ヒラタヤドリバエ亜科の1種(Euthera tuckeri)
今日は一寸珍しいかも知れない虫を紹介します。ヤドリバエ科ヒラタヤドリバエ(ヒラタハナバエ)亜科のEuthera tuckeriです。和名はまだありません。
普通、ヤドリバエ科の種の検索はごく一部の専門家以外には無理なのですが、翅に特徴的な模様があるのでこのハエであると判断しました。九州大学の目録を見ると、Euthera属にはこのtuckeri1種しかありませんので、まず間違いないでしょう。体長は、6mm弱です。
![]() Euthera tuckeri.ヤドリバエ科ヒラタヤドリバエ亜科に属す (クリックで拡大表示、以下同じ) (2008/09/12) |
ミバエ科やヒロクチバエ科には模様のある翅を持つ種類が沢山います。ヤドリバエ科には、色の付いた翅を持つものはかなり居るようですが(以前紹介したアシナガヤドリバエの1種(Phyllomya sp.)も黒っぽい翅をしています)、この様なハッキリした模様を持つのは珍しいと思います。
この白黒の翅は結構目立ちます。遠くから見ても普通のハエではないことは直ぐに分かりました。
![]() 横から見ると上胸弁と思われる構造が目立つ 触角が長く、眼は宇宙人?の様 (2008/09/12) |
このEuthera tuckeriは、他にも普通のヤドリバエと違ったところがあります。例えば、翅の付根近く、小楯板の左右に真っ黒な三角形の突起があります。この突起、板状をしており、胸弁(覆弁、鱗弁)と基部で繋がっているので、所謂上胸弁(前胸弁、端覆弁)と呼ばれる構造だと思います。どんな役目があるのか知りませんが、ジェット機やスポーツカーに付いている安定翼?の様な感じです。
![]() 真横から見たEuthera tuckeri.腹部に顕著な剛毛を欠く (2008/09/12) |
また、眼も、背側から見るとそれ程でもないですが、側面から見ると変な形をしています。丸くなく細型で、漫画に出て来る「宇宙人の目」の様な感じです。
触角も、ヤドリハエとしてはかなり長い触角を持っています。特に第3節が長く、第1節と第2節を合わせた分よりも長く見えます。
なお、ヤドリバエと言うと以前紹介したヨコジマオオハリバエの様な長い剛毛を持つハエを想像しますが、ヒラタヤドリバエ亜科のハエの腹部には顕著な剛毛はありません。
![]() Euthera tuckeriの顔.触角の下に正中線に沿った黒い筋がある (2008/09/12) |
撮影したのは、四丁目の「三ツ池緑地」です。写真でお分かりの通り、イネ科の雑草(多分メヒシバ)の先っぽに下向きに留まってしました。こう言う柔らかい雑草の穂先に留まった虫と言うのは、撮り難いものです。等倍接写をする程度に近づくと、どうしても草の根元にある程度の力が加わり、草が動いて逃げられてしまうことが多いのです。しかし、このハエ、余り逃げる気が無かったらしく、温和しくカメラに収まりました。
![]() 斜め横から見た図.体が少し明るくなる様に現像してある (2008/09/12) |
ヒラタヤドリバエ亜科のハエは、カメムシ類に内部寄生します。ノースダコタ州立大学のホームページ内にある「Diptera Parasitoid Records(双翅目捕食寄生目録)」を見ると、このEuthera tuckeriの宿主として、Acrosternum gramineum(この属は日本には記録はないが、アオカメムシの仲間)、Dolycoris indicus(ブチヒゲカメムシの仲間)、Eysarcoris ventralis(シラホシカメムシ)、Piezodorus hybneri(イチモンジカメムシ)の4種が挙げられています。
シラホシカメムシは体長6mm前後のかなり小さなカメムシです。この写真のヤドリバエ(Euthera tuckeri)の体長は約6mmですから、宿主はもう少し大きい筈です。恐らく、シラホシカメムシに寄生した場合はもっと小型にしかならないのだと思います。
![]() オマケにもう1枚(2008/09/12) |
Internetで検索してみると、このヤドリバエの写真は余り見つかりませんでした。そこで、同じ様な写真ですが、少し大目に貼り付けておきました。
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コメント
yamasanae様
こんにちは。「埼玉県三郷市・千葉県流山市 昆虫観察ガイド」の中に「特徴的な翅模様を持つハエ達」( http://homepage1.nifty.com/tago-ke2/moyou-hae/menyu-hae.htm )と云うサイトがあります。記憶に拠れば、私はこのサイトで見つけた様な気がします(ハエ板の中にもあった様な気が・・・)。
平均棍は後翅の変形ですから、前翅の変形部分である胸弁の下に隠れているのではないでしょうか。
先日、ツヤホソバエが、例によって、翅をハタハタさせながらクルクル回っていましたが、前翅の動きと合わせて平均棍も動いていたので、「なる程、平均棍は後翅の変形か」と実感した次第です。
投稿: アーチャーン | 2011年6月 2日 (木) 17時26分
アーチャーンさま いつもお世話になっています。
つくばの自宅の笹の葉の上で、同じと思われるハエを見つけました。そこで、あちらこちらを捜しまくって、結局、こちらにたどり着きました。いつもながら、きれいな写真で、とても参考になります。
さて、胸弁とされている三角形の突起は気が付いていませんでしたが、とても変わっています。そういえば、平均棍が見当たらなかったような気がしますが、どうだったのでしょう?
投稿: yamasanae | 2011年6月 2日 (木) 13時17分