ヨコジマオオハリバエ(その2)
今日はヤドリバエの1種、ヨコジマオオハリバエを紹介します。ヨコジマオオハリバエは既に掲載済みなのですが、その時は、露出不足を無理に増感し、また、近づけなくて少し遠くから撮ったものをトリミングで何とか誤魔化した為、写真が余り良くありません。今回は目の前で撮りましたから、迫力が一寸違います。
惜しむらくは、些か古い個体で翅が傷んでいます。しかし、ヨコジマオオハリバエにこれだけ近づける機会は余りないと思いますので、何卒御容赦下さい。
![]() ヨコジマオオハリバエ.体長は約2cmで非常に大きい (クリックで拡大表示、以下同じ) (2008/07/10) |
ヨコジマオオハリバエは体長が2cm近くあり、日本のヤドリバエ科の中では最大級の大きさです。しかも、長さだけでなく幅があります。飛ぶときは、大型のハナアブの様にかなり大きな羽音を立てます。
ヤドリバエ科のハエには、長い剛毛が沢山ありますが、このヨコジマオオハリバエは、体が大きいせいもあり、特に剛毛が目立ちます。触ったら刺さるのではないかと思えるほど固そうに見えます。「ハリバエ」は、多分「針蠅」なのでしょう。
![]() ヤマアラシの棘の様な剛毛が素晴らしい(2008/07/10) |
ヤドリバエ科のハエは基本的に捕食寄生性で、多くは鱗翅目(チョウ、ガ)や鞘翅目(甲虫)その他に内部寄生します。しかし、色々調べても、このヨコジマオオハリバエが何に寄生するのか分かりませんでした。これだけ大きなヤドリバエですから、宿主も相当に大型であることは間違い無いでしょう。スズメガの幼虫にでも寄生するのでしょうか。
![]() 翅脈はクロバエ科やニクバエ科とよく似ている(2008/07/10) |
ヤドリバエ科はクロバエ科(オオクロバエ、キンバエ等の「汚いハエ」やツマグロキンバエなど)、ニクバエ科(卵胎生の「汚いハエ」)に近縁で、体の形ばかりでなく、翅脈も互いに非常によく似ています。腐肉や糞便で育つのと、内部寄生では随分違う様に思えるかも知れませんが、消化液を体外に出して溶けたものを吸収すると言う点では同じですから、摂食に関しては大した違いではないのです。
![]() 小楯板の下に後小楯板が見える.翅の付け根にある白いものは胸弁(2008/07/10) |
ヤドリバエ科がクロバエ科やニクバエ科と形態的に大きく異なる点は、小楯板(胸の後にある略三角形の部分)の下にある後小楯板が非常に大きいことです。小楯板を超えて突出することもあります。しかし、これは中々普通に撮った写真では確認できません。上の写真は、その後小楯板が分かる様に後側から撮ってあります。小楯板から長い剛毛が2対後方に出ていますが、その下に一寸だけベロの様に見えているのが後小楯板です。
なお、後小楯板が大きいのは、ヤドリバエ科だけでなく、近縁のヒラタヤドリバエ科、アシナガヤドリバエ科でも同じです。
![]() ヨコジマオオハリバエの頭胸部.口の辺りが変(2008/07/10) |
ヤドリバエ類の顔を見ると、触角の付け根より下側の部分が妙な具合になっています。顔の部分だけを下に示しました。口の部分が外れてしまった様な格好になっています。口は実際はその下側にあるのですが、一体この部分はどうなっているのでしょうか。双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」で問い合わせてみましたが、残念ながら、未だに応答がありません。
![]() ヨコジマオオハリバエの顔写真.口の部分が外れた様な感じ(2008/07/10) |
なお、撮影場所は「三ツ池緑地」です。以前掲載した写真は三丁目の崖下にあるヤブで撮りましたが、先日「三丁目緑地」でもこのヨコジマオオハリバエを見かけました。まだ、国分寺崖線にはかなり居る様です。
これで7月に「三ツ池緑地」で撮影した虫は全部掲載し終わりました。今後は、七丁目の家庭菜園で撮った虫と、家の外では撮る気にならない我が家の庭に居る「普通種」を紹介することになります。
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