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2008年10月14日 (火)

フタトガリコヤガの幼虫(終齢)

 最近は「昆虫(毛虫、芋虫)」を参照される方が非常に多いので、今日は毛虫を紹介することにしました。
 フタトガリコヤガと言う、ヤガ科アオイガ亜科(コヤガ亜科)に属す蛾の幼虫です。かつては「コヤガ」の付かない只の「フタトガリ」と呼ばれていた様で、北隆館の「日本幼虫圖鑑」には「フタトガリ」として出ています。

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七丁目の空地にいたフタトガリコヤガの終齢幼虫(黒紋型).左が頭
第3~4腹節に腹脚を欠くので、シャクトリムシ的になる
(クリックで拡大表示、以下同じ)
(2008/10/02)

 写真は何れも終齢幼虫で、長さは3~4cm程度、体は黄、緑、黒の非常にコントラストの強い派手な模様をしており、お尻には赤色斑があります。何時も葉表に居て目立ちます。所謂、警戒色の様です。
 これは、保育社の図鑑に拠れば第1(黒紋)型で、他に第2(赤紋)型が有るそうです。第2型は、微小な白点を散在する濃い緑の地に、白で縁取られた橙赤色の楕円紋がほぼ各体節に一つずつ並ぶもので、数は少ないと書いてあります。なお、若齢幼虫は全体黄緑色、不鮮明な黄条があるだけで、特別な斑紋は無いそうです。
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3丁目のフヨウに居たフタトガリコヤガの終齢幼虫(黒紋型).右が頭
上の写真とは1.5km離れているが、紋はよく似ている
(2008/10/12)

 食草は、フヨウ、ムクゲ、アオイ、ワタ、オクラなどのアオイ科の植物です。園芸植物の害虫としてよりは、農業の方でオクラの害虫として知られている様です。
 見付けたのは、七丁目の空地に生えていたフヨウと、三丁目の電信柱の横に生えていたフヨウの2個所です。
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一番目の個体を上から見たもの.右が頭
(2008/10/02)

 鱗翅目(蝶、蛾の仲間)の幼虫は、胸部に3対の胸脚と、腹部の第3~第6節に4対の腹脚、第10腹節に1対の尾脚を持つのが普通です。しかし、このフタトガリコヤガの幼虫では、第3、第4腹節に腹脚がありません。
 シャクトリムシでは、以前紹介したフタナミトビヒメシャクの幼虫の様に、第3~第5腹節の腹脚が退化して、尾脚と第6腹節の腹脚だけになっています。フタトガリコヤガは、謂わば、シャクトリムシと普通の毛虫・芋虫との中間的な存在で、脚の構造上、シャクトリムシに近い歩き方をします。フタトガリ以外のコヤガの仲間も多くは同じです。
 なお、ヤガ科には、キンウワバ、シタバ、アツバ類の様に、前方の腹脚が良く発達していない種類がかなりあります。
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七丁目の空地にいた別の個体.良く太っている
左が頭.頭部の紋は上の写真とはかなり異なる
(2008/10/02)

 このフタトガリコヤガの幼虫、かなり複雑な斑紋の入り方をしています。しかし、最初に並べた2頭の幼虫を見ると、斑紋の位置や大きさは殆ど同じです(写真をクリックして拡大して見て下さい)。この両者は互いに1.5km程離れたところに居たのですから、同じ親から生まれたとは考えられません。2頭の比較だけでは説得力は有りませんが、斑紋は複雑でもその配列はかなり 厳密に決まっている様に思われます。
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1番目の個体の頭部.紋や毛の位置が左右非対称
(2008/10/02)

 しかし、頭の模様を見ると、2頭の間でかなりの違いがあります。特に、最初の個体では左右の対称性がかなり乱れています。面白いことに、刺毛はみな黒い紋のほぼ中心から出ており、紋の位置のズレに対応して、刺毛の位置も左右が非対称になっています。
 また、上から見た写真を見ても、への字型のはまた別の個体ですが(曲がっているので、横からの写真は撮っていません)、頭部の斑紋は、両者でかなり違っています(写真をクリックして拡大して見て下さい)。
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2番目の個体の頭部.左右の紋は略左右対称
(2008/10/12)

 頭部の左右の大きな丸い部分(頭頂)に小さな粒々が沢山あるのが見えます(写真をクリックして拡大して見て下さい)。これが何なのか分かりませんが、この分布も両者で大きく異なります。最初の個体では上部の黄色い部分にも沢山ありますが、もう一方の個体の上部には余りありません。これも、最初の個体では左右が非対称に分布しているのに対し、他者では略左右対称になっています。
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横から見た1番目の個体の頭部.
下側にある単眼(全部で6個あるが2個は不明瞭)が印象的
(2008/10/02)

 この写真の幼虫のお尻には、真っ赤な紋があります。この部分は肛上板と呼ばれる部分で、前胸(第1胸節)にある前胸硬皮板(「セスジスズメの幼虫(終齢)」を参照して下さい)と同じ性質のものです。何となく気になるので、この部分を拡大してみました。赤い部分と他の部分との境はハッキリしています。
 なお、保育社の図鑑に拠ると、第2(赤紋)型の肛上板は赤くなく、黄緑色をしているそうです。
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2番目の個体のお尻.赤い部分は肛上板
(2008/10/12)

 図鑑には、フタトガリコヤガは年2化で、第1化は5月下旬~6月上旬に、第2化は8~9月に羽化すると書かれています。この写真の幼虫は、その第2化の産んだ卵から育ったもので、老熟後は土中に潜って繭を作り、その中で前蛹となってそのまま越冬します。これが来年5月~6月に羽化して第1化となる訳です。
 老熟すると全体が紅紫色を帯びるそうです。今頃見に行くと、丁度その紅紫色を帯びた毛虫君が見られるかも知れません。

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コメント

アーチャーン様

早速リンクさせていただきました。
ありがとうございます。

写真と共にとても詳しい解説にシロウトの息を脱せずの私にはビックリ仰天です。

投稿: わんちゃん | 2009年9月 2日 (水) 11時25分

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