2012年1月28日 (土)

ジョロウグモ(Nephila clavata)(雌)

 もう1月も終わりに近づいて来ました。今月(今年)はまだ1回しか記事を書いていないので、急いで更新することにします。
 前回掲載した「ケチャタテ科の1種(その5)」が居た、「三丁目緑地」に生えているタラヨウの木に「巣」を張っていたジョロウグモ(Nephila clavata)の雌です。

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越年したジョロウグモの雌.暗い林の中に居た
「巣」は1本の糸のみで保たれている
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(2012/01/06)

 ジョロウグモは、秋にはそこいら中に居て、しかも、陽の当たらない側に背を向けているので撮り難く、今まで掲載しないまま放置していました。
 ジョロウグモは卵越冬で、成体の多くは12月中にあの世に行ってしまうそうです。実際、越年したジョロウグモをこの辺りで見たのは初めてかも知れません。掲載することにした理由の一つです。
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横から見た越年ジョロウグモの雌
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 もう一つの理由は、暗い林の中の開けた空間に「巣」を張っていて、撮り易かったことがあります。表、裏、側面を容易に撮ることが出来ました。しかし、背景が暗いので補助光を必要とし、ストロボを焚けば腹部が白飛びするので、良い写真にはなりませんでした。
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裏から見た越年ジョロウグモの雌
尾端近くの赤い部分が目立つ
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 「巣」とカッコ付きにしているのは、写真でお分かりの様に、巣はもう殆ど壊れていて、1本の糸しか残っていなかったからです。
 しかし、蜘蛛はチャンと生きており、僅かながらも動いていました。
 眼は標準の8個です。後側眼は前側眼に隣接しており、角度によっては少し見難くなります。下2枚の写真は、少し確度を換えて撮ったのですが、右の後側眼はよく識別出来ません。
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ジョロウグモの頭部.前側眼の直ぐ後に後側眼がある
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 ジョロウグモは、文一総合出版の「日本のクモ」ではジョロウグモ科(Nephilidae)所属になっています。一方、Wikipediaではアシナガグモ科(Tetragnathidae)とされています。この辺りは、最近東海大学出版から出た「日本産クモ類」を見れば分かると思うのですが、高い本なので、未だに買っていません。また、かなり専門性の高い本のせいか、近くの図書館にも所蔵されていません。
 蜘蛛の研究者である谷川明男氏の「A Check List of Japanese Spiders ver. 2011R1」ではジョロウグモ科に属しているので、ジョロウグモ科の方が有力ですが、私は専門家ではないので、此処では判断しないことにします。
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少し確度を変えて撮影.右の後側眼はよく識別出来ない
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 このジョロウグモの写真は、先日のチャタテムシを撮る直前に撮影しました。しかし、チャタテムシの撮影を終わった時、ジョロウグモを振り返ってみると、もう其処にはジョロウグモの姿も巣の糸も見当たりませんでした。
 ジョロウグモが居たのはかなり急な斜面に生えているタラヨウの斜面の上側、チャタテムシを撮影したのは下側ですから、チャタテを撮っている時に巣に触れることは有り得ません。恐らく、糸が劣化して切れ、それと共にジョロウグモも下の藪の中に落ちてしまったのでしょう。
 撮影したのは1月6日、今日は28日ですから、もうこのジョロウグモは既に天国に召されているに違いありません。

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2012年1月 8日 (日)

ケチャタテ科の1種(Caeciliusidae gen. sp.)(その5)

 どうも最近は、体がすっかり熱帯向きになって来たのか、寒くなると外出するのが億劫になります。それでも先日、「四丁目緑地」のケヤキの樹が気になって、カメラを持って出掛けました。
 しかし、そのケヤキの樹皮下には、以前掲載した「ハイイロチビフサヤスデ(その2:集団越冬)」よりも、もっと高密度に集まったハイイロチビフサヤスデがいた程度で、目新しい被写体は何も見当たりませんでした(ヨツモンホソチャタテが1頭、樹皮下で越冬していました。これまで、樹皮下でホソチャタテ科の虫を見たことはありません)。
 そこで、1.2kmほど南にある「三丁目緑地」に行ってみました。緑地の北西部にある、泉の横に生えているタラヨウの葉裏には大概何かが居るのです。本当は、双翅目が目当てだったのですが、そこでこれまで見たことのないチャタテムシを見つけました。

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タラヨウの葉裏に居たケチャタテ科の1種
翅膜は淡黄褐色、翅脈は黄色い
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 翅脈(「YOSHIZAWA,Kazunori(2005):Morphology of Psocomorpha」に拠る)や体形からして、ケチャタテ科(Caeciliusidae)の1種なのは間違いないでしょう。翅端まで約4.0mm、前翅長約3.2mmですから、ケチャタテ科としては中程度の大きさです。
 上の写真の様な、目の黄色いケチャタテはこれまでにも何回か紹介しており、特に後小室(「ホソチャタテ」の3番目の写真を参照して下さい)が小さい点で「ケチャタテ科の1種(その2)」とよく似ています。
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横から見ると、全体的に結構毛深い
後小室は少し見難いが小さい
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 しかし、「その2」の方は、翅膜も翅脈も殆ど無色なのに対し、今日のチャタテムシは翅膜が薄い黄褐色で、翅脈は黄色をしています。特に縁紋の辺りの黄色が目立ちます(最後の写真)。
 黄色の目立つケチャタテ科としては、キイロケチャタテがよく知られています(但し、Web上にある「キイロケチャタテ」の多くは誤認です)。しかし、富田・芳賀(1991)の「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」を見ると、キイロケチャタテは後小室が大きく、縁紋は全体に黄色となっており、一致しません。
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小顎鬚(小腮鬚)は殆ど無色透明.先端も同様
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 そら氏のブログ「ご近所の小さな生き物たち」に掲載されている記事「キイロケチャタテでは無いそうです」に、psocodea氏(北海道大学吉澤教授のハンドルネーム)が次の様なコメントを書かれています。「キイロケチャタテに外観的に良く似た種はたくさんいるのですが,実は結構遠縁の仲間も含まれます.というか,キイロケチャタテは,ケチャタテ科から独立させた方が良いかとも考えています(現在論文が進行中).・・・」。どうやら、本当のキイロケチャタテは、少し普通のケチャタテとは違った虫の様です。
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斜めから見ると、縁紋付近の黄色が目立つ
(写真クリックで拡大表示)
(2012/01/06)

 ケチャタテ科であることは問題ないとして富田・芳賀の検索表を辿ると、和名のないValenzuela flavidorsalis(この検索表は少し古いので属名はCaesilius)が一番近い様です。この種の特徴は、「後小室が小さく、小顎鬚は淡黄褐色で、端節はやや暗色.翅脈及び翅膜は黄褐色.前翅長約3.0mm」となっています。しかし、今日のチャタテムシでは、小顎鬚は殆ど無色でその端が暗色とは言えません(3番目の写真)。
 学術論文ではないので、Valenzuela flavidorsalis?とする手もありますが、吉澤教授の上記コメントから察せられる様に、ケチャタテ科はまだ未整理部分が多い様です。此処では単にケチャタテ科の1種(Caeciliusidae gen. sp.)として置くことにしました。

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2011年12月22日 (木)

タイワンキシタアツバ(Hypena trigonalis)?の幼虫

 先月の末に帰国しました。その後約1週間は雨模様の日が多く、写真を撮りに出かける様な状態ではありませんでしたが、今月4日の日曜日になって漸く良い天気になりました。買い物ついでに写真を撮って来たのですが、色々と雑用などがあって、此方のWeblogは、今日が帰国第1回目の更新になってしまいました。

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カラムシの葉裏を歩くタイワンキシタアツバ?の幼虫
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 「三丁目緑地」の一番下にある人工的な公園(道路の反対側はオーケー・ストア)の縁に、昔からイラクサ科の大きな雑草が沢山生えています。何時も芋虫でも居ないか見ているのですが、これまで何らかの食痕すら見たことがありませんでした。
 ところが、・・・今度は居ました。
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アツバ亜科の幼虫は一般に第3腹節の腹脚を欠く
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 体長は40mm程度、多分終齢幼虫でしょう。この写真の様な、黄色~緑の体色に黒い斑点と云う蛾の幼虫は色々な科に居ます。一々調べるのは面倒ですから、「イラクサ科 毛虫」でGoogleの画像検索をしてみると、一発でよく似た毛虫が出て来ました。クロキシタアツバ(Hypena amica)の幼虫でした。
 しかし、同属のタイワンキシタアツバ(Hypena trigonalis)も非常によく似た模様をしており、食草も同じです。保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」に拠れば、「両者の幼虫は識別することが出来ない」と書かれています(なお、同図鑑では、これらのアツバ類は何れもDichromia属となっています。昭和40年の出版ですから、その程度の変更は驚くに当たりません)。
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急いで移動する時は尺取虫状になる
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 また、何も形容の付かないキシタアツバ(H. claripennis)の幼虫もかなり似ています。食草もこれまた同じイラクサ科です。キシタアツバとクロキシタアツバ(タイワンキシタアツバ)の幼虫の違いは、同図鑑に拠れば、前者は地色が橙褐色で、体表には24倍の拡大で認め得る棘状突起を密布するのに対し、後者では地色が黄緑色を主とし、体表には150倍で識別出来る微突起を密布する、とのことです(頭部の刺毛配列の違い(角度)についても書いてありましたが、写真からの判断は一寸難しい様です)。
 写真の幼虫は地色は黄緑色を主としており、また、下2枚の写真の様に、かなり拡大しても、表面がザラザラしているのは分かっても、微突起は認められません。キシタアツバの可能性は無い様です。
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タイワンキシタアツバ?幼虫の横顔
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 タイワンキシタアツバの成虫は、以前掲載したことがあります。その後も成虫を何回か見ていますので、今日の幼虫は多分タイワンキシタアツバの幼虫だと思います。しかし、成虫の方もクロキシタアツバとよく似ていて、両者を混同した可能性もあります。其処で、表題には「?」マークを付けて置きました。
 実は、掲載が遅れた理由の一つに、もう一度行って幼虫を拉致し、飼育して羽化させ、種を決定しようと思ったことがあります。残念ながら、幾ら探しても、もう幼虫は見つかりませんでした。或いは、何処かで営繭してしまったのかも知れません。
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タイワンキシタアツバ?幼虫の顔写真
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 これらのキシタアツバ類が属すHypena属は、ヤガ科(Noctuidae)アツバ亜科(Hypeninae)に属します。一般にこの亜科では、腹脚は第3節が退化して3対しかありません。3対あるので普通の毛虫・芋虫の動きも出来る様ですが、大きく動く時は、3番目の写真の様に尺取虫型になります。
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オマケの1枚.尺取虫状の姿を撮ろうとしてタイミングを外した
(写真クリックで拡大表示)
(2011/12/04)

 私は、植物は科が分かれば普通は種まで調べたりはしないのですが、今回は調べる必要があるでしょう。植物では、多くの場合、科さえ分かれば検索は簡単です(どんな花が咲くのか、以前観察しています)。カラムシでした。葉には目立った毛がありませんからナンバンカラムシではなく、また、葉裏は白っぽいので、アオカラムシでもありません。

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2011年9月 5日 (月)

お知らせ+コマユバチ科の1種(Braconidae gen. sp.)

 最近は時間が無くてすっかりサボっていましたが、明日より、例年の如く東南アジア方面に2~3ヶ月出張致しますので、また、今後暫くは更新が出来ません。
 写真がないのも寂しいので、かなり以前に撮影したコマユバチ科の1種を載せることにしました。

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シャクチリソバの葉上に居たコマユバチの1種
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/10)

 撮影したのは、3年前(2008年)の11月10日の夕方で、「3丁目緑地」のシャクチリソバの葉上に居ました。もう少し暗くなっていて焦点合わせが難しく、深度が深くなる様かなり絞って撮影した為、写真の品質は良くありません。
 等倍撮影をしたと思うので、体長約5mm弱、翅長は約4mm弱となります。しかし、もう少し大きかった様にも思います。深度を深くする為に、少し引いて撮影したかも知れません。
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一寸面白い顔をしている.単眼が目立つ
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/10)

 始めはヒメバチ科かと思ったのですが、翅脈が良く見えないので、科を判別出来ませんでした。ヒメバチ科の多くには2m-cuと云う横脈があるのですが、角度の関係で写真からはそれが良く見えません。
 しかし、縁紋に接する内側の室に、多くのヒメバチ科には無く、コマユバチ科には有る斜めの翅脈が認められますので、どうやらコマユバチ科の様です。
 かなり姿の美しいハチなので、属にまで落ちないか、ハチ類の掲示板「蜂が好き」に御伺いを立ててみました。しかし、残念ながらコマユバチ科(Braconidae)より下には落ちませんでした。
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非常に繊細な感じがする.美形と言える
(写真クリックで拡大表示)
(2008/11/10)

 それでは、行って参ります。皆様に於かれてはお風邪など召されぬ様、御自愛下さい。

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2011年5月28日 (土)

オオツマキヘリカメムシ(Hygia lativentris)(雄)

 一寸、仕事が一段落したので、今日はこちらのWeblogを更新することにしました。
しかし、最近は時間がない為、全く虫撮りに出かけていません。そこで、昨年の今頃に撮ったカメムシを紹介することにします。実は、昨年、一昨年のこの時期に撮影して未掲載の虫は、画像倉庫に沢山眠っているのです。

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ミズヒキの葉上に留まるオオツマキヘリカメムシ(雄)
ツマキヘリに似るが、雄の尾端に2突起を持つ
(写真クリックで拡大表示)
(2010/05/17)

 始めはツマキヘリカメムシかと思っていたのですが、全農教のカメムシ図鑑の解説を読むと、オオツマキヘリカメムシ(Hygia lativentris)の様です。
 同図鑑に拠れば、オオツマキヘリの雄の尾端には、2個の瘤状突起があるのに対し、ツマキヘリ(H. opaca)はこれを欠くのだそうです。上の写真を見ると、一寸焦点が外れていますが、2個の突起が認められます。
 また、オオツマキヘリでは、体の毛が繊細でやや平伏するのに対し、ツマキヘリでは暗色の硬い短毛を持つと書いてあります。下の写真を見ると、体の毛は「暗色の硬い短毛」よりは「繊細でやや平伏する」に近いと思います。
 これらから、この写真の個体はオオツマキヘリカメムシの雄として問題無いでしょう。
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横から見たオオツマキヘリカメムシ
褐色の平伏した短毛が生えている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/05/17)

 残念ながら、写真は2枚しかありません。撮影したのは四丁目にある「神明の森みつ池特別保護区」の册に沿って生えているミズヒキの葉上でしたが、他にホオズキカメムシが2頭も一緒に居たのです。ホオズキカメムシはオオツマキヘリカメムシとは別属(Acathocoris)ですが、同じヘリカメムシ科(Coreidae)に属し、もっと毛深く太めながらオオツマキヘリに一寸似ています。撮影している時は、焦点合わせに殆ど全神経を集中しているので、撮影の対象が知らない間にオオツマキヘリからホオズキカメムシに移っていたのに気が付かなかったのです。お恥ずかしい話ですが、そんな理由で、写真は2枚しか無いのです。
 ホオズキカメムシは既に紹介済みです。間違えて撮影したホオズキカメムシの写真は即刻消去しました。

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2011年5月 6日 (金)

ヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)の幼虫
(終齢=6齢)

 東日本大震災から2ヶ月が過ぎようとしています。私個人や住居には何らの被害もなかったのですが、その後、些かの問題が発生して、Weblogを書く時間が無くなってしまいました。昨日、今日と2日休んで、また、明日からこれまでやっていた作業の再開です。今日中に、このWeblogも更新しておかないと、次は何時になるか分かりません。
 今年は、1月と2月に一度ずつ虫撮りに出かけただけで、3月以降はサッパリです。そこで今回は、昨年の3月に撮ったチャタテムシの幼虫を紹介することにしました(写真も昨年の内に調整済みです)。このチャタテムシの幼虫は、これまでとは違い、種類と齢が判明しました。ホソチャタテ科(Stenopsocidae)に属すヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)の6齢(終齢)幼虫です。

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「三丁目緑地」に居たヨツモンホソチャタテの終齢幼虫
有翅チャタテムシは6齢が終齢
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 体長は、2頭居ますので、約1.9mmと2.3mm、撮影したのは「三丁目緑地」の北西部にある泉の近くです。1本の木に、数種類のチャタテムシの成虫、幼虫が相当数潜んでいました(しかし、何故か今年は殆ど居ませんでした)。
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2頭で大きさが少し違うが、翅芽の先端は
何れも腹部の真ん中辺に達している
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 撮影した時は種類も齢も分かりませんでした。しかし、我が家のトベラの葉裏に居たチャタテムシの成長を卵から成虫まで観察した結果(本稿末尾を参照)、ヨツモンホソチャタテであることが分かり、今日のチャタテムシ幼虫がその終齢幼虫と同一の特徴を持つことが分かったのです。
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大きな方の個体.体長約2.3mmだが、頭幅(本文参照)は
約0.59mmともう一方より狭い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 少し前まではチャタテムシが一般に何回脱皮して成虫になるのかも良く分かりませんでした。庭のチャタテムシを見てヨツモンホソチャタテは6齢が終齢であることが分かりましたが、これがチャタテムシ一般に通用すると云う確証はありません。
 この問題は、その頃に英国の古本屋から取寄せた「Handbooks for the Identification of British Insects」の一冊である「Psocoptera(噛虫目=チャタテムシ目)」を見て解決しました。長翅の種類では多くの場合6齢で、無翅や短翅の種類では齢数がもっと少なくなるとのことです。
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小さい方の個体.脱皮後あまり時間が経っていないらしく
額の色は上の個体より薄いし、腹部は少し縮んで見える
体長は約1.9mmだが、頭幅(本文参照)は
約0.62mmで上の個体より広い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 チャタテムシ幼虫の齢の違いを知るには、翅の原基(翅芽)の発達程度を見るのがよい様です。尤も、前掲書に拠れば、翅芽は3齢から認められるそうですので、翅芽では初齢と2齢の区別は出来ません。
 一般的に、翅芽の先端が腹部の中央付近に達していれば、終齢と判断して良い様です。但し、腹部は脱皮後の成長に伴って長くなりますから、あくまでおおよその判断です。
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正面から見た2番目の個体.何時見てもチャタテムシの顔は面白い
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 腹部は伸長しても、頭の外骨格は固く結合しているので、頭幅は脱皮しない限り(殆ど?)変化しません。芋虫・毛虫等の齢も、頭幅で推定することが出来ます。
 昆虫学に於ける「頭幅」の一般的な定義は良く分かりませんが、チャタテムシの場合、写真で測定するのに便利なのは、左右の複眼の外側の端から端までです。此処では、それを「頭幅」と呼ぶことにします。
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斜めから見た最初の大きな個体
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 今日の写真の2頭の頭幅を測定してみると、大きな個体(体長2.3mm)の方が小さくて約0.59mm、小さい方(体長1.9mm)では約0.62mmです。昨年、我が家で測定した終齢幼虫の頭幅は約0.60mmでしたから、0.60mm前後が終齢(6齢)幼虫の頭幅と言えるでしょう。
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同様に撮影した2番目の個体
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/22)

 ヨツモンチャタテの卵から成虫までの成長記録は、もう一つのWeblog「我が家の庭の生き物たち」に以下の様に掲載されています。御笑覧下さい。

   内   容      掲 載 日     撮 影 日
  卵と初齢幼虫    2010/03/13   2010/02/25,03/12
   2齢幼虫     2010/03/23   2010/03/22
  3、4齢幼虫    2010/04/19   2010/04/10
   5齢幼虫     2010/04/25   2010/04/18,20
   6齢幼虫     2010/04/29   2010/04/20
    成 虫      2010/05/11   2010/04/20,24

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2011年3月 8日 (火)

ツチトビムシ亜科の1種(Isotominae gen. sp.

 漸く暖かくなってきたかと喜んでいたのですが、昨日は9時少し前から雪となり、昼頃までに結構積もりました。しかし、所詮春の淡雪、夕方には殆ど消えてしまいました。
 今日は、昨年の今頃に撮ったトビムシの1種を紹介します。七丁目に大きな樹の繁った区画があり、其処に生えている大きなムクノキの樹皮下で越冬していました。

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ムクノキの樹皮下で越冬しているツチトビムシの1種
根元の部分に、非常に沢山生息していた
保護色で分かり難いので、明度と
コントラストを少し上げている
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 根元に近い部分の樹皮を剥がすと、何処の部分でも夥しい数が見られました。しかし、他の場所では、見た記憶のないトビムシです。
 体長は2mm程度、特に大きな個体(下の写真)では約2.3mmでした。トビムシは変態をしませんから、外見は殆ど同じでも、体長が半分位の小さな個体も居ます。
 体節が同じ様な間隔で並んでいるので、昆虫よりは、甲殻類に近いと云う感じがします。実際、最近ではトビムシは昆虫綱には入れず、コムシやカマアシムシと共に、六脚上綱内顎綱とするのが主流です(拙Weblogでは、便宜上「昆虫」に入れています)。
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大型の個体、体長は2.3mm.胸部第1節は見えず
胸部第2節と3節が膨らんで大きい
後続の腹節は丸くなくやや短い
絞り過ぎて解像度が高くない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 トビムシの種類を調べるのは中々厄介です。小さくて細部がよく分からない上に、背面からは見えない跳躍器の構造が問題になるからです。しかし、北隆館の大圖鑑を見ると、アヤトビムシ上科(Entomobryomorpha)に属すのは間違いないと思います。
 アヤトビムシ上科の特徴は、分離した体節を持ち、胸部第1節が退化して背板を持たないことです。下の写真を見ると、頭と胸部の間から前脚が出ている様に見えます。これは胸部第1節が背側から見えないことによると考えられます。
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前脚は頭部と胸部の間(胸部第1節)から出ている
胸部第1節は背板を欠くので背側からは見えない
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 胸部第1節は背面からは見えないのですから、背側から見て頭部に続くのは胸部第2節、次が第3節で、以降は腹節になります。胸部の2節はやや丸くて大きく、第1腹節はやや短く、以降の2~4節はほぼ同じ長さに見えます。なお、大圖鑑の解説に拠ると、トビムシの「腹節はわずか6節で他の昆虫に比べ最も少ない」とのことです。
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別個体.昆虫と云うよりは甲殻類的
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 さて、こう云う毛の長いトビムシは、アヤトビムシ科に多い様に思いますが、大圖鑑の検索表に拠ると、アヤトビムシ科では腹部第4節は第3節より明確に長いので、今日のトビムシとは異なる様です(以前紹介した「トビムシの1種」は第4節が明らかに長く、また、触角が長くないので、アヤトビムシ科の可能性が大です)。
 大圖鑑の検索表に拠れば、アヤトビムシ上科に属し、触角が4節で、腹節第3節と第4節がほぼ等長なのは、ツチトビムシ科、トゲトビムシ科、キヌトビムシ科の何れかです。この内、トゲトビムシ科は、触角が長く、その第3節と第4節は分節しており、今日のトビムシとは触角の感じが随分異なります。また、キヌトビムシ科は、小型で体色は白か灰色とのことなので、これも該当しません。
 以上から、今日のトビムシは、消去法により、ツチトビムシ科(Isotomidae)に属すと云うことになります。
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オマケにもう1枚.
(写真クリックで拡大表示)
(2010/03/11)

 さて、次は絵合わせでの確認です。ツチトビムシ科は九州大学の日本産昆虫目録で71種、東京都本土部昆虫目録では21種が記録されています。やや大きなグループであり、また、世界的に分布する様なので、BugGuide.Netにもかなりの写真が載っています。しかし、Web上で調べている間に、スザマジク強力なトビムシ専門のサイトを見つけてしまいました。「Checklist of the Collembola of the World」と云う複数の研究者によるHPで、トビムシについてのボーダイな情報が公開されています。
 HPの全体は、まだよく読んでいませんが、ツチトビムシ科の写真だけでも500枚位はあります。一通り見るだけでも大変ですが、ツチトビムシ亜科(Isotominae)のIsotoma属に良く似た種類が居ました。Isotomurus属もかなり似ていますが、胸部と腹部の体節に余り違いが無く、写真のトビムシの様に胸部第2、第3節が丸くて長いのはIsotoma属の様です。Isotima属は、九州大学の日本産昆虫目録では8種、東京都本土部昆虫目録には4種の記録があります。
 しかし、絵合わせで属まで決めるのには、些か抵抗があります。ツチトビムシ亜科であることは間違いないと思いますので、今日は「ツチトビムシ亜科の1種(Isotominae gen. sp.)」としておくことにしました。

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2011年3月 1日 (火)

タマゴクロバチ科の1種(Trissolcus sp.)?

 最近は、どうも本ばかり読んでいて、Weblogの方はすっかり御無沙汰です。2月の更新は2回のみ、写真は沢山あると云うのに、一寸酷いですね。今日から3月、反省を込めて少し気合いを入れて行こうと思います。
 3月最初の記事は、「三丁目緑地」に生えているケヤキの樹皮下で集団越冬していた小さなハチについての紹介です。前回の「クロハナカメムシ」が居たのと同じ樹です(昨年、同じ樹で撮影した「ヒシモンナガタマムシ?」の最後の写真に写っているハチは、多分今日のハチと同じ種類)。10頭前後の集団が2個所に居ました。

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ケヤキの樹皮下で越冬するタマゴクロバチ科のTrissolcus sp.
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(2011/02/19)

 体長は、尾端が良く分かりませんが、1.5mm程度、翅端までは約1.7mm、前翅長は約1.2mmです。通常の等倍接写では一寸小さ過ぎるので、テレプラス×2を使用して撮影しました。
 見た時はコバチ類(コバチ上科)と思ったのですが、似た様な形をした小型のハチは他の上科にも居ます。今回の写真は殆ど背面からの写真ばかりです。樹皮下に居る虫は、周囲より窪んだところにいるので、側面からは撮り難いことが多く、今回も何枚か撮ったのですが、使いものにはなりませんでした。背面からの写真だけで保育社や北隆館の図鑑にある検索表を引くのは一寸無理です。しかし、写真を良く見ると、前胸は肩板に達している様に思えます。コバチ上科では前胸が肩板に達しないので、別の上科に属すことになります。
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Trissolcus sp.?.翅には単純な枝脈があるが分かり難い
翅端まで約1.7mmの小さなハチである
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(2011/02/19)

 ハチ類の検索表としては、図鑑のものとは別に晶文社の「あっ!ハチがいる」に図解検索表があったのを思い出しました。
 早速これを見てみると、細腰亜目→有翅→腹部は前伸腹節の下部に付いている(ヤセバチ上科ではない)→側方から見て触角はテラス状に突出した部分の上に付き、触角柄節は長い→クロバチ上科(Proctotrupoidea)と簡単にクロバチ上科に落ちてしまいました。
 「テラス状に突出した部分」は、横からの写真が無いので不明瞭なのですが、3番目の写真を見ると、触角は顔面から直接伸びているのではなく、何らかの突起の上(背側)から生えている様に見えます。この突起が「テラス状に突出した部分」なのだろうと思います。
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胸部背面後部には2本の縦溝が認められる
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(2011/02/19)

 クロバチ上科より下への検索は、今日の写真からでは無理です。其処で、北隆館の圖鑑で絵合わせと相成ります。「触角は膝状で棍棒状部があり、翅脈は前縁脈と真っ直ぐな枝脈(縁紋脈)があるのみ」として探してみると、どうやらタマゴクロバチ科(Scelionidae)の様です(クロバチ上科は5種しか載って居らず、その内の4種がタマゴクロバチ科でした)。  写真のハチには、胸背(中胸楯板)の下半分に少し斜めになった1対の縦溝が認められます。圖鑑の解説を読むと、ミツクリクロタマゴバチ(ミツクリタマゴクロバチ:Trissolcus mitsukurii)には「中盾板の下部に短い側片溝あり」とあります。この縦溝は、或いはTrissolcus属の特徴かも知れません。
 いつも拝見している、おちゃたてむし氏の「明石・神戸の虫 ときどきプランクトン」や、フッカーS氏の「どっこい生きてる」にも、この冬に撮影されたタマゴクロバチが登場しています。その記事の中で、クロバチ類の専門家と思われるKurobachi氏(ほぼ間違いなく名城大学の山岸健三教授)がこのTrissolcus属に付いて幾つかコメントを書かれていました(ezo-aphid氏による伝言もあり)。
 それらに拠ると、Trissolcus属はケヤキの樹皮下などで集団越冬することが昔から知られており、また、コメントを総合すると、中胸楯板に2本の長い溝があるのはTrissolcus属の特徴の様です。
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やや横から見た図.脚の基節は褐色、腿節は暗褐色
脛節付節は褐色.触角柄節は褐色で先端部は
色濃く、梗節繋節は褐色、棍棒状部は暗褐色
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(2011/02/19)

 フッカーS氏の「タマゴクロバチ」は、今日のハチと同じくケヤキの樹皮下に居たもので、Kurobachi氏によりチャバネタマゴクロバチ(Trissolcus plautiae)と同定されています。しかし、Kurobachi氏が作成された標本写真を見ると、今日のハチとは胸部の形(小楯板の大きさ)がかなり異なります。また、北隆館の圖鑑にあるミツクリクロタマゴバチ(ミツクリタマゴクロバチ:Trissolcus mitsukurii)も、記載の多くは一致するのですが、やはり胸部の形が違って見えます。
 九州大学の日本産昆虫目録には、10種のTrissolcus属が記録されていました。しかし、名城大学の山岸健三教授の「農耕地におけるタマゴクロバチ科の属構成」(2004年)を読むと、日本産タマゴクロバチ科は研究が殆ど進んで居らず、未知種が既知種より遥かに多いと云う世界の様です。
 今日のハチは、タマゴクロバチ科に属し、ほぼ間違いなくTrissolcus属の1種と思いますが、決定的な根拠を欠きます。其処で、「Trissolcus sp.?」と「?」を付けておくことにしました。
 尚、このTrissolcus属のハチは、カメムシ類の卵に単寄生します。カメムシ類の天敵として利用する研究も行われている様です。

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2011年2月21日 (月)

クロハナカメムシ(Anthocoris japonicus

 今年の冬はどうも寒い日や風の強い日が多く、余り虫撮りに出かける気になりません。しかし先日、買い物ついでに「三丁目緑地」へ行って来ました。収穫は少なかったのですが、今日はその中からケヤキの樹皮下で越冬していたハナカメムシの1種を紹介します。
 体長は腹部が翅に隠れて良く分かりませんが、翅端まで3.5mm程度。小さなカメムシですが、ハナカメムシとしては大きい方に属します。同じくケヤキの樹皮下で越冬しているヒメコバネナガカメムシとほぼ同じ大きさです(このケヤキの樹にはヒメコバネもいました)。

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ケヤキの樹皮下に居たクロハナカメムシ.尾端まで約3.5mm
樹皮の幹側ではなく皮側に居た.少し動き始めている
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(2011/02/19)

 かなり平たいカメムシで、全体に黒っぽく、膜質部の前の方にある白帯が目立ちます。頭部が尖っているので、サシガメ科かハナカメムシ科のどちらかだと思っていましたが、家に帰って調べると、サシガメにはこんな小さな種類は無く、ハナカメムシ科のクロハナカメムシ(Anthocoris japonicus)であることが分かりました。全農教のカメムシ図鑑第1巻には載って居らず、第2巻の方にありました。
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越冬中のクロハナカメムシ.これも樹皮側
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(2011/02/19)

 上記図鑑には「成虫は年1回発生し、夏期に現れる新成虫は分散していろいろな広葉樹上で見つかるが、秋になると樹皮下に集まり冬を越す.とくにケヤキに多く、数十個体が集まることがある」と書かれています。
 毎年冬になると、彼方此方でケヤキの樹皮を剥がしていますが、このカメムシを見るのは今年が初めてです。このクロハナの居たケヤキも以前に剥がしており、昨年掲載した「ヒシモンナガタマムシ?」はこの樹で撮影したものです。
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樹皮を剥がされて幹を歩き回るクロハナカメムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 かなりの数の個体を見ましたが、図鑑に書かれている様な大きな集団はなく、最初の写真にある4頭一緒のが最大の集団でした。他は何れも1頭ずつバラバラに越冬していました。
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横から見たクロハナカメムシ.この写真だけ
普通の等倍接写.他はテレプラスを使用
ヒメコバネナガカメムシより平べったい
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(2011/02/19)

 前述の様に、カメムシ図鑑には「夏期に現れる新成虫は分散していろいろな広葉樹上で見つかる」と書かれていますが、北隆館の新訂圖鑑を見ると、このハナカメムシは「ケヤキフシアブラムシの虫癭に入りアブラムシを補食する」と書いてあります。ケヤキの樹皮下に居たのには、それなりの必然性があった訳です。ケヤキの虫癭で育ち羽化した成虫は、方々に分散して何らかの生き物を補食して生き長らえ、秋になると、来年の春の産卵に具えて?またケヤキの樹に戻るのでしょう。
 なお、ケヤキフシアブラムシの学名は、全農教のアブラムシ図鑑ではColopha moriokaensisとなっていますが、九大目録や東京都本土部昆虫目録ではParacolopha morrisoniです。アブラムシ図鑑は少し古い(1983年)ので、後者が現在の正しい学名と思われます。
 和名の方も一通りではなく、「ある虫屋の毎日」と云うサイトに拠ると、このアブラムシにはケヤキヒトスジワタムシ、ケヤキヒトスジタマワタムシの別名もあるとのことです。
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ストロボで眼を醒ましたクロハナカメムシ
(写真クリックで拡大表示)
(2011/02/19)

 カメムシ図鑑第2巻に拠れば、このクロハナカメムシが属すAnthocoris属は全北区に50種余り、日本では現在6種(九大目録では5種)が生息するそうです。殆どの種は膜質部の白い模様の形で区別出来ますが、チビクロハナカメムシ(A. chibi)の白帯の形状は今日のクロハナカメムシによく似ています。
 しかし、全体に小型(体長2.8~3.3mm)であること(細長くない)、触角第2節と第3節の基部が広く淡色なこと、脚や触角が褐色であること等で区別出来るとのことです(上記図鑑と「カメムシBBS」に拠る)。
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上と同一個体.歩き始めた
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(2011/02/19)

 クロハナカメムシは、ハナカメムシ科(Anthocoridae)ハナカメムシ亜科(Anthocorinae)に属します。ハナカメムシ類は何れも捕食性で、特にハナカメムシ亜科には農業害虫の防除に使われている種類があります。多くはヒメハナカメムシ属(Orius)ですが、カメムシ図鑑第2巻には、このクロハナカメムシ属(Antocoris)も「一部の種は果樹害虫の防除に導入されている」と書かれています。
 この様な天敵による害虫駆除は、化学農薬に代わる「安全」な方法として注目されており、カメムシ類ではハナカメムシ以外にカスミカメムシの仲間も「生物農薬」として販売、或いは、利用されています。
 「生物」と「農薬」とは殆ど対立概念に近いと思いますが、それを一緒にした「生物農薬」と云う呼び方は、慣れないと一寸奇妙な印象を与えますね。

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2011年2月 3日 (木)

ヒメコバチ科の1種(Euplectromorpha nigromaculatus

 今日は、昨年の今頃に撮影したコバチを紹介することにします。虫体が小さいにも拘わらず普通の等倍接写をしたので画質は相当酷いのですが、綺麗な種であるのと、種名が判明したので紹介することにしました。
 四丁目の何も生産していない「生産緑地」に生えていたビワの木の葉裏に居ました。ビワもヤツデと並んで、越冬中の虫を探すのには良い場所の様です(残念ながら、このビワの木は昨年の春に伐採されてしまいました)。

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ビワの葉裏に居たEuplectromorpha nigromaculatus
ヒメコバチ科に属す.胸部の構造が独特
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 体長は2.3mm、この小さいハチがコバチ上科に属すことは、翅脈が著しく退化していること、前胸背版の側面が肩板に達しないこと、触角が膝状(柄節=第1節と梗節=第2節の間で折れ曲がる)であることなどから推定出来ます。しかし、コバチ上科には20もの科があり、科を検索表で調べようとすると迷子になってしまいました。
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ビワの葉裏を歩き回るEuplectromorpha nigromaculatus
前翅にはかなり長い縁毛が認められる
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 しかし、北隆館の圖鑑を見ると136種ものコバチの図が載っています。そこで、胸部の構造が類似している科を探すと、ヒメコバチ科(Eulophidae)がよく似ていました。しかし、手元の検索表では、何れもヒメコバチ科は最後の方にあってどうしても辿り着けません。インチキして、ヒメコバチ科から逆に辿っても一寸無理の様です。
 暫く迷っていたのですが、結局ハチ類の掲示板「蜂が好き」にヒメコバチ科で合っているか否かを御伺いすることと相成りました。
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肩には1本のかなり長い剛毛がある
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 コバチやヒメバチは種類が多く、未記載種や未記録種も相当あり、科だけでも分かればよいと思っていたのですが、何と、コバチの研究をされているいしざき氏より、「写真のハチはヒメコバチ科のEuplectromorpha nigromaculatusです.今のところ、この属は日本から1種しか記録されていません」との御回答を賜りました。外見が非常に特徴的な種とは思いますが、科どころか種まで分かってしまったのには、一寸驚きました。
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転節は2節から成るそうだが写真では良く分からない
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 この種は、九州大学の日本産昆虫目録や東京都本土部昆虫目録には載っていません。学名を全て記すとEuplectromorpha nigromaculatus (Ashmead 1904) ですから、目録作成後に記載された新種ではなく、日本では最近まで未記録種であったことになります。[追記:ezo-aphid氏の御指摘により、命名当初の属名はEuplectrusであり、その後Euplectromorpha属に移されたこと、九大目録には昔の儘のEuplectrusで載っていることが分かりました。原記載地は箱根なので、日本では命名年の1904年(明治37年)から知られていたことになります]。
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顔には「人」の形をした黒色の筋がある
前ピンの酷い写真だが、御勘弁を
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/01/18)

 また、いしざき氏の御話では「寄主はわかっていませんが、他種がガ類の幼虫に寄生することが知られています。私も現在寄主探索中です」とのことです。
 実は、このコバチは一昨年に、このビワの木から僅か2~3m離れた所に植わっているミカンの木の葉裏で見つけたことがあります。この話を掲示板に書き込んだところ、いしざき氏もミカンの木で採集されたことがあるそうです。ミカンに付く蛾に寄生するのかも知れませんが、周りには他にも色々な木が植わっており、当然草本もありますから、これだけでは何とも言えません。
 今頃の常緑樹の葉裏や樹皮下を探すと、越冬中のコバチが結構見付かります。小さ過ぎて中々旨く撮れないのですが、金属光沢を放つ綺麗な種類も多く、出来るだけ紹介して行きたいと思います。

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