カテゴリー「昆虫(カメムシ)」の2件の記事

2011年5月28日 (土)

オオツマキヘリカメムシ(Hygia lativentris)(雄)


 一寸、仕事が一段落したので、今日はこちらのWeblogを更新することにしました。

しかし、最近は時間がない為、全く虫撮りに出かけていません。そこで、昨年の今頃に撮ったカメムシを紹介することにします。実は、昨年、一昨年のこの時期に撮影して未掲載の虫は、画像倉庫に沢山眠っているのです。


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ミズヒキの葉上に留まるオオツマキヘリカメムシ(雄)

ツマキヘリに似るが、雄の尾端に2突起を持つ

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(2010/05/17)



 始めはツマキヘリカメムシかと思っていたのですが、全農教のカメムシ図鑑の解説を読むと、オオツマキヘリカメムシ(Hygia lativentris)の様です。

 同図鑑に拠れば、オオツマキヘリの雄の尾端には、2個の瘤状突起があるのに対し、ツマキヘリ(H. opaca)はこれを欠くのだそうです。上の写真を見ると、一寸焦点が外れていますが、2個の突起が認められます。

 また、オオツマキヘリでは、体の毛が繊細でやや平伏するのに対し、ツマキヘリでは暗色の硬い短毛を持つと書いてあります。下の写真を見ると、体の毛は「暗色の硬い短毛」よりは「繊細でやや平伏する」に近いと思います。

 これらから、この写真の個体はオオツマキヘリカメムシの雄として問題無いでしょう。

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横から見たオオツマキヘリカメムシ

褐色の平伏した短毛が生えている

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(2010/05/17)



 残念ながら、写真は2枚しかありません。撮影したのは四丁目にある「神明の森みつ池特別保護区」の册に沿って生えているミズヒキの葉上でしたが、他にホオズキカメムシが2頭も一緒に居たのです。ホオズキカメムシはオオツマキヘリカメムシとは別属(Acathocoris)ですが、同じヘリカメムシ科(Coreidae)に属し、もっと毛深く太めながらオオツマキヘリに一寸似ています。撮影している時は、焦点合わせに殆ど全神経を集中しているので、撮影の対象が知らない間にオオツマキヘリからホオズキカメムシに移っていたのに気が付かなかったのです。お恥ずかしい話ですが、そんな理由で、写真は2枚しか無いのです。

 ホオズキカメムシは既に紹介済みです。間違えて撮影したホオズキカメムシの写真は即刻消去しました。


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2011年2月21日 (月)

クロハナカメムシ(Anthocoris japonicus


 今年の冬はどうも寒い日や風の強い日が多く、余り虫撮りに出かける気になりません。しかし先日、買い物ついでに「三丁目緑地」へ行って来ました。収穫は少なかったのですが、今日はその中からケヤキの樹皮下で越冬していたハナカメムシの1種を紹介します。

 体長は腹部が翅に隠れて良く分かりませんが、翅端まで3.5mm程度。小さなカメムシですが、ハナカメムシとしては大きい方に属します。同じくケヤキの樹皮下で越冬しているヒメコバネナガカメムシとほぼ同じ大きさです(このケヤキの樹にはヒメコバネもいました)。


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ケヤキの樹皮下に居たクロハナカメムシ.尾端まで約3.5mm

樹皮の幹側ではなく皮側に居た.少し動き始めている

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(2011/02/19)



 かなり平たいカメムシで、全体に黒っぽく、膜質部の前の方にある白帯が目立ちます。頭部が尖っているので、サシガメ科かハナカメムシ科のどちらかだと思っていましたが、家に帰って調べると、サシガメにはこんな小さな種類は無く、ハナカメムシ科のクロハナカメムシ(Anthocoris japonicus)であることが分かりました。全農教のカメムシ図鑑第1巻には載って居らず、第2巻の方にありました。

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越冬中のクロハナカメムシ.これも樹皮側

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(2011/02/19)



 上記図鑑には「成虫は年1回発生し、夏期に現れる新成虫は分散していろいろな広葉樹上で見つかるが、秋になると樹皮下に集まり冬を越す.とくにケヤキに多く、数十個体が集まることがある」と書かれています。

 毎年冬になると、彼方此方でケヤキの樹皮を剥がしていますが、このカメムシを見るのは今年が初めてです。このクロハナの居たケヤキも以前に剥がしており、昨年掲載した「ヒシモンナガタマムシ?」はこの樹で撮影したものです。

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樹皮を剥がされて幹を歩き回るクロハナカメムシ

(写真クリックで拡大表示)

(2011/02/19)



 かなりの数の個体を見ましたが、図鑑に書かれている様な大きな集団はなく、最初の写真にある4頭一緒のが最大の集団でした。他は何れも1頭ずつバラバラに越冬していました。

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横から見たクロハナカメムシ.この写真だけ

普通の等倍接写.他はテレプラスを使用

ヒメコバネナガカメムシより平べったい

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(2011/02/19)



 前述の様に、カメムシ図鑑には「夏期に現れる新成虫は分散していろいろな広葉樹上で見つかる」と書かれていますが、北隆館の新訂圖鑑を見ると、このハナカメムシは「ケヤキフシアブラムシの虫癭に入りアブラムシを補食する」と書いてあります。ケヤキの樹皮下に居たのには、それなりの必然性があった訳です。ケヤキの虫癭で育ち羽化した成虫は、方々に分散して何らかの生き物を補食して生き長らえ、秋になると、来年の春の産卵に具えて?またケヤキの樹に戻るのでしょう。

 なお、ケヤキフシアブラムシの学名は、全農教のアブラムシ図鑑ではColopha moriokaensisとなっていますが、九大目録や東京都本土部昆虫目録ではParacolopha morrisoniです。アブラムシ図鑑は少し古い(1983年)ので、後者が現在の正しい学名と思われます。

 和名の方も一通りではなく、「ある虫屋の毎日」と云うサイトに拠ると、このアブラムシにはケヤキヒトスジワタムシ、ケヤキヒトスジタマワタムシの別名もあるとのことです。

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ストロボで眼を醒ましたクロハナカメムシ

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(2011/02/19)



 カメムシ図鑑第2巻に拠れば、このクロハナカメムシが属すAnthocoris属は全北区に50種余り、日本では現在6種(九大目録では5種)が生息するそうです。殆どの種は膜質部の白い模様の形で区別出来ますが、チビクロハナカメムシ(A. chibi)の白帯の形状は今日のクロハナカメムシによく似ています。

 しかし、全体に小型(体長2.8~3.3mm)であること(細長くない)、触角第2節と第3節の基部が広く淡色なこと、脚や触角が褐色であること等で区別出来るとのことです(上記図鑑と「カメムシBBS」に拠る)。

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上と同一個体.歩き始めた

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(2011/02/19)



 クロハナカメムシは、ハナカメムシ科(Anthocoridae)ハナカメムシ亜科(Anthocorinae)に属します。ハナカメムシ類は何れも捕食性で、特にハナカメムシ亜科には農業害虫の防除に使われている種類があります。多くはヒメハナカメムシ属(Orius)ですが、カメムシ図鑑第2巻には、このクロハナカメムシ属(Antocoris)も「一部の種は果樹害虫の防除に導入されている」と書かれています。

 この様な天敵による害虫駆除は、化学農薬に代わる「安全」な方法として注目されており、カメムシ類ではハナカメムシ以外にカスミカメムシの仲間も「生物農薬」として販売、或いは、利用されています。

 「生物」と「農薬」とは殆ど対立概念に近いと思いますが、それを一緒にした「生物農薬」と云う呼び方は、慣れないと一寸奇妙な印象を与えますね。


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