、調べてみると、ハムシ類は成虫越冬が多い(一般的?)様で、このトホシクビボソハムシも成虫越冬です。この辺り(東京都世田谷区西部)は基本的にハムシの少ない所(日本産ハムシは500種以上、成城で見たハムシは約10種で全体の僅か2%!!)ですから、見る機会がその分少ないだけなのかも知れません。
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触角が少し邪魔になってしまった
(2008/12/04)

 このハムシの居た場所の直ぐ横には、クコの小さな木があり、その葉にはトホシクビボソハムシの幼虫と思しき虫が居ました。クビボソハムシ類の幼虫と言うのは、一寸風変わりな形をしています。近日中に紹介の予定です。

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2008年12月18日 (木)

マミジロハエトリ(雄)

 今日は、昨日掲載したウスグモスズと同じ場所(「四丁目緑地」横の植込み)に居たマミジロハエトリ(Evarcha albaria)の雄を紹介します。ウスグモスズが葉裏に隠れて一時的に見えなくなったとき、近くの葉裏から現れました。ウスグモスズはまた現れましたが、このマミジロは直ぐに葉陰に入ってそれっきりだったので、写真は少ししかありません。
 雄の体長は6~7mm、雌はこれより1mm程度大きく、ハエトリグモとしては中位の大きさです。北海道から九州まで、高地を除く平地や山地に分布するとのことです。

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正面から見たマミジロハエトリの雄.白い眉毛が特徴
双眼鏡の様な前中眼がハエトリグモの特徴、その横にある
少し小さな眼は前側眼
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/24)

 目の上に真っ白な「1本眉」があります。これが雄の一大特徴で、これ一つで雄のマミジロであることが分かります。
 雌には白い眉はありませんが、その代わり、眼域の後にそれを囲む様に淡色の帯があります。丁度、襟巻きをした様な格好です。更に、雌の腹部後端近くには縦に長い楕円形の黒色斑が1対あります。
 なお、「日本のクモ」に拠れば、それ以外の部分は、非常に色彩の変化に富んでいるとのことです。
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マミジロハエトリの雄.頭胸部中央の端にある眼は
後側眼.後中眼は小さく白帯の直後にある
引き糸が写っている(2008/09/24)

 2、3番目の写真には、お尻から出ている引き糸が写っています。先日のワカバグモでも引き糸が写っていました。引き糸は、普通は中々写らないものですが、偶然2種連続で写りました。
 前にも書きましたが、クモ類は常にこの引き糸を出しており、何かの拍子で落下しても、この引き糸を手繰ることにより元の場所に戻ることが出来ます。
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跳躍する前には脚を内側に曲げて体を丸める
(2008/09/24)

 ハエトリグモはチョコマカと落ち付きなく動き回りますし、小さい割りには体高があります。私の様に焦点深度の浅い100mmマクロで撮るものにとっては嫌な相手です。ついつい絞り込んで撮ってしまうので、余りカチッとした写真になりません。もう少し焦点深度の深いレンズ、或いは、焦点距離の短いコンパクトカメラを使えば、もっと楽に綺麗な写真が撮れると思います。

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2008年12月17日 (水)

ウスグモスズ

 今日はこのWeblogで初めてのコオロギ科の虫を紹介します。と言っても、普通のコオロギではありません。クサヒバリ亜科のウスグモスズ(Usugumona genji Furukawa, 1970)と言う、体長6mm前後の小さな虫です。
 「四丁目緑地」の横に植えられている灌木(サツキ?)の上にいました。余り記憶が定かでないのですが、写真を見ると、灌木に絡んでいたヤブガラシの葉上に居るところを撮影した様です。

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ウスグモスズ(雄).体長6mm、触角が非常に長い
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/24)

 この虫、暫く名前が分かりませんでした。体に模様らしい模様がない点や体色では、キンヒバリに良く似ています。しかし、頭部の形は全然違います。頭部の形ではクサヒバリに近いのですが、クサヒバリの様な斑紋はありません。また、体が全体的に少し長目です。
 日本直翅類学会の編纂した「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」でも見れば載っているかも知れません。しかし、私はこんな高い図鑑(定価5万円です)は持っていませんし、世田谷区中央図書館の所蔵図書の中にもありませんでした。
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触角を片方曲げる時は警戒中らしい
(2008/09/24)

 暫く放置していたのですが、兪々掲載する段になってもう一度、Internetで調べてみました。人間、その気になると、随分違うものです。直ぐにウスグモスズと言うかなり最近入って来た帰化昆虫(外来種)であることが分かりました。
 北隆館の圖鑑にも載っており、「1960年代に東京都区部西部に入り、後、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡県、奈良県と分布を広げている」と書かれています。「東京都区部西部」と言えば、正にこの辺り(東京都世田谷区西部)です。
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背側から見たウスグモスズ.斑紋らしい斑紋はない
後肢脛節には長い棘が沢山ある
(2008/09/24)

 この虫、変な虫です。帰化昆虫とされているにも拘わらず、原産地がよく分からないと言うのです。今回は特に学名に命名者と命名年を付けておきました。学名(Usugumona genji Furukawa, 1970)を見てお分かりの通り、Furukawaと称する日本人と思しき人物が、昭和45年に「源氏の薄雲」と言う甚だ風雅な名前を付けています。帰化種だと言うのに、日本人が最近になって初めて記載したとは、一寸変な話です。
 更に奇妙なことに、学名のUsugumona genjiでGoogle検索すると、朝鮮半島、台湾を含めて外国のサイトは一つもヒットしません。属名のUsugumonaだけでも同じです。これは、外国では一切報告が無い、と言うことを意味していると考えて良いでしょう。日本でしか記録がないのに帰化種、何とも変な話です。
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近くから見ると透明感があり綺麗な虫である
葉裏に逃げ込んだのをひっくり返して撮影
(2008/09/24)

 九州大学の日本産昆虫目録を見ると、Usugumonaには、このウスグモスズ1種しか載っていません。前述の様に、外国では全く報告が無いのですから、これは世界で1属1種であることを意味しています。と言うことは、命名したときに新属を立てたことになります。
 双翅目(ハエ、アブ、蚊)や膜翅目(ハチ)などには未記載種が普通に居ますし(例えば、シマバエ科の未記載種)、未知の種も相当居ると考えられています。トビムシの様な微小な昆虫の場合も同様です。しかし、新種はそれ程珍しくなくても、新属と言うのはそう易々と出るものではありません。
 思うに、直翅目(バッタ、コオロギ、キリギリス)の昆虫はかなり大型ですし、種類数も偶産種を含めて400数10種とかなり小さいグループです。日本産直翅目には未だ分類の確定しない未記載種がかなり居るそうですが、未整理ではあってもどういう種類が居るのかはかなり徹底的に調べられているものと思われます。特に東京都区内ではもう新種の出る可能性など殆どゼロに等しいでしょう。其処に、突如として有り得べからざる新属が現れた(しかも、恐らくかなりの頭数で)、と言うのが、このウスグモスズが帰化種と考えられている根拠なのではないでしょうか。
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正面から見たウスグモスズ.拡大し過ぎで画質が良くない
(2008/09/24)

 クサヒバリ亜科には、クサヒバリを始めキンヒバリやカヤヒバリの様に、大きくはありませんが棲んだ声でなく虫が沢山居ます。しかし、このウスグモスズは翅に発音器が無く、鳴くことが出来ません。普通コオロギ科やキリギリス科に属す鳴く虫の前脛節には、聴器(耳)があります(例えばサトクダマキモドキ)。しかし、このウスグモスズの前脛節を見ると、若干膨らんだ部分がありますが、聴器と言える程のものは見えません。
 同じ亜科に属すクロヒバリモドキやその近縁種も発音器と聴器を共に欠くそうです。コオロギ科だからと言っても、必ずしも音に頼った生活をしているとは限らない様です。
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葉裏に逃げたウスグモスズ.黒い眼が円らで可愛い
(2008/09/24)

 本当は、この虫は「クサヒバリ亜科の1種」として種名不明のまま掲載するつもりでした。しかし、もう一度調べてみようと言うところから話がややこしくなり、原稿を書くのに随分手間がかかってしまいました。明日はもう少し簡単な種類にしようと思います。

[追記]:ウスグモスズの属名は、北隆館の原色昆虫大圖鑑第3巻、九州大学の日本産昆虫目録や東京都本土部昆虫目録ではUsugumonaになっていますのでその様に書きましたが、その後Usgmonaとしているサイトもあることが分かりました。
 このUgsmonaで検索すると、外国のサイトの方が沢山出て来ます。しかし、それらは何れも種の目録の様なもので、やはり日本以外に産すると言う報告は含まれていませんでした。
 これらのサイトを参照すると、どうも最初の記載はUsgmonaで行われた様です。何時、何故、UsgmonaUsugumonaに替わったのかは良く分かりません。

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2008年12月15日 (月)

フタホシヒラタアブ

 今日は久しぶりにヒラタアブの登場です。フタホシヒラタアブ(Eupeodes(Metasyrphus) corollae)、ハナアブ科ヒラタアブ亜科に属します。ヒラタアブとしては中程度の大きさで、この個体の体長は約8mmですが、もう少し大きい個体も居ます。

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フタホシヒラタアブ.複眼の間が離れているので雌
頭頂と触角の間に一様な黒っぽい部分はない
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/11)

 先日紹介した六丁目にある原種に近いサザンカの花に来ていました。ヒラタアブ類は、菊類の花が好きらしくよく訪花していますが、サザンカにも時々やってきます。
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小楯板(胸背の後にある半月形の部分)に生えている毛は茶色
(写真をクリックして拡大して見て下さい)
(2008/11/11)

 よく似た種類にナミホシヒラタアブがあります。このアブは、昨年秋、キクの花に来ているのを紹介しました。この時、フタホシヒラタアブも一緒に居ましたが、背側からしか撮れなかったので掲載はしませんでした。
 一般にフタホシはナミホシよりも小型です。北隆館の圖鑑にはフタホシは8~10mm、ナミホシでは10~12mmと書かれています。しかし、ハナアブ類にかけては一番詳しい「北海道の昆虫」では、それぞれ8~10mm、8.5~12mmとなっており、広い範囲で重複して居ます。写真から大きさを判断する場合、特に倍率を定めて撮影していなければ、2割程度の大きさの違いを区別することはかなり困難です。
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真横から見ると、小楯板の毛が茶色いのが良く分かる
(写真をクリックして拡大して見て下さい)
腿節には暗色の部分が少ない
(2008/11/11)

 一般にフタホシでは、腹部の黄紋が全て左右に分かれており、ナミホシでは最初の黄紋以外は左右が連続しています。しかし、中には黄紋の繋がったフタホシや、全ての黄紋が左右に分かれたナミホシも居るので、これだけで両者を区別するのは無理です。
 また、ナミホシは、フタホシに較べて脚に暗色の部分がかなり多い様です。が、これも個体差があって簡単には判断出来ません。
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付節の先の方は色が濃い(2008/11/11)

 ヒラタアブを含むハナアブ科のアブ(本当はハエなのですが此処ではアブとしておきます)では、雌は左右の複眼の間が離れており、雄ではくっ付いています。このフタホシは、眼と眼の間が離れているので、雌になります。
 ナミホシの雌の場合、単眼のある頭頂の真っ黒な部分と触角の付け根の間に黒色毛が生えており、一様に薄黒く見えます。フタホシの場合は、写真で見るとおり、多少は黒ずんだ部分がありますが、一様に薄黒くはありません。雌の場合は、この方式で両者を区別できる様に思えます。しかし、雄の場合は眼と眼がくっ付いているのでこの部分は存在せず、判断の下し様がありません。
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頭頂と触角の間に一様な黒っぽい部分がなく
顔面に黒色中条がある(2008/11/11)

 雄の場合、種の区別を確実にするのならば、交尾器を見るのが一番です。しかし、生態写真で交尾器を見ろと言うのはドダイ無理な話です。
 幸い、この両者の間にはもう一つ違いがあります。小楯板(胸背の後にある半月形の部分)の毛の色です。ナミホシの小楯板に生えている毛は黒く、小楯板に暗い影として写ります。フタホシの方は、茶色っぽい毛が生えており、小楯板の色と大差が無いので、明確な影にはなりません。
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オマケにもう1枚.脚の踏ん張り方がスゴイ
サザンカの花弁は滑り易いのか?
(2008/11/11)

 北隆館の圖鑑を見ると、ナミホシヒラタアブの解説に「額は黄灰食粉で被われ、被毛は黒色・・・小楯板はろう灰色で被毛は大部分黒色」とあります。しかし、フタホシヒラタアブの項には毛に付いての記載がありません。
 まァ、このフタホシとナミホシの見分け方は、謂わば私の経験則の様なものです。余り信用はしないで下さい。

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2008年12月14日 (日)

ヒメコバネナガカメムシ

 先日、「トビムシの1種」を掲載しましたが、今日は同じ日に、同じく「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮下に居た小さなカメムシを紹介します。
 ヒメコバネナガカメムシ(Dimorphopterus bicoloripes)、ナガカメムシ科コバネナガカメムシ亜科(Blissinae)に属す体長3.5mmの小さなカメムシです。

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ケヤキの樹皮下に居たヒメコバネナガカメムシ
体長は3.5mmと小さい
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/30)

 このカメムシ、「日本原色カメムシ図鑑」には載っていません。似た種類で載っているのはヒメの付かないコバネナガカメムシとスナコバネナガカメムシの2種で、特に後者はこのカメムシに非常によく似ています。この仲間のカメムシは短翅型と長翅型があり、無印コバネの方は短翅型しか写真がないので、余り似ている様には見えないのです。
 しかし、図鑑の解説には、コバネは湿地のマコモやヨシ、或いは、水田のイネ等に寄生するとあり、また、スナコバネの方は、海岸や河川のイネ科植物の根際で発見される、と書かれています。ケヤキの樹皮下とは随分違う環境です。恐らく別種でしょう。
 こう言うときは「カメムシBBS」の御世話になるのが一番です。「カメムシBBS」内を検索してみると、ヒメコバネナガカメムシという種類があり、何れもケヤキの樹皮下で見付けられたものでした。写真のカメムシもこのヒメコバネで間違い無いでしょう。
 ケヤキの樹皮下以外では、地表のコケの下、シダの枯れた部分、スゲなどの生える乾燥した土中等で越冬するのが観察されているとのこと、しかし、活動期に何をしているのかは良く分かっていない様です。
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足早に歩き回るので撮影には苦労した
(2008/11/30)

 写真を撮ったのは非常に暖かい日で、このカメムシ君、陽の当たる樹皮の上を足早に歩き回り、撮影は容易でありませんでした。ストロボで撮っても、陽光を反射する部分はブレが写り込んでしまうのです。片手で陽を遮りながら撮る手もあるのですが、姿勢の関係で一寸無理でした。30枚以上撮って、使える写真はたった2枚、惨憺たる成果でした。

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2008年12月13日 (土)

ワカバグモ

 今日は久しぶりにクモを紹介します。ワカバグモ(Oxytate striatipes)、何処にでも居る極く普通のクモで、カニグモ科に属します。「三丁目緑地」に群生しているシャクチリソバの葉の上に居ました。クモに関しては初心者なので良く分からないのですが、まだ、幼体か亜成体で、越冬してから成体になるものと思われます。
 第1歩脚と第2歩脚を思いっきり拡げて獲物が来るのをジッと待っていました。ハエトリグモの様に獲物を求めて徘徊することは基本的にない様です。

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脚を拡げて獲物を待つワカバグモ
引き糸が光って見える
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/10)

 上の写真では、クモのお尻から出ている糸が写っています。偶々ストロボの光の加減で写りましたが、普段は人の目には見えない「引き糸」と呼ばれる糸です。クモは何時もこの引き糸を出しており、何か突然の衝撃を受けて落下しても、この糸を手繰ることによって元の場所に戻ることが出来ます。
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黄緑色の葉の上に黄緑色のクモで分かり難い
(2008/11/10)

 文一総合出版の「日本のクモ」には、ワカバグモは(昼間は)葉や枝の間に潜み、夕方になると葉の上に出て来て獲物を待つ、と書いてあります。写真を撮ったのは、11月10日の午後2時過ぎです。この日の日の入りは午後4時半過ぎですが、晩秋の太陽の位置は低いですから、クモはもう夕方だと思ったのかも知れません。
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前方から見ると綺麗に左右対称
(2008/11/10)

 多くのクモは4対8個の単眼を持っています。このワカバグモも、頭部を拡大すると、8個の単眼が整然と並んでいるのが見えます。一番手前の内側にあるのを前中眼、その外側にあるのを前側眼、後の内側のを後中眼、後外側のを後側眼と呼びます。
 しかし、原始的なクモの中には6個しか眼を持たない仲間も居ますし、洞窟に棲息する様な種類では眼が退化して眼が無くなっているものもあります。
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ワカバグモの頭部.8個の眼が良く見える
(2008/11/10)

 このワカバグモの眼を良く見ると、前中眼は正面、前側眼は斜め前方、後中眼は上方、後側眼は横上方を向いており、種々の方向を見ることが出来る様になってるのが分かります。ワカバグモで一番大きな眼は前側眼ですが、ハエトリグモでは前中眼が特別に大きく、双眼鏡で覗いている様な感じになります。
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斜めから見た図(2008/11/10)

 今日の写真を撮影したシャクチリソバの群落には、まだ紹介はしていませんが、小型のハエやケバエ(ハエと付いても蚊の仲間です)がかなりの数いて、ワカバグモもこれを目当てにしていた様です。彼方此方の葉上で待機して居ましたが、中には獲物を捕らえているものも居ました。ワカバグモが捕食しているところは、また別の機会に紹介したいと思います。

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2008年12月12日 (金)

メダカチビカワゴミムシ

 先日、「四丁目緑地」に植えられているケヤキの樹皮下にいた「トビムシの1種」を掲載しましたが、今日はその同じ木の樹皮下に居た小さなゴミムシを紹介します。
 メダカチビカワゴミムシ(Asaphidion semilucidum)、オサムシ科ミズギワゴミムシ亜科に属す一寸ハンミョウ(例えばトウキョウヒメハンミョウ)の様な顔をした、体長4mm前後のゴミムシです。

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メダカチビカワゴミムシ.ケヤキの樹皮下に居た
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/24)

 写真を撮ったのは9月下旬で、5cm角程度の小さな樹皮片を剥がすと必ずと言っても良いほど1~2頭出て来ました。このケヤキの木はヨコヅナサシガメを見付けて以来結構注意をしていて、時々樹皮を剥がして何か居ないか調べているのですが、7月中旬にはまだ居ませんでしたし、また、11月中旬にはもう居ませんでした。このケヤキの木ではかなり限られた期間にしか居なかったのですが、Internetで調べると、夏を除いてほぼ1年中見られる種類の様です。
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小さな樹皮片を剥がすと1~2頭出て来た
(2008/09/24)

 肉眼的にはゴミムシなのですが、マクロレンズで覗いてみると、まるでハンミョウの様な顔をしています。しかし、ハンミョウが樹皮下に棲むと言う話は聞いたことがありませんし、また、脚はハンミョウ類の様に長くはなく、ゴミムシ的です。
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アリも一緒(2008/09/24)

 家に帰ってから調べてみると、ハンミョウの様な顔をしたゴミムシには何通りかあり、メダカゴミムシ類(マルクビゴミムシ亜科)、ハンミョウモドキ類(ハンミョウモドキ亜科)とこのメダカチビカワゴミムシ類(ミズギワゴミムシ亜科)がそれに該当します。しかし、樹皮下に棲息するのはメダカチビカワゴミムシ類だけの様です。
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前胸後角に剛毛と思しきものが見える
(2008/09/24)

 九州大学の目録を見ると、ミズギワゴミムシ亜科には127種が登録されています。しかし、その中でハンミョウ的な頭部を持つのはメダカチビカワゴミムシ属(Asaphidion)だけです。この属には3種+1亜種しか居ない様で、その内のエゾメダカチビカワゴミムシは北海道以北、テンリュウメダカチビカワゴミムシは希少種で前胸の基縁中央が後方へ突出するそうですから、写真のゴミムシはメダカチビカワゴミムシ(Asaphidion semilucidum)として間違いないと思います。
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前胸側縁に1本の剛毛が見える.この写真では不明瞭だが
原画を拡大すると後角にも剛毛らしきものが見える
(2008/09/24)

 なお、保育社の「甲虫図鑑」に拠れば、メダカチビカワゴミムシは前胸の側縁と後角に剛毛を持ちテンリュウでは後者を欠くとのことです。側縁の剛毛は5番目以降の写真に明確に写っています。しかし、後角の剛毛と思しきものは4番目の写真に写っていますが、他の写真では見えなかったり不明瞭で、些か不確かです。この後角にある剛毛の存在を確実にするには、もう少し高い解像力が必要な様です。
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前胸側縁に剛毛が1本見える
(2008/09/24)

 図鑑に拠ると、分布は広く、日本の本土部全部の他、サハリン、東部シベリア、朝鮮半島、中国に棲息すると書かれています。しかし、沖縄や小笠原は、図鑑ばかりでなく九大の目録でも含まれていません。やや北方系の虫と言えるでしょう。
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この写真でも前胸側縁に1本の剛毛が見える
しかし、後角の剛毛は見えない
(2008/09/24)

 樹皮下に棲むゴミムシの種類など、どうせ分からないだろうと思っていたのですが、簡単にメダカチビカワゴミムシと分かってしまいました。同じオサムシ科でも、オサムシ亜科などには交尾器を見ないと判別出来ない種類が沢山居ます。オサムシ科は難しいと言う先入観があったので、こんなに簡単に種が分かってしまったのは一寸意外でした。
 以前紹介した、トビイロクチキムシセスジナガキマワリも直ぐに種まで落ちました。双翅目(ハエ、アブ、蚊)と較べると、鞘翅目(甲虫)はずっと楽な種類が多い様です。

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2008年12月10日 (水)

チャタテムシの1種(その2)[ヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)]

 チャタテムシはこの辺り(東京都世田谷区西部)では余り見かけない虫です。体長は最大でも1cmを越えませんから目に付き難い虫ですが、屡々葉裏や樹皮を調べているにも拘わらず、これまでに見付けたチャタテムシは、前回の冬に掲載した「チャタテムシの1種」と、我が家に植えてある月桂樹の葉裏に居た「チャタテムシの1種」の合計2種だけでした。ところが、この冬は「四丁目緑地」とその付近で既に数種を見付けてしまいました。今日紹介するのは、「「四丁目緑地」に生えているアオキの葉裏に居たものです。
 例によって、虫が小さ過ぎるのと翅脈が良く見えないので、検索表を辿ることが出来ません。残念ながら、種名はおろか科も不明です。「チャタテムシの1種(その2)」とする以外ない様です。[その後の調べで、ホソチャタテ科(Stenopsocidae)のヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)であることが分かりました。追記を参照して下さい]。

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チャタテムシの1種[ヨツモンホソチャタテ].アオキの葉裏に居た
翅が少し歪になっている
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/12/06)

 翅端まで3.5mm、体長は腹部が翅に隠れていて良く分かりませんが、この手のチャタテムシは翅が長いので恐らく2mm程度でしょう。もう越冬態勢に入っているのか、留まっている葉っぱをひっくり返したり、ストロボを盛んに焚いても全然反応しませんでした。
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横から見たチャタテムシの1種[ヨツモンホソチャタテ]
頭の前にあるのは葉の中肋でこれを除外する為に
些か拡大し過ぎになっている
(2008/12/06)

 チャタテムシは日本全国で僅か100種程度しか記録されていない小さなグループです。普通は余り馴染みのない虫だと思うのですが、このWeblogの過去4ヶ月分のページ別アクセス数で第1位になっているのは、何と、前回の冬に撮った「チャタテムシの1種」です。訪問者数で約7%の方がチャタテムシを参照されています。訪問される方の目的が、害虫駆除のなのか、或いは、見付けたチャタテムシの名前を知りたいが為なのかは良く分かりませんが、何れにせよ、お役に立てないのは残念です。
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反対側から見た図(2008/12/06)

 一部のチャタテムシは、屋内害虫とされています。該当するのは、コチャタテ科やコナチャタテ科の翅のない小型のチャタテムシです。写真の様な翅のある大きめのチャタテムシは屋内に棲むことはなく、人間の生活とは無縁のところで生きています。
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真っ正面から見た図.手前にあるのは葉の中肋
細かい糸が沢山写っているが、これは
チャタテムシが自分で張った糸 (2008/12/06)

 屋内に棲むチャタテムシは、穀物の粉や麺類などの貯蔵食品、皮、書籍、畳その他の湿り気のある場所で繁殖するとのことです。
 カツオブシムシ(例えばヒメマルカツオブシムシ)やイガ(衣蛾)などの屋内害虫は、乾燥した蛋白質を餌とするので、蛋白系乾燥食品や標本類、絹や毛の繊維製品などを直接食害します。これに対して、チャタテムシは基本的に食菌性か食藻性で、皮や紙などを餌にするのではなく、その表面に生じた黴を食べているのです。チャタテムシが発生するのは、其処に住む人間が湿度の管理を怠って黴を生じさせたのが原因であって、チャタテムシを悪者扱いするのは八つ当たりに近く、不当と言えるでしょう。繁殖したカビを食べてくれるのですから、寧ろ益虫と言えるのではないでしょうか。
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斜めから見た図.葉の中肋が何とも邪魔
(2008/12/06)

 何枚かの写真には、蜘蛛の糸のようなものが写っています。チャタテムシは産卵した後に、卵を被う様に糸を吐きます。この糸が蜘蛛の糸なのか、チャタテムシの糸なのかは分かりませんが[その後、チャタテムシが自分で吐いた糸であることが分かりました]、別の種類と思われるチャタテムシが卵を保護する為に糸を吐いているところも撮影しました。近々紹介する予定です[こちらをどうぞ]。

[訂正] その後、このチャタテムシはホソチャタテ科(Stenopsocidae)のヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)であることが分かりました。詳しくはこちらをどうぞ。
 また、チャタテムシの多くは、糸を吐いて、卵や自分自身を保護するのが一般的な様です。
 以上に関し、表題と本文中に訂正([]の中)を入れておきました。(2011/02/12)

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2008年12月 7日 (日)

カナムグラ(雌株)

 随分前のことになりますが、何処かの新聞に、平成になって殆ど見られなくなったものの一つとして「空地」が挙げられていました。出入りが自由で、子供達が遊ぶことが出来たり、或いは、雑草がボウボウに生えている空地のことです。成城には「空いている土地」が沢山あります。普通の町よりもかなり多いのではないかと思います。しかし、みな堅牢な囲いで被われたり、或いは、定期的に除草されたりして、雑草の生い茂っている空地は殆どありません。先日掲載したイヌホオズキハギメンガタカスミカメ等が居た空地はかなり雑草が茂っていて、虫を探すのには良い場所だと思っていたのですが、残念ながら、今はもう建設工事が行われています。
 私が子供の頃は放置されている空地が彼方此方にありました。その様な空地に生える雑草の上を覆い被さる様に蔓延っていた蔓植物が、このカナムグラ(Humulus japonicus)です。

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秋のカナムグラ(雌株).まだ緑色の葉と、枯れかかった黄色い葉
果穂は赤紫色をしている
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/14)

 我が家の向かいの土地は、戦前から昭和40年代まで、草ボウボウの空地でした。250坪位もある広い空き地で、奥の日陰になる部分にはササ等が生えておりゴイシシジミが居ましたが、陽の当たる部分の大半はこのカナムグラに被われていました。カナムグラの蔓や葉柄には逆向きの鋭い棘が沢山生えています。容易に千切れない蔓で、カナムグラのカナは「鉄」から来ているのだそうです(因みに、ムグラ=葎は荒れ地などに茂る雑草の総称と辞書に書いてあります)。
 子供の頃、夏になると毎日の様にこの空地に虫を採りに行きました。小学生の頃は半ズボンですから、この棘にやられて夏の間は脚中傷だらけです。カナムグラを随分恨みに思ったものです。
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雌株花序の拡大(2008/11/14)

 しかし、最近はこのカナムグラ、殆ど見かけることが無くなりました。国分寺崖線の下側に位置する四丁目の小さな空地と「三丁目緑地」の極く一部の他では、余り見た記憶がありません。
 今まで知らなかったのですが、カナムグラはアサ科(以前はクワ科)の1年草だそうです。最近の空地には定期的に除草が入るのが普通ですから、1年草では簡単に絶えてしまうのでしょう。
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別のカナムグラの花序(雌株).茎や葉柄には逆向きの棘が見える
(2008/11/14)

 同じ様な蔓植物としてヤブガラシがあります。藪の上を被って下の植物を枯らしてしまうと言うほど蔓延る植物で、これは今でもそこいら中に生えています。多年草で太い地下茎を持っており、一旦成長して地下茎に栄養を蓄えると、何度除草をしてもまた新芽を出してきますし、除草剤をかけても簡単には枯れません。
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上の写真中央の果穂を拡大(2008/11/14)

 カナムグラは雌雄異株で、雄株は上向きの円錐花序を、雌株は下向きの球果の様な花序を付けます。雄株の花穂はかなり大きく一寸目立ちます。
 今日の写真は11月の中旬に撮った雌株です。果穂がいい色具合をしているので、昔の恨みを棄てて、撮ってみました。カナムグラは、ビールの原料になるホップと同属の近縁種です。果穂の写真、特に下の写真などは、確かにホップに似ています。
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上の果穂の先端を更に拡大.この写真はストロボ同期で
撮ってあるので背景は真っ暗(2008/11/14)

 もう果穂も熟していて、丁度葉の上に種子が1個落ちていました。この種子、マクロレンズで見てみると中々綺麗です。模様も味わいがあるので一寸撮ってみました。種子の2枚目の写真は、1枚目の裏側です。少し厚みのある種子なので絞り気味にして撮影しましたから、解像力は余り高くありません。こうして見ると、種子の真ん中だけを高解像度で撮っておくべきでした。
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カナムグラの種子.下は少し枯れかかったカナムグラの葉
(2008/11/14)

 ところで、カナムグラはキタテハの食草です。昔、我が家の庭ではキタテハはアカタテハやルリタテハと並んで極く普通のタテハチョウでした。特に、柿の成る季節になると、落ちた柿の実に(サト)キマダラヒカゲと一緒によく来ていました。
 しかし今では、我が家だけではなくこの付近一帯で、キタテハは非常に少なくなりました。カナムグラがこれだけ減っては、それを食べるキタテハが見られなくなるのも当然と言えるでしょう。
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カナムグラの種子.上の種子の裏側
(2008/11/14)

 カナムグラを掲載したのであれば、当然ヤブガラシも紹介すべきでしょう。しかし、もうヤブガラシの葉は枯れて落ちつつあります。来年の盛夏にでも、キチンと紹介することにします。

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2008年12月 6日 (土)

サビキコリ

 今日はこの9月に「三ツ池緑地」で撮影したコメツキムシ科サビキコリ亜科のサビキコリ(Agrypnus binodulus)を紹介します。体長15mm程度で、コメツキムシとしては大きい方です。
 コメツキムシの仲間は、外見の類似した種類が多い厄介な連中なのですが(日本産コメツキムシ科は650種を越えます)、体表がザラザラしていて光沢が無いのは、サビキコリ族(Agrypnini)なので何とかなります(若干の例外があります)。保育社の甲虫図鑑に載っているサビキコリ族の検索表を参照すると、「中胸後側板は中基節窩に達する、4mm以上、小楯板は隆起線を欠く」、でサビキコリ属(Agrypnus)に辿り着きます。

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サビキコリ.胸部の背面に隆起線があるが
ストロボで撮ると分かり難い
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/09/12)

 九州大学の目録を見ると、サビキコリ属には33種も載っています。しかし、この仲間は南方系らしく、本州に産するものは7種のみで、その内この辺り(東京都世田谷区西部)に居そうな体長15mm前後のコメツキムシは、サビキコリの他にムナビロサビキコリ、ホソサビキコリの2種が居るだけの様です。
 ムナビロは胸部の輪郭が明らかに違います。残るはサビキコリかホソサビキコリか、と言うことになりますが、サビキコリには胸部背面に隆起腺があり、またホソサビキコリよりも幅があります。3番目(最後)の写真を見ると、胸部の背面に明らかな隆起が認められ、また、虫の縦横比を測定すると、ホソサビキコリよりもかなり太い様です。従って、この虫はサビキコリと言うことに相成ります。
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横から見たサビキコリ(2008/09/12)

 サビキコリの食性をInternetで調べてみたところ、樹液、朽ち木、木の葉、昆虫の死体、果実など何でも食べる様に書いてあるサイトがかなりの数あります。情報の出所が分からないので、次にサビキコリの生態写真を探すと、花や樹液に集っているところ、アリを食べているらしい写真、熟したニガウリを食べている写真などが見つかりました。実際に、相当な広食性の様です。
 今日の写真はイネ科植物(多分メヒシバ)の花穂にしがみついているところを撮ったものです。所々に食痕と思しき跡が認められますが、或いは、このサビキコリが食べたのかも知れません。
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斜め前から見ると、胸部の背側に隆起線があるのが分かる
(2008/09/12)

 もう既に12月です。しかし、10月はおろか9月に撮った未掲載の写真がまだ沢山残っています。もう一方のWeblog「我が家の庭の生き物たち」の方は、そろそろ根本的なネタ切れ状態に陥りそうですが、こちらの方は、当分ネタに困ることは無い様です。

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2008年12月 3日 (水)

サザンカ(その2)

 サザンカ(山茶花:Camellia sasanqua)はこのWeblogを始めた頃に一度掲載していますが、今日はまた別の種類のサザンカを紹介しようと思います。六丁目の古くからある御宅に植えられているサザンカで、何れも昔の品種です。何本かある内、3本のサザンカを撮りました。
 なお、サザンカとツバキの違いや品種に関しては一昨年の記事に少し書きましたので、今回は触れないことにします。

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白花一重のサザンカ.葉は小さく原種に近いと思われる
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/11)

 これらのサザンカは、何れも葉が非常に小さいのが特徴です。計ってみたところ、最初の木では長さ3.5~4.0cm幅約1.5cm、2番目が長さ4.0~4.5cm幅約2cm、3番目では長さ4.5~5.0cmで幅は約1.5cmでした。かなり原種に近い種類なのでしょう。一応、「日本のツバキ・サザンカ名鑑」を見てみましたが、該当する品種は見つかりませんでした。
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花の拡大(2008/11/10)

 1本目の木はかなり大きく樹高4m位あり、幹は根元から2本に分かれ、太い方は直径20cm近くあり、もう一方も10cm位の太さをしています。
 花の色は真っ白、花弁は5~6枚で細長く、花の中心付近でも花弁の間が空いています。日当たりの良いせいか、非常に沢山の花を着けます。開花は2番目の木よりやや遅いのですが、今ではもう盛りを過ぎてしまいました。
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雨で花粉が流れて花弁が黄色くなっている
(2008/11/10)

 2本目の木は、高さ3m位、根元付近の幹は直径10cm近くあります。根元は太いのですが、木全体としては小振りです。少し日陰に植えられているので花付きは1本目の木ほど良くはありません。花色は桃色で、蕾の時はかなり濃い色をしていますが、開くと薄くなります。花弁の先の方が色が濃く、付け根は白に近い配色です。こう言うのを「縁紅ぼかし」と呼ぶのだそうですが、この方が花弁全体が桃色をしているのより、ずっと品良く感じられます。花弁は5~6枚で、非常に細いのが特徴です。
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紅ぼかしのサザンカ.花弁の縁は桃色だが、基部は白に近い
(2008/11/11)

 開花は3本の中では一番早く、10月中から咲いていました。現在では、花はもう殆ど終わっています。
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上と同じ木.花弁は細長い
(2008/11/06)

 3番目は一番小さく、高さは3m近くありますが、根元近くの幹の直径は5cm程度しかありません。葉の色が他の木よりも少し黄色味を帯びています。一見したところ、葉が随分小さく感じられますが、これは長さに比して幅が狭いせいでしょう。
 花は二重です(花弁が内側と外側の2重になっているので二重だと思うのですが、前出の名鑑では「弁数の多い一重」とか、「重ねの多い一重」としています)。外側の花弁が少し桃色を帯びているので、蕾の時は桃色をしています。しかし、開花すると内側の白い花弁が前面に出て、一見したところ白花の様に見えます。木は小さく、葉の密度が薄く透けていて何となく弱々しいのですが、花は一番大きく、また、花弁の幅もかなりあります。3者の中では一番改良の進んだ品種ではないでしょうか。
 日当たりがよいせいか、沢山花を着けています。開花は一番遅く、今が丁度盛りです。
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もう1本のサザンカの花.花はかなり大きく二重
(2008/11/23)

 今日は、一般のサザンカと言うよりは、この昔からある御宅のサザンカの紹介になってしまいました。最近は園芸店に行っても、この種のサザンカは全く売られていません。こう言う弁数の少ない昔のサザンカの魅力を感じて頂ければ幸です。

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2008年12月 2日 (火)

トビムシの1種

 今日は撮れたてのホヤホヤを紹介します。先日(11月30日)撮ったばかりのトビムシの1種です。体長は丁度2mm、ケヤキの樹皮下に居ました。
 「四丁目緑地」に植えてあるケヤキの木です。これまでに紹介したヨコヅナサシガメウスカワマイマイが居た木です。樹皮を一寸剥がしたところ、極く小さな茶色い虫が居たので撮ってみました。

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ケヤキの樹皮下に居たトビムシの1種.種名も科名も不明
上の黒い小さな虫は幼虫ではなく別種のトビムシか?
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/11/30)

 実を言うと、カメラで覗いている間は、これがトビムシの1種であるとは気が付きませんでした。今までこんな毛の多い横縞を持つトビムシは見たことがなかったからです。チャタテムシの1種ではないかと思って撮っていました。
 更に、写真の上の方に写っている黒い一見幼虫の様な虫の存在には、全く気が付きませんでした。こんなに沢山居るのに、何故気が付かなかったのか、一寸腑に落ちない話です。先日紹介したハギメンガタカスミカメを撮った時、その横にヒメハナカメムシの1種が写っていたにも拘わらず、撮影時には些かも気が付かなかったのと同じです。
 多分、ファインダーで覗いている時は絞り開放ですから、焦点深度が非常に浅くて気が付かなかったのでしょう。年のせいだとは、余り思いたくないものです。
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トビムシは変態をせず、成虫になっても脱皮して成長する
同じ模様で3通りの大きさがある
(2008/11/30)

 トビムシは最も原始的な粘管目に属す昆虫で、尾端にある叉状器というエビのシッポの様な構造を使って跳躍する種類が多いので、トビムシと呼ばれます。しかし、これを持たず飛ぶことの出来ないトビムシも居ます。また、跳ぶとは言っても多くは数cmをピョコンと跳ねるだけです。尤も、中には数10cm跳躍する種類もあるそうですが、見たことはありません。
 トビムシの多くは土壌の表面、落葉や腐植質のあるところに棲息し、体長は1~3mm、余りに小さい虫なので虫眼鏡程度では詳細は分かりません。良く見かけるのは、地面に直に置いた木材や石、植木鉢等の下などに居る1~2mm位の白いトビムシです。この様な地上50cm位の樹皮下に居る種類は多くはないと思います。しかし、このトビムシ、種名どころか、科さえも良く分かりません。小さ過ぎて体の構造が分からず検索表を辿ることが出来ないからです。トビムシに慣れている人ならば、外観で科位は分かると思いますが・・・。
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トビムシにしては非常に毛深い.「襟巻き」の様なものがある
(2008/11/30)

 トビムシは、幾つかの点で普通の昆虫とは異なるところがあり、最近では、カマアシムシ(原尾目)やコムシ(双尾目)と共に昆虫綱とは別のグループとする学者が多いのだそうです。
 どんな点が普通の昆虫とは異なるかと言いますと、まず、変態をしない、成虫でも翅がない、成虫になっても脱皮を繰り返して成長する、交尾をせず雄が土の上に精包を置くと雌がこれを生殖口に収める間接受精を行う、眼は多くても8対の個眼からなる眼斑に過ぎない、多くは気管系を欠く、マルピーギ管を欠く・・・と色々あります。
 ところで写真に写っている黒っぽい一見幼虫の様な虫ですが、一体これは何でしょう。トビムシは変態をしないのだそうですから、これは幼虫ではなく別の虫と考えるべきでしょう。
 良く見てみると、短い触角と3対の脚があります。トビムシの仲間にはこの様な格好をした種類もありますから、別種のトビムシかも知れません。
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一番綺麗に撮れた写真.体長は2mm丁度.ピクセル等倍
(2008/11/30)

 このケヤキの樹皮下には、その他にも、全く種類の分からない微小な昆虫の幼虫が何種類か居ました。
 恐らく、樹皮下の虫達は、その小さな空間の中で一般の目に触れることのない複雑で多様な世界を繰り広げているのでしょう。今度の冬は、樹皮の下や隙間を中心に虫を探してみようかとも思っています。

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